怪人試験(脚本)
〇時計台の中
学園長先生「見習い怪人の皆さん、お待たせしやした 今日から二日間、怪人最終試験を行います」
どんな目に遭っても人を傷つけてはならない
試験中は怪人の能力を使用してはならない
この二つのルールを守りながら、二日間試験会場である地球で過ごしてもらいます
学園長先生「じゃあ、早速地球に飛ばしちゃうねー。 good luck」
〇荒廃したハチ公前
スピネル「なんじゃこりゃ!? めっちゃ荒れてるやん!!」
ガーネット「お前授業まともに聞いてなかったろ 地球はウイルスや戦争、怪人の侵略が原因で、文明が崩壊したんだぞ」
トパーズ「こんだけ文明が滅んでたら、可愛い女の子もいなさそー」
ランショウ「お前ら遠足に来たんじゃないんだぞ もっと真面目に最終試験に取り組みやがれ」
〇荒廃したハチ公前
スピネル「ぎゃああぁ!! ハチ公さーーーん!!」
反乱軍A「怪人共だ!!撃て撃てぇ!!」
スピネル「何年も主人の帰りを待ち続けたハチ公さんに、何たる仕打ち・・・・・・!!」
スピネル「許せねぇ!!全惑星の愛犬家達に代わって俺がお前に裁きを下す!!」
スピネル「くらえ!!雪月花!!」
ランショウ「おい、バカ!!やめろ!!」
反乱軍A「ぐわぁ!!」
スピネル「ハチ公、お前の仇は取ってやったぜ」
ランショウ「この馬鹿野郎!!試験のルールを忘れたのか!?」
スピネル「ハチ公を傷付ける奴は人間じゃない!! だからセーフだ!!」
ランショウ「残念ながらアウトみたいだな」
トパーズ「スピネルー!!」
反乱軍B「おのれ、怪人!!」
反乱軍C「隊長の仇!!」
ランショウ「やべぇ、逃げろぉ!!」
〇入り組んだ路地裏
ランショウ「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
ランショウ「畜生!!アイツらとはぐれちまった!!」
ランショウ「それなら俺の能力を使って・・・・・・」
〇時計台の中
学園長先生「二日間怪人の能力を使用してはならない」
〇入り組んだ路地裏
ランショウ「そうだったわ。 試験の間は能力を使っちゃダメなんだったわ」
ランショウ「まぁ、アイツらはスピネルと違って馬鹿では無いから放っておいても問題無いか」
ランショウ「さて、これからどうしようか・・・・・・」
ならずものA「おう、怪人さんよぉ!! 誰の許可を得て縄張りに入ってんだコラァ!!」
ならず者B「痛い目に遭いたくなければ、 さっさとこっから立ち去りな!!」
ランショウ「はぁ、面倒臭い奴等に絡まれたなぁ。 仕方ない、ここは奴等の言う通りにするか」
ランショウ「んぐぉ!!」
ならずものA「やっぱお前の事気に食わねぇから殴るわ!!」
ならず者B「それもそうだな。怪人、恨むならお前が怪人である事を恨むんだな」
ランショウ「くっ!!」
ならずものA「お前等が侵略してきたせいで、 俺達はこんな生活を強いられてんだ!!」
ランショウ「どうする、このままではやられてしまう!! 戦うしかないのか!?」
〇時計台の中
学園長先生「どんな目に遭っても人を傷付けてはいけない」
〇入り組んだ路地裏
ランショウ(そうだった、今は試験の最中だ。 人を傷つけたら俺は不合格になってしまう)
ランショウ(耐えろ、耐えるんだ、俺!!)
ランショウ(俺は試験に合格して・・・・・・)
ランショウ(本当の怪人になるんだ!!)
