異世界アパート

金村リロ

第9話 一生の恥(脚本)

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〇女の子の部屋
テツヤ「だ、大丈夫か!?」
  俺にチャームを書けている最中、リリムは突然倒れてしまった。
リリム「まさかここまで派手に弾かれるとはね。こっちの世界の人間相手ならもう少しいい線いくと思ってたんだけど・・・」
  ブツブツと独り言を呟きながら、リリムは起き上がる。
リリム「あんた、実はあたしのこと相当嫌いとかじゃないでしょうね?」
テツヤ「なんだよいきなり」
リリム「対象者の心が完全に閉じられてる場合は、性別関係なく精神に手出しできないのよ」
テツヤ「嫌いとかそういうのはないと思うけどな。すぐに頭ふわ~っとなっちまったしな」
リリム「やっぱり原因はあたしのほうにあるってことね・・・」
テツヤ(こんな顔見せられたら、さすがに放っておけねえな)
テツヤ「それなら、成功するまで練習すればいいだけだろ」
リリム「あんた掃除はそこまで丁寧じゃないし仕事もそんなに早いわけじゃないし」
リリム「管理人としては今のところ30点くらいだけど、案外優しいじゃない・・・」
テツヤ「失礼すぎるだろお前」

〇古いアパートの廊下
テツヤ「んじゃ、また明日な」
  リリムの部屋を出て、ひとまず自室に帰ろうとしたとき。
シロ「リリム殿と何をされていたのですか?」
テツヤ「実は今──」
テツヤ(って危ねえ! リリムのチャームが男に効かないって話は秘密にしないといけねえんだった!!)
テツヤ「その、蛍光灯の付け替えを・・・頼まれて・・・」
シロ「そうだったんですか! 手が必要なら私も手伝いますよ!!」
テツヤ「だ、大丈夫大丈夫! これも管理人の仕事だから!!」
  嘘をついたことに罪悪感を感じつつ、俺はそそくさとその場から逃げ去った。
シロ「・・・?」

〇女の子の部屋
  特訓を初めてしばらく。残念なことにチャームの練習は失敗の連続で──
リリム「なんで!? どうしてよ!? 魔法への抵抗力ゼロのくせに、なんでかからないのよ!?」
テツヤ「まあまあ、落ち着けって」
リリム「やっぱあんた、あたしのこと嫌いでしょ!? あー、しょうもねえ夢魔風情の特訓に付き合わされてダリーとか思ってるんでしょ」
リリム「嫌なら嫌ってはっきりいえばいいじゃない! お前なんかに付き合いたくないって!!」
テツヤ(こいつの気持ちも分かるが、八つ当たりされるのはさすがに面白くない)
テツヤ「そんなこと思ってねえよ。なに勝手に卑屈になってんだ」
  俺がそういうと、リリムは突然はっとした表情を浮かべ──
リリム「あたしだって、あたしだって・・・ほんとはこんなこと言いたくないのよ~~~!!」
  わんわんと泣きながら床に突っ伏してしまうのだった。
リリム「あたしね、こう見えても魔力量はちょっとしたもんなのよ」
リリム「カレッジに行ってた時なんて死ぬほど取り巻きがいて・・・まあ、いわゆる女王様状態だったわけ。けど──」
  リリムは心を落ち着かせるようにすっと息を吸い込んでから。
リリム「ある日、あたしのチャームは女にしか効かないってことに気付いたの」
リリム「ショックだったし許せなかった。このあたしが落ちこぼれ? って」
  そう語るリリムの手はわずかに震えていた。
リリム「あたしは必死に欠点を隠しながら、自分を大きく見せるために余計自信満々に振る舞ったわ」
リリム「でも、そんなの虚勢でしかない・・・。結局何もかもバレて、これまで築いてきたものは一瞬で崩れ去った」
テツヤ「もしかして、チャームが女にしか効かないってバレてひどい目に遭ったのか?」

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