お誘い(脚本)
〇空
それから、日々は流れていった。
俺はぼちぼち仕事を探して・・・
あまり上手くいっていないが、とりあえず探して。
つばささんは、弁当屋でのバイトがちゃんと続いている。
まあ、偉いもんだ。
バイトがない日は一緒に昼飯を食べて、
ゲームをしたりして、
つばささんと一緒に過ごすことにすっかり慣れてきてしまっている。
〇可愛い弁当屋
雨野陽介(それもどうなのかね・・・)
雨野陽介(・・・で、ここが万福亭か)
俺は初めて、つばささんが働く弁当屋――万福亭に来ていた。
理由は単純で、買いこんでいたインスタント食品がなくなったからだ。
今日に限って近くのコンビニでも弁当類が全滅していたから、ここまで足を運んでみた、というわけだ。
雨野陽介(結構ちゃんとした店なんだな)
外観は古いがよく手入れがされていて、花壇には秋の花が咲いている。
雨野陽介(こんな弁当屋、あったんだなあ)
雨野陽介(近所なのに全然気づいてなかった)
この前の猫もそうだけど、俺は本当に職場と家との往復しかしてなかったんだな・・・
長谷川つばさ「・・・あれっ? 陽介さん!?」
雨野陽介「どうも」
長谷川つばさ「えっえっ、今日はどうされたんですか?」
雨野陽介「いや、単に弁当を買いに・・・」
長谷川つばさ「で、ですよね!」
長谷川つばさ「陽介さん、来てくれるって言ったのに ちっとも来てくれないから」
長谷川つばさ「もう来てくれないのかと思ってましたよ~」
そういえばそんなことも言った気がする。
というか、行かなくてもどんなふうに働いてるのか、大体のことはわかってたんだよな。
つばささんが家に来るたび詳しく教えてくれるから・・・
けど、エプロンしてるのは新鮮だ。
長谷川つばさ「えーと、何になさいますか? おすすめはからあげ弁当です」
雨野陽介「・・・からあげ弁当以外だと?」
長谷川つばさ「アジフライ弁当ですね! 今日は良いアジを仕入れられたって、ゲンさん仰ってました」
雨野陽介「じゃあそれで」
長谷川つばさ「はーい! 500円になります」
昼を過ぎた、結構遅い時間に来たからか、他に客はいない。
500円を払い、つばささんが包んだ弁当を受け取って、帰ろうとした時だ。
長谷川つばさ「あ、そうだ陽介さん あのですね・・・」
長谷川つばさ「来週の土曜日、お暇ですか?」
雨野陽介「俺は大体暇ですよ けど、何です?」
長谷川つばさ「えっとですね・・・ 一緒に、遊園地に行きませんか?」
雨野陽介「ゆ・・・遊園地ぃ?」
長谷川つばさ「フクさんが、新聞屋さんから割引券を頂いたそうなんです!」
長谷川つばさ「私たちは行かないから、つばさちゃん使ったら? って、頂きまして」
長谷川つばさ「それなら、陽介さんと一緒に行きたいなと!」
長谷川つばさ「遊園地はとても楽しいところだと聞いています!」
長谷川つばさ「ぐるぐる回転する乗り物とか すごい速さの乗り物があったり」
長谷川つばさ「人間さんやお化けさん、 かわいい動物さんがいたり・・・」
長谷川つばさ「合ってます?」
雨野陽介「おおむね・・・?」
そんな風に言われるとあんまり楽しくなさそうだな、遊園地・・・
雨野陽介「いや・・・ でも、遊園地か・・・」
長谷川つばさ「・・・あんまり行きたくないですかね?」
雨野陽介「ああいうのは・・・ こう、陽キャが行くところで、俺なんかはとても・・・」
長谷川つばさ「そうですか・・・」
雨野陽介「・・・」
長谷川つばさ「・・・・・・」
雨野陽介「・・・考えときます」
長谷川つばさ「! はい!」
雨野陽介「じゃあ、仕事がんばってください」
長谷川つばさ「はい! 来週の土曜日ですよー!」
つばささんはぶんぶんと手を振って俺を見送った。
・・・あれは完全に、行くつもりになってるな。
雨野陽介(どうする・・・?)