十八話 終わりの戦いへ(脚本)
〇化学研究室
中井 雛「止まらないと撃つよ」
中井 雛「例え、沙耶さんでも」
黒沼 晶「ひ、雛先生・・・!」
中井 雛「いくらコソコソしたって分かるよ。 私はこうなることを予測して監視してたんだから」
日谷 沙耶「はぁ・・・してやられたわね 全く本当に苦手だわ、この子」
中井 雛「晶くん、沙耶さんを信じちゃダメ。 沙耶さんはまた、晶くんから何かを奪うよ」
中井 雛「次は・・・杏ちゃんかもしれないんだよ!」
黒沼 晶「・・・!!」
日谷 沙耶「いい加減にしなさいよ」
日谷 沙耶「私はそこまで腐った人間じゃないわ。 賢いあなたが理解できていないなんてね」
日谷 沙耶「見損なったわよ」
中井 雛「別に構いません。 あなたは今、人間ではなくギャラジーですから」
日谷 沙耶「雛ッ!!」
黒沼 晶「・・・」
日谷 紗枝「・・・先に行ってください。 姉さん、黒沼さん」
中井 雛「ッ! 紗枝さん!?」
日谷 紗枝「私は姉さんの望みを叶えます。 そのために、私はここにいるのですから・・・!」
中井 雛「紗枝さん、離して! 晶くん、沙耶さんについていっちゃダメ!」
黒沼 晶「・・・」
黒沼 晶「雛先生、ごめんなさい・・・!」
中井 雛「晶くん!」
黒沼 晶「俺は、沙耶さんを信じます」
日谷 沙耶「──!」
黒沼 晶「そして・・・ 紗枝さんのことも、信じます」
日谷 紗枝「・・・」
黒沼 晶「行ってきます、雛先生」
黒沼 晶「──今まで、本当にお世話になりました」
中井 雛「──ッ!!」
中井 雛「行かないで、晶くん・・・! 君がいなくなったら、私は、杏ちゃんは・・・!」
黒沼 晶「・・・」
日谷 沙耶「本当に、私を信じてくれるなんて」
日谷 沙耶「おばかさんねぇ・・・ 全く論理的じゃない、感情的すぎるわよ」
中井 雛「沙耶ッ!」
中井 雛「晶くんを傷つけるような真似をしたら、絶対に許さない!!」
中井 雛「絶対にッ・・・!」
中井 雛「うっ・・・!」
日谷 紗枝「ふぅ、ひとまずはこれで」
日谷 沙耶「助かったわ、紗枝。 あなたは最高の妹よ」
日谷 紗枝「姉さん・・・」
日谷 沙耶「後の任務、頼んだわよ」
日谷 紗枝「・・・分かりました」
日谷 沙耶「元気でね。 これからも無理するんじゃないわよ」
日谷 紗枝「・・・はい。 会えて嬉しかったです、姉さん」
日谷 紗枝「・・・」
〇古びた神社
日谷 沙耶「さ、着いたわよ」
黒沼 晶「え・・・? こんなところに、ギャラジーが?」
日谷 沙耶「そうよ。 全く人気のない、こんな場所にいるの」
日谷 沙耶「ここはもう、東京ですらない。 こんなところにいるなんて、誰も思わない」
日谷 沙耶「──だから、私たちはいつまで経っても見つけられなかった」
日谷 沙耶「私がギャラジーになるまでしないと・・・ 見つけられなかったのよ」
黒沼 晶「なるほど・・・」
日谷 沙耶「独り言、少しだけ聞いていてくれる?」
黒沼 晶「はい」
日谷 沙耶「私の研究は、雛が信条を貫くためにできなかったことを、私が代わりにやっただけ」
日谷 沙耶「こんな研究、雛ならすぐに成功させていたけど・・・ あの子には人道に背くことができなかった」
日谷 沙耶「私だって、別に平気だったわけじゃないけどね」
日谷 沙耶「私のせいで紗枝は随分苦しんだし、研究員にはほとんどに避けられたし。 散々だったわ」
日谷 沙耶「でも・・・ 結局、こうすることでしか前には進めなかった」
日谷 沙耶「今、この状況こそが答えよ」
日谷 沙耶「結果を出したのは、結果を求めて偽善すら持てない女だった」
黒沼 晶「・・・期待していたんですか、雛先生に」
黒沼 晶「その偽善を持ち続けながら、ギャラジーを滅ぼす方法を見つけてくれることを」
日谷 沙耶「・・・ええ、大正解よ」
日谷 沙耶「私がギャラジーとして蘇る頃には、雛が私を否定できる研究結果を出してると思ってた」
日谷 沙耶「こんな結末じゃ、必死に人道に沿って頑張ってきた雛が報われないでしょう」
黒沼 晶「沙耶さん・・・」
日谷 沙耶「でも、それで気づいたこともあったわ」
日谷 沙耶「偽善を持たない者、偽善を振りかざす者」
日谷 沙耶「そのどちらもこの世には必要なの」
日谷 沙耶「偽善で人は救える。 でも、それだけでは全ての命を救うことはできない」
日谷 沙耶「偽善がないからこそ、人を救うこともあるの」
日谷 沙耶「だからね、晶クン。 あなたの今までの行動だって、何も間違ってはいなかったのよ」
黒沼 晶「・・・」
黒沼 晶「でも俺は、たくさんの人の命を・・・!」
日谷 沙耶「晶クンが間違っていたのなら、私だって間違っていたことになるわ」
日谷 沙耶「あなたと同じ、偽善を捨てて前に進んだ人間だから」
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