大人のためのヒーロー劇場~嫁は嫁いびり怪人をボコボコにしたい~

犬項望

エピソード1(脚本)

大人のためのヒーロー劇場~嫁は嫁いびり怪人をボコボコにしたい~

犬項望

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〇システムキッチン
秋子「美雨さん、どういうこと!」
美雨「何のことです、お義母さん?」
秋子「この指輪よ!」
秋子「あなたが大事にしているから 高く売れるかと思ったら」
秋子「1円にもならない玩具だって 言われちゃったじゃない!」
秋子「馴染みの質屋だったのに、 もう赤っ恥だわ!」
美雨「これ探していたんですよ! また盗んだんですか」
秋子「交通費と大恥をかかせた分の 慰謝料を払いなさい!」
  私は霞 美雨。
  夫と息子と三人暮らしの主婦。
  悩みの種は、時々家に来ては騒ぎ立てる
  夫の母、秋子である。
美雨「ちょっとあなた何か言ってやってよ」
秋子「春彦ちゃん、助けて!  美雨さんがお母さんを泥棒扱いするの」
春彦「美雨、母さんに謝ったほうが」
美雨「今の話聞いていたでしょ!?」
美雨「どこにお義母さんの味方を できる要素があるのよ!?」
美雨「私のものでお金になりそうなものは 何でも持ち出して売っちゃうのよ!」
  ちなみに夫や孫のものは決して盗まない。
  いわゆる嫁いびりだ。
秋子「自分の家のものを売って何が悪いの!」
美雨「ここは私と春彦さんと風太の家です! お義母さんは実家に住んでいるでしょう」
春彦「美雨、母さんに口ごたえしないでくれよ。困るのは俺なんだ」
美雨「あなた、風太が見ているわよ」
  息子の風太は、大好きなヒーロー番組
  審判戦士ヴァイスリヒターを視聴中だ
風太「ヴァイスリヒターがんばれー!」
  だが、騒ぎに気付いて
  つぶらな瞳をこちらへ向けている。
美雨「悪いことをした人を庇うって それでも父親?」
美雨「母親が暴走したら、 それを止めるのが息子の役目じゃない?」
春彦「どうしよう母さん!?」
秋子「こんな嫁、捨ててしまえ! 離婚だー!」
美雨「お義母さんがこう言っているけど あなたはどうなの?」
春彦「え、離婚なんかやだよ!?」
春彦「美雨、母さんに謝ってくれ! 今なら許してくれるよ」
美雨「もういいです 私が風太を連れて出ていきます」
秋子「風太ちゃんは置いていきなさい! 家の跡取りなのよ」
美雨「それは風太に決めさせます」
美雨「風太、どうする? パパとママ、どっちに付いていく?」
風太「ママに付いていくー」
春彦「即答!?」
秋子「もういい! 春彦ちゃん、実家に帰るわよ!」
春彦「え、何で?」
秋子「作戦会議よ! この女から孫も慰謝料も 根こそぎ奪ってやるんだから!」

〇明るいリビング
  夫と義母が家を出ていったあと
  私は風太に今回の件の説明をした。
風太「いいよ、ママについていく」
風太「ママ、優しいもん!」
風太「パパはおばあちゃんばっかりで あそんでくれないし・・・・・・」
美雨「ありがとう、一緒にがんばろうね!」
  私は今でも主婦と正社員を兼業中。
  風太を育てるのに問題はないはずだ。
風太「ママの宝物 もどってきたんだね」
  この指輪は私が幼い頃に亡くなった
  実母の形見だ。
  鏡を宝石のように張り合わせた玩具。
  質屋が買取を拒否したのも当然だろう。
美雨「フフ、この指輪がなかったら ママ、怪人になっちゃっていたかも」
風太「ママが怪人? ならないよ、ママ優しいもん」
美雨「人間はね、誰でも怪人になる なってしまうの」
美雨「感情が暴走すれば 何をするか分からなくなる」
美雨「だからママはね」
美雨「気が高ぶったときは指輪の鏡に映し 怖い顔になっていないか確かめるのよ」
  嫁いびりをされているとき
  何度もこの指輪に救われた。
  自分の表情を鏡で見ることで
  客観的になれたのだ。
美雨「ねえ、風太」
美雨「いつかママが怪人になっちゃったら どうする?」
風太「ぼくがヒーローになって やっつけるよ!」
美雨「即答!?」
  風太はヴァイスリヒターの
  変身ブレスレットを翳した。
  私がプレゼントした
  目下、風太一推しの玩具だ。
風太「ヴァイスリヒター変身!」
  変身ブレスが変形し
  合成音のメッセージを発する。
  フウタ! メタモフォローゼ!
美雨「ならママも怪人に変身だー!」
  私は指輪を変身アイテムにみたて
  変身ポーズっぽいものをとる。
  指輪の鏡には
  幸せな母親の顔が映っていた。
美雨「変身!」
  風太お気に入りのヒーローごっこ。
  これが、風太と遊んでやれる
  最後の時間になった。

〇明るいリビング
  翌日の夕方
  保育園に風太をお迎えして帰宅すると。
風太「ママ、変身ブレスがないよ!」
美雨「昨日、いつもの場所に しまったでしょ?」
  私は玩具箱を開けた。
美雨「何これ!?」
  中身が空っぽだ!
  沢山あった玩具が一つもない。

〇本棚のある部屋
  泣きじゃくる風太と一緒に
  家中を探し回る。
  靴や服、風太が大事にしていたものが
  みんな無くなっている!
美雨「まさか──」
  可能性は十分だった。
  けど、あれは嫁いびりのための窃盗。
  今までは私のもの以外には
  手出しをしていなかったのに、何故?

