【悲報!】あの超人気アイドルがバケモノだった!?

春野トイ

アイとタクト(脚本)

【悲報!】あの超人気アイドルがバケモノだった!?

春野トイ

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〇男の子の一人部屋
タクト「ううっ・・・」
タクト「うわああああ・・・!!」
  僕は泣きながら、エンターキーを押した。
  すぐに一本の動画がアップロードされる。
  ああ、これで・・・・・・
タクト「これで終わりだ」
タクト「さよなら、アイちゃん」
タクト「大好きだったよ・・・うう・・・!」

〇学校脇の道
  そうして、僕、
  取尾拓斗(トルオ・タクト)の
  ドルオタ人生は終わった。
  今日からはただの陰キャ高校生だ。
  今日は推しのCDやグッズを
  全部持ってきた。
  学校に行ったら加藤くんにあげよう。
  さすがに、捨てるのは忍びないから・・・

〇応接室
アイ「・・・だからっ!」
アイ「改谷さんはいつもやり方が 強引なんですよっ!」
改谷「アイ、落ち着いてくれ」
改谷「私は君たちのためを思って・・・」
アイ「も~っまたそう言って!」
アイ「とにかく、アイは記憶除去なんて反対ですからね!!」
タクト(・・・あれ?)
タクト(ここはどこだ?)
タクト(家を出て、学校に行こうとして・・・)
タクト(黒い車が・・・)
  目を覚ますと、僕は事務所のような部屋で、革張りのソファに寝かされていた。
  いや、それより驚いたのは──
アイ「あっ、目が覚めた?」
改谷「ちッ、起きやがって」
タクト「ああああッ・・・」
タクト「アイちゃん!?」

〇コンサート会場
  女子高生デュオアイドル"ダブルハーツ"
  彼女たちは去年のデビューから、瞬く間に日本のトップアイドルの座に上り詰めた。
  その片割れで、僕の推し──

〇応接室
  四ノ宮愛(シノミヤ・アイ)ちゃんが目の前にいるじゃないか!!
アイ「うん、アイだよ タクトくん」
タクト「な、なんで僕の名前を?」
アイ「会員番号0000027番、取尾拓斗くんでしょ?」
アイ「いつもライブに来てくれるし、先週の握手会にも来てくれたから」
アイ「アイ、ちゃんと覚えてるよ」
タクト(かッ・・・)
タクト(可愛い!! アイちゃん、やっぱり可愛すぎる!!)
改谷「はあァ・・・」
改谷「君、タクトくんと言ったか」
  怖そうな男の人――改谷さん、だろうか。
  彼は、大きな溜息を吐いて僕をぎろりと睨んだ。
改谷「これを投稿したのは君で間違いないな?」
  【悲報!!】
  あ の 超 人 気 ア イ ド ル が
  バ ケ モ ノ だ っ た !?
タクト「あっ・・・はい」
タクト「僕、です」
  スマホに映った動画を見せられ──僕は全てを思い出した。
タクト(そうだ、アイちゃんは・・・)
タクト「違う・・・」
タクト「アイちゃんは・・・ アイちゃんじゃなかった!!」
タクト「こ、こ、こ、この、バケモノめ!!」

〇入り組んだ路地裏
  あの日、僕は見てしまった。
  二日前の夜。
  塾で遅くなってしまった僕は、音楽番組をリアタイするために近道を使った。
  街灯が少なく、怪しい連中がたむろする小道。
  親からも夜は通るなと言われていたが、背に腹は代えられない。
  走り抜ければいいさ。
  アイちゃんのためなら、僕はそのくらいできる──
タクト(えっ?)
タクト(あれは・・・アイちゃん!?)
  数少ない電灯の下。
  そこに、アイちゃんが立っていた。
  見間違えるわけがない。
  あれはアイちゃんだった!
タクト(まさかこんなところで会えるなんて!)
  僕の心は高鳴った。
  けど──
アイ「・・・!!」
タクト(う・・・うそだ)
タクト(アイちゃん、そんな・・・!!)
  骨が折れるような恐ろしい音。
  何かが作り変わっていくような、不気味な音。
  夜闇にそれを響かせ、裏返るようにして──
  アイちゃんは、バケモノに成った。

