サイコパス

神社巡り

エピソード1(脚本)

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〇渋谷の雑踏
  初めはその見た目に誰もが騙される・・・可愛らしいく見せる事に長けているのは持って生まれた才能だろうか?
野島順子「いいえ・・・駄目でぇ~す・・・許しませ~ん・・・」
  本性を知ったものは後に鬼畜と呼ぶ・・・何故ならその言葉以外に当てはまるものは見当たらない・・・
桜庭太一「許して下さい・・・もう致しません・・・」
野島順子「駄目なものは駄目で~す・・・許しませ~ん・・・」
  私は彼女、野島順子の彼氏の桜庭太一・・・
  彼女の癇に障り街中を恥ずかしい格好で連れまわされていた・・・
  大勢の群衆が私たちを取り囲み怪訝な顔付で眺めている・・・私の心境はサーカスの猛獣使いに連れられたライオンの様だった・・・
野島順子「さあ、飛びなさい!」
桜庭太一「えっ!!」
  気が付くと彼女は火の輪くぐりの輪を準備し炎まで点火している・・・
  手ぶらで来たはずなのに何時準備したのだろうか・・・?
  彼女がここまで準備したからには私にやらないという選択肢は無かった・・・ここで飛ばなければもっと酷い目にあわされる・・・
野島順子「飛ぶのよ!!」
桜庭太一「はぁーっ!!」
  思った以上に炎の勢いは強かった・・・衣服が炎に包まれていく・・・
桜庭太一「わぁ!! あっちぃ!!」
野島順子「わぁ~・・・」
  私が火だるまになっていく様子を彼女は凄~いといった面持ちでボケーっと眺めている・・・助けようという気持ちはまるでない!!
桜庭太一「あっつ・・・!! あちぃ・・・!!」
野島順子「ケタケタ・・・」
  私が炎に包まれながらアスファルトの上を転がり回る姿を見ながら彼女は笑っていた・・・
  大勢の群衆がパニックの中でその姿はひときわ浮いていた・・・薄れゆく意識の中でその光景が脳裏に焼き付いていく・・・
野島順子「ははははは・・・」

〇集中治療室
  気が付くと私は病院のベッドの上で様々な機器に繋がれていた・・・無菌衣を纏った看護師たちが入れ替わりで対処をしていた・・・
  親や兄弟も私の様子を心配そうに眺めている・・・しかしそこには彼女、野島順子の姿は確認できなかった・・・
桜庭太一「はぁはぁ・・・順子は・・・順子はどこに・・・はぁはぁ」
母「た、太一・・・気が付いたのね・・・」
弟「お兄ちゃん・・・!!」
桜庭太一「はぁはぁ・・・順子はどこに・・・はぁはぁ」
母「彼女は・・・警察に連れていかれたわ・・・殺人未遂の疑いだそうよ・・・」
桜庭太一「そ、そんな・・・馬鹿な!!」
父「彼女の事を心配する気持ちもわかるが、お前にこんな酷い怪我までさせて・・・やった事は立派な犯罪だ・・・」
桜庭太一「いや・・・違う・・・はぁはぁ」
母「何が違うというの・・・? 現に貴方はこんな死にそうな目に合ってるじゃない・・・」
桜庭太一「いや・・・そういう事じゃ・・・ないんだ・・・はぁはぁ」
桜庭太一「そんな事をしたら・・・彼女は復讐にくる・・・はぁはぁ」
  彼女の恐ろしさを誰もわかっていない・・・彼女は我儘とかそういうレベルの人間ではないのだ・・・
  一度、関わってしまえば手懐ける以外に道は無い・・・彼女は想像を遥かに凌ぐサイコパスなのだから・・・

〇病室のベッド
  暫くすると私は集中治療室から一般の病室へと移された・・・
  嵐の前の静けさの様に平穏な日々が続いていた・・・
  しかし私はあれからずっと恐怖に慄いていた・・・あの日、警察に捕まった順子はその日のうちに逃亡したらしい・・・
桜庭太一「順子は絶対来る・・・復讐にやってくる・・・」
看護師「桜庭さん・・・そんなに震えて大丈夫ですか・・・? しかも一日中、譫言の様にそればかり・・・」
桜庭太一「誰も知らないんだ・・・あいつの恐ろしさをわかっちゃいない!!」
看護師「ここは総合病院ですよ・・・警察が巡回だってしています・・・」
桜庭太一「そんなのは何の気休めにもならない・・・」
母「太一・・・」
  母が思いつめた面持ちで病室へやってきた・・・寝てないか目の下にはクマが貼っていた・・・
桜庭太一「か、母さん・・・どうしたの・・・?」
母「昨日からお父さんが帰って来ないの・・・」
  私は咄嗟に順子の仕業だと思った・・・
母「会社にも連絡したんだけどね・・・昨日、退社したきりで今日は会社に来てないし連絡も無いって・・・」
桜庭太一「じゅ、順子だ・・・」
母「お父さんはか弱い女の子にどうこうできる人間では無いと思うけど・・・」
母「事故にでも巻き込まれていなければ良いのだけど・・・」
桜庭太一「ちくしょう・・・(ガタガタ・・・)」
  父を助けに行かなければ!!とは思うが助けに行く当ても無ければ所在すらわからない・・・
  病院のベットの上で脅える事しかできないのだろうか・・・?