〇シックな玄関
  その時、玄関のドアが開いた。
秋子「美雨さん、離婚届を持ってきたわよ」
風太「パパ! ばあちゃん! あのね、変身ブレスレットがないの!」
秋子「あらあら、大変ねえ」
秋子「きっとママが捨てちゃったんだよ」
秋子「ママはね 風太ちゃんのことが邪魔なんだよ」
秋子「だから大事なものを全部捨てちゃったのね」
美雨「お義母さん! 何を!?」
秋子「きっとママにはパパ以外に 仲の良い男の人がいるんだよ」
秋子「その人と暮らしたいから 風太ちゃんはいらないんだって」
美雨「でたらめを言わないで!」
  義母は私の訴えを無視して
  風太にプレセントの箱を渡した。
秋子「ばあちゃんには分かっていたからね だからこれを買ってきてあげたよ」
  包装紙を開けると、そこには
風太「ヴァイスリヒターの変身ブレスだ!」
美雨「それ、探していたやつです!」
美雨「やっぱりお義母さんが 盗んだんですね!」
秋子「いいがかりはおやめ! これは今日、デパートで買ったものよ!」
秋子「風太ちゃん、大事なもの 全部なくなっちゃったんでしょ?」
秋子「風太ちゃんが欲しいものは 全部おばあちゃんちにあるからね」
秋子「これからはおばあちゃんとパパと 3人で暮らそうねー!」
  間違いない!
  私の外出中に家にあがりこんで
  風太のものを根こそぎ盗んだのだ。
美雨(見え透いている!)
  だが、風太はまだあまりにも幼い。
美雨(風太、お願い! 騙されないで──)
  息子が私を嫌いになってしまう
  私はそれを恐れた。
  そんな母心は知らず、風太は変身ブレスを腕につけて遊んでいる。
風太「ヴァイスリヒター変身!」
  フウタ! メタモフォローゼ!
秋子「ちゃんと動くわ、良かったわね」
風太「分かった!」
秋子「何が?」
風太「怪人は ばあちゃんだあ!」
秋子「痛い、何をするの!?」
風太「これママに買ってもらった変身ブレスだよばあちゃんが盗んだんだね!」
秋子「今日、私がデパートで買ったものよ!」
美雨「分かるんですよ、お義母さん」
美雨「さすがは風太ね 悪を見抜くヒーローの才能があるわ」
美雨「そのブレスレットには 持ち主の名前を入力できるんです」
美雨「買ったばかりのブレスレットなら 風太の名を呼ぶわけがありません!」
秋子「うっ!?」
風太「ばあちゃんは悪い人!  いつもママをいじめる! だから嫌い!」
秋子「そんな風太ちゃん」
  愛しい孫に嫌われ
  義母は茫然としている。
  何故、世の姑は孫には好かれたがるのに
  嫁をいじめるのか?
  母親をいじめる者を好きになる子どもなど居はしないのに。
  世の七不思議である!
秋子「ならもういい」
嫁いびり怪人(秋子)「もういいー-っ!」
  唐突に、あまりにも唐突に
  義母の姿が変化した。
風太「ばあちゃん!?」
嫁いびり怪人(秋子)「お前みたいな孫は」
  怪人と化した義母は
  風太の頭を鷲掴みにした。
嫁いびり怪人(秋子)「いらない!」
  何の容赦もなく
  風太の小さな頭を床に叩きつける!
  バスケットボールで
  ドリブルをするかのように。
美雨「風太!」
  鈍く、嫌な音がした。
  幼い体は床に倒れたまま
  動かなくなった。
嫁いびり怪人(秋子)「憎たらしい子! きっと母親に似たのね!」
  白目を剥いた風太の顔を
  怪人の足が踏みつけ潰そうとしている。
  湧き上がる怒り。私は習慣から
  鏡の指輪に自らの顔を映す。
  怒りに歪んだ醜い顔がそこに映っている。
  いつもならそれを嫌悪し、冷静になれた。
  だが今は──。
美雨「構うものか」
  私は自らの怒りと醜さを受け入れた。
  殺したい、姑を──!
  法の裁きではなく
  今すぐ自分の手で!
春彦「美雨、お前!」
春彦「母さんと同じアルコーンウイルスに!」
  アルコーンウイルス。
  X国が人体を生物兵器に
  変えるために開発。
  のちに流出。
  そんな理屈はどうでもいい。
  人間は憎悪に身を任せれば
  誰だって人の心を失う。
  即ち──。
  怪人になってしまうのだから。
嫁いびり怪人(秋子)「面白いわね、けど!」
嫁いびり怪人(秋子)「姑に勝てる嫁などいないわ!」
姑ぶん殴る怪人(美雨)「子を守らんとする 母に勝てるものなど、いません!」
  電光を宿した一撃が
  姑の顔面にヒットする。
嫁いびり怪人(秋子)「ぐは!」
嫁いびり怪人(秋子)「くっ、嫁の分際で」
  義母がたじろいだその隙に、
  私は連続で拳を叩きつけた
嫁いびり怪人(秋子)「ぐわっ、げはっ!」
嫁いびり怪人(秋子)「美雨さん! やめなさい!」
姑ぶん殴る怪人(美雨)「私は前からこうしたかったんです」
姑ぶん殴る怪人(美雨)「姑をボコボコに殴る!」
姑ぶん殴る怪人(美雨)「それが嫁の夢!」
嫁いびり怪人(秋子)「やめて、許して、美雨さん・・・・・・ ごはっ!?」
姑ぶん殴る怪人(美雨)「謝っても許さない!」
姑ぶん殴る怪人(美雨)「いびられ続けた嫁の恨み! 今こそ!」
春彦「美雨、やめてくれ!」
マザコン怪人(春彦)「母さんに乱暴なんて」
マザコン怪人(春彦)「ぐあっ!?」
  止めに入った夫の顔。
  そこに横殴りの拳を叩きつける。
  彼はすでに母親の眷属だった。
姑ぶん殴る怪人(美雨)「いらない! 家族を守ろうとしない父親なんて」
姑ぶん殴る怪人(美雨)「あなたは風太が潰されるのを 止めようともしなかった」
姑ぶん殴る怪人(美雨)「私が何年もいびられていたのだって 守って欲しかったのに──」
姑ぶん殴る怪人(美雨)「いつもお義母さんの味方をして!」
嫁いびり怪人(秋子)「ひぃ、鬼嫁!」
  憎しみのまま
  二人に拳を振り下ろし続ける。
嫁いびり怪人(秋子)「がはっ!」
  何百発と殴り続けた末、夫と姑は
  元の形が分からぬ肉血の塊となっていた。

