bilincat−バイリンキャット−

×××

7話【新しい家族と恋の予感】(脚本)

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〇公園の砂場
  大輝とクロは、公園のベンチに、間に間隔をあけて腰を下ろす。
山都大輝「クロ・・・なんか悪かったな」
クロ「いや・・・俺の方こそ悪かった」
クロ「ヤマトが小夏に欲情していると知っておきながら」
山都大輝「だからその言い方やめて?卑猥に聞こえるから」
クロ「しかしこれだけは分かってほしい。俺は別にヤマトを馬鹿にしたわけじゃないんだ」
山都大輝「分かってるよ・・・」
山都大輝「ああやって賑やかにすれば、俺が元気になるんじゃないか?って思ってくれたんだよな?」
クロ「ヤマト・・・」
山都大輝「でも俺はそんなクロの優しさに気づけなかった」
山都大輝「馬鹿だよな・・・」
山都大輝「あん時に俺が素直に『ありがとう』って言える大人だったら」
山都大輝「クロをこんな気分にさせるなんて事、なかったのにな・・・」
山都大輝「俺もまたまだガキだな・・・」
クロ「ヤマト・・・」
山都大輝「それにさ・・・あの白猫に言われたよ」
クロ「ハルに?」
山都大輝「猫の命は人間の命よりも軽いのか?」
山都大輝「ってな・・・」
クロ「ハルがそんな事を・・・」
山都大輝「まさか猫に説教される日が来るなんて、思ってもみなかったよ・・・」
山都大輝「でも・・・なんつーか・・・」
山都大輝「猫だって人間と同じなんだよな・・・」
山都大輝「そうだよな・・・人間と同じように意志があるし、喋るしよ・・・」
山都大輝「ただ見た目が違うってだけで、人間と何も変わらないんだよな・・・」
山都大輝「そんな当たり前な事に、26年生きてきてやっと気付くとか」
山都大輝「俺はホントダメ人間だよな・・・」
クロ「そんな事はない!ヤマト!」
山都大輝「クロ・・・」
クロ「俺はヤマトに感謝しているんだ」
山都大輝「感謝?」
クロ「俺はずっと孤独だったんだ・・・」
クロ「俺の言葉を理解できる人間など”もう”何処にも居ないと思っていた・・・」
山都大輝「・・・・・・」
クロ「そこにヤマトが現れた!」
クロ「なんというか、暗闇に差し込める光のように、ヤマトが見えた」
山都大輝「それにしては、随分と上から目線だったよな?」
山都大輝「俺を飼え!」
山都大輝「ってよ!」
クロ「何の事だか分からないな」
山都大輝「何しらばっくれてんだ!おい!」
山都大輝「でもまあ、俺もクロに出会えてよかったよ」
クロ「ヤマト・・・」

〇公園の砂場
クロ「でも・・・やはりヤマトの側には居れない」
山都大輝「はぁ?何言ってんだよ!クロ!」
クロ「俺はヤマトが好きだ!」
クロ「俺を家族だと!そう言ってくれた!」
クロ「家族の証もくれた!」
山都大輝「・・・・・・」
クロ「だが・・・俺がヤマトの側にいると、ヤマトに迷惑をかけてしまう・・・」
山都大輝「・・・・・・」
クロ「だから俺は・・・ヤマトの元を去るよ」
クロ「短い間だったが、家族ができて嬉しかった!」
山都大輝「・・・・・・」
クロ「ありがとう!ヤマト!」
山都大輝「ちょっと待て!クロ!」
山都大輝「何勝手な事言ってんだよ!」
クロ「ヤマト・・・しかし」
山都大輝「家族ってのは!そんな簡単には離れられねぇぞ?」
クロ「ヤマト・・・」
山都大輝「猫の世界じゃどうかは知らねーけどさ」
山都大輝「人間の世界の家族ってのは──」
山都大輝「ずっと死ぬまで寄り添って暮らすもんなんだ」
クロ「ヤマト!」
クロ「俺はヤマトの側にいてもいいのか?」
山都大輝「今更何言ってんだよ!当たり前だろ?」
山都大輝「まぁ、クロをいっときの感情に任せて追い出した俺が言えた義理じゃねぇけどさ」
山都大輝「これからも家族としてよろしくな!クロ!」
クロ「こちらこそ!宜しく頼む!」

〇通学路
風間小夏「猫ちゃん!どこにいるのぉぉぉぉぉ」
風間小夏「うわぁぁぁぁぁぁん」
風間小夏「山都さんに何で説明したらいいの!」
山都大輝「小夏ちゃん?何してんの?こんな所で・・・」
風間小夏「あ、山都さん・・・」
山都大輝「小夏ちゃんの家って反対方向だよね?」
風間小夏「うわぁぁぁぁぁぁん」
山都大輝「え?なに?え?どうしたの?何で泣いてんの?」
風間小夏「山都さんが飼ってる猫ちゃんが迷子なっちゃったんですぅ」
風間小夏「うわぁぁぁぁぁぁん」
山都大輝「え?猫?クロならここに居るけど?」
風間小夏「え?」
風間小夏「あっ!猫ちゃん居た!」
風間小夏「よかったぁ!居たぁ!うわぁぁぁぁぁぁん」
山都大輝「え?どういう事?」
クロ「はっ!そうだった!」
山都大輝「何だよクロ!」
クロ「実はヤマトに追い出された後に、偶然に小夏と会ったんだ」
山都大輝「クロが小夏ちゃんと?」
クロ「あぁ・・・」
クロ「その時にカリカリを買ってあげると言われて、コンビニに連れて行かれたんだ」
山都大輝「ほぅ・・・ほぅ」
クロ「しかし俺はヤマトの元に直ぐにでも帰りたかったから」
クロ「コンビニでカリカリを買っている最中の小夏を置いて1人で戻ってきたんだ」
山都大輝「だったらコレはお前のせいじゃねぇか!」
クロ「いや、ここまで泣きながら探しているとは思っていなかったんだ・・・」
山都大輝「ったく・・・お前は」
クロ「すまん・・・」
山都大輝「まぁ、小夏ちゃんには俺から説明するよ」
風間小夏「山都さん?」
山都大輝「あ、いやぁ、悪いね小夏ちゃん」
山都大輝「クロにカリカリ買ってくれたんだろ?」
山都大輝「わざわざごめんね・・・」
風間小夏「え?何で山都さんがその事知ってるんですか?」
山都大輝「あ、いや、それは・・・」
  小夏は大輝の発言に首を傾げながら、大輝とクロを交互に見る。
山都大輝「・・・・・・」
クロ「・・・・・・」
風間小夏「もしかして山都さんって」
風間小夏「猫ちゃんの言葉が──」
山都大輝「いやいや!そんな訳ないじゃん!」
風間小夏「怪しい!だって私が猫ちゃんにカリカリ買ってあげたって話」
風間小夏「山都さんが知ってるはず無いじゃないですか!」
山都大輝「いや・・・」
風間小夏「猫ちゃんから聞いたとしか考えられないじゃないですか!」
山都大輝「だってホラ・・・小夏ちゃんの買い物袋・・」
風間小夏「話を逸らさないでください!」
山都大輝「いやだから!小夏ちゃんの買い物袋にカリカリ入ってるだろ?ホラ!それ!」
風間小夏「あっ!そっか!」
山都大輝「小夏ちゃんって、ペット飼ってないよね?」
山都大輝「だからも、もしかしたら、クロに買ってくれたのかなぁ?なんて・・・」
風間小夏「なんだぁ、そういう事だったんですね」
山都大輝(ふぅ・・・助かった)
風間小夏「確かにそうですよね。猫ちゃんの言葉が理解できるなんて、ある訳ないですもんね」
山都大輝「そう!そうそう!ある訳ないじゃん!」

〇通学路
山都大輝「じゃあ小夏ちゃん!暗くなるから早めに帰りなね?」
風間小夏「あの・・・山都さん」
山都大輝「ん?どうした?」
風間小夏「じ、実は・・・家への帰り方が分からなくて」
山都大輝「ん?どう言うこと?」
風間小夏「この辺の地理・・・あまり慣れてなくて、迷子になっちゃって・・・」
山都大輝「なんだ!それならそうと言ってくれよ!」
山都大輝「なら駅まで案内するよ!」
風間小夏「あ、ありがとうございます」
クロ「せっかくの2人きりなんだ」
クロ「俺は先に家に行っている」
山都大輝「なんだ?気ぃ使ってんのか?」
クロ「まぁな!」
山都大輝「サンキューな!早めに帰るから待っててくれ!」
クロ「わかった!」
風間小夏「む!む!」
山都大輝「あ、いや・・・アレだよアレ」
山都大輝「ひとりが寂しくて、クロを人に見立てて喋ってるだけだよ」
風間小夏「でも明らかに会話出来てましたよね?」
山都大輝「いや、そういう風に演技してんだよ」
山都大輝「なんか、リアリティがあった方が人と喋ってる感だせるでしょ?」
風間小夏「あっ!それもそうですね!」
山都大輝(鈍感なのか鋭いのか、イマイチ分からないなぁ・・・小夏ちゃんって)

〇渋谷駅前
山都大輝「ホラ!駅に着いたよ!」
風間小夏「ありがとうございます!」
山都大輝「まぁ、昨日ご馳走してもらったからね」
山都大輝「これくらはしとかないと!人として」
風間小夏「わざわざありがとうございます!助かりました」
山都大輝「あとさ・・・小夏ちゃん」
風間小夏「はい?」
山都大輝「昨日俺が言った事なんだけどさ」
風間小夏「昨日?」
山都大輝「小夏ちゃんならいい奥さんになれるって話」
風間小夏「あ・・・」
山都大輝「あれ、お世辞じゃなくて本音だから!」
風間小夏「山都さん・・・」
山都大輝「ホラ!小夏ちゃんって、いつも自分のこと『ドジ』だって責めてるだろ?」
山都大輝「そんなこと無いから!心配しなくていいよ!」
風間小夏「・・・・・・」
山都大輝「あっ、それだけ言いたかったんだ!」
山都大輝「ごめんね!時間取らせて!」
風間小夏「いえ・・・」
山都大輝「じゃあまた職場でね!おつかれ!」
風間小夏「は・・・はい」
風間小夏「・・・・・・」
風間小夏(あれ?私・・・どうしちゃったんだろ?)
風間小夏(なんかドキドキしちゃう)
風間小夏(私・・・もしかして・・・)
風間小夏「山都さんの事・・・」
風間小夏「好きになっちゃったのかな?」
風間小夏「どうしよう・・・明日も山都さんと出勤被