〇病室のベッド
  時計の針は12時を過ぎていた・・・病院の消灯時間も過ぎて辺りは静けさに包まれていた・・・
  結局、私は何もできずにベットの上で脅えていただけだった・・・自分の不甲斐なさをひたすら呪った・・・
「コツコツコツコツ・・・」
  何処かから病室に向かってくる足音が聞こえる・・・定期的な看護師の巡回だろうか・・・?
野島順子「お見舞いに来ました~ケラケラ・・・」
桜庭太一「うわぁ!!」
野島順子「せっかくお見舞いに来たのに、それってどういう態度?」
桜庭太一「す、すみません・・・」
野島順子「私、あなたのせいで捕まっちゃったわ・・・今は逃亡生活よ・・・」
桜庭太一「す、すみません・・・」
野島順子「ちゃんと警察の誤解を解くために動いてくれる?」
桜庭太一「は、はい・・・」
野島順子「うん・・・宜しい・・・」
桜庭太一「ところでうちの親父はどこにいるか知りませんか・・・?」
野島順子「ん? お父さん・・・知らないわよ・・・」
野島順子「お父さんがどうしたというの?」
桜庭太一「昨日から家に帰っていないらしくて・・・」
野島順子「私がそんな事知る訳ないじゃない・・・」
野島順子「もしかして・・・私を疑ってるの・・・?」
桜庭太一「いや、そんな事はないです!!」
桜庭太一「ただ知っていたらなぁ~と思って・・・」
野島順子「なんだ・・・そうかぁ~」
看護師「ちょっと貴女、誰ですか!?」
野島順子「わぁ、ヤバ~い・・・」
  突然の順子の来訪に私は成す術が無かった・・・父を助けなきゃいけないのに手掛かりすら聞き出せなかった・・・
  逆に順子に上手くあしらわれていた感じさえする・・・ここにやってきた目的は何だったのだろうか?

〇病室のベッド
  昨日の順子の侵入で病院はちょっとした騒ぎになっていた・・・順子は警察から逃亡した逃亡犯である・・・
  警備が強化されると共に、私は詳しい話を警察に説明しなくてはならなかった・・・
刑事「貴方は彼女の素性を良く知らずにお付き合いされていたと・・・」
桜庭太一「はい・・・彼女は全く自分の事は語らなかったので・・・」
刑事「失礼ですが・・・お付き合いされてどのくらいですか?」
桜庭太一「1年くらいになります・・・」
刑事「そんなに付き合っていて何も知らないと・・・!!」
桜庭太一「恥ずかしながら・・・」
  実際、私は順子の事は何も知らなかった・・・見た目の可愛さに惚れて付き合ったが、その素性を調べたりはしなかった・・・
  彼女はいつもミステリアスだった・・・自分の事は話さないという事もあるが、こちらもいつも服従で聞くことは出来なかった・・・
  何より彼女の機嫌を損ねたら何をされるかわからないので質問は極力控えていた・・・
  もちろん彼女の親しい友人なんかにも会った事すらない・・・
刑事「警察でも彼女の事は調べているんですがね・・・何もわからないんです・・・」
桜庭太一「えっ!」
  警察が調べてもわからないとはどういう事だろうか・・・?
桜庭太一「彼女の家も家族もわからないって事ですか!? どこで勤めているかも!?」
刑事「貴方だってわからなかったじゃないですか・・・? 偽名を疑ってますが貴方にも野島順子と名乗っていたんですよね・・・」
刑事「何者なんですか・・・彼女は・・・?」
  それは私が聞きたかった・・・私が知ってるのは鬼畜と言われる彼女の本性だけである・・・しかし私はそれを言わない・・・

