第一話 ヒーローの誕生(脚本)
〇広い公園
タル谷「今だヘルメス、マッハパンチ!」
ヤマト「遅い、破砕槍!」
〇広い公園
タル谷「ヘルメス!」
タル谷「あー、また負けたぁ」
ヤマト「ふう」
ヤマト「タルやん、動きはだいぶ良くなってきたよ」
タル谷「ホント!?」
ヤマト「うん 俺にはまだ及ばないけどね」
木田「やっぱヤマトつええ!」
林田「次は僕と森田の番だね」
森田「おーしボコボコにしてやる!」
〇公園のベンチ
ツクル(これでヤマトの十連勝か)
ツクル(確かにヤマトは強い)
ツクル(使ってるヨロイは最新型だし カスタムもちゃんとしてるもんな)
ツクル(でも──)
ツクル(ボクとワスパントが戦ったら、 ボクらが絶対に勝つけどね!)
ツクル(だって、ワスパントは最強だもん!)
タル谷「あれ、ツクル こんなとこで何してるの?」
ツクル「いや、ボクは」
タル谷「あ、それ──」
タル谷「『鎧神』だ!」
タル谷「ツクルも鎧神やってたの?」
タル谷「そのヨロイ、初めて見るなあ なんてヤツ?」
ツクル「これは・・・」
ヤマト「それは鎧神じゃないよ」
ヤマト「だよな?」
タル谷「そうなの?」
ヤマト「ツクルの家、鎧神禁止だもんな」
ツクル「うん、まあ」
タル谷「なんだ じゃあそれ、ただの人形かぁ」
ツクル「違うよ!」
ツクル「こいつはボクが一から作った、 オリジナルのヨロイなんだ!」
タル谷「自作!? それはすごいね」
ヤマト「ま、動かないヨロイなんて無意味だけどな」
タル谷「それもまあ、確かに」
森田「おーい、次タルやんと木田だぞ!」
タル谷「あ、はーい!」
タル谷「じゃ、またね、ツクル」
ツクル「おう」
ヤマト「・・・ツクルさぁ」
ヤマト「お前、工作だけは上手いんだからさ」
ヤマト「そんな偽物で遊んでないで 真面目な作品でも作ったら?」
ツクル「・・・」
木田「ヤマトも早く来いよー!」
ヤマト「おー!」
ヤマト「・・・じゃあな」
〇川に架かる橋の下
ツクル「うあー!」
ツクル(ム・カ・ツ・ク!)
ツクル(ヤマトの奴、あんな言い方ないだろ!)
ツクル(ボクだって、鎧神さえ持ってれば──)
ツクル「ん?」
ツクル「あれって──」
ツクル(ボロボロだけど・・・)
ツクル(まさか、鎧神?)
ツクル「なんでこんなところに」
ツクル(壊れたヤツを誰かが捨てたのかな)
ツクル「動いた!」
ツクル「外側はボロボロだけど中身は無事なのかも」
ツクル「よし、それなら──」
〇綺麗な一戸建て
ツクル「ただいまーっ!」
〇木造のガレージ
ツクル「すぐキレイにしてやるからな」
ツクル「待ってろよ!」
〇木造のガレージ
ツクル「ふう」
ツクル「あとは、これをハメれば──」
ツクル「完成!」
ツクル「ついにできた!」
ツクル「ボクだけの鎧神が!」
???「──ここは、どこだ」
ツクル「えっ」
ツクル「が、鎧神が」
ツクル「しゃべった!?」
???「お前は誰だ」
ツクル「ボ、ボクは神足創(こうたりつくる)」
ツクル「キミがボロボロだったから、 拾ってヨロイを交換したんだ」
???「そうか」
ツクル「キミは、えっと、なんなの?」
???「俺は・・・」
???「俺は、なんだ?」
ツクル「覚えてないの?」
???「わからない」
ツクル「うーん、鎧神とは違うロボットなのかな」
???「ガイシン?」
ツクル「うん! 『鎧神』知らない?」
ツクル「正式には『鎧神大戦』っていうんだけどね」
ツクル「専用のアプリで操作して、競走させたり戦わせたりできるロボットホビーなんだ」
ツクル「ロボットにはいろんなヨロイを着せられて、それによって動き方やスキルが変わったりもするんだよ!」
ツクル「本体の大きさは大体30センチ、つまりキミと同じぐらいで──」
???「俺はガイシンなのか?」
ツクル「え? あ、うーん・・・」
ツクル「鎧神は、アプリなしだと動かせないんだよね」