〇入り組んだ路地裏
ランショウ「うぅん・・・・・・」
ランショウ「冷たっ!!」
少年「気が付いたみたいだね、おじさん」
ランショウ「君は・・・・・・ 俺を助けてくれたのか?」
少年「そんなわけないだろ」
少年「そこで倒れられると邪魔なんだよ ここ俺の職場の通り道なんだからさ」
ランショウ「そうか、悪かったな。 よっこいしょっと・・・・・・」
少年「怪我でヨロけるならまだしも、 なんでこの状況でお腹が鳴るワケ?」
ランショウ「体だけは丈夫だからね」
少年「・・・・・・」
ランショウ「ナニコレ?」
少年「良かったら食いな」
ランショウ「いいの?」
少年「お腹鳴らされる方が煩くて迷惑だから」
ランショウ「そ、それじゃあ、 お言葉に甘えていただきまーす」
・・・・・・。
ランショウ「ご馳走様、美味しかったよ!!」
少年「あっそ。 じゃあ俺は仕事があるから」
ランショウ「待ってくれ!!」
少年「何、急いでるんだけど?」
ランショウ「一食の恩義!! 良ければ君の仕事を手伝わせてくれないか?」
少年「はぁ?・・・・・・まぁ、俺の仕事なら怪人もいるからさっきみたいな目に遭う事は無いと思うけど・・・・・・」
ランショウ「よし、決まりだ!! それなら善は急げだ!!」
少年「変な奴」
〇西洋の市場
少年「はい、ここが職場」
ランショウ「よし!!俺は何をすればいい!?」
少年「怪しい奴が来ないかそこで見張ってて」
ランショウ「おうよ!!」
ランショウ「・・・・・・」
ランショウ「つまり何もするなって事じゃね? なんか、申し訳ないな」
ランショウ「痛ぇ!!」
ガーネット「おっと、ワリィ・・・・・・」
ガーネット「ランショウ!!無事だったか!!」
ランショウ「ガーネット、お前こそ無事だったんだな!! どうしてここにいるんだ!?」
ガーネット「良い人に拾ってもらってな、 俺は試験終わりまで、その人と一緒に過ごす事になったんだよ!!」
ランショウ「そうか、良かったな!! お互い頑張ろうな!!」
通行人A「イタタ・・・・・・」
ガーネット「悪い、バァさん!! 怪我は無いかい!!」
通行人A「怪人がいきなり消えた!? ひっ、ひぇええ!!」
ランショウ「今のもダメなのかよ!! こりゃあ気を抜いてられないぞ!!」
ランショウ「この残った箱、どうしよう?」
少年「ねぇ、怪人。 ラクスさん所のお使いの人見なかった?」
ランショウ「ラクスさん? 見てないどころか、そんな人知らないんだが」
少年「いや、それ、ラスクさん所の荷物じゃん!!」
ランショウ「すっげぇ、偶然!! てか、よく分かったね!!」
少年「ラスクさん所の箱は、檜の箱を使っているんだよ。なんでかは知らないけどね」
少年「ありがとう怪人!! これで今日の仕事も無事に終わるよ!!」
ランショウ「まぁ、実質俺は何もしてないんだが。 役に立てたのなら何よりだよ」
少年「貸して、俺が持つよ」
ランショウ「いや、俺が持つよ 少年に怪我をさせる訳には・・・・・・」
〇西洋の市場
〇西洋の市場
ランショウ「ごめん!!やっぱ持ってもらってもいい!?」
少年「はぁ? まぁそのつもりだったからいいけど」
少年「それじゃあ、店の方に行ってくるよ もうちょっとで終わるから、待ってて」
ランショウ「なんだか、申し訳なくなってきた」
ランショウ「せめて、身の回りのゴミだけは拾っておこう」
ランショウ「なんだこれ、ゴミにしては綺麗だな」
ランショウ「まぁ、何かに使えるかもしれん 取っておくとするか」
少年「お待たせ」
ランショウ「あっ、おかえり」
少年「ところでアンタ今日泊まる所でもあるの?」
ランショウ「あっ・・・・・・」
少年「そんな事だろうと思った」
少年「俺の知り合いがこの辺りで宿を経営してるんだよ。事情を話せば泊めてくれると思うよ」
ランショウ「マジか!!ありがたい!!」
少年「案内するよ、ついてきて」
〇古いアパートの廊下
少年「どう、結構快適に過ごせるでしょ?」
ランショウ「歩く度ギシギシ音するし、壁に虫が集ってるし、正直居心地は良くないかな」
