10.悪女のママではいられない。その4(脚本)
〇小さな小屋
シタラ(──どれぐらい経ったんだろ?)
シタラ(もしかしたら、アルさん・・・ あの人に丸め込まれて・・・)
シタラ(いやいや、アルさんならきっと・・・!)
シタラ(・・・私、アルさんに頼りっきりだな)
シタラ(変人過ぎて意識してなかったけど、 ずっと助けて貰ってたんだなぁ・・・)
シタラ(ここから出たら、改めてお礼しなきゃ!)
シタラ(そのためにも、 やるだけやってみなきゃね・・・!)
シタラ「大丈夫、きっと痛くない・・・」
シタラ「やぁああああ!」
アルバス「──ママ、大丈夫か!?」
シタラ「えっ!? と、止まれな──」
シタラ「──あ、アルさん? 大丈夫ですか!?」
アルバス「大丈夫だ、ママ」
シタラ「あ、よ、良かった! これぐらい、アルさんなら平気──」
アルバス「良い、タックルだったぜ・・・!」
シタラ「アルさーん!?」
ブリアザイト「なにしてんの、あんたたち・・・?」
〇英国風の部屋
シタラ「・・・」
ブリアザイト「ねえ、ちょっと・・・ あたしが悪かったから、機嫌治してよ」
シタラ「ふん・・・おかわりお願いできます?」
ブリアザイト「・・・お菓子もあるけど?」
シタラ「いただきましょうか」
アルバス「──俺も悪かったな、ママ 怖い思いをさせちまった・・・」
シタラ「アルさんが謝ることないですよ 悪いのはあの人ですし」
アルバス「でもよ、シタラママ──」
ピィッ!
シタラ「ピィ?」
鳥「ピィ、ピィ!」
シタラ「この鳥・・・! どうして、アルさんが・・・?」
アルバス「報酬もないし逃がそうとしたんだが、 なんか離れなくて──」
鳥「ピィ、ピィ!」
アルバス「・・・ずいぶん、ママに懐いてるな」
シタラ「あの速さには驚いたけど、 近くで見ると可愛いですね・・・」
シタラ「お名前なんていうの? ピィって鳴くし、ピィちゃんとか──」
〇レトロ
名前を決めなきゃね・・・
ピィって鳴くし、ピィちゃんがいいかな?
ピィちゃん「ピィ!」
〇英国風の部屋
シタラ「・・・ピィちゃん?」
アルバス「どうした、ママ? なにか思い出した──」
シタラ「た、確かあっちの部屋に・・・!」
アルバス「ま、ママ!?」
〇小さな小屋
シタラ「──やっぱり!」
シタラ(ちょっと古くなってるけど、 間違いない・・・!)
ピィちゃん「ピィ!」
シタラ「ピィちゃん・・・! やっぱりこれ、ピィちゃんのだよね!?」
ピィちゃん「ピィ、ピィ!」
ブリアザイト「──うわ! その鳥、手懐けたの?」
シタラ「手懐けたというか・・・ ピィちゃんは元々、私が飼ってたんです」
ブリアザイト「はぁ?」
〇英国風の部屋
ブリアザイト「──あの鳥はシタラのペットで、 鳥かごもその時使ってた物ってことね」
シタラ「ええ、間違いありません!」
ブリアザイト「あんた、記憶がこんがらがってない?」
シタラ「え? いやいや、本当ですよ!」
ブリアザイト「あの鳥がスポットに現れて、 どれぐらい経ってるか覚えてないの?」
ブリアザイト「”十年以上”よ 飼ってたとしたら、それより前でしょ」
シタラ「そ、それがどうしたんですか?」
ブリアザイト「あんた、何歳なわけ?」
シタラ「あ、えっと・・・それは・・・」
ブリアザイト「まあ、記憶喪失なんだし、 変な思い込みしちゃうのも無理は──」
シタラ「そ、そんなんじゃないんです! 本当に、さっき思い出して・・・」
シタラ(でも、確かに年齢が・・・)
アルバス「──俺は信じるぜ、ママの話」
ブリアザイト「どうせ、ママだからとか言うんでしょ?」
アルバス「それもあるが、根拠もあるぜ!」
〇英国風の部屋
アルバス「あの鳥かご、 スポットにあったんじゃないか?」
ブリアザイト「・・・よ、よくわかったわね」
アルバス「あの鳥──ピィちゃんが、 すんなり入ったからな」
アルバス「たぶんだけど、あれがピィちゃんの 守ってた物なんだろ」
シタラ「例の噂の・・・」
アルバス「それをリアザママが盗って行った」
ブリアザイト「うぐ・・・」
シタラ「リアザさん!?」
ブリアザイト「た、たまたま見つからずに スポットに入れたのよ!」
ブリアザイト「それで大事そうに置いてあったから、 つい、値打ち物かと思って・・・」
シタラ「じゃあ、ピィちゃんが ここまで飛んで来てたのって・・・」
アルバス「その鳥かごを探してたんだろうな」
アルバス「ピィちゃんからしたら、 思い出の品だったのかもしれない」
シタラ「──ピィちゃんがかわいそうです! ほら、謝ってくださいっ!」
ピィちゃん「ピィ?」
ブリアザイト「ご、ごめんなさい・・・」
ブリアザイト「──って、なんで あたしを責める流れになってるわけ!?」
〇英国風の部屋
ブリアザイト「鳥かごの件はわかったけど、 年齢が合わないのはどうなのよ?」
アルバス「それは一番簡単な話だ」
アルバス「──ママはロリママじゃなく、 偽ロリママだったんだよ!」
シタラ「えーっと・・・」
