アイドル*シンドローム

蚊ネコ

Part5:闇と光と夢(脚本)

アイドル*シンドローム

蚊ネコ

今すぐ読む

アイドル*シンドローム
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇小さな小屋
瀬田維尾奈「・・・うぅ・・・ぐっ・・・」
瀬田維尾奈「ど・・・っい、て、よっ・・・!!」
瀬田維尾奈「ハァ・・・ハァ・・・」
栞「・・・跳ね返せるだなんて、ビックリした。 ボロボロで、両手も縛られてるのに、スゴいのね」
瀬田維尾奈「アタシは・・・負けず嫌いなんだよ・・・ オバサンの、くだらない恨みに、付き合ってられるかよ・・・」
栞「・・・フッ・・・」
栞「大体アナタ、ワタシ以外にも相当恨み買っているんじゃないの?」
栞「まがりなりにもアイドルが、 底辺アプリで底辺の男たちをバカにして 遊ぶだなんて、程度が知れてるけどォ」
瀬田維尾奈「・・・アンタ・・・ アンネに、なんかしてないだろうな・・・?」
栞「フフッ・・・フフフフフッ!!!!!!」
栞「それとアナタ、負けず嫌いって、 もう既に負けてるんだけどォ!?」
栞「今のアナタのデコボコな顔面と、毎週エステでケアしてる私、どっちが綺麗かなんて明白じゃない!!」
瀬田維尾奈「・・・ッ!?」
栞「負けず嫌いだなんて、可愛い♡ それならもっともっと、 ”敗北”させてあげましょうね・・・?」
栞「・・・・・・・・・?」
「・・・ハァ・・・なんだってんだよ・・・」
栞の夫「・・・俺の・・・ヒミツの別荘に・・・ 誰か・・・いるのか・・・?」
栞の夫「・・・って・・・」
栞の夫「・・・栞・・・?」
栞の夫「って・・・」
栞の夫「・・・・・・ハ・・・・・・?」

〇黒

〇タワーマンションの裏口
眞仁「もっしもーし・・・」
眞仁「あ、ハイ。 今ちょうど、お喋りタイムを終えて、お風呂入ってくれてるとこですね・・・」
眞仁「・・・え・・・”オワリ”・・・?」
眞仁「・・・ふぅん・・・ 予期せぬ事故ねぇ・・・」
眞仁「ま、相当手荒い誘拐業者と抱き合わせしてたみたいだし、 あり得ない話じゃないですね」
眞仁「──つまり、今日はもう、 ”スタンバイ先”に”運ばれてこない”って、ことですね?」
眞仁「この場所が”殺人現場”になることも、 ”濡れ衣”を着せられる女の子も、 なくなったってことですね?」
眞仁「・・・ハハ。 ま、どうなろうと、 ボクら脇役にはなんの関係もないですが」
眞仁「いえ、そういうことなら、このまま上がります」
眞仁「・・・あ、やっぱ一つだけ聞きたい」
眞仁「どうしてその依頼者の女性は、 彼女達が「オジサン釣り」遊びしてるって、 わかってたんです?」
眞仁「・・・ほぉ・・・スマホハッキング業者・・・」
眞仁「ふふっ。 世の中”いろんな業者”、あり過ぎでしょ」
眞仁「・・・あ、はーい。 リーダーもお疲れ様ですっ♪ それではまた♪」
眞仁「・・・・・・・・・」
眞仁「はぁ・・・明日は学校かぁ・・・」
眞仁「ま、定時制だからゆっくり寝れるんだけど」
眞仁(・・・『ゆっくり、眠れるといいね』)

〇白

〇コンサート会場
  私達のデビュー曲、
  『ギュッとしてキュン』でした!
  聴いてくれてありがとう!
  そしてそして、たくさんのおめでとうをありがとう!
  サララはみんなに支えられて、今日16才になりました!
  お父さんが家を出て行った次の日、
  ふと見つけた、置き土産みたいな
  そのライブDVDに、私は失望した。
  ・・・ううん、失望じゃない。
  同じ誕生日で、同じ年齢で、
  こんなにも綺麗で可愛くて、
  求められてる人がいることに、
  勝手に絶望したんだ。

〇黒

〇取調室
栞「失望じゃ、ありません」
栞「・・・虚無、です」
栞「フッ・・・」
栞「フフフッ! フフフフフッ・・・!!」
栞「だって聞いてくださいよ警官さん!? あの人、新婚時代もわけのわからない地下アイドルのこと隠れて推してたの!!」
栞「エリート社員のクセして、恥ずかしげもなく無名のアイドルのライブに通い詰めて、バカみたいに何枚もチェキ撮って!!」
栞「・・・だから!! そんな、若いだけの女のアイドル人生・・・ 潰してやったのに!!!!」
栞「なのにっ・・・!!」
栞「・・・やっぱり、あの人は・・・ また・・・ 違うアイドルの追っかけを・・・」
栞「フッ・・・フフッ・・・」
栞「夫は、ハタチを過ぎてからの私になんて興味がなかった・・・」
栞「毎日毎日、歳を取るだけの自分の人生を・・・否定され続けた気分でした・・・」
栞「そうやって、私を虚無に導く 大嫌いな夫の性癖を・・・」
栞「この手でメチャクチャに壊したかった」
栞「動機は、以上デス」