ツクル「でもキミは一人で動けてるし その上、会話までできる」
ツクル「つまり、キミは・・・」
ツクル「スゴいAIを搭載した最新の鎧神なのかも!」
???「そうなのか」
ツクル「きっとそうだよ!」
ツクル「ねえキミ、記憶が無いなら 行くところも無いんでしょ?」
ワスパント「無い」
ツクル「じゃあ、ずっとウチに居なよ!」
???「ウチに?」
ツクル「今日からこのガレージがキミの家ってこと!」
???「わかった」
ツクル「やったぁ!」
ツクル「よろしくね、ワスパント! キミは今日からボクの相棒だ!」
???「ワスパント」
???「俺の名前か?」
ツクル「あ、うん」
ツクル「ボクと父さんふたりで考えた 最強ヒーローの名前なんだよ」
ワスパント「わかった」
ワスパント「俺はワスパント コウタリツクルの相棒だ」
ツクル「ツクルでいいよ」
ワスパント「わかった、ツクル」
ツクル「じゃあ改めて、これからよろしくね! ワスパント!」
ワスパント「よろしく、ツクル」
〇綺麗な一戸建て
〇綺麗な一戸建て
ツクル「行ってきまーす!」
〇広い公園
タル谷「よーし、今日こそヤマトに勝つ!」
ヤマト「手加減はしないぞ」
木田「あ、ツクルだ」
ツクル「おはよう皆! ボクも仲間に入れてよ!」
タル谷「え、でも今日も鎧神だよ?」
ヤマト「ツクルは持ってないだろ」
ツクル「ふっふっふ」
ツクル「これを見よ!」
タル谷「それ、昨日の動かないやつでしょ」
ツクル「違うよ、見てて!」
ツクル「ワスパント、起動!」
「動いた!」
ツクル「ねっ!」
ヤマト「ははっ、面白い」
ヤマト「いいよ、俺とやろうぜツクル」
ツクル「おう!」
〇広い公園
ヤマト「基本的なルールは知ってるよな」
ツクル「もちろん!」
ヤマト「倒れたら負けの一本勝負だぞ」
ツクル「ああ!」
ヤマト「よし」
ヤマト「ヘラクレス、起動!」
ツクル「ワスパント、起動!」
「大戦(バトル)」
「開幕(スタート)!!」
ヤマト「破砕槍!」
タル谷「ヤマトの速攻だ!」
木田「ツクルはどう出る!?」
〇木造のガレージ
ワスパント「バトル?」
ツクル「そう!」
ツクル「明日、公園で他の鎧神と戦ってみようよ!」
ツクル「戦ってこそ鎧神だし!」
ワスパント「わかった、戦おう」
ツクル「あ、でもキミが一人で動けるってバレたら、 ズルだって言われちゃうかな」
ツクル「そしたらバトルしてもらえないかも・・・」
ツクル「よし、ヒミツにしよう!」
ワスパント「ヒミツか」
ツクル「ボクはアプリを使ってるフリするから!」
ツクル「ワスパントはボクの言った通りに動いてね!」
ワスパント「わかった」
〇広い公園
ツクル「ワスパント、回避だ!」
タル谷「避けた!」
ヤマト「ナメすぎたか」
ヤマト「なら、これで」
ヤマト「どうだ!」
タル谷「ヤマトの連続パンチを──」
木田「ぜんぶギリギリで避けてる!?」
ツクル「今だ!」
ツクル「頭を狙って──ワスプニードル!」
ヤマト「な・・・」
ツクル「や、」
ツクル「やったあ!!」
木田「やっべえ、メチャクチャつええ!」
タル谷「あんな動き、初めて見たよ!」
ヤマト「ありえない・・・」
ヤマト「ツクル、その鎧神、よく見せてくれ」
ツクル「ダ、ダメだよ! キギョーヒミツだから!」
ツクル「あ、バトルならいいよ!」
ツクル「もう一回やる?」
ヤマト「・・・」
ヤマト「いや悪い、家の用事があるの忘れてた」
ヤマト「今日はもう帰るわ、ごめんな」
ツクル「あ、おう」
タル谷「ヤマト、急にどうしたんだろ」
木田「連勝記録が途切れたからスネてんだろ?」
木田「それよりツクル、次はオレとやろうぜ!」
ツクル「うん!」
〇広い公園
〇広い公園
〇木造のガレージ
〇広い公園
〇通学路
ヤマト(おかしい、おかしすぎる)
ヤマト(プロの動画を漁ってみても あんな風に動ける鎧神なんて居なかった)
ヤマト「一体なんなんだ、あの鎧神は・・・」
