第十話 ゾンビが恋してもいいんです(脚本)
〇古いアパート
ゾン「うぅぅぅ」
松岡力「なんだよ?こんな俺を襲おうとするのか?」
ゾン「うぅぅぅ」
松岡力「くそ!やれよ!」
松岡力「そしたら、この女をすぐに襲って」
松岡力「巻き添いにしてやるよ!」
ゾン「うぅぅぅ」
松岡力「なんだよ?」
ゾン「うぅぅぅ」
高橋美奈「え!?」
松岡力「もしかして・・・」
松岡力「これって!」
高橋美奈「待って!」
松岡力「ん?」
松岡力「美奈、どうしたんだよ?」
高橋美奈「力君・・・」
松岡力「美奈、俺、助かるぞ!」
高橋美奈「信じてたのに・・・ずっと、力君の言葉、信じてたのに」
松岡力「え、美奈?」
高橋美奈「この前、ここで女の人としていた会話・・・ 聞かせてもらった」
松岡力「え!?」
高橋美奈「ずっと騙してたのね! 私の事、お母さんの事」
松岡力「美奈、違うんだ、あれは・・・」
高橋美奈「薬だと思って飲んでたの、ただのビタミン剤だったんでしょ!」
松岡力「いや、あれはさ、なんとか効果っていうかさ。ほら、信じてたら直るっていうか」
移転届
高橋美奈「明日、私とお母さんは中央区に移転する事になったの。お母さんは病院に入院する事も決まったわ」
ゾン「う・・・」
高橋美奈「もう、あなたがいなくても生きていける。 もう、あなたに利用されなくてもいい」
松岡力「美奈、違うんだ」
高橋美奈「ゾンビさん、それってもしかしてワクチンでしょ?この人に言われてちょっと調べたの」
ゾン「う・・・」
高橋美奈「こんなやつにあげる必要なんてない。 私にはもう必要ない人だから」
松岡力「美奈、お前」
高橋美奈「私は、あなたと話がしてみたい」
ゾン「う・・・う・・・」
ゾン「ぼ・・・ぼく」
松岡力「畜生!こんなところでくたばってたまるか!」
ゾン「う!」
松岡力「へっ!これさえあれば!」
高橋美奈「ちょっと!」
松岡力「こんなとこで死んでたまるか!」
ゾン「うぅぅう」
松岡力「俺は生き残るんだ!」
ブスッ
松岡力「やった!」
松岡力「やったぞ!変色していたのが治っていく!」
高橋美奈「そ、そんな」
松岡力「やったー!治ったー!」
ゾン「うぅぅう」
松岡力「わりいな、使っちまったよ!」
松岡力「これは、そのお礼だよ!」
松岡力「じゃあな!」
ビー「ゾン、お前・・・」
ゾン「・・・」
高橋美奈「ごめんなさい」
ゾン「うぅぅぅ・・・うぅぅう」
ビー「・・・」
高橋美奈「人間とゾンビって話出来ないんだよね」
ゾン「うぅぅ」
高橋美奈「人間の言葉はわかるのかな?」
ゾン「うぅぅ、ん」
高橋美奈「あの・・・私、明日には中央区に移転するの。だから、もう会えないと思うの」
ゾン「う・・・」
高橋美奈「でもいつか、会える日が来るって、そう信じてる」
ゾン「う・・・」
高橋美奈「さっきみたいなワクチンが必ず作られる。その時には、それを持ってあなたに会いに行くから」
高橋美奈「だかは、それまで、必ず生きていて」
高橋美奈「これは、私のお守り」
ゾン「うぅぅん」
高橋美奈「ゾンビさん・・・」
〇ビルの裏
松岡力「はぁはぁ」
松岡力「ここまで来ればもういいだろ」
松岡力「ふぅ、危ねえ危ねえ。 しかし、また食料を調達するアテを探さないとな」
!?
松岡力「あーー?」
高木重美「た、助けて」
松岡力「ん?なんだ重美か」
高木重美「た、助けて・・・」
松岡力「おい、なんだよ? 離せよ!離せよ!」
高木重美「助けて、お願い・・・」
高木重美「ゾンビに、なりたく・・・」
松岡力「おい!やめろ!」
松岡力「やめろ!離せ!おい!」
「ぎゃぁーーー!」
〇商店街
一年後
〇屋上のヘリポート
警備員「以上なーし!」
警備員「以上なし!」
長官「よし!」
〇大会議室
中央区大統領官邸
大統領「作戦は・・・」
大統領「作戦は、成功だ!」
大統領「我々が勝ったんだー!」
ゾンビ壊滅作戦
「おぉぉぉー!」
大統領「やったぞー!」
長官「おめでとうございます!」
〇基地の広場(瓦礫あり)
男「にしても、ここが北地区なんてな」
男「こんなんじゃ、立て直すのも大変だろうな」
男「いたるところにゾンビが転がってるな」
男「だな、すげえな、これ」
男「とりあえずこれ、回収してからだな」
男「マジかよ、気持ち悪い」
男「ん?なんだ?」
男「どうかしたの?」
男「なんだ、こいつ?」
男「なんだこのゾンビ、ペンダントしてるよ」
〇実験ルーム
ビー「よかったのかな?」
ゾン「これでいいんだよ」
ビー「ま、お前がいいなら、それでいいけど」
ゾン「いつか、いつの日か必ず、平和がくる そんときまで待っていよう」
ビー「そうだな。お前にはデートのイロハ、教えてあげないといけないからな」
ゾン「言ったな!」
ビー「ハッハッハ〜」
ゾン「ハハハ〜♪」
〇基地の広場(瓦礫あり)
男「このゾンビさ」
男「このゾンビ、笑ってねぇ?」
男「そんな訳ないだろ」
男「だいたい、なんでゾンビの死体が笑うんだよ」
男「そうだな」
高橋美奈「いつの日か、会える日が来るから」