Millennial Babies / ミレニアル・ベイビーズ

白実 南天 (しろみ なんてん)

I think, therefore I am. (脚本)

Millennial Babies / ミレニアル・ベイビーズ

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〇サイバー空間
  俺たち怪人の使命は、世紀の天才科学者・”月光仮面”を倒すこと
  太陽戦隊サンバルカン”と名付けられた俺は、1983年の誕生から2025年の今日まで、それだけを目的に生きてきた

〇水の中
  “Millennial Babies(ミレニアル・ベイビーズ)”は、俺たち怪人の総称だ
  1983年から1996年生まれを指す、“ミレニアル”。
  “新時代”を意味するミレニアルの怪人たちは、1983年から1996年までに、計16体製造された
1983 サンバルカン「そのうちの一体が、この俺。 1983年に生まれの怪人、”太陽戦隊サンバルカン”」
1983 サンバルカン「俺たちは”怪人”と名乗るが、普通の人間とは違う」
1983 サンバルカン「食事は不要で、太陽に当たれば体力が回復する」
1987 メタルダー「怪人とは、人間とは似て非なる不思議な構造を持った、自由意志で動く独立型の知的生命体なのだ」
1996 シャンゼリオン「俺たちの生きる意義は、正体不明の科学者”月光仮面”を倒すこと」

〇実験ルーム
1983 サンバルカン「月光仮面の詳細は誰も知らない」
1983 サンバルカン「年齢も性別も容姿も居住地も」
1983 サンバルカン「俺が誕生した40年以上から悪名高い存在なのだから、相当な老人だと思うが・・・」
1983 サンバルカン「俺はずっと、どこかの老齢の大学教授だと睨んでいる」
月光仮面「早く私を捕まえにきたまえ・・・」

〇組織のアジト
1983 サンバルカン「俺たちが月光仮面を倒すことに固執する理由」
1983 サンバルカン「それは正直、よく分からない・・・」
1988 サイバーコップ「『”月光仮面”を倒せ!』というメッセージが、俺たち怪人の脳内に毎朝9時と毎晩21時に鳴り響く」
1988 サイバーコップ「不思議なことに、この現象は全怪人が経験しているらしい」
1984 シャイダー「理由や原因は思い出せないが、俺たちは月光仮面に強烈な執念を持つ」
1984 シャイダー「だから俺たちは、あいつを倒すため二死に物狂いで努力した!」

〇カジノ
1984 シャイダー「Millennial Babiesの立役者のワタクシ、1984 シャイダーは、カジノで金を稼ぎ強力な武器を蓄えた」

〇トレーニングルーム
1988 サイバーコップ「お調子者のボク、1988 サイバーコップは、武術を学びトレーニングに励んだよ!」

〇桜並木(提灯あり)
1993 グリッドマン「元気が取り柄のオレ、1993 グリッドマンは、毎日走り回って情報収集に注力した」

〇飲み屋街
1996 シャンゼリオン「人当たりの良い俺、1996 シャンゼリオンは、民衆に取り入り仲良くして、一般の人間の心を理解しようとした」

〇数字
1983 サンバルカン「それでも結局、俺たちは無力だった」
1983 サンバルカン「月光仮面に関する有益な情報や手段を得たり、強力な対抗手段を持ったりすることは出来なかった」

〇廃倉庫
  そんなある日。
  1987年生まれのゴシップ好きの怪人”超人機メタルダー”が、興味深い話をした
1987 メタルダー「月光仮面は、本当は“Gen Z”らしいぞ」
1983 サンバルカン「ジェン・ゼット?」
1987 メタルダー「Gen Zは1997年以降に生まれた人間のことだ。 デジタルや創造に秀でた世代なんだと」
1983 サンバルカン「俺たちは全員、1996年以前に生まれている」
1983 サンバルカン「Gen Zの若者を、俺たちはなぜ40年も前から恨むんだ?」
1987 メタルダー「お前の理屈は正しいが、俺の脳がそう言ってるんだ」
1987 メタルダー「記憶というか、思い出というか・・・」
1983 サンバルカン「はは! 不可逆な時間を操れるなんて、神様みたいな奴だ」
1987 メタルダー「茶化すなよ・・・」
1987 メタルダー「でもまあ実際は、世界有数の大富豪か、名門大学の年老いた名誉教授とかだろうな」

