第8話 夢魔の秘密(脚本)
〇古いアパートの居間
リリム「あたしはね・・・あたしはね・・・夢魔のくせに、男をこれっぽっちも魅了できない落ちこぼれだからよ~~~~~!!」
テツヤ「ど、どういうことだ?」
テツヤ(夢魔と言えば異性を誘惑するもの。 俺の中ではそういう認識なのだが)
リリム「シロたちに言わないなら教えてあげるけど」
テツヤ「そりゃ秘密にしろって言うなら言わねえけどさ」
リリム「あたしたち夢魔は、チャームっていう意思あるもの全てを魅了できる特殊な能力を持ってるの」
テツヤ「全てか・・・そりゃすごいな」
リリム「ええ。でもあたしの場合、何故か「女」にしか効かないのよ・・・!」
テツヤ「それ、やっぱまずいことなのか?」
リリム「当たり前じゃない! 夢魔は全てを魅了してこそ夢魔! 女以外にチャームが通用しないとか、いい笑いものよぉ!!」
リリム「上手く隠してきたんだけど、色々あって周囲にバレちゃって・・・」
リリム「それがきっかけで元の世界に居づらくなったから、こっちの世界に逃げてきたってわけよぉ」
テツヤ「なら余計にストーカーの件は警察に任せるしかないな。 必要なら俺もついてくから──」
リリム「なによぉ! あんた、あたしじゃあのストーカー野郎を魅了できないって言いたいわけぇ!?」
テツヤ「なんでそこで逆ギレするんだよ!? 無理だって言ったのはお前の方だぞ!」
リリム「えーえー、そうよ! けどねぇ、こっちの世界の人間なんてねぇ、精神に魔力壁も張ってないザコばっかなんだから!」
リリム「ちょっと練習すれば、きっとちょちょいのちょいよぉ!」
テツヤ「うるさい酔っ払いだなあ。 とにかく、今日は部屋に戻って休め──」
リリム「気が変わった! やっぱあたしの力を使ってカノンのストーカーを追っ払ってやる! そのために、あんた練習台になりなさい!!」
テツヤ「俺にそのチャームってのをかける気か!? 嫌に決まってんだろ!?」
リリム「ひっく! あんたはね、あたしの秘密を知ったのよ! 逃げられるわけないでしょうが!!」
〇女の子の部屋
――翌日。俺はまだ若干酒臭いリリムに捕まり、部屋へと連行された。
リリム「じゃあ早速練習を始めるわよ!」
そういうとリリムはじりじりと俺のほうに近づいてくる。
テツヤ(夢魔としての能力を使うってことは、つまり・・・エロいことされるってことだよな!?)
テツヤ「待てリリム! 確かにお前は黙ってれば可愛いが、俺は付き合ってもないやつとそういうことするのは無理っていうか──!」
リリム「っく・・・ははは! あんたなに怖がってんの?」
リリム「もしかして、あたしに襲われるとか勘違いしてるんじゃないでしょうね」
テツヤ「勘違いじゃなくて事実だろ! 俺を捕まえて、あんなことやこんなことするつもりだろ!?」
リリム「しないわよ。あんたの精なんてマズくて気が抜けてそうだし」
テツヤ(けど、「そういうこと」をしないなら一体何をするつもりなのだろう)
リリム「対象者の欲望を利用して、淫らな夢を見せて精を搾り取る──それはあくまで夢魔の仕事のひとつ」
リリム「あたしたちは、他にもいろいろできるのよ」
テツヤ「例えば?」
リリム「そうね。夢を通じて精神に干渉してトラウマを取り除いたり、特定のものに対する依存から抜け出させたりとか」
テツヤ「治療みたいなこともしてんのか」
リリム「ま、あたしの専門はあくまで淫のほうだけどね♪」
テツヤ(やはり俺の貞操が危ないのでは)
そう思って逃げる準備をするが──
リリム「今のは冗談として、ストーカーには治療方面からアプローチしたほうがいいでしょうね」
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