第十七話 JKだけど、Hな漫画描いてもいいですよね!(脚本)
〇雑誌編集部
真奈央は青天を読んでいる。
表紙に『復活の鬼才、まらすけ最新作「ダンサー・イン・ザ・エロス」連載開始!』とある。
花木真奈央「・・・す、凄過ぎる」
鹿嶋紳助「半端ないやろ、まらさんの新作」
花木真奈央「ネームの時より、もっと緻密にエロい。まるで針穴に糸を通すような正確さで欲望のツボを突いてくる・・・!」
鹿嶋紳助「お前よりだいぶ早く上がってきてな。読んだ編集長がすぐ最新号にぶち込め言うて」
花木真奈央「どうして教えてくれなかったんですか!」
鹿嶋紳助「読み耽って、お前が執筆に集中できんからや!」
鹿嶋紳助「予想通り、いまかて、たっぷり30分熟読しとったで」
花木真奈央「え、そんなに!」
鹿嶋紳助「もうすぐ編集長が来る。もっぺん気引き締めろや」
真奈央は手元の原稿を見る。
花木真奈央「・・・はい!」
鹿嶋紳助「編集長、おはようございます」
渋井豪「おう」
花木真奈央「おはようございます。渋井編集長、私、今日のために──」
渋井豪「ごちゃごちゃうるせぇ。原稿をよこせ」
花木真奈央「・・・はい。お願いします」
渋井豪「確認だ。これでダメなら、青天で描くのは諦めろ」
花木真奈央「はい。そうならないよう、全身全霊、カラカラのカピカピのガビガビになるまでエロを絞り切って描いてきました」
渋井豪「相変わらず言い回しがめんどくせぇやつだ。待ってろ、すぐ終わる」
渋井は高速で原稿を読んでいく。
花木真奈央「鹿嶋さん・・・」
鹿嶋紳助「前回は表紙でアウトやった。今回は、そこはクリアやな」
渋井豪「・・・・・・」
渋井が原稿を読み終える。
「・・・・・・」
渋井豪「・・・もう一度読む」
「!」
渋井がもう一度読み始める。先ほどよりゆっく読む。
鹿嶋紳助「編集長が二度読み・・・これは」
花木真奈央「これは?」
鹿嶋紳助「まらさんの新作読んだ時と同じや」
花木真奈央「!」
渋井豪「・・・・・・」
鹿嶋紳助「・・・・・・」
花木真奈央「・・・・・・」
渋井が二回目を読み終える。
渋井豪「ふー・・・」
花木真奈央「・・・どう、でしたか?」
鹿嶋紳助「ワイは、これは傑作やと思ってます」
渋井豪「・・・面白い」
「!」
渋井豪「だが、連載は許可できない」
鹿嶋紳助「そんな・・・。届かんかったんか・・・」
花木真奈央「・・・・・・」
渋井豪「花木真奈央、いくつか確認だ」
渋井豪「この主人公は、表向きは一国の王女として気品高く振舞っているが、裏では変態行為を実験的に繰り返しているというキャラだ」
渋井豪「これは、お前自身がモデルか?」
花木真奈央「・・・いえ、違います」
渋井豪「ふむ。ではラストシーン。亀甲縛りされた王女が、荷物に紛れて飛行機に乗り、外国に飛ぶというオチだ。この意図は?」
花木真奈央「それは・・・」
鹿嶋紳助「なんやて。ちょっと待て真奈央」
鹿嶋紳助「ラストシーンは亀甲縛りされた王女が洞窟の奥に吊るされて終わる、放置プレイエンドやったはずや。勝手に変えたんか?」
花木真奈央「すみません、どうしても納得できなくて。急いで描き直したんです」
鹿嶋紳助「なんでや・・・」
渋井豪「なるほど。流れとして正しいのは洞窟だ。なぜ、飛行機にした?」
花木真奈央「たしかにおっしゃる通り、この設定なら、洞窟に放置されるのが正しい終わり方です・・・」
花木真奈央「でも、私はそれだけじゃ満足出来ない! 外の世界へ羽ばたいて、スケベなものに自ら触れていきたい。そう思ったんです!」
鹿嶋紳助「真奈央・・・」
花木真奈央「新人賞をいただいて、編集長、鹿嶋さん、師匠、久美子さん、たくさんの素敵な方たちと会うことができました」
花木真奈央「もっとエロを好きになることができました」
花木真奈央「籠っているだけでは得られなかったものがある」
花木真奈央「だから、私は隠しながら、飛び出していきたい!」
鹿嶋紳助「こらこら、漫画の話がお前の話になっとるで」
花木真奈央「すみません・・・。やっぱり、この主人公は私自身なのかも。自分を投影し過ぎてしまったかもしれません・・・」
渋井豪「いや、この王女はお前ではない」
花木真奈央「・・・・・・」
渋井豪「・・・だが、この漫画はお前自身だ」
花木真奈央「この漫画が、私・・・」
渋井豪「連載は許可できない。お前が、留学から帰ってくるまではな」
花木真奈央「そんな、いいんですか?」
渋井豪「行くんだろ海外に。読めばわかる。この漫画には外に飛び出していきたい、お前の貪欲な下心が溢れている」
鹿嶋紳助「作品を読んだだけで、真奈央の気持ちを把握した・・・。 編集長、やっぱりすごいお方や!」
渋井豪「花木真奈央、条件に不服はあるか?」
花木真奈央「いえ、ありがとうございます、編集長! 私、エロ留学でたくさん学んできます」
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