〇公園のベンチ
  それから月日が過ぎ、月光仮面探しに行き詰まった頃
  どこからともなく、怪人に”挑戦状”が届くようになった
  血気盛んな怪人たちは、勇んでその場に向かう
  けれど結局、彼らが帰ってくることはなかった

〇テクスチャ3
  1984年生まれの宇宙刑事シャイダー
  1988年生まれの電脳警察サイバーコップ
  1993年生まれの電光超人グリッドマン
  1996年生まれの超光戦士シャンゼリオン

〇空
1983 サンバルカン「その他にもたくさんの怪人たちを失った。 優しくて努力家で、いい奴らだった」
1983 サンバルカン「16体いた怪人も、1体減り、2体減り・・・」
1983 サンバルカン「今では俺ひとりだけが残った」

〇センター街
  最後の怪人仲間が倒されてから、音沙汰のない日々が続いた
  そして俺にも、その時がやってきた
  ”チョウセンジョウ。
  
  ハイケイ、
  タイヨウセンタイ
  サンバルカン サマ”
1983 サンバルカン「ついに俺の出番だ!」
  挑戦状を受け取った俺は、走って指定場所に向かった。
  そこは寂れた海辺の砂浜だった

〇海辺
  指定された海辺でしばらく待つと、後ろから声がかかった
Gen Z (ジェン・ゼット)「やあ、サンバルカン。 久しぶりだね」
Gen Z (ジェン・ゼット)「僕のことを覚えてる?」
  そこにいたのは、いたって普通の現代風の若者だった。
  漫画のような白髭をたくわえた老人学者を期待していた俺は、拍子抜けした
1983 サンバルカン「・・・お前が”月光仮面”か?」
Gen Z (ジェン・ゼット)「そのペンネームで呼ばれると、ちょっとくすぐったいね」
Gen Z (ジェン・ゼット)「僕は昔からヒーローマニアだったんだ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「だから10歳の頃、一番憧れていた特撮ヒーローの名前を拝借して名付けた」
1983 サンバルカン「10歳?」

〇海辺
Gen Z (ジェン・ゼット)「君たち怪人はね、2000年生まれの僕が、10歳の頃の2010年に作ったんだよ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「夏休みの自由研究としてね」
1983 サンバルカン「そんなはずはない!」
1983 サンバルカン「俺は1983年生まれの太陽戦隊サンバルカンだ! 他の怪人だって、1996年までには生まれているんだ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「いいね。 そのプログラムは、まだ十分機能しているんだ」

〇海辺
Gen Z (ジェン・ゼット)「真実は別にあるんだ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「君たち怪人16体は、15年前の2010年に、僕がいっぺんに作ったんだよ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「君たちの記憶は、僕が好きな戦隊ヒーローをオマージュして、ランダムに創作したんだ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「それから、君たちの脳内には、”月光仮面を倒せ!”のメッセージが定期的に流れてたでしょ?」
Gen Z (ジェン・ゼット)「それも、僕が事前に設定したんだ。 君たちの思考じゃないよ」

〇UFOの飛ぶ空
1983 サンバルカン「なんで、そんなこと・・・」
Gen Z (ジェン・ゼット)「深みが出るから。 ジーンズもバッグも、汚れやキズが付いた方が評価が上がるでしょ?」
Gen Z (ジェン・ゼット)「二足歩行の機械だって同じさ」
1983 サンバルカン「じゃあ、なぜ俺はお前を倒したいと思っているんだ! この執着心はなんなんだ!」
1983 サンバルカン「俺にだって、心があるんじゃないのか?」

