奇妙な死①(脚本)
〇血しぶき
夏休み最後の日、私は死ぬ。
自分で自分の首を絞め、首から上はびっしょり濡れて。
警察は「またか」と困惑しながら自殺として処理するだろう。
せめて美しく死ねるように目を閉じたのは、我ながらよくやったと思う。
本当のことを言えば、もっと生きていたかったけれど・・・まさかあいつが生きているとは。
仕方ない。やれるだけのことはやった。
・・・・・・。
ああ、目の前が真っ暗になっていく。
こわい。
これが・・・これが死ぬということなのね。
「おとうさん、おかあさん、ごめんなさい。 私、頑張ったよ。 頑張ったけど、ダメだったの。 だからゆるして」
〇黒
「できることならだれか。 だれかおねがい。 おねがいだから、この呪いを止めて」
〇流れる血
ヒ
イ
ミ
さ
ま
〇山並み
灼熱の晴天が1週間ほど続いただろうか。
気象予報士が「夏の小休止といった天気になるでしょう」と自信たっぷりに発した宣言が珍しく当たり、
7月25日の朝は気温も低く、いまにも降り出しそうな雨雲が町ゆく人々の心をざわつかせていた。
〇女性の部屋
私の心も同じだった。
明日から待望の夏休みだというのに、夜中うっかりシュークリームを食べ過ぎた次の日みたいに、
身体の芯がむかむかして、とても嫌な気分だった。
理由はわかっていた。
──あの転校生のせいだ。
〇黒
朝6時。
県をまたいで通学をしている私は、
たっぷり1時間はかかるバスに乗るため
いつも早起きをしている。
けど、この日は寝覚めが最悪で、なかなかベッドから出られなかった。
〇アパートのダイニング
いつもならしっかり食べる朝食も喉を通らない。
ボーッと見ていたテレビの占いコーナーでも最悪の運勢だったから、すっかりやる気をなくしていると、
お母さん「さっさと着替えなさい。遅れるわよ!」
普段なら気にならない、そんな母の小言も
ささくれだった心にはわずらわしい。
伊勢崎結花「うるっさいなー」
ぼそりと言うと、のそのそと部屋に戻り、
制服をハンガーから外した。
外したはいいが、着替えるのがおっくうだった。
〇女性の部屋
学校に行きたくなかった。
行けばあの転校生と顔を合わせてしまう。
いったいどんな表情をしていればいいのか・・・。
とはいえ今日は終業式だ。授業はなし。
午前中で終わるから、うまく立ち回れば会わずにすむかも知れない。
仕方なくやる気を出して制服の袖に腕を通していると、机の上のフォトフレームが目に入った。
私と爽やかな男子高校生が写っている写真。
伊勢崎結花「──先輩・・・」
自然と胸が高鳴るのがわかる。
先輩、先輩、先輩。
──あの子には会いたくないけど、
先輩には会いたい。
〇黒
名前は、野村朔太郎(のむらさくたろう)。
妙に時代がかったそんな名前がぴったりな
くらい、最近にしては珍しく男っぽい人。
別に筋肉質というわけではない。というより私は筋肉系男子を好きではない。
その点、朔太郎先輩は真逆。
痩身という言葉がぴったりなほど、すらりとしている。
〇女性の部屋
つづく
冒頭からしっかり引き込まれてしまいました。
たくさんの謎や疑問を散りばめて、次回が気になるヒキ、今後の展開がとても気になります。
とても続きが気になる描き方で言葉選びもすごく綺麗で読んでいてどんどん引き込まれまらる作品だなと感じました。ぜひ続きも楽しみにしています!
文章がとてもきれいで、情景が思い浮かびやすかったです。これからどんな展開になるのか楽しみです。
転校生がどんな人なのか気になる…。