【第2話】一線(脚本)
〇実験ルーム
芽衣美(メイミ)「無理してるんです、私」
クレナイ「無理?」
芽衣美(メイミ)「大学進学のために上京したんですけど」
芽衣美(メイミ)「大学の4年間は何ひとつ上手くいかなかったんです。友達も彼氏も出来なかった」
クレナイ「・・・意外ですね。そんな風に見えない」
芽衣美(メイミ)「あの頃は服装も見た目も地味でやぼったくて、都会の人と話すのが怖かった」
芽衣美(メイミ)「自分を変えたくて上京したのに」
芽衣美(メイミ)「私は何ひとつ変われなかったんです」
クレナイ「今は・・・とてもお洒落ですし明るくて社交的に見えます。何かキッカケが?」
芽衣美(メイミ)「就職活動です」
〇超高層ビル
芽衣美(メイミ)「はあ・・・何社受けても不採用」
世界中の人に自分を否定されている。
そんな気持ちでいっぱいだったあの頃。
芽衣美(メイミ)「きゃっ!」
水本タカシ「うわ!ごめん!」
芽衣美(メイミ)「あ、いえ・・・ああ!」
水本タカシ「うわ!スマホ踏んだ!」
水本タカシ「壊れてる・・・ほんっとうにごめん!」
芽衣美(メイミ)「ど・・・どうしよう・・・」
芽衣美(メイミ)「スマホが無いと就活出来ない・・・」
水本タカシ「弁償するよ!今すぐ携帯ショップ行こう!」
芽衣美(メイミ)「え?今すぐ!?」
〇レストランの個室
水本タカシ「乾杯」
芽衣美(メイミ)「か・・・かんぱい・・・」
水本タカシ「スマホ、今日中に何とかなりそうで・・・本当に良かったよ。ごめんね?」
芽衣美(メイミ)「い!いえ、あんな最新モデルのやつを買ってもらっちゃって・・・すみません」
水本タカシ「いいんだ。僕が悪いんだから」
芽衣美(メイミ)(食事に誘われて思わずついてきちゃったけれど・・・ヤバい人だったらどうしよ)
水本タカシ「ぷふっ」
芽衣美(メイミ)「な、なんですか!?」
水本タカシ「あはは!そんなに緊張しないでよ~。とって食ったりしないから、安心して食べなさい」
誰かと食事なんて、久し振りだった。
〇幻想3
~凍りつく恋人たち~
第2話「一線」
〇研究装置
クレナイ「さあ、こちらへ。台の上で仰向けに寝て下さい。洋服は着たままで大丈夫ですよ」
芽衣美(メイミ)「はい・・・」
クレナイ「その人との出会いが、芽衣美さんをこんな素敵な女性へ変えたのですか?」
芽衣美(メイミ)「す、素敵だなんて」
芽衣美(メイミ)「でも・・・はい、そうなんです」
芽衣美(メイミ)「彼は大きな会社の部長さんで」
芽衣美(メイミ)「就職の面倒までみてくれました」
〇研究装置
芽衣美(メイミ)「ふわっ!光がついた!」
クレナイ「今からゆっくりと時間をかけて細胞をフリーズさせていきますからね」
芽衣美(メイミ)「こ・・・怖いです・・・痛いですか?」
クレナイ「大丈夫。少しひんやりするだけですよ」
クレナイ「そして貴方は、彼の会社へ就職した」
芽衣美(メイミ)「え?あ、はい」
芽衣美(メイミ)「正社員ではないけれど、あんな大きな会社に入れるなんて思いもしませんでした」
芽衣美(メイミ)「初めて頂いたお給料で美容院へ行って、帰りに沢山お洋服を買いました」
芽衣美(メイミ)「私を入社させてくれた彼の恩に報いる為に、お洒落も仕事も頑張ったんです」
芽衣美(メイミ)「そして私は、彼にどんどん惹かれた」
クレナイ「そして、どんどん綺麗になっていった」
芽衣美(メイミ)「でも・・・私は知らなかった」
クレナイ「彼が・・・既婚者であることを」
芽衣美(メイミ)「え?どうしてそ・・・れ・・・を」
芽衣美(メイミ)「な・・・に?目が・・・あかな・・・い」
〇オフィスのフロア
「ねえ、聞いた?高嶋さんの話」
「あ~無断欠勤でしょ?今日で三日目」
「連絡とれないんだって」
「まさかまさかぁ、部長とのことがバレて奥さんに刺されて埋められてたりして?w」
「あんたテレビドラマの見すぎw」
水本タカシ(芽衣美・・・どうしたんだよ)