〇沖合
Gen Z (ジェン・ゼット)「ただのプログラムさ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「数年ほったらかして自己学習させて、経過観察を終えたら、そのうち論文を書こうと思ってたんだ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「なんたって君たちは、僕の自由研究だからね」

〇空
1983 サンバルカン「で、でも。 お前の話が本当だとして、なんで俺たちを作ろうと思ったんだ・・・?」
Gen Z (ジェン・ゼット)「単純に暇だったから」
Gen Z (ジェン・ゼット)「僕は昔から天才だったし、発明が好きだった」
Gen Z (ジェン・ゼット)「正直、何だってよかったんだよ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「家具でもプラモデルでも、ジグソーパズルでも。 DIYなら、なんだってね」
1983 サンバルカン「そんなことのために、俺たちは何十年もさ迷い続けたのか!?」
1983 サンバルカン「月光仮面を倒すという目的に、訳も分からず執着しながら・・・」
1983 サンバルカン「そういえば、おかしいと思っていたんだ!」
1983 サンバルカン「俺たち怪人は生まれて40年のMillennial Babiesなのに、」
1983 サンバルカン「発明者である月光仮面がGen Z だと知っている奴もいた・・・」
Gen Z (ジェン・ゼット)「エラーだね。 僕もまだ未熟で、完璧な設計ができていなかった」

〇スカイフィッシュの群れ
  月光仮面は俺に虫眼鏡を向け、ふむふむと頷いた。
  レンズは幾何学かつデジタル光り、俺の体を数値として表した。
Gen Z (ジェン・ゼット)「君のような若気の至りのプロトタイプを見ていると、誇らしくもあり、照れくさくもなっちゃうな」
1983 サンバルカン「俺たち怪人の人生を馬鹿にするな!」
1983 サンバルカン「”月光仮面を倒す”という使命のため、精一杯に生きてきたんだ!」
Gen Z (ジェン・ゼット)「あはは、最高だ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「そのセリフを入力した当時の記憶を思い出したよ」
  月光仮面は、ちらりと腕時計に視線をうつした。
Gen Z (ジェン・ゼット)「さあ、そろそろお別れの時間だ」

〇海辺
1983 サンバルカン「お、おい! 月光仮面!」
1983 サンバルカン「これまでの怪人たちのように、俺も無慈悲に破壊する気だな!?」
1983 サンバルカン「全部お見通しだ!」
1983 サンバルカン「お前は10年前、俺の仲間の怪人に、はじめて挑戦状を届けた」
1983 サンバルカン「そいつは町外れの廃屋で、月光仮面と拳で戦った末に息絶えた」
Gen Z (ジェン・ゼット)「僕が中学生の頃の話だね」
Gen Z (ジェン・ゼット)「戦隊物のヒーローに憧れていたから、パワードスーツを開発してさ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「それを使うのにちょうどいい相手を思い出したんだ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「物理攻撃が得意な怪人で、発明者として誇らしかったよ」
1983 サンバルカン「7 年前には、駅前に呼び出された怪人が子供を誘拐するよう指示された」
1983 サンバルカン「そして、人間の学生に阻止された末に警察に撃たれた」
Gen Z (ジェン・ゼット)「高校生の僕は、人助けにはまっていたんだ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「困っている子供をさらう怪人、なんて最良の敵でしょ?」
1983 サンバルカン「5年前には、屈強な怪人が空き地でサイレントに爆破された」
1983 サンバルカン「月光仮面は姿を現さず、ただただ虚しく灰になった・・・」
Gen Z (ジェン・ゼット)「大学生の頃だね。 勉強や私生活でイライラしていたから、ストレス解消に最高だったよ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「スイッチひとつで、ポチっとね」
1983 サンバルカン「そして今日、最後の一体である俺が呼び出された!」
1983 サンバルカン「月光仮面! かかってこい!」
1983 サンバルカン「仲間たちの分まで戦ってやる!」
Gen Z (ジェン・ゼット)「ははは。怖いこと言わないでよ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「このご時世で、そんな派手なことは出来ないよ。 環境にも悪いしね」
Gen Z (ジェン・ゼット)「僕は今日、君を回収しに来たんだよ」
1983 サンバルカン「回収?」

