異世界アパート

金村リロ

第4話 異世界適職診断(脚本)

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〇古いアパートの居間
シロ「あの、テツヤ殿。アルバイト、というのはどうやって探せばいいのでしょう?」
テツヤ「とりあえず、ネットで検索してみるか」
テツヤ(近所のスーパーで、レジ打ち募集してるな)
テツヤ「シロさん、物を売る仕事とか興味ある?」
シロ「経験はありませんが、興味はあります! 何事も挑戦から始まりますからね!」
テツヤ「それじゃスーパーに行ってみるか。実際に人が働いているところ、見ておいた方がいいと思うし」
テツヤ「あ、でもシロさんその姿のまま外に出たらまずいよな?」
シロ「あっ、そうでした! いま耳と尻尾を隠すので、少しお待ちを」
  目を閉じたシロさんが、祈るように胸の前で両手を握った瞬間。
テツヤ「・・・!」
  目の前で真っ白な光が弾ける。眩しさに思わず目を閉じたあと、ゆっくり瞼を開くと・・・。
シロ「これで『隠匿』完了です!」
テツヤ「・・・いや、耳も尻尾も丸見えだけど?」
シロ「テツヤ殿には既に私の正体が知れていますから、視覚魔法が効かないのでしょう」
シロ「普通の人の目には見えなくなっているはずですよ」
テツヤ「それならいいけど──」
テツヤ(シロさんのことだし、うっかりミスしてないかちょっと心配だな)

〇スーパーの店内
店員「いらっしゃいませー」
  昼を少し過ぎた頃だからか、中にはあまり客がいない。
テツヤ(これならゆっくり見て回れそうだな)
シロ「・・・・・・」
テツヤ「シロさん? どうかした?」
  何故か黙ったまま動かなくなっているシロさんに声をかけると。
シロ「きゅ~ん・・・」
  まるで犬のように悲しげな鳴き声を上げたあと、彼女は駆け足で店から出て行ってしまった。

〇スーパーマーケット
シロ「うぅ・・・!」
テツヤ「大丈夫か!?」
シロ「は、はい。ちょっと胸焼けがしただけなので。でも、もう平気です」
テツヤ「胸焼け?」
シロ「こちらの食べ物は油の匂いが強いので、それが何十種類も混ざったにおいを嗅ぐと、気分が悪くなってしまうんです・・・」
テツヤ(油ってことは、惣菜コーナーの匂いのせいか)
テツヤ「ってことはシロさん、相当鼻がいいんだな」
シロ「もちろんです! 獲物の匂いを嗅ぎつける鋭敏な嗅覚、そしてどんな足音も逃さない聴覚!」
シロ「この2つは、我々人狼族が持つ最大の武器ですからね!」
  誇らしげに胸を張る姿は愛らしいが、そこまで匂いに敏感となるとスーパーだけでなく飲食店で働くのも厳しいだろう。
テツヤ(うーん、これは別の職種を探す必要がありそうだな)

〇古いアパートの居間
テツヤ(まずシロさんの適職はなんなのか。まずはそれから見つける必要がある)
テツヤ「色々考えたんだけど、清掃の仕事とかどうかな?」
シロ「なるほど。異世界とはいえ、掃除の方法はそう変わらないでしょうし、それなら私にも出来るかもしれません!」
テツヤ「よし。じゃ、試しにリビングの掃除してみてくれないか?」
シロ「ではまず掃き掃除から!」
  シロさんはホウキを手に取り、床の上を掃いていく。
シロ「あそこにホコリが・・・あ、こっちにも」
テツヤ「えっとシロさん。こういう時はまず隅から掃いていって、先に床全体を綺麗にしたほうがいいんじゃないかな?」
シロ「な、なるほど! 確かにそうですね。さすがテツヤ殿です!!」
テツヤ(褒められるようなことじゃないんだけどなぁ)
テツヤ「ちなみにシロさん、ゴミの分別とかできる?」
シロ「はい! 燃えるもの、燃えないもの、生ゴミにわけるとリリム殿に習いました!」
テツヤ「よかった。それじゃあ、実際に分別してもらってもいい?」
シロ「は、はい! お任せください!!」
  シロさんは大きなゴミ箱の前に立ち、まずはお菓子の紙パックを掴む。
シロ「これは燃えるゴミですね。あとこれも、これも、これも燃えますね」
  紙パックの次は、自信満々にビンやカンを燃えるゴミの中に入れていく。
テツヤ「待った待った! ビンとかカンは燃えないから!!」

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