〇病室のベッド
  夜になると母が血相を変えて病室に飛び込んできた・・・
母「たいち・・・! たいち!!」
  嫌な予感しか無かった・・・
桜庭太一「ど、どうしたんだい・・・母さん・・・」
母「お父さんが・・・お父さんが!!」
桜庭太一「父さんがどうしたんだよ・・・」
母「戻ってきたのよ!!」
桜庭太一「えっ!」
  どういうことだろう・・・順子が機嫌を直して帰してくれたのだろうか?
母「お父さん、会社の帰りに知らない男たちに拉致されて捕まっていたんだって!!」
  きっと順子が用意した男達だ・・・
母「それでさっき囚人服を着た順子ちゃんが現れて男達を成敗してくれたらしいのよ・・・」
桜庭太一「えっ!」
母「順子ちゃんは直ぐいなくなったけど、犯人達は捕まったって・・・あの娘、強いのね!?格闘技でもやってるの?」
桜庭太一「ち、ちょっと落ち着いて!! 順子が男達を倒して父さんを助けたって事?」
母「そうだけど・・・父さんは警察に事情を説明しに行ってるわ・・・」
  順子は父の失踪には関係が無かったのだろうか・・・?
桜庭太一「その男達は何者なの?」
母「会社の別派閥の人間らしいわよ・・・お父さん仕事ができるから邪魔だったみたい・・・」
  順子は全く関係が無かった・・・こんな事を思っていたなんて順子に知られると殺されてしまう・・・

〇病室のベッド
  その夜、順子はやってきた・・・
野島順子「お見舞いに来たよ~」
桜庭太一「あんな厳重な警備の中、どうやって入ってきたの・・・?」
野島順子「あんなの突破するの簡単じゃん!!」
野島順子「お父さん、帰って来たでしょ?」
桜庭太一「君が助けてくれたんだってね・・・ありがとう・・・」
野島順子「いやいや・・・太一の為だからねぇ~」
野島順子「ところで私の誤解を警察に説明してくれた?」
桜庭太一「ま、まだです・・・」
野島順子「何でよ・・・あの炎を最後に消したのは私じゃん!!」
桜庭太一「えっ! 何の話?」
野島順子「あの時、炎に包まれて動けなくなった太一に覆いかぶさって火を消したの私じゃん!! 覚えてないの!?」
桜庭太一「あっ!」
  そう言えば薄れゆく意識の中で誰かの重みを感じた・・・囂々と燃え盛る炎に危険を顧みず身を挺して炎を消してくれた人がいた・・
桜庭太一「あれ君だったの・・・?」
野島順子「何よ・・・その言い方!! あんなになるとは思ってなくて悪かったと思ってるけど・・・それは無いんじゃない!!」
桜庭太一「す、すみません・・・ 直ぐに誤解を解きます!!」
野島順子「宜しい・・・」
  私はどうやら順子の事を誤解していた・・・というかやりすぎじゃね・・・度が過ぎるからこうなるんだよ・・・

〇総合病院
  今日はめでたく退院の日である・・・警察に平謝りし何とか順子の誤解も解けた・・・
野島順子「退院おめでとう・・・」
桜庭太一「あ、ありがとう・・・」
  しかし順子の素性に対しての謎は幾つも残っている・・・順子は警察に何と説明したのだろうか・・・?
桜庭太一「あ、あのう・・・」
野島順子「ん?」
桜庭太一「警察が順子の素性がわからないって言ってたけど・・・」
野島順子「ああ・・・太一に教えてる名前は偽名だから・・・警察には誤解も解けたので本名を教えたわよ・・・」
桜庭太一「え~~~~~~~~~~~~~~~っ!」
  まだまだ順子の事は良くわからない・・・でも今のままで良しとするのでは無く少しずつでも知っていこう・・・
  今回の事でわかった様に順子にも優しい心や思いやりがあるのだから・・・
  距離を縮めればもっと順子の素敵な部分が見えるに違いない・・・
  END

コメント

  • 順子がサイコパスだとミスリードさせて、実は全て真のサイコパスである太一の仕業なんじゃないか、最後に鮮やかに反転したら面白い、と思って読みましたが穿ちすぎました。でも、この状況になってもまだ順子と付き合うのをやめない時点で彼にも別の病名がつきそうですね。

  • 順子さん、恐ろしすぎですね。。。思考や行動が理解できない存在というのが一番恐ろしいと感じさせられますね。そんな彼女と関係を続ける主人公、愛なのか慣れ(調教済み)なのかw

  • 順子の見た目と言動のアンバランスさが主人公が彼女にひかれ続ける原因なんですね。サイコパスも限度次第ではミステリアスと表現できるという点が勉強になりました。

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