ブリアザイト「なによ、偽ロリママって? というか、ロリママもなによ・・・?」
シタラ「そんな概念ありませんよ・・・」
アルバス「知らなければ説明しよう、 ロリママとは──」
シタラ「それはいいので、端的にお願いします」
アルバス「・・・ママが子供じゃないってことだ」
ブリアザイト「いや、どっからどう見ても子供よ」
アルバス「見た目だけだろ? 実年齢が違ってもおかしくないぜ!」
ブリアザイト「さすがにそれは・・・」
シタラ「──あるかも、しれません」
ブリアザイト「本人まで・・・」
シタラ「今までに思い出せた記憶、 どれも子供っぽくないんです」
シタラ「私が本当は大人だったら、 その説明もつきますし・・・」
アルバス「そうだろ? いやぁ、ママの正体に一歩進んだな!」
ブリアザイト「・・・シタラ、耳貸して」
シタラ「な、なんですか?」
ブリアザイト「あんた、生理はきてるの?」
シタラ「え? あー・・・なるほど・・・」
ブリアザイト「あんたの年齢は知らないけど、 それで多少の目星はつくでしょ」
ブリアザイト「実は大人だなんて真に受けるより、 記憶違いの方がそれっぽいと思うわよ」
シタラ「は、はい・・・」
アルバス「どうしたんだ、二人で話して?」
シタラ「アルさん、やっぱり記憶違いかも・・・」
アルバス「え? じゃあロリママってことか!?」
ブリアザイト「だからなによ、ロリママって・・・」
〇森の中の小屋
シタラ「──ピィちゃん、この人のこと、 ちゃんと見張っててね!」
ピィちゃん「ピィ!」
シタラ「リアザさんも、悪いことしたら、 すぐにピィちゃんが邪魔しますからね!」
ブリアザイト「はいはい、しないってば・・・」
アルバス「それじゃあな、リアザママ なにかあったら、すぐ呼んでくれよ!」
ブリアザイト「その時はせいぜい、こき使ってやるわよ」
アルバス「はは、お手柔らかに頼むぜ」
ブリアザイト「──シタラ!」
シタラ「なんですか?」
ブリアザイト「改めて、ごめんなさい 図々しいけど、一つお願いしていい?」
ブリアザイト「アルのこと、よろしくね あたしみたいなのに、騙されないようにさ」
シタラ「・・・お茶とお菓子、美味しかったです」
シタラ「その分くらい、頼まれてあげますよ」
ブリアザイト「・・・ありがとね」
〇森の中の小屋
ブリアザイト「──ねえ、ピィちゃん」
ブリアザイト「しばらく会えないんだし、 もうちょっと見送りしてきたら?」
ピィちゃん「ピィ!」
ブリアザイト「──聞こえますか、隊長?」
ソウガ「リアザか? 遅い定期報告だな」
ブリアザイト「申し訳ありません あの鳥から退避していました」
ソウガ「そうか。では、報告を聞こう」
ブリアザイト「マザコン・マントコートと、 件の少女ですが──」
ブリアザイト「こちらでは確認できませんでした」
ソウガ「そちらには向かわなかったか・・・ 報告ご苦労。引き続き待機しろ」
ブリアザイト「了解しました」
ブリアザイト「・・・まあ、約束だしね」
〇森の中
アルバス「──お、見ろよママ! ピィちゃんが見送ってくれてるぜ!」
シタラ(アルさんにお礼・・・ 言葉だけってのもなぁ・・・)
アルバス「ママ? おーい、ママ?」
シタラ(でも、私にできることなんて・・・)
アルバス「やっぱり、怒ってるのか?」
シタラ「え? なにがですか?」
アルバス「ママを危ない目に合わせたから・・・ いや、わかってる! 怒ってるよな!?」
アルバス「今度はこんなことないよう気を付ける! 俺、絶対ママの役に立つからさ!」
シタラ「だ、だから怒ってないですって!」
シタラ「考え事をしてただけですから! その、アルさんにお礼をしようと・・・」
アルバス「なんだよ・・・気にしなくていいぜ 俺たち、親子なんだからさ!」
シタラ「またそんなこと言って・・・」
シタラ(あ、そうか・・・親子か・・・)
シタラ「アルさん──いや、アル!」
アルバス「・・・ママ?」
シタラ「そ、そう、ママですよ! なにか、してほしいことはないですか!?」
シタラ(あれ? 喜ぶと思ったんだけど・・・)
シタラ「・・・あの、なにか言ってくれます?」
アルバス「ママなら、敬語を使わないでほしい」
シタラ「え、あ、うん・・・わかった・・・」
アルバス「今のはあれか? ママとして振る舞ってくれたのか?」
シタラ「う、うん・・・嫌だった?」
〇空
──最高だぁああああ!
〇森の中
シタラ「──そ、そこまで?」
アルバス「まさかママが、 俺を認知してくれるなんて・・・!」
シタラ「え? 認知? 今のそういうことになるの!?」
アルバス「シタラママ、こうなったからには、 してほしいことがあるんだ」
シタラ(こうなったらって・・・ いやいや、そんなまさか・・・)
シタラ「えっと、アル? できれば授乳とかは無しで・・・」
アルバス「そんなんじゃねえって!」
アルバス「──俺のパパと、会って欲しいんだ」
パパ!?
ママはいっぱいいるけどパパもたくさんいるんでしょうか。気になります。