トパーズ「おう、ランショウ生きてたか!!」
ランショウ「おう、トパーズ・・・・・・」
少年の母「あらぁん。トパーズちゃんに負けず劣らずの良い怪人。どう、この後お暇?」
ランショウ「ドチラサマデスカ?」
少年「てめぇ、こんな所で何してんだよ!!」
ランショウ「知り合いか?」
少年「不本意だけど、俺のお袋だよ」
トパーズ「えっ、君人妻!?」
少年の母「なによ、悪い?」
トパーズ「俺は一途な女の人がタイプなんだ!! 子供と旦那さんは大事にしろ!!」
少年の母「言ってくれるじゃない!! 貴方達怪人のせいで、私達一般人はこんな事をしなくちゃいけなくなったのよ!!」
トパーズ「何でもかんでも俺達のせいにするな!!」
少年の母「きゃあ!!」
トパーズ「やべっ!! 勢い余って足ダンしちまった!!」
ランショウ「トパーズ!!」
少年「・・・・・・」
ランショウ「おい!少年!待て!」
〇荒廃した市街地
少年「俺は、一体何の為に生きてるんだろう?」
ランショウ「そんなの誰にも分からねぇよ」
少年「お前、今の聞いてたのか!?」
ランショウ「まぁな」
ランショウ「誰かの為に生きたいとか、生きてる意味を考えていたら、その内恩を返して欲しいって思うようになるんだよ」
少年「そんな事!!」
ランショウ「そうじゃないって言い切れる程、 お前は人生長く生きているか?」
少年「・・・・・・」
ランショウ「多分お前より年食っているであろう怪人からの戯言だ」
ランショウ「誰かの為に生きるより、 お前はお前のやりたい事の為に生きろ」
ランショウ「そうすれば、 お前の今の悩み位は解決すると思うぜ」
少年「・・・・・・」
少年「アンタ、怪人には向かないね」
ランショウ「そうか?」
少年「だって、アンタ、優しいもん」
ランショウ「ハハッ、そうか。 それならもう一つ、良い事教えといてやるよ」
ランショウ「優しい奴は、皆、ウソツキなんだぜ」
〇荒廃した市街地
ランショウ「さて、夜も更けてきたな。 そろそろ宿に戻るぞ」
〇暖炉のある小屋
少年の父「おい、金目のモン全部出せ!! さもないと・・・・・・!!」
少年の母「誰か助けテェ!!」
〇荒廃した市街地
少年「オヤジ、オフクロ!!」
ランショウ「地球マジ怖い。 世紀末にも程があんだろ」
少年「くそ、馬鹿野郎!!」
ランショウ「おい、ちょっと待て!!」
〇暖炉のある小屋
少年「オヤジ、馬鹿な真似はやめてくれ!!」
少年の父「オヤジだぁ? 俺には息子なんていねぇよ!!」
少年「アンタの方は、 俺を息子だとは思って無いだろうが」
少年「どんなに嫌な目に遭ったって、 アンタ達は俺の両親なんだよ!!」
少年の父「ふーん、あっそ」
少年「ぐっ!!」
少年の母「いやぁ!!離してぇ!!」
ランショウ「おい」
少年の父「なんだぁ!?怪人が何の用だよ!?」
ランショウ「アンタから酒の匂いがプンプンすんだよ」
ランショウ「どうせ酒代が欲しさの犯行だろ? 酒代ならくれてやるよ」
少年の父「へぇ、 怪人のクセにいいもん持ってんじゃねぇか」
少年の父「確かにこれなら、 暫くは酒飲んで暮らしていけるぜ」
ランショウ「そうだろう。分かったなら、さっさと宿から出て行け。今日は色々あって俺は眠いんだ」
少年の父「へぇ、そうかい・・・・・・」
少年の父「そんなら、安眠の手伝いをしてやるよ!!」
ランショウ「ぐわぁ!!」
少年「オヤジ!!やめてくれ!!」
少年「うわっ!!」
少年の母「もう気は済んだでしょ!! さっさと離してぇ!!」
少年の父「何言ってんだよ!! お楽しみはこれからだろ!!」
少年の父「こんな気分の良い夜は他に無いぜ!!」
少年の父「全部全部俺の気が済むまで痛めつけてやる!!」
〇時計台の中
学園長先生「どんな事があっても人を傷つけてはならない 怪人の能力を使ってはいけない」
ランショウ(学園長・・・・・・ 俺はもう充分耐えたんだぜ・・・・・・ だからさ・・・・・・)
嫌な奴等を攻撃しても、いいだろ?