〇白

〇シックなカフェ
アンネ「イオちゃん・・・ 私、何も助けられなくて・・・ゴメン・・・」
維尾奈「・・・謝らなくていーから。 つーか、誘拐犯のほうはなんで捕まんないだよムカつく・・・」
維尾奈「ダルかった仕事暫く休めて、せーせーしたものの・・・やっぱ悔しい・・・」
維尾奈「あっ、また一緒にオジサンで遊ぼーよ。 自分のこと棚に上げたキモいオジサン脅すの、めちゃくちゃスカッとするしさっ」
アンネ「そ、それはっ、ダメッ・・・!! これ以上イオちゃんを危険な目にはっ!!」
維尾奈「・・・イオの今の顔面見たら、 みんな逃げるだろーから大丈夫だっつの」
アンネ「・・・治る!! そんなのすぐ治るよ!! イオちゃんは私の神様だもん!!」
維尾奈「・・・ハ? 神様・・・?」
アンネ「オジサン遊びに飽きたら、 一緒に動画コラボしてくれるって約束も、 別に叶わなくたっていい!!」
アンネ「イオちゃんは!! いつまでも、私にとってのアイドルでいてくれれば!! それでいいんだ!!」
維尾奈「・・・・・・」
アンネ「・・・・・・」
アンネ「・・・ご、ゴメン・・・」
維尾奈「・・・ぷっ・・・」
維尾奈「あははっ!! イオ、いつまでもアイドルなんて、 やれるわけないだろっ」
維尾奈「・・・やりたくもないっつーの・・・」
老いた女性「・・・・・・」
維尾奈「・・・・・・」
維尾奈「・・・フハッ・・・ 行き着く先は、みんなアレだし・・・」
維尾奈「ねぇ、アンネ・・・ アタシらもうやめよーよ。 アイドルなんか・・・」
アンネ「イオちゃ・・・私は・・・」
「あ、あのっ・・・!! スミマセン・・・ッ!!」
老いた男性「あ・・・す、スミマセンッ・・・ き、気が動転してっ・・・こ、こんなっ、跡をつけるようなマネをッ・・・」
老いた女性「・・・・・・?」
老いた男性「ゆ、ゆ、ユリちゃん、ですよね!? わ、わ、私・・・当時、アナタの、 親衛隊をやっていたものでっ・・・」
老いた女性「・・・・・・・・・」
老いた男性「ゆ、夢みたいだ・・・ また、こうして、アナタの姿を見られて・・・」
老いた男性「人に、何を言われてこようとも、 青春時代を全て、アナタに捧げてきたことへの悔いはありません・・・」
老いた男性「アナタは、私の、永遠のアイドル・・・ 生きる糧であり、光であり、花・・・」
老いた男性「スミマセン・・・どうか・・・ どうか、何も言わず、受け取ってください・・・」
老いた女性「・・・・・・・・・」
老いた女性「・・・・・・ アリガトウ・・・・・・」
アンネ「・・・・・・」
アンネ「・・・へ? アレ? イオちゃ・・・泣いてるの・・・?」
維尾奈「・・・泣いてないっ!! それはアンネじゃんっ!!」

〇渋谷の雑踏
  お父さんは私を見捨てたし、
  お母さんは、私がジャマ。
  私は誰にも必要とされてない。

〇渋谷駅前
  この街のどこにも、無価値な私の居場所なんかない。
  ──私はきっと、この世に存在しちゃいけない。

〇渋谷駅前
「フッざけんな!!!!」
瀬田維尾奈「・・・さっきから聞こえてんだよ通行人!! すぐ消えるだとか華がないだとか、 ボソボソ嫌味吐き捨てやがって!!」
瀬田維尾奈「アタシらは発展途上だっつの!! すぐに見返してやっからなバァカ!!!!」
地下アイドルA「ちょっ・・・ちょっとイオ・・・ッ まだ楽曲の途中だよっ・・・!?」
瀬田維尾奈「そーだよ!! 楽曲の途中だっつの!! 大人しく聞けよ!!」
瀬田維尾奈「言っとくけど、イオは誰よりも価値があんだよ!!」
瀬田維尾奈「誰に無価値だって、必要ないって、 居場所がないって言われても!! 絶対に!!!!」
瀬田維尾奈「・・・絶対に最強アイドルなんだよバァーカッッ」
瀬田維尾奈「・・・・・・」
瀬田維尾奈「やっと静かになったし。 それじゃ、続き歌いまーす♪」

〇ストレートグレー
  ワタシタチは、
  夢を削って、
  ユメを与える。
  ──to be continued──

コメント

  • アイドルとして悩み続ける人、がむしゃらに進もうとする人、それを応援し続ける人、などなど、”アイドル” に関わる様々な人達の思いが交錯し、複雑に絡まって、そして悲劇へと……、5話通して読み応えのスゴイ作品に圧倒されました。

成分キーワード

ページTOPへ