第五話 大切な記念日を忘れるなんて(脚本)
〇アパートの前
鏑木洋子「おはようございます吉田さん」
吉田翔子「あっ、鏑木さん、おはようございます」
吉田龍平「じゃぁ、ママ行ってくるね」
吉田翔子「ちゃんと鏑木さんに挨拶しなさい」
吉田龍平「おはようございます」
鏑木洋子「ハイハイおはよう」
吉田翔子「車に気を付けてね、宿題もったの?」
吉田龍平「もったよ・・・全くうるさいんだからママは」
鏑木洋子「男の子は元気でいいわね」
吉田翔子「でも、近頃は口答えするようになって」
吉田寛「じゃぁ翔子、行ってくる、あっ、おはようございます」
鏑木洋子「お早うございます」
吉田翔子「あ、貴方・・・今日のお帰りは?」
吉田寛「うん、此のところパリコレの準備で忙しいから今日も遅くなる」
吉田翔子「そうなんだ・・・体に気を付けてね」
鏑木洋子「本当に仲がよろしくて・・・羨ましい」
吉田翔子「あら、やだからかわないで下さい」
鏑木洋子「そうだ、今度フランス語教室が駅前に出来たのよ・・・よかったらご一緒しません?何でもイケメンフランス人らしいわよ先生」
吉田翔子「そうねぇ・・・主人に聞いて見ようかしら」
〇アパートのダイニング
吉田翔子(もう直ぐ私達が初めて結ばれた日よね、なのに何も・・・結婚3年目だからか忘れている?・・・何か寂しいな)
吉田翔子「あれ?パパの携帯」
吉田翔子(な、何よこの写真・・・何々、またここで過ごしたいなですって・・・元カノの未歩じゃない・・・そう言えば昨夜・・・)
吉田翔子「お帰りなさいご飯は?」
吉田寛「うん食べてきた」
吉田龍平「パパお帰りなさい、ねぇ風呂入ろうよ」
吉田寛「そうだな久しぶりに一緒に入るか」
吉田龍平「わぁ~い」
吉田翔子「もう脱ぎっぱなしは止めてって言ってるでしょ」
吉田翔子(あら?シャツに口紅、それに微かな香水?)
吉田翔子「ねぇパパ、今日は何処に行ってたの?」
吉田寛「株主の佐藤芙美さんのところだけど」
吉田翔子「ふ~ん」
吉田寛「どうして?」
吉田翔子「何でもない」
吉田翔子(やはり元カノの方がいいのかしら?・・・髪はロングで美人だけど、私だって寛の為に一生懸命尽くしてきたわ)
吉田翔子「よし、今夜は私の方から誘ってみようかな」
〇一人部屋
吉田翔子(よし、久しぶりに寛から貰った口紅と香水をつけて今夜は私から積極的に誘惑してやるわ)
吉田寛「おやすみなさい・・・グー」
吉田翔子「チョット・・・起きてってば寛」
吉田寛「ごめんね疲れているから明日の朝・・・むにゃむにゃ・・・グー」
吉田翔子「もう、知らない!!」
〇アパートのダイニング
吉田寛「おはようママ」
吉田寛(あれ?何だか機嫌悪そう)
吉田寛「あれ?いい香り」
吉田翔子「・・・」
吉田翔子「今日からフランス語教室に通いますから夕飯は作れないわ・・・」
吉田寛「えぇっ、聞いてないよ、それに龍平は」
吉田翔子「龍平は実家に預かってもらうし・・・パパは未歩さんとでも一緒に食事したらいいでしょ」
〇装飾された生徒会室
ピエール「ボンジュール、マダム洋子」
鏑木洋子「こちら今日から入りました吉田さんです、ピエール先生」
吉田翔子「吉田翔子です、フランス語は初めてなのですが頑張ります」
ピエール「おぉ、何て美しいマドモワゼル・・・素敵初心者大歓迎です硬くならずリラックス、間違えても当たり前気にせずに」
