実録・怖い話『白い手』

はやまさくら

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〇海辺
  これは私が子供の頃、
  実際に体験した出来事です。
  その日、私は家族と一緒に
  瀬戸内海に面した某海水浴場へと
  遊びに行きました。
  瀬戸内海は波が穏やかで、
  海水浴にとても向いた場所です。
  調子に乗った私は、
  妹と一緒に沖へと泳ぎ出しました。
  浜辺から2~30メートルは
  離れたかと思います。
  当時の私は離岸流のことなど
  知りませんでした。
  泳ぎが得意なわけでもないのに、
  かなり危険な行為だったと
  今更思います。

〇沖合
妹「ねえ、お姉ちゃん。 アレ、何だろう・・・?」
  海水浴の最中、
  妹が水面を指さしました。
私「えっ、あれって・・・」
  妹が指さした先には、
  人の手の形をした『ナニカ』が
  海面からまっすぐに伸びています。
妹「人の、手・・・だよね?」
  ソレは異様なほど白く、
  海水で膨張したのかブヨブヨでした。
私「えっ、まさか・・・ 誰かが捨てたゴム手袋、とかじゃないの?」
妹「でも、まっすぐに海面から 突き出てるよ。 ゴム手袋だとしたら、変じゃない?」
私「それもそうだね。 じゃあ、アレは一体・・・」
「・・・・・・」
私「ま、まさか、溺死体・・・?」
妹「えっ・・・ 怖いこと言わないでよ、お姉ちゃん」
私「死体なら、 海面からまっすぐ伸びるはずがない、 よね?」
私「もしかして、マネキンかな?」
妹「・・・うん、きっとマネキンだよ!」
  アレが死体のはずはない。
  私たちは無理矢理、
  自分を納得させようとしました。
私「マネキンなんて、 一体誰が海に捨てたんだろうね」
妹「そろそろ戻ろうよ。 随分と沖に出ちゃったし」
私「う、うん。 急いで戻ろう!」
  私たちは急いで浜辺へと
  泳ぎ出しました。
  何故なら、件のマネキン(?)が
  波に運ばれ
  徐々に近づいてきていたからです。

〇海辺
  アレはマネキン、
  死体なんかじゃない。
  そう結論づけた私たちは、
  両親には特に報告しませんでした。

〇海辺
  翌年の夏。
  台風の直撃により
  いつも利用していた海の家が被害を受け、
  閉店を余儀なくされました。
  自然と私たち一家の足は遠のき、
  某海水浴場を利用する機会は
  無くなりました。
  そのまま私はあの日の出来事を
  記憶の彼方へと追いやりました。
  そして数十年の間、
  思い出すこともありませんでした。

〇SNSの画面
  そんな私が白い手のことを
  思い出したのは、
  YouTubeがきっかけです。
  その日、私は県内の心霊スポットを
  紹介する動画を視聴していました。
私「あっ、〇〇海水浴場が紹介されている!」
私「・・・白い手だ」
  動画によると、
  海から無数の白い手が伸びている光景を
  目撃した人が複数いるそうです。
  例の海水浴場は歴史が古いため、
  その分、海難事故の件数も
  他より多かった、とか。
  火のない所に煙は立ちません。
  私たち以外にも
  白い手を目撃した人がいると知り、
  寒気がしました。
私「子供の頃、目撃したアレは・・・」
  ゴム手袋ではなく、マネキンでもなく、
  海難事故で亡くなった方の
  無念の思いが、
  『白い手』という形で現れた
  心霊現象だったのかもしれません。

コメント

  • 作者さんは毎年夏になるとその光景を思い出されるだろうし、海へのイメージ
    も変わってしまったかと思うとお気の毒です。でも、そう考えると顔じゃなくて手だけでほんとによかったです。

  • シンプルな構成のおかげで想像が膨らみますねー

  • ラストにドキリとしてしまいました。もし姉妹で「白い手」に手を伸ばすような事態になっていたらと想像すると、さらにゾッとします。。。

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