???「キヒヒ、教えてやろうか?」
ヤマト「誰──」
ヤマト「──え?」
???「やあどうも」
ヤマト「な、んだお前 鎧神?」
???「あんな模造品と一緒にしないでくれよ」
???「俺様は、怪なる神の一柱」
???「怪神ソーン、って呼んでくれ」
ヤマト「くだらないイタズラはやめろ どうせ誰かが遠隔操作してるんだろ」
ソーン「キヒ、オトナだねぇヤマト君は」
ソーン「ツクルって奴が持ってるアレについて 知りたいんだろ?」
ヤマト「ワスパントのことか?」
ソーン「そうそう、そんな名前だったね」
ソーン「俺様はね、アレを回収しに来たのよ」
ヤマト「回収、って」
ソーン「うん、実はアレね 俺様たちの同族なの」
ヤマト「・・・詳しく聞かせろ」
〇綺麗な一戸建て
ツクル「行ってきまーす!」
〇広い公園
ツクル「あれ、まだ誰も来てないのか」
ヤマト「他は誰も来ないぞ」
ヤマト「皆には、今日は休みって連絡しておいたから」
ツクル「あ、ヤマト それを教えに来てくれたの?」
ヤマト「いや」
ヤマト「俺はお前とバトルがしたくて来た」
ツクル「お、こないだのリベンジだね! いいよ、やろう!」
ツクル「ワスパント、起動!」
ヤマト「来い、ソーン」
ツクル「えっ?」
ツクル「わあ、なにソイツ、かっこいいね! 新型!?」
ヤマト「行くぞ」
ツクル「あっ、ちょっと待ってよ」
ヤマト「大戦開幕(バトルスタート)」
ツクル「もう! ワスパント、まずは様子を見て──」
ヤマト「ソーン、弾け」
ツクル「は!?」
ツクル「痛っ!」
ツクル「なにすんだよ! スマホ狙うのは反則だろ!」
ヤマト「ソーン、やれ」
ツクル「あっ、ワスパント、避けろ!」
ツクル「おいヤマト、ふざけんなよ!」
ヤマト「もういい、やめろソーン」
ツクル「え、なに?」
ヤマト「なあツクル 今、どうやってワスパントに命令した?」
ツクル「え、それは、アプリの音声入力で・・・」
ヤマト「スマホ、吹っ飛ばしたのに?」
ツクル「あ」
ヤマト「はあ」
ヤマト「信じたくなかったよ、ツクル」
ヤマト「そいつ、本当に鎧神じゃないんだな」
ツクル「ち、違うよ! 実は、ワスパントは最新型の鎧神でね!」
???「キヒヒ!」
???「組織から逃げおおせた”無貌”君が まさかガキの玩具になってたとはね」
ツクル「誰!?」
ツクル「ヤマトの鎧神?」
ツクル「お前、ワスパントを放せ!」
ヤマト「ソーン、やめろって言っただろ」
ソーン「俺様こそ最初に言っただろ?」
ソーン「俺様はこいつを回収しに来たんだよ」
ヤマト「それは、ツクルに詳しい話を聞いてからって」
ソーン「あーもう、うるせえなあ」
ソーン「道具は黙ってろ」
ヤマト「は!?」
ヤマト「ぐっ!?」
ヤマト(ツタが、全身に巻き付いて──!)
ヤマト「んー、んー!」
ソーン「お前はそうやって、俺様にエネルギーだけ 送ってればいいんだよ」
ツクル「ヤマト!」
ソーン「ああ、自己紹介がまだだったねツクル君」
ソーン「俺様は”無限”の怪神ソーン」
ツクル「カイ、ジン?」
ソーン「身長30センチ体重4キロ 特技は触れた草木をどこまでも伸ばすこと」
ソーン「こんな風にな!」
ツクル「うあっ!?」
ソーン「じゃ、コイツとヤマト君は貰ってくね」
ソーン「バイバーイ」
ツクル「う、そんなのダメだ!」
ツクル「ワスパント! キミに巻き付いたツタを引きちぎれ!」
ソーン「キヒヒ、ムダムダ。このザコにそんな力は」
ソーン「──へ?」
ツクル「今だ、ぶん殴れ!」
ソーン「ちょ、ま」
ソーン「ぐぁ!?」
ソーン「な、なぜだ!」
ソーン「貴様は、”無貌”は、『所有者が想定した通りの存在になる』力しかねえザコのはず!」
ソーン「そんなパワーを出せるはずが──」
ツクル「ワスパントは、最強の鎧神なんだ!」
ツクル「カイジンなんかに、絶対に負けない!」
ソーン(・・・そうか、このガキ)
ソーン(本物のバカなのか!)