〇スカイフィッシュの群れ
Gen Z (ジェン・ゼット)「僕が君たちを製作した15年前」
Gen Z (ジェン・ゼット)「君たちの内部構造に、今では貴重な金属を使ったんだ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「その当時はどこにでもあったけど、現在ではめったに手に入らない」
Gen Z (ジェン・ゼット)「だから売り払って、金に変えようと思ってね」
1983 サンバルカン「そんなことのために、俺の人生を利用するのか!」
Gen Z (ジェン・ゼット)「懐かしい。 僕が子供の頃に好きだったフレーズだ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「君はいまだに、僕の過去の世界を生きているんだね」
Gen Z (ジェン・ゼット)「・・・すごく楽しかったな」
Gen Z (ジェン・ゼット)「お金にも名誉にもならないオモチャづくりに、真剣に熱中していた子供時代は」
1983 サンバルカン「俺たちはいつまで経っても怪人なのに、発明者のお前は・・・」
Gen Z (ジェン・ゼット)「僕も今では、どこにでもいるGen Zさ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「良くも悪くも、人間は根底から変わっていく」
Gen Z (ジェン・ゼット)「変わらないのは、君たち無機な怪人だけ」
Gen Z (ジェン・ゼット)「僕の経験と成長と、それから貯金の糧になってくれてありがとう」
Gen Z (ジェン・ゼット)「設計者かつ製造元の僕としては、機械に心があるとは思わないけれど・・・」
Gen Z (ジェン・ゼット)「まあ、あったとしたら、向こうの世界で安らかに」
  月光仮面は手を振り、毒々しく光る手元のスイッチを押した

〇海辺
  俺は強烈な痛みを全身に感じ、震えながら吐き気を催し・・・
  なんてことは一切なかった
  俺の身体はただ、なんの苦痛も意思も持たずに、気が抜けてパタリと倒れこんだ
  微動だにしない俺の回りを、月光仮面が放った無数の毛虫のような小型の機械が蝕む
  月光仮面はその様子を眺め、時計に目を落とした。
Gen Z (ジェン・ゼット)「回収業者が30分後に来るから」
Gen Z (ジェン・ゼット)「売れる物質は手早く分解して。 捨てる物質は、端の方に分けておいて」
Z's Minions「はーい!」
  月光仮面の手下の、小型の機械たちが平坦な音声で反応する
  俺の身体は表面が破け、シルバーの部品とグリーンの回路がむき出しになっていく
Gen Z (ジェン・ゼット)「サヨナラ。 僕を作り上げてくれた、“新時代の子どもたち”」
  去っていく月光仮面、もといGen Zの背中を、俺は霞む視界で追い続ける

〇海辺
  ああ、俺は機械なのか
  悲惨で信じがたい状況だが、どうやらこれが事実のようだ
  強烈な虚無と自我のなかで、涙の流せない俺は静かに目を閉じた。

コメント

  • 初めての作品とは思えないスムーズなストーリー展開と語り口に驚愕。怪人たちの紹介が「人当たりが良い」とか「ゴシップ好き」とか、個性と人間味溢れるものだっただけに後半では虚しさが増しました。創造主である神の視点がZ世代の青年であることにも、作者さんの痛烈な皮肉を感じました。

  • なんだか切ない気持ちになりました。
    ただのプログラムだよって言う言葉に凄く重みを感じました。
    自我だと思っていた考えが、誰かに作り出されたものだなんて、信じたくないですよ…。

  • 無機なものへの私達人間の関わり方を痛感させられるお話でした。怪人を例えとしていますが、家電でも自動車でも私達を支えてくれる無機なものにも情というものが存在するのだと視点をかえれば、私達はもっと人間らしくなれるような気がしました。

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