第七話 私だって、まだまだイケてるのよ(脚本)
〇ホールの舞台袖
ピエール「大丈夫ですか?芙美さん・・・顔がひきつってますよ」
佐藤芙美「何だか緊張しちゃって・・・膝が震えてるわ」
ピエール「初めてのパリコレは誰でもそうなります・・・そうだ!!良いおまじないがあります」
佐藤芙美「えっ、どんな? 教えてください」
ピエールは芙美の唇に自分の口を重ねてきた
ピエール「どうですか?落ち着きました?」
佐藤芙美「ウーン、まだ落ち着かないわ」
ピエール「それじゃぁ」
ピエールは再び芙美の唇に自分の口を重ねてきた、すると芙美はピエールの首に腕を回しピエールの口に自分の舌を差し入れた
佐藤芙美「ウン、落ち着いたわ・・・ありがとうピエール」
ピエール「良かった・・・頑張りましょう」
デザイナー「クソ、邪魔してやる」
佐藤芙美「衣装が届いていないですって!?」
佐藤芙美「困ったわね」
ピエール「どうしたんですか?衣装がないなんて」
佐藤芙美「どうしよう・・・仕方ないわ、下着のまま出て頂戴」
ピエール「しかし・・・」
佐藤芙美「下着も私がデザインしたものなの・・・ここでショーを止める訳にはいかないわ」
ピエール「分かりました・・・よしみんなショータイムだ」
佐藤芙美「よかった~・・・さぁ、次々行くわよ」
???「衣装が届きました」
佐藤芙美「よかった~至急コーディネートした服と靴をセッティング・・・お願いね」
???「最終チェックお願いします」
佐藤芙美「よしいいわね、頑張って」
ピエール「上手く行きましたね・・・えぇ!!何て事を・・・」
佐藤芙美「どうしたの?ピエール」
ランウェイにデザイナーでセクハラ男が裸で乱入してきた
ピエール「警備員、すぐ取り押さえろ・・・全く何て事を」
佐藤芙美「さて、これで最後ね、ホットしたわ・・・やはりピエールさんがいてくれて心強かったわ・・・ありがとう」
ピエール「さん付はやめませんか?ピエールと呼んで下さい」
佐藤芙美「何・・・大事なエンディングに使う天使の羽が壊されて・・・どうしよう」
ピエール「仕方ない・・・壊れた羽の片方を担いで・・・僕も担ぎますから」
佐藤芙美「えぇ」
ピエール「それと脱いで・・・下着姿、靴墨を肌に」
ランウェイに肩を組んで片方づつの羽を付けたピエールと芙美がにこやかに現れた
〇ホテルのエントランス
吉田寛「ご苦労様です・・・これから、打ち上げがあるけどどこへ行くの?」
ピエール「折角だから、芙美さんをおいしい店に招待しようとおもって」
吉田寛「そうか分かった」
〇山中のレストラン
ピエール「お疲れ様です・・・お腹も空いたから予約したこのレストランで食事でもいかがですか?」
佐藤芙美「素敵なレストランね」
ピエール「喜んでもらえて嬉しい・・・ここはオーベルジュなんですよ」
デザイナー「くそ、未歩さんの指示を忘れやがって・・・写真を隠し撮りしてばら撒いてやる」
〇結婚式場のレストラン
佐藤芙美「素敵!!」
ピエール「気に入ってもらえて光栄です・・・ここは鴨が美味しいんですよ」
芙美はピエールの話をウン、ウン、と楽しそうに頷きながら聞いている
佐藤芙美「ご馳走様、今夜は楽しかったわ・・・もう遅いから帰らなくちゃ」
立ち上がろうとする芙美の腕をピエールが握りしめてきた
ピエール「芙美さん・・・告ってもいいですか?」
佐藤芙美「そ、そんなぁ・・・私には主人が」
ピエール「でも、もう自分の気持ちを抑えられないんです」
芙美は何とか話題を逸らそうと必死に取繕った
佐藤芙美「えぇっ、困ったわね・・・タクシー呼べるかな?とりあえず外に」
〇山中のレストラン
