〇魔界
　　魔物、怪獣、妖怪・・・この世には、その存在が謎に包まれている生物、いわゆる地球外生命体（UMA）が数多く存在している。
　　その中には、人間に害を及ぼす悪のUMAも多くいる。
　　一方、そんな悪のUMAから人々を守る者も存在する。
　　それが「UMAハンター」。
　　その１人「UMAハンター・カレン」・・・

〇草原の道
カレン「けっこう歩いたな」
カレン「それにしても・・・」
カレン「腹が減った・・・」
アスカ「あの・・・」
アスカ「どうかされましたか？」
カレン「ん？　何でもない。少し腹が減ってるだけだ」
アスカ「お腹がすいて・・・」
アスカ「あの、よろしかったらこれをどうぞ」
カレン「いいのか!?」
アスカ「はい。お口に合うかどうかはわかりませんが」
カレン「いただきまーす！」
カレン「うまい！」
カレン「こんなうまい弁当は初めて食べた」
アスカ「まあ」
カレン「ふう、うまかった」
カレン「ごちそうさま。助かったよ」
カレン「本当にありがとう。えっと・・・」
アスカ「アスカです」
カレン「アスカ、とってもおいしかったよ」
アスカ「喜んでもらえてなによりです」
カレン「私はカレン」
カレン「UMAハンター・カレンだ」
アスカ「UMAハンター!?」
アスカ「UMAハンターって、あの悪い魔物や妖怪に苦しめられている人々を助けてくれるという・・・」
カレン「そうだ」
アスカ「・・・」
カレン「どうかしたのか？」
アスカ「実は・・・」

〇草原の道
アスカ「私の住む村も妖怪に苦しめられているんです」
カレン「何だって！」
カレン「妖怪って？」
アスカ「河童です」
カレン「河童？」
アスカ「はい。河童は普段は村にある沼に住んでいるのですが・・・」
アスカ「畑にやって来て農作物を食い荒らしたり、川の魚を大量に食べてしまうんです」
アスカ「そのせいで農作物も魚もほとんどとれなくて、みんな苦しい生活をしています」
カレン「そんなひどいことを・・・」
アスカ「河童は強い上にすばしっこいので、倒すことも捕まえることもできません」
アスカ「村でも対策を考えているのですが、いい方法はありません」
アスカ「実は今日は、中央の役所に何とかして欲しいと相談に行ったのですが・・・」
アスカ「役所の人も忙しいからか、小さな村の困り事なんて相手にしてくれません」
アスカ「もうどうしたらいいか・・・」
カレン「アスカ、私を村に案内してくれ」
アスカ「えっ！」
カレン「私が河童を懲らしめてやる」
アスカ「カレンさん！」
カレン「行くぞ」
アスカ「はい！」

〇農村
村人「河童め、今日こそ倒してやる」
村人「覚悟しろ！」
河童「ケケッ。お前らなんかに俺が倒せるか」
村人「うわー！」
村人「ぐわっ！」
河童「ケケッ」
村長「おのれ、河童め」
村長「全員で囲んで、一気に襲い掛かれ！」
村人「はい！」
河童「ケッケッケー」
村長「追いかけろ！」

〇湖畔
河童「ケケッ。死にたい奴はここまで来い」
村人「河童が沼の中に入った。私たちも行きましょう！」
村長「待て！」
村長「奴は水の中では、その力が10倍以上になるといわれている」
村人「10倍以上・・・」
村長「水中では何人で掛かっても勝ち目はない」
村長「下手をすれば全員殺される」
村人「くそっ、河童の野郎！」

〇村の広場
村長「今回もダメだったか」
村長「やはり我々の力ではどうしようもない」
アスカ「村長さん」
村長「アスカ」
村長「役所のほうはどうだった？」
アスカ「ダメでした。全然相手にしてくれませんでした」
村長「そうか・・・」
アスカ「今日もまた河童に？」
村長「ああ。村の男全員で戦ったがダメだった」
カレン「河童はそんなに強いのか？」
村長「ん？　そなたは？」
アスカ「UMAハンターのカレンさんです」
村長「何！　そなたがあの伝説のUMAハンター!?」
カレン「村長さん、私に任せてくれ」
カレン「河童は私が倒す！」
村人「村長、大変だ！」
村長「どうした！」
村人「また河童が現れた！」
村長「何だと！　どこに？」
村人「村の神社です」
カレン「私が行く」
村長「何？」
カレン「アスカ、案内してくれ」
アスカ「は、はい」
村長「彼女があの伝説のUMAハンター。あんな女の子が・・・」

〇古びた神社
村人「やめろ！」
河童「ケケッ。うるせえ！」
河童「食い物がねえなら、代わりにこれを持っていく」
村人「それは村の守り神の女神像。それは絶対に渡せん！」
河童「うるせえんだよ！」
村人「うわっ！」
河童「ケケッ。こんなしけたもんでも、町に行けば高く売れるかもしれないしな」
アスカ「待ちなさい！」
河童「ああ、何だお前？」
アスカ「女神像を返しなさい」
河童「うるせえ女だ」
河童「おっ、よく見りゃかわいい顔してんじゃねえか」
河童「お嬢ちゃん、俺が遊んでやろうか」
アスカ「この変態河童！」
河童「ケッケッケー」
カレン「アスカ、下がってろ」
アスカ「カレンさん・・・わかりました」
カレン「河童、いい加減にしろ」
河童「あ、何だてめえ」
カレン「私はUMAハンター・カレン」
河童「ケケッ！　UMAハンターだと？」
カレン「その像をすぐに返せ」
カレン「そして、そのまま沼に帰っておとなしくしてろ」
河童「何だと？」
カレン「これ以上村の人を困らせないなら許してやる」
カレン「そうでなければ・・・」
河童「ケケッ。うるせえ、偉そうにこの野郎！」
河童「かわしただと!?」
カレン「今度はこっちの番だ」
河童「ケ、ケ、ケ・・・」
カレン「もう一発！」
河童「げふっ・・・」
カレン「次でとどめだ！」
カレン「逃げた!?」
カレン「待て！」

