幽霊? 怖くないよ。だって僕、怪人だもん。(脚本)
〇教室
俺は三枝良介。
正直言うと、友達が一人もいない。
その理由は分かっている。俺には良くない癖みたいなものがあって、心の中で思ったことをよく口に出してしまうからだ。
理由は分かっているのに、なぜかそれを直すことが出来ない。
三枝良介「ああ・・・、俺はこのままひとりぼっちで高校生活を終えていくのか・・・」
三枝良介「ん?」
いつもながら小声で心の中の言葉を吐露していると、クラスメイトの女子たちが何やら話しているのが聞こえてきた。
女子生徒「ねぇねぇ知ってる? 最近噂になってる怪人のこと」
女子生徒「知ってる知ってる、あれでしょ? 人間の魂を食べちゃう怪人の話」
女子生徒「そうそう、怖いよねぇ。帰り道とかで会ったらどうしよう・・・」
女子生徒「大丈夫。二人で帰ろう。私が守ってあげる」
女子生徒「ほんと? ありがとう~! 心強いよ!」
三枝良介「いや、そんな簡単に他人守れるわけねぇだろ・・・」
女子生徒「え?」
三枝良介「あ・・・」
女子生徒「なに、こいつきも」
女子生徒「帰ろ帰ろ」
三枝良介「ああ、またやってしまった・・・」
三枝良介「俺も帰ろう・・・」
〇住宅街
三枝良介「なんで俺っていつもこうなんだろう・・・」
三枝良介「常日頃から小声で何か言ってるし、そりゃ気持ち悪いよな」
リバイア「何をぶつぶつ言っているんだい?」
三枝良介「え?」
三枝良介「なんだこの人。いや、そもそも、人なのか? コスプレか? いや、でも、頭から火が出てて人なわけないよな?」
俺はクラスの女子たちが話していた噂を思い出してしまった。
三枝良介「うわあ!」
リバイア「お、急にどうした? 僕の名前はリバイア。ちょっと道を聞きたいんだけど、今、君は暇かな?」
三枝良介「ひ、暇じゃないですけど。今、学校から帰ってる途中なんで」
リバイア「突然で悪いんだけど、ここら辺に幽霊の出そうな廃墟無いかな、と思ってさ」
三枝良介「え、全然人の話聞かないじゃん、この怪人」
リバイア「良いね良いね。君さ、僕からしたら面白いんだけど、何か困った癖を持っていないかい?」
三枝良介「べ、別に持ってないですよ。個性ですよ、個性」
リバイア「僕の手伝いをしてくれたら、それ、なんとかしてあげるけど。別に、なんだもんねぇ?」
三枝良介「なんとか出来るんですか!?」
リバイア「なんとかしてあげるよ。僕が君の友人一号にもなってあげるし」
三枝良介「いや、友人は別に良いんですけど」
リバイア「真の友情というものは時として大事なものなのだよ? byリバイアさん」
三枝良介「何言ってんだ? 勝手に自分の名前に、さん付けしてるし・・・」
リバイア「さあ、じゃあ今から僕らは友人だ! 共に行こう!」
そう言って、リバイアさんは俺の手を引いて歩き出した。
三枝良介「うるさっ。っていうか、この状況恥ずかしいんですけど?」
リバイア「ああ、すまない、すまない。道の分からない僕が先導してもね、駄目だよね、ごめんね。一緒に迷子になったら恥ずかしいしね」
三枝良介「そういうことじゃねぇんだわ」
怪しいな、と思いながらも、自分の癖を直してくれるという言葉に抗えず、道案内をすることにした。
〇廃ビル
俺がリバイアさんを連れてやって来たのは近所の廃ホテルだった。
三枝良介「なんで俺まで中に入らないといけないんですか?」
リバイア「一人だと寂しいから」
三枝良介「廃墟潜入に寂しいもなにもないだろ」
リバイア「良いじゃないか、少年。我々は友達だろう?」
三枝良介「・・・これ、本当に友達と言えるのか? 今さっき会ったばかりだし、怪人だし」