〇シックな玄関
美雨「風太──」
  風太を抱き上げると
  ぬくもりとかよわい呼吸を感じた。
美雨「ごめんね 痛い思いをさせてしまって」
  病院に電話をかけ
  救急車を呼ぶ
  そして指輪を外し
  風太の手に握らせた。
美雨「ママの形見だと思って」
美雨「ごめんね── 一緒にいてあげられなくて」
  私は愛しい我が子の前から姿を消した。

〇荒廃したセンター街
  十数年後──。
  私は街はずれで一人の青年と鉢合わせる。
美雨「大きくなったわね 風太」
美雨「ごめんなさい、急にいなくなって」
風太(特務警官)「ずっと探していたよ、お母さん」
  風太は特任務警官の制服を纏っていた。
風太(特務警官)「あれから何をしていたの?」
美雨「知っているわよね? アルコーン対策部の特務警官なら」
風太(特務警官)「そうだね」
風太(特務警官)「アルコーンウイルスが発症してしまうと 二度と元に戻ることはできない」
美雨「ええ、その力と暴力衝動は 時とともに増してゆくわ」
美雨「こうして人の姿に 擬態できる時間も短くなってゆく」
  私は世の悪い姑を妖力で探し出し
  惨殺するだけの怪人になっていた。
風太(特務警官)「けれど、アルコーンの力を 制御する技術も開発されている」
風太(特務警官)「それがアルコーン対策部特務警官」
風太(特務警官)「俺はそれになったんだ」
美雨「風太」
美雨「約束、守ってくれたんだね」

〇明るいリビング
美雨「ママが怪人になっちゃったら どうする?」
風太「ぼくがヒーローになって やっつけるよ!」

〇荒廃したセンター街
姑ぶん殴る怪人(美雨)「風太」
風太(特務警官)「お母さん」
風太(特務警官)「変身!」
風太(特務武装)「霞 風太特務巡査長!  武装完了!」
風太(特務武装)「アルコーン05号を確認! これより制圧に入る!」
  息子は望んだ通り、母の暴走を止められる男になってくれたのだった。

コメント

  • 嫁姑戦争をそのまま怪人同士の戦闘に移行させ、エンタメに昇華させたアイデアに驚愕。「嫁いびり怪人」「姑ぶん殴る怪人」というドストレートな名前もいいですね。頼もしい姿に成長した風太との再会は母親として誇らしくもあり切なくもあり…。素敵なラストでした。

  • 姑が怪人になるお話かと思いきや。
    嫁も旦那も怪人に…!
    最後、息子が立派になって母親の前に立つシーンは、同じく息子を持つ母として染みるものがありました…。

  • 一般的な嫁姑問題のシーンから、スケールの大きい展開になっていきましたが、それでも母と息子の愛情、絆という軸がしっかり描けていて、お話の結末に感動しました。

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