吉田翔子「あら人妻ですのよ・・・でもそう言ってもらえると嬉しいですわ」
ピエール「では、始めましょう」
吉田翔子「えぇっ、お酒?」
ピエール「ワインは酒ではありませんね・・・リラックスさせる飲み物です・・・フランス流のお喋りに先ずは慣れなくてはいけませんね」
鏑木洋子「あれ?敦子・・・大変うっかりしてたわ今日だった・・・申し訳ないけど今日のレッスンを抜けますね」
そして翔子はピエールの楽しい会話とワインで時が経つのも忘れてしまった
〇ラブホテル
ピエール「翔子さん大丈夫ですか・・・雨が降って来ましたよ」
吉田翔子「ダイジョウブ問題よ、ないわ・・・息子も実家 に預けてきたのよ・・・それなのに主人ときたら折角の記念日を忘れて残業だと」
ピエール(ン?こちらを見てる女性が・・・未歩さんか?・・・ここはバレないように演技するか)
ピエール「翔子さん・・・私」
そう言うとピエールは唇を翔子の口元に近づけてきた
吉田翔子(えぇっ、まさか冗談でしょ)
吉田翔子「チョット・・・」
ピエール「あっ、雨が本降りに・・・仕方ないあのホテルで雨宿りしましょう」
吉田翔子「や、やめて・・・私はそんな女じゃぁ・・・」
ピエール「でも、雨に濡れますよ」
そう言うとピエールは翔子の腕を掴み強引にラブホテルに向かった
吉田翔子「は、離して下さいってば」
吉田翔子「ハイ、・・・パパ・・・今何処?・・・分かったわ」
翔子は雨の中大急ぎで立ち去った
〇商店街
吉田寛「とうとう降り出したな・・・あれ?向こうから駆けて来るのはママじゃないか?」
吉田翔子「あっ、パパ・・・」
吉田寛「家に居るかと・・・雨に濡れるよ・・・ハイ、」
吉田翔子「ううん・・・どう?私」
吉田寛「素敵だよ、香水もあの時のなんだね・・・そうだ・・・これ」
吉田寛「今日は僕たちの記念日だろ」
吉田翔子「嬉しい・・・覚えていてくれたんだぁ」
吉田寛「当たり前じゃぁないか・・・行こうか」
吉田翔子「うん」
〇ホテルのレストラン
吉田寛「この日のために予約しといたんだ・・・何せ3年目だしな」
吉田翔子「ううん・・・嬉しい」
吉田寛「さっ、冷めないうちに」
吉田翔子「そうだ、聞いてもいい?」
吉田寛「なんだい?改まって」
吉田翔子「ねぇ、ワイシャツに口紅が付いてたんだけど・・・何故?」
吉田寛「多分芙美さんが誤って付けちゃったのかな」
吉田翔子「でも、どうして?・・・ワイシャツ」
吉田寛「あの家族も色々大変らしくてね・・・見た目ほど幸せな夫婦ではないらしいんだ」
吉田翔子「それがワイシャツに口紅が付いていたのとどう関係するの?」
吉田寛「口外しないって芙美さんに約束したんでこれ以上は話せないけど・・・僕を信じてくれるかい?」
吉田翔子(あのラブホテル前での元カノの未歩との写真の件も聞きたいけど、尋ねるとパパのスマホを覗いた事がバレるし・・・)
吉田翔子(よし、ここは未歩に釘を刺しとかないと・・・これ以上彼女面はさせないわよ)
吉田翔子「分かったわ、寛を信じるわ・・・ところでまた企画に戻りたいんだけど」
吉田寛「えぇっ、龍平の世話は?」
吉田翔子「私が仕事中は実家の両親が面倒を見てくれるって」
吉田寛「でもなぁ」
吉田翔子「私だって、仕事で人として成長したいわ」
吉田寛「分かった、でもあまり無理はしないでくれよ」
吉田翔子「うん、分かってるわ・・・寛の傍でまた働けるのは嬉しいわ」
吉田翔子(よし、これで未歩を監視してやるわ)