2人が外に出ると雷雨が降っていた
佐藤芙美「キャッ・・・」
芙美は雷に驚き思わずピエールの腕にしがみついた
ピエール「芙美さん・・・好きです、愛してます」
ピエールはそう言うと芙美の唇を強引に奪った
佐藤芙美「えぇっ・・・チョッ・・・ムグ・・・ハァ」
ピエール「今日は、ここで過ごしたいな・・・泊まって行きましょう」
芙美は黙ってコクリと頷いた
〇ラブホテルの部屋
佐藤芙美「あっ、ピエール・・・そこは・・・んっふーん」
デザイナー「ざけんな・・・写真を撮って旦那に送ってやる」
〇病院の入口
吉田寛「あれ?未歩じゃぁ ないか・・・どうしてフランスへ、しかも病院」
吉田寛「川尻専務・・・」
寛の呼びかけに振り向いた未歩は、慌てて病院に入っていった
???「お~い吉田さん・・・こっちこっち」
吉田寛「ハイ、今行きます」
〇屋敷の書斎
吉田寛「ただ今戻りました、社長」
川尻悟朗「おうご苦労、ご苦労。君も頑張ったな」
吉田寛「いえ、それをいうならデザイナーんのピエールと娘さんの芙美さんのお陰です」
川尻悟朗「おお、そうか・・・二人にはボーナスを弾むことになるな」
川尻悟朗「入りたまえ」
川尻未歩「どう・・・社長このマスコミの取り上げよう」
川尻悟朗「うむ・・・確かに」
川尻未歩「これで私を副社長職に返り咲かせても文句は、来ないわね」
吉田寛「確かに・・・でも、専務はパリにいらっしゃったのに何故会場やレセプションに出られなかったんですか?」
川尻未歩「わ、私はパリへなんて」
川尻悟朗「そうだよ吉田君・・・未歩にパリ行きを指示してないよ」
川尻未歩「私は仕事がありますので失礼します」
吉田寛「おかしいな・・・確か病院に入るところを」
久保奨「集計が出ました、社長」
川尻悟朗「うむ・・・でどうだった?」
久保奨「下着部門は吉田専務のグループが上回りましたが全体を見ますと川尻専務のグループが上回ってます」
吉田寛「流石ですね川尻専務」
川尻悟朗「やはり未歩を副社長にするか・・・どうだね吉田君」
吉田寛「そうですね・・・病院の件が気にかかりますけど・・・宜しいのでは」
〇事務所
久保奨「おめでとうございます川尻専務・・・副社長昇格の内示がありました」
川尻未歩「ありがとうございます・・・うっ、苦しい」
未歩は、苦しさのあまり倒れ込んだ
〇田舎の病院の病室
佐藤医師「どうぞ」
吉田寛「先生・・・未歩副社長の容態は?」
佐藤医師「今、薬で眠ってます・・・容態は何とも」
吉田寛「先生、実はパリで副社長が病院に入るところを見てしまったんですが」
佐藤医師「そうですか・・・これから話すことは口外禁止なんですが・・・実は彼女出産すると死ぬ奇病に罹ってましてね・・・」
吉田寛「えぇっ・・・それじゃぁ」
佐藤医師「だから前にいらっしゃった時に中絶したんです」
吉田寛「そうだったんですか・・・可哀想に・・・僕はてっきり出世の為と思ってました」
佐藤医師「本人もそれを知っていたから出世にこだわったんでしょう」
吉田寛「でも、今回は命に別条ない事が分かってホッとしました・・・失礼します」
佐藤医師「おや、御目覚めですか」
川尻悟朗「未歩、どうだ具合は?」
川尻未歩「もう大丈夫よ、明日から仕事に戻れますわ」
川尻悟朗「まぁまぁ、焦らずに・・・そうだ、吉田君に業務を任せてゆっくりしてるといい」
川尻未歩「そ、そんな・・・悔しい、この病気さえなければ・・・」
川尻悟朗「君は副社長なんだから・・・そうだこの際吉田夫妻と仲直りをしなさい」
川尻未歩「大丈夫です」
川尻悟朗「そういわず・・・業務命令だ・・・明日吉田君の奥さんを寄越すから、頼むよ」