幕間・遊びましょ!(脚本)
〇古いアパートの部屋
長谷川つばさ「陽介さん、今日は何で遊びますか?」
雨野陽介「どーしましょうねえ・・・ トランプは・・・」
長谷川つばさ「大富豪と、ポーカーと、スピードと・・・ あと、何やりましたっけ」
雨野陽介「七並べとババ抜きですね」
あれは二人でやるもんじゃない。
虚無の時間だった。
長谷川は楽しそうにしてたけど。
長谷川つばさ「他にトランプの遊びって知ってます?」
雨野陽介「いや、俺が知ってるのはそんなもんですね ネットで調べたら、色々出てくるでしょうけど」
長谷川つばさ「うーん・・・」
長谷川つばさ「あ、じゃあ 陽介さんがよければ、ですけど」
長谷川つばさ「私、この前やった・・・ なんでしたっけ」
長谷川つばさ「あの、天使と悪魔のすごろくゲーム! あれやりたいです!」
雨野陽介「ああ、『デビエン!』ですか」
長谷川つばさ「それです!」
<デビエン!~天魔陣取り合戦~>は、
天使と悪魔の二勢力に分かれて、地上を征服していく愉快なパーティゲームだ。
プレイヤーは天使と悪魔から好きなキャラクターを選び、サイコロを振ってすごろくを進めていく。
止まるマスには良い効果や悪い効果があり、キャラクターにもそれぞれ特性があり、合間合間にミニゲームがあり・・・
とまあ、よくあるゲームだ。
この前、長谷川が、
長谷川つばさ「人間さんの、ゲームっていうのに興味があるんです!」
長谷川つばさ「すっごく面白い! って天界でも評判なんですよ」
と言うから、押し入れで眠っていた数世代前の、骨董品のようなゲーム機を引っ張り出したのがきっかけだ。
その日と、今日の様子を見るに気に入ったらしい。
俺は押し入れから棚へと収納場所が変わったゲーム機を取り出した。
安くて小さい、ついでに画質も悪いテレビに繋いで、スイッチを入れる。
・・・天下を取るのは天使か悪魔か?
・・・すべてはあなたの運次第!
・・・みんなで遊べるパーティゲーム!
・・・デビエン!!
長谷川つばさ「前回はボロボロに負けちゃいましたけど・・・ 今日はがんばります!」
雨野陽介「まあ・・・ これ、運ゲーですからねえ・・・」
そう、このゲームはかなりゲームバランスが悪い。勝つ時は何をしても勝つし、負ける時は思い切り負ける。
ネットで『デビエン!』を検索する時、
次に出てくるワードは「クソゲー」だ。
けど、キャラクターがかわいいので、未だに妙な人気がある・・・らしい。
雨野陽介(・・・なんで買ったんだったかな、これ?)
雨野陽介(時期的に小学生とか、その辺な気がするけど・・・ こんなの買ったか?)
〇教室
???「なあなあ、陽介! 俺さ、新しいゲーム買ってもらったんだ!」
???「えー!? いいなあ!」
???「へへっ、いいだろー! すげー面白そうなんだぜ!」
???「陽介、今日暇か? 帰ったら一緒にやろうぜ!!」
???「うん!!」
〇古いアパートの部屋
雨野陽介(・・・あ、違う)
雨野陽介(俺が買ったんじゃない)
雨野陽介(・・・忘れてたなあ)
雨野陽介(・・・返せなかったのか、これ・・・)
雨野陽介「・・・」
長谷川つばさ「ええと、このボタンでしたっけ」
雨野陽介「あ、はい スタートボタン押して、フィールド選んだらキャラ選択になるんで・・・」
長谷川つばさ「はい!」
長谷川つばさ「今日は負けませんよー!」
・・・デビエン、スタート~!!
その日、俺はボロクソに負けた。
長谷川つばさ「わーい! 勝ちました!!」
長谷川つばさ「陽介さん、もう一回やりましょう、 もう一回!」
雨野陽介「はいはい・・・」
雨野陽介(まあ・・・喜んでるからいいか)