〇湖畔
カレン「逃がさんぞ！」
河童「ケッケッケー」
河童「調子に乗るなよ」
河童「次はこの沼の中で勝負だ」
カレン「いいだろう。どこでやっても結果は同じだ」
河童「ケケッ。果たしてそうかな？」
アスカ「カレンさん、ダメです！」
カレン「ん？」
アスカ「河童は水の中では、地上より何倍もの強さを発揮できるんです」
カレン「そうなのか？」
アスカ「だから挑発に乗ってはいけません」
カレン「わかった」
河童「ちっ・・・」
河童「・・・」
河童「ケケッ。それじゃあ、こうしたらどうする？」
アスカ「あれは女神像！」
アスカ「それをどうするつもり？」
河童「ケケッ。こうするのよ」
アスカ「女神像を沼の中に！」
カレン「貴様・・・」
河童「どうする？」
河童「このままだと、像は沼の底に沈んでしまうぞ」
アスカ「卑怯者！」
河童「ケケッ。何とでも言え」
カレン「どうしても水の中で戦いたいらしいな」
河童「ケッケッケー！」
カレン「いいだろう」
アスカ「カレンさん、行っちやダメ！」
アスカ「カレンさん！」
河童「ケケッ。いい度胸だ」
アスカ「カレンさん・・・」

〇水中
河童「馬鹿め。水中で俺に勝てると思ってるのか。ケケッ」
河童「さっきはよくもやってくれたな。くらえ！」
カレン「くっ・・・」
河童「ケッケッケー」
カレン（こいつ、攻撃のスピードも威力も地上にいるときとは全然違う）
カレン「くそっ！」
河童「ケケッ」
カレン（かわしただと!?）
河童「ケケッ。やっぱり水中じゃ俺は無敵だな」
カレン（強い・・・）
河童「次でとどめだ！」
カレン（だがこんなところで負けるわけにはいかない）
河童「くらえ！」
カレン「いけえー！」

〇湖畔
アスカ「カレンさん、まだ上がってこない。大丈夫かな・・・」
アスカ「カレンさん！」
河童「ケケッ」
アスカ「うそ・・・」
アスカ「河童が上がってきたということは、カレンさんは・・・」
河童「ケ、ケ、ケ・・・」
河童「げふっ・・・」
アスカ「カレンさん！」
カレン「ふー、危なかった」
アスカ「よかった・・・」
カレン「河童！」
河童「ひー、私の負けです。許してください」
河童「もう悪さはしません」
カレン「本当か？」
河童「本当です。畑も荒らしません。魚もあまりとりません」
カレン「今度やったら、こんなもんじゃすまさないぞ」
河童「はい、絶対やりません」
河童「あっ・・・」
河童「でも、食べ物がないのは辛いので少しは・・・」
カレン「何だと？」
河童「ひー、冗談です」
アスカ「河童さん」
アスカ「河童さんの食事は私たちが用意します」
アスカ「この池のほとりに置いておきます」
アスカ「だから、もう畑や川を荒らさないでください」
河童「ありがてえ」
河童「わかった。これからは俺も村のためになることをするよ」
アスカ「よろしくお願いします」
　　その後、村人は毎日食べ物を沼のほとりに置いておいた。
　　一方、河童は畑を荒らす害虫や何者かが持ち込んだ外来種の魚などを駆除した。
　　盗賊が村に入ろうとしたときは、盗賊を追い払った。
　　いつしかこの村では、村を守ってくれる存在として、河童を神様のように祀るようになっていた・・・

〇草原の道
カレン「村に活気が戻ってきてよかった」
カレン「そろそろ行くか」
アスカ「カレンさん！」
カレン「アスカ」
アスカ「もう行っちゃうんですね」
カレン「ああ。悪のUMAに困っている人たちは他にもいるはずだからね」
アスカ「カレンさん、本当にありがとうございました」
カレン「うん」
アスカ「カレンさん、これを持っていってください」
カレン「これはあのめちゃくちゃうまい弁当！」
カレン「いいのか？」
アスカ「はい。村を救ってもらったのにこんなお礼しかできませんが」
カレン「何言ってる。こんなにうれしいお礼はないよ」
アスカ「カレンさん、またお弁当食べに来てくださいね」
カレン「もちろん。次に来たときはお腹がいっぱいになるまで食べるよ」
アスカ「まあ。じゃあたくさん用意しときますね」
アスカ「カレンさん、お元気で」
カレン「うん。アスカもな」
アスカ「はい！」
　　悪のUMAを成敗し、再び旅立つカレン。
　　UMAハンター・カレンの旅はこれからも続く・・・