ソーン「お前、こんなヤツが強いと 本気で思ってるのか!?」
ツクル「思うとか思わないとかじゃない!」
ツクル「ワスパントは最強なんだ!」
ソーン(マズい、話が通じない!!)
ソーン「キヒ、こ、こんな小さな玩具がよぉ そんな強いわけないだろうが!」
ソーン「ばーかばーか!」
ツクル「小さい・・・」
ソーン(おっ、効いたか?)
ツクル「そうか、大きくなればもっと強く・・・」
ツクル「ソーンがツタを伸ばせるみたいに もしかしたらワスパントも・・・」
ツクル「よし、ワスパント!」
ツクル「ボクと合体だ!」
ソーン「は」
ソーン「はぁあああ!?」
ワスパント「・・・」
ワスパント「わかった」
ソーン「わかってんじゃねえ!」
ツクル「合!」
ワスパント「体!」
ゴッドワスパント「完成! ゴッドワスパント!」
ソーン「なんでもアリかよォ!?」
ソーン(仕方ねえ、こうなったら俺様の奥義を──)
ソーン「あっ」
ゴッドワスパント「ゴッド・ワスプ・ニィィイドル!!」
ソーン「ぐぁああああ!」
〇広い公園
ヤマト「──っぷは」
ゴッドワスパント「ヤマト、大丈夫!?」
ヤマト「あ、ああ、ありがとう・・・」
ヤマト「ツクル、なんだよな?」
ゴッドワスパント「うん! ケガは平気?」
ヤマト「ああ」
ヤマト「でもお前は、その・・・大丈夫なのか?」
ゴッドワスパント「絶好調だよ!」
ヤマト「そう、か でも──」
ゴッドワスパント「ヤマトが無事なら、ボク、行ってくるね!」
ヤマト「え、どこに?」
ゴッドワスパント「ソーンの言ってた”組織”ってヤツを やっつけてくる!」
ヤマト「は?」
ヤマト「いやそんなの、名前も所在も どんな組織かさえわからないのに──」
ゴッドワスパント「わかるよ!」
ゴッドワスパント「ワスパントは、最強のヒーローだからね!」
ヤマト「はあ?」
ゴッドワスパント「三ヶ月は帰ってこれないと思うけど、 皆には平気だって伝えておいて!」
ヤマト「は!?」
ゴッドワスパント「じゃ、行ってきます!」
ヤマト「あ、おい、話を──」
ヤマト「飛んだ・・・」
ヤマト「いや・・・え?」
ヤマト「ツクル・・・?」
〇渋谷フクラス
翌朝、鎧神発売元の本社ビルで謎の大爆発が起きた、というニュースが流れた
犯人や犯行方法は、今も不明だという
〇空
それから一週間が経った
夏休みが終わり学校が始まっても
ツクルはまだ帰ってきていない
ニュースサイトの片隅には今朝も、研究所で謎の大爆発、なんて見出しが踊っていた
〇教室
タル谷「ツクル、今日も休みだって」
タル谷「ヤマトは何か聞いてる?」
ヤマト「あいつは、ヒーローになったんだ」
タル谷「何言ってるの?」
ヤマト(俺なんかを助けるために)
ヤマト(ツクルはおかしくなってしまった)
ヤマト(だから、今度は俺が)
ヤマト「俺が、ツクルを助けないといけない」
木田「なに、ツクルの話?」
ヤマト「ああ 木田たちも協力してくれるか?」
木田「何に?」
ヤマト「ツクルを、俺たちの手で取り戻すんだ」
〇黒背景
そう、これは最強のヒーローが
悪者をやっつける話じゃない
怪神(ヒーロー)になってしまった友達を、俺達が取り戻すまでの物語だ
物語が二転三転して最後はものすごくスケールの大きな話になっていって驚きました。ワスパントという相棒を得てツクルの潜在能力が一気にはじけた感じですが、ヤマトの心配もわかりますね。これからの展開が楽しみです。
時代が変われば流行るものも変わる。
近い将来こういったものが流行る可能性は十分にありそうです!
昔で言うと…メ○ロット的な…?
始めはみんな相手にもしていなかったツクルくんが出会った怪人と組んだことで、どんどんたくましくなっていくところがエネルギーを感じました。強くや正義感にあふれたゴッドワスパンドは真のヒーローですね。