こちら、支那内(しなない)デスゲーム運営株式会社です

杉本太祐

【社訓その1】私たちは、お客さまのどんな要望にも応えます(脚本)

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〇事務所
愚直な支那内「はい! 明後日の深夜からですね!」
愚直な支那内「参加者は、5名。 依頼者様自身は参加・・・しない、と」
愚直な支那内「入金も今、確認できました。 それではこちらのコースプラン、早速手配させていただきます!」
愚直な支那内「ご利用、ありがとうございます!!」
愚直な支那内「・・・・・・」
愚直な支那内「無理だよ! あと2日で準備するなんて!!」
辛辣な毒島「じゃあ、なんで引き受けたし」
愚直な支那内「即金だったんだよぉ〜。 やる気出ちゃったんだよ〜」
辛辣な毒島「で、ムリな案件引き受けるとか・・・」
辛辣な毒島「アホくさ」
愚直な支那内「それが社長への態度!?」
辛辣な毒島「アホへの態度です」
愚直な支那内「くっそぉ、たった一人の社員だからと甘やかしたばっかりに」
辛辣な毒島「いや、バイトだし」
辛辣な毒島「いや、アンタがそこ驚いちゃダメっしょ」
辛辣な毒島(忘れてたんだな・・・)
愚直な支那内「そ、そんなことよりも毒島さん!!」
愚直な支那内「ど、どうしよう!!」
辛辣な毒島「キャンセルしな!」
辛辣な毒島「できないことは、できないってハッキリ言わないと」
愚直な支那内「でもぉ、でもぉ〜」
辛辣な毒島「大の大人が駄々こねるな!」
愚直な支那内「ならばバブゥ!」
辛辣な毒島「大人であることを諦めないの!」
愚直な支那内「んぎぃ。どうして部下にここまで言われてしまうのか・・・」
愚直な支那内「社長なのに、何度言っても敬語使ってくれないし」
辛辣な毒島「社長なのに、トラブルばっか起こすからでしょうが」
辛辣な毒島「そんないい加減なことばっかしてると、いつかマジで誰かに恨まれるよ?」
愚直な支那内「仕事は過酷な上に、部下は冷たい・・・」
辛辣な毒島「・・・で?」
愚直な支那内「で?」
辛辣な毒島「今度は、どんなミスやらかしてるわけ?」
愚直な支那内「俺がミスった前提なのか・・・」
愚直な支那内「でも、聞いてくれるんだね! ありがとう毒島さん!!」
辛辣な毒島(その切り替えの早さが、また余計に腹立つ・・・)
辛辣な毒島「そういうのいいから。とっとと話して」

〇ボロい山小屋
実直な支那内「場所はS県R市。サークル合宿で集まった大学生12人の中から、5人だけを拉致」
辛辣な毒島「コースは?」
愚直な支那内「『初めてでも安心! 少人数プラン』のオプションが追加」
愚直な支那内「合宿所から片道2時間以内で、空いてる会場が一つしかなくてね」
愚直な支那内「依頼の電話の最中に、会場はもう押さえておいた」
辛辣な毒島「じゃあ電動ギミックは無し、ってことね。オプションは何?」
愚直な支那内「『絶対○して指定』が一名分だね」
愚直な支那内「中屋敷っていう、サークルの代表さん」
人間不信の毒島「確か、大きなグループ会社の跡取りだとか」
辛辣な毒島「わっかりやすい人物像だこと」

〇事務所
辛辣な毒島「合宿初日の夜、飲み会後にサークルメンバーを拉致・運搬」
辛辣な毒島「拘束期間は2日で、「絶○」以外は生死問わずっと・・・」
辛辣な毒島「ここまでならギリなんとかなる案件っぽいけど」
辛辣な毒島「結局、何が問題なわけ?」
愚直な支那内「電ノコだって」
辛辣な毒島「電ノコ・・・」
辛辣な毒島「壁から、大きな回転ノコギリが出てきて「ギャー!!」のアレ?」
愚直な支那内「ソレです」
愚直な支那内「依頼人の榎本さんからの電話でね──」

