絶対死にたい俺vs絶対死なせたくない彼女

春野トイ

幕間・嘘か実か(脚本)

絶対死にたい俺vs絶対死なせたくない彼女

春野トイ

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〇古いアパートの部屋
雨野陽介「・・・つ、かれ、た・・・」
  帰って早々、俺は布団に倒れ込んだ。
  開けっ放しにしていたカーテンから容赦なく西日が差し込むが、
  そんなものは気にならないくらい、疲れていた。

〇銀行
  長谷川と銀行に行った後、俺は適当な理由をつけて一人で帰った。
長谷川つばさ「雨野さん、一人になったら死んじゃいませんか?」
長谷川つばさ「大丈夫?」
  と、長谷川の顔には書いてあったが、俺にそんな気力は残っていなかった。
  今日は色々なことがあった。
  いや、ありすぎた。

〇ビルの屋上
  自殺しようとして、
  長谷川が現れて、

〇空
  落ちて、
  助けられて、

〇シックなカフェ
  喫茶店に行って、
  天使だかなんだかの話を聞いて、

〇銀行
  銀行に行って、
  あっという間に1000万円が当たって──

〇古いアパートの部屋
雨野陽介(・・・本当に、実際に起こったのか?)
  こうやって思い返すと現実味がなさ過ぎて、疑わしい気持ちになってくる。
  少なくとも、他人に話す気にはなれなかった。
  頭おかしいんじゃないか?
  と言われて終わるのが目に見えている。

〇幻想空間
  天使だの神様だの、悪い夢なんじゃないだろうか。
  起きたら長谷川なんてのはいなくて、
  俺はただの自殺未遂者で、
  それで、明日こそ死ぬんじゃないだろうか?

〇古いアパートの部屋
  悪くない話だ。
  いや、きっとそれがいい。
雨野陽介(・・・腹減ったな)
雨野陽介(でも、めんどくせー・・・)
  それに、俺はどうせ明日死ぬ。
  空腹なんて大した問題じゃない。
  何より、ひどく疲れた。
  俺はそのまま目を閉じた。

〇アパートの玄関前
  ――次の日。
  昼まで泥のように眠っていた俺は、インターホンの音に起こされる。
長谷川つばさ「おはようございます、雨野さん!」
長谷川つばさ「朝も伺ったんですけど、まだ起きておられなかったようなので」
長谷川つばさ「よく眠れました?」
長谷川つばさ「あ、そうそう、お昼持ってきたんです!」
長谷川つばさ「一緒に食べませんか?」
雨野陽介「・・・」
雨野陽介「・・・・・・」
雨野陽介「まあ・・・ 食べましょうか・・・」
長谷川つばさ「はい!」
  夢なんかじゃない。
  現実だった。
  俺は向けられた笑顔と、からあげの匂いに、
  それを早速思い知らされていた。

次のエピソード:コール・マイ・ネーム

コメント

  • 確かに、つばさちゃんのアレコレを見せられてしまうと、疲労とか混乱とかで自殺どころじゃないですよねw そして、からあげの香りは正義ですよね!

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