三枝良介「いや、待てよ? この怪人、人の魂喰らうんじゃなかったっけ?」
リバイア「大丈夫、生きた人間の魂に興味は無いさ」
三枝良介「どや顔すんなよ」
三枝良介「じゃなくて、それってどういう・・・」
三枝良介「なんだ? 何かラップ音みたいなのが聞こえて」
リバイア「さて、来たかな」
幽霊 女「呪って・・・や、る・・・!」
三枝良介「うわぁ! 出たぁ!」
幽霊 女「殺す゛・・・許さな、い゛」
三枝良介「やばい! やばいですよ! 殺すとか言ってますよ!?」
リバイア「大丈夫、大丈夫、幽霊はね、人間の生命力の強さに弱いから、こうすれば・・・」
リバイア「うるせぇぞ! 死にてぇのか! この悪霊が!」
リバイア「あ、僕、人間じゃなかったわ、ごめん」
三枝良介「何言ってんですか! 彼女、もう死んでるしっ!」
リバイア「ちょっと君さ、僕の代わりに彼女に怒鳴ってみてくれないかな?」
三枝良介「嫌ですよ! ほんと何言ってんの!?」
リバイア「え~?」
三枝良介「え~? じゃないですよ! 怖くないんですか? リバイアさんは!」
リバイア「怖くないよ」
リバイア「だって僕、怪人だもん」
三枝良介「今、そういうのいらないです」
リバイア「え、絶対今決め台詞言うタイミングだったでしょ?」
幽霊 女「うがああああ・・・!」
リバイア「おっと」
三枝良介「大丈夫ですか!? 幽霊って物理攻撃可能なんですか!?」
俺は床に倒れたリバイアさんの元に駆け寄った。
リバイア「あー、駄目かも・・・。そういえば、名前聞くの忘れてたけど」
三枝良介「三枝です! 三枝良介!」
リバイア「三枝くん、僕は君と出会えて幸せだったよ」
三枝良介「駄目ですよ! そんな! まだ友達になったばかりなのに!」
リバイア「あ、言ったね? 友達って。僕、頑張っちゃお」
リバイア「ゴーストファイアー!」
幽霊 女「ギェエエエ!」
リバイア「いただきます」
辺りに舞う悪霊の魂の欠片をリバイアさんは口から吸い込んでいった。まるで栄養ドリンクを飲むように
リバイア「満腹満腹・・・。お腹減りすぎて死にそうだったんだよね」
三枝良介「そんな技が出せるんだったら、最初から出せよ」
リバイア「お、小声じゃなくなったね」
三枝良介「え?」
リバイア「僕といれば、君のそれは直るんだよ」
リバイア「だって僕は君が何を言ったって気にしないから」
リバイア「君が何を言おうと僕は僕さ」
三枝良介「じゃ、じゃあ、俺のこれは根本的には直らないってこと?」
リバイア「さあ、どうだろうね? それも一種の怪異のような気がするよ」
リバイア「ただ、今はどうにも出来ない。でも・・・」
リバイア「良いじゃないか。一人でも君を理解している″人″がいるんだから」
三枝良介「それって・・・・・・」
リバイア「ちなみにさっきの技は友達パワーが溜まらないと撃ち出せないんだ」
三枝良介「なんだそれ、怪人なのに正義のヒーローみたいなシステムしてんな」
リバイア「ということで、次回もよろしく。友達の三枝くん」
三枝良介「え? えぇ!?」
こうして俺はリバイアさんと友人になり、さまざまな幽霊、怪異と対峙していくことになるのだった―。
一人も友達がいなかったのにいきなりソウルメイトができるなんて、それも怪人なんて、良介は運がいいんだか悪いんだか。リバイアは飄々としていながらユーモアもあっていざとなったら友情パワーで頼りになりそうだし、私も友達になりたいくらいです。
この怪人さん、なにかすごくいい人のような気がしてなりません! もしかして、もとは人間だったのかなあとか想像しています。二人の間にはっきりと友情が芽生える瞬間を見届けたいです。
まさかの俺たちの戦いはこれからだエンド!