〇暖炉のある小屋
ランショウ「・・・・・・」
ランショウ「なんか地球に来てから、 こんなんばっかりだな」
少年「おじさん、ごめん・・・・・・」
ランショウ「お前、ずっと側に居てくれてたのか?」
少年「だって、俺・・・・・・」
ランショウ「仕事は?」
少年「そんな事よりオジサンの方が心配だ!!」
ランショウ「・・・・・・そうか お前は優しいな」
少年「優しい奴は嘘つきだって言ってなかった?」
ランショウ「つまんねぇ事は早く忘れな」
少年「こんな事、忘れられるわけないだろ?」
ランショウ「そうかい」
ランショウ「そんな事より、お前徹夜で俺を看病したろ。 俺はどこにも行けねぇから、あっちで休んできな」
少年「そうだね、そうさせてもらうよ。 おやすみ、おじさん」
ランショウ(あともう少ししたら、試験が終わる そうしたら、イヤでもお前は俺の事を忘れちまうよ)
〇荒廃した市街地
試験合格おめでとうございます
これよりワープホールを作動します
ランショウ「そんなもん俺には必要ねぇよ」
ランショウ「俺の能力は瞬間移動だからな」
〇暖炉のある小屋
少年「・・・・・・」
少年「おじさんのウソツキ・・・・・・」
〇時計台の中
学園長先生「お帰り、ランショウ!! 試験合格おめでとう!!」
ランショウ「・・・・・・ありがとうございます」
学園長先生「何があったか深くは聞かないが、 地球とここの時間には大きなズレが生ずる」
学園長先生「お前が地球でしてきた事は、遠い過去の話となっている筈だから安心すると良い」
ランショウ「そうですか」
学園長先生「そういうことだ」
学園長先生「さて、早速で悪いが緊急事態発生だ 真の怪人になったお前に一つ任務を頼みたい」
ランショウ「なんでしょうか?」
学園長先生「地球にいる人間共が本格的に反乱をおっぱじめようとしている」
学園長先生「怪人軍に加わり、人間共を懲らしめてこい 必要とあらば皆殺しにしても構わん」
〇時計台の中
ランショウ「そうか・・・・・・ 人間どもを・・・・・・」
ランショウ「今から楽しみで仕方がないぜ!!」
ランショウ以外の怪人たちも基本的にいい人たちでしたね。犬が好きだったりおばあさんを気遣ったり。個人対個人では優しさや思いやりを持てるのに組織対組織、怪人対人間になると戦争を始める構図が切ないなあ。これからの展開としては、地球と時間の流れが違うから大人になっている少年とランショウが敵同士で再会することになるかもですね。
最後の怪人が放った言葉に一瞬、違和感を持ちましたが、なるほど彼は確かに地球の人間に幻滅して帰ったのだから無理もないですね。ただ、本来優しさを持ち合わせた彼なので、少年のように心のきれいな人間は考慮してその仕事を成し遂げると思います。
なんとも物寂しいラスト……。
試験に受かって身も心も完全な人類の敵対者、怪人になってしまったのか。それともどこかに少年に対するような想いが残っているのか……。