〇モヤモヤ
依頼人の榎本「やっぱり、クライマックスは派手に行きたいなって」
依頼人の榎本「だから最後に中屋敷さん、 ノコギリで半分こにしちゃってください」

〇事務所
辛辣な毒島「随分と想われてるね・・・中屋敷」
愚直な支那内「俺もさすがにその辺気になったが、」
愚直な支那内「『依頼人のプライバシーは詮索しない』。 それが我が社のモットーだから我慢しました」
辛辣な毒島「・・・で?」
愚直な支那内「で?」
辛辣な毒島「電ノコ、断ったんだよね?」
愚直な支那内「・・・」
辛辣な毒島「社長さん?」
愚直な支那内「・・・お」
愚直な支那内「『お客さまのどんな要望にも応えます』!」
愚直な支那内「それも、我が社のモットーだ!」
辛辣な毒島「でも、無理じゃん」
辛辣な毒島「そのプランに、電ノコ入ってないし」
辛辣な毒島「アンタの押さえた会場、」
辛辣な毒島「電ノコ動かすような電源ないよ?」
愚直な支那内「だよね・・・」
愚直な支那内「では。 ここで改めまして──」
愚直な支那内「どうしよう!!」
辛辣な毒島「やり直さなくていいから」
辛辣な毒島「つーか、予約受けてる時点でちゃんと説明しとけよな!」
愚直な支那内「浮かれちゃったんだもん!」
辛辣な毒島「──って、バカの相手をしてても仕方ない」
愚直な支那内「バカ? 俺はアホでは?」
辛辣な毒島「(無視) 電ノコを使える会場に移ってもらうのが一番なんだけど・・・」
辛辣な毒島「マジでどこも空いてないし」
辛辣な毒島「日程は・・・まぁ動かせないよね」
愚直な支那内「そうだね。 サークル合宿の日程に重ねているから、難しい」
辛辣な毒島「とりあえず。会場も日程も動かない。コレはもう、残念ながら確定で」
辛辣な毒島「電源はないけど、なんとか電ノコを設置する方法考えないと」
愚直な支那内「電ノコに変わるギミックとか、ないかな?」
辛辣な毒島「切断系っていうなら、まぁそれなりにあるけど」
辛辣な毒島「依頼人のご希望は、「ノコで中屋敷を半分こ」でしょ?」
辛辣な毒島「代わりを用意するっていうのは、依頼人の要望に応えたことにはならないんじゃないの?」
愚直な支那内「そ、そうだね! 確かに毒島さんの言う通りだよ!!」
辛辣な毒島「誰かを半分こにしてやりたい。 今の私にも、その気持ちはワカるし」
愚直な支那内「俺には、誰かを半分こにしたいって気持ちが分からないけど」
愚直な支那内「依頼人の気持ちにそこまで寄り添えるなんて・・・」
愚直な支那内「さすがだよ! 毒島さん!」
辛辣な毒島「・・・半分こにしたい」
辛辣な毒島「まぁ、ウチらが考えてもここらが精一杯」
辛辣な毒島「やっぱ、山さんに相談するしかないんじゃないんじゃね?」
辛辣な毒島「今日、戻ってくる予定だし」
愚直な支那内「それは好都合!」
愚直な支那内「そしたら毒島さん! 山さんが戻って来たら今の──」
辛辣な毒島「──ヤダ!!」
愚直な支那内「ヤダって、久しぶりに聴いた!」
辛辣な毒島「私の口から、こんな無茶振りするなんてゴメンだよ」
辛辣な毒島「山さんのことだから、怒ったりはしないと思うけど」
辛辣な毒島「むしろ、だからこそ言いにくいというか・・・」
愚直な支那内「むぅ・・・確かに」
頼れる山さん「お疲れー」
愚直な支那内「噂をすれば、山さん!」
頼れる山さん「来週の廃旅館のやつ、仕込み終わったぞ」
辛辣な毒島「山さん、お疲れ! 給湯室におはぎ。ありますよ」
頼れる山さん「それは嬉しいね。 一つ頂くよ」
辛辣な毒島「あと。 社長から話があるそうです」
頼れる山さん「・・・」
頼れる山さん「毒島ちゃんが、見慣れないスピードで走り去ってたけど・・・」
頼れる山さん「何かあった?」
愚直な支那内「そ、そうですねぇ・・・」
頼れる山さん「とりあえず、聞くからよ」
愚直な支那内「・・・」
愚直な支那内「助けて! 山さん!!」

〇事務所
頼れる山さん「それは無理だな」
愚直な支那内「最後の砦があっさりと!!」
頼れる山さん「だってよ、あそこの小屋。 電ノコ回すほどの電力ないし」
愚直な支那内「うぅ・・・ですよねぇ」
頼れる山さん「それに、あそこ木造だぞ?」
頼れる山さん「電ノコは部屋、派手に汚すからなぁ」
頼れる山さん「終わったら清掃じゃなくて、壁や天井まで貼り替えないとならねぇ」
頼れる山さん「撤収と清掃の人数も最小限しか用意してねぇし」
頼れる山さん「──無理だな!」
愚直な支那内「──っ!!」
頼れる山さん「・・・って、普通の技術屋なら言うだろうよ」
愚直な支那内「山さん?」
頼れる山さん「こっからは、俺の意見」
頼れる山さん「電ノコ──」
頼れる山さん「やれるぞ」

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コメント

  • 人の命が懸かっている、というか軽んずるようなデスゲームの舞台裏が、こんなハートフルなヒューマンドラマとはw このギャップ感が楽しくて仕方ないです

  • 社長が頼りない小さな企業って、わりと社員が優秀な上団結力がすごくて、結果上手く会社が回っていくというの経験からとても納得できます。ただ、社長が人間的に良い人っていう条件は必要ですが! 

  • いつも思うのですが、会話、掛け合いのセンスに脱帽です🤣
    社長、人材に恵まれてますね。
    自分自身もうちょっと頑張って!w

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