〇応接室
タクト「バケモノめ!!」
  僕の叫びに、改谷さんは呆れたようにまた溜息を吐いた。
  アイちゃんは・・・
  悲しそうな顔をしている・・・
改谷「・・・"不信"のフィアーに当てられてるな」
アイ「しょうがないですよ でも・・・」
アイ「タクトくん 一つだけ信じてほしい」
  アイちゃんが、僕の手を握る。
アイ「アイは・・・ タクトくんを笑顔にしてみせるから!」
タクト(い・・・いやいや!)
タクト(こんなに可愛くてもバケモノなんだぞ!?)
タクト(僕たちをずっと騙していたんだ・・・!!)
ココロ「アイ! 改谷さん!」
ココロ「またフィアーが!」
アイ「ココロちゃん!」
  飛び込むように入ってきたのは、ダブルハーツのもう一人――ココロちゃんだ!
  ああ、ココロちゃんもなんて可愛いんだ・・・!!
  ・・・でも、フィアーって何だ?
  それに、すごく慌てている。
改谷「こんな時間に・・・!? わかった。二人ともすぐ向かってくれ」
「はいッ!!」
アイ「また後でね、タクトくん」
アイ「改谷さん、記憶除去なんてしたらアイは一生恨みますから」
改谷「わかった、わかったよ 安心して行ってくれ」
ココロ「アイ、早く行くわよ」
アイ「うん!」
  まるで嵐のように、アイちゃんとココロちゃんは部屋から出ていった。
  僕は恐る恐る、改谷さんを見る。
改谷「・・・・・・」
  こ、怖い・・・
タクト「あの・・・フィアーって、一体? というか、僕、なんでここにいるんですか?」
改谷「ついてきなさい」
  改谷さんは僕の返事も聞かず、隣の部屋に行ってしまった。

〇近未来の開発室
  アニメにでも出てきそうな、近未来的な部屋。
  改谷さんは中央のモニター前に座り、忙しなくキーボードを叩いている。
  僕には一瞥もくれないまま、話し出した。
改谷「まず、君は見てはいけないものを見た」
改谷「しかも、それを全世界に公開しようとした」
改谷「だから動画を消して、君の記憶も消そうとしたんだ」
タクト「動画・・・あなただったんですか!?」
タクト「いや、え? 僕の記憶を消すって!?」
改谷「そのままの意味だ のんきに登校してたから捕まえるのは簡単だった」
  そう、おかしいと思ったんだ。
  朝起きて、動画がどれくらい伸びたか確認しようとしたら、消えてるんだから。
  この人が動画を消したのは間違いないのだろう。
  つまり、僕の記憶を消すのは脅しでも何でもなく、実際にできてしまう可能性が高い。
改谷「まあ、しないがね アイに怒られてしまう」
タクト「あの、アイちゃんは一体・・・」
改谷「アイ、それにココロは 私が造り出した"怪人"だ」
タクト「かい・・・じん?」
改谷「"怪"なる力を持ち、変"怪"する者・・・ 怪人」
改谷「君が見たあの姿が、本来のアイだ」
タクト「あのバケモノが・・・!?」
改谷「ええい! さっきからバケモノバケモノ言うなッ!!」
改谷「めちゃくちゃカッコいいだろうが!!」
タクト「ええ・・・?」
改谷「私は昔からヒーローより怪人の方が好きなんだ!」
改谷「渾身のデザインなんだぞ!!」
改谷「・・・ごほん で、なぜ私は彼女たちを造ったか?」
改谷「それは――"フィアー"と戦うためだ」
改谷「"フィアー"は、人間の"畏れ"が具現化した存在だ」
改谷「不信や失意、怠惰―― 放っておけば、この世を乱す」
改谷「だから倒すのだ」

〇屋上の端
ココロ「・・・アイ、大丈夫? ちょっと元気ないけど」
アイ「だ、だいじょうぶだいじょーぶ! 元気だよっ」
ココロ「あの、タクトだっけ? 何かされたんだったら言いなさいよ」
ココロ「アタシがガツンとやってやるから!」
アイ「へへ・・・ありがと、ココロちゃん」
ココロ「・・・さて、ここね」
ココロ「改谷さん、ポイントに到着しました」
改谷「了解。先行して解析は完了している・・・ "抑圧"のフィアーだ」
改谷「二人とも、頼んだぞ」
「了解!」
アイ「よくあるタイプだね」
ココロ「ええ だからいつも通りに・・・」
アイ「ブレード・アイ!」
ココロ「フレイム・ココロ!」
「まずは物理でぶっ叩くッ!!」

〇近未来の開発室
  怪人、フィアー。
  いきなりすぎて、正直、僕はついていけなかった。
  けれど、改谷さんの発明だという
  超光学迷彩ドローンは
  怪人――アイちゃんとココロちゃんと
  "抑圧"のフィアーとの戦いを映し出していた。
タクト「ああっ!!」
  フィアーの一撃が、アイちゃんに入る。
  すごく痛そうだ・・・
改谷「・・・フィアーと戦えるように、怪人の身体は強化してある」
改谷「が、痛みもあれば疲れもある」
改谷「それでも彼女たちは戦うんだ・・・ みんなの笑顔を守るために」
タクト「・・・!!」
改谷「タクトくん 君はダブルハーツのアイの、何に惹かれたんだ?」
タクト「・・・それは・・・」

〇コンサート会場
アイ「みんなーっ! 今日は来てくれてありがとう!!」
アイ「アイにたくさん、とびっきりの笑顔を見せてね!」
  ライブでも、インタビューでも、テレビでも、握手会でも。
  アイちゃんは言っていた。
アイ「みんなの笑顔が、私の幸せだよ!」

〇近未来の開発室
  そう・・・
  そうだった!
  僕がアイちゃんを推したのは、見た目だけじゃない!!
タクト「みんなを笑顔にしたいという、心です!!」
改谷「フッ・・・そうか」
改谷「人を笑顔にするのは、アイドルも怪人も一緒だと思わないか?」
改谷「・・・君に嫌われたままだと、アイが悲しむからな」
改谷「できたら、あの姿も受け容れてほしいと思うよ」
  そうだ・・・
  今戦っているアイちゃんと、いつものアイちゃん。
  心は、何も変わってないんだ!!
タクト「アイちゃん・・・!!」
タクト「いけーッ! がんばれーッ!!」
  聞こえるはずもないのに、僕はありったけの力で叫んだ。

〇ビルの裏
ブレード・アイ(ふふ・・・)
ブレード・アイ(聞こえてるよ、タクトくん!!)
フィアー"抑圧"「なッ・・・!!」
フィアー"抑圧"「急に攻撃が激しく!?」
ブレード・アイ「アイドルも怪人も」
ブレード・アイ「応援が力になるんだッ!!」
フレイム・ココロ「アイ! 今よ!!」
フレイム・ココロ「業火ッ!!」
ブレード・アイ「爆・裂・斬ッ!!」
フィアー"抑圧"「ぐああああああーーーーッ!!!!!」
フィアー"抑圧"「ア・・・ アノお方の・・・ ため ニ・・・・」
フィアー"抑圧"「もッ ト・・・ 畏 れヲ ・・・ ・・・」
ブレード・アイ「はあッ、はあ・・・」
フレイム・ココロ「・・・終わった、わね」
ブレード・アイ「うん」
ブレード・アイ「帰ろう、ココロちゃん!」

〇近未来の開発室
改谷「ご苦労だった 二人とも無事に戻ってきてくれてよかった」
ココロ「ふふん アタシとアイにかかればこのくらい楽勝よ」
改谷「しかし・・・ 最近、フィアーが多すぎる」
改谷「昼間の出現例など無い」
改谷「一体、何が起こっているんだ・・・?」
ココロ「大丈夫ですよ、改谷さん」
ココロ「私たちが・・・ ダブルハーツが、全部守ってみせますから」
ココロ「ほら、笑顔笑顔!」
改谷「・・・・・・」
改谷「そうだな」

〇応接室
タクト「アイちゃん・・・ ごめん!!」
  どうしてあんな動画を上げてしまったのか。
  どうしてバケモノなんて言ってしまったのか。
  今となっては後悔でいっぱいだ。
  改谷さんはフィアーの影響だと言っていた。
  でも、たとえそうだとしても、バケモノなんて酷い罵倒だ。
  言ったことは取り消せない。
  許されないと分かっていても、僕は謝りたかった。
アイ「もう、そんなに何度も謝らなくてもいいのに」
タクト「でも・・・」
アイ「・・・それじゃ、一つお願いしてもいい?」
タクト「な、何でも言って!」
  そして――
  アイちゃんは僕の耳に口を寄せ、言ったんだ。
アイ「アイのこと、これからもずーっと推してくれる?」
タクト「・・・」
タクト「い・・・」
タクト「一生推します・・・!!」
アイ「ほんと? ありがと!」
アイ「・・・私の"中身"まで知ってるの タクトくんだけだから」
アイ「ふふ、ちょっと恥ずかしいなあ」
  僕は、命を賭けて彼女を推すことを誓った。
  それが――
  僕たちの、恐ろしい戦いが始まった日だったんだ。
  ・・・え?
  これからどうなるかって?
  大丈夫。
  最後は皆、笑顔になってるからさ!

コメント

  • アイドルと怪人の一体化という設定が新鮮。怪人としてフィアーと戦うだけでも大変なのにアイドルの仕事も掛け持つなんてオーバーワーク!と思いましたが、アイちゃんは応援してくれる人がいることで何事も頑張れるみたいで健気ですね。それにしても天才マッドサイエンティストっぽい改谷さんて何者なんだろう。

  • こんな状況に急になったら、状況を飲み込めないのは無理もないですよね。
    推しってのは色々な物をひっくるめて自分の一番を決めていると思うのですが、そりゃあこんなことがあったら色々な意味でも一生推しですね笑

  • アイちゃんもココロちゃんも言ってる事もやってる事もとても正統派で、怪人でもアイドルでも私達に笑顔を届けるための貴重な存在ですね。こんなに本腰入ったアイドルなんて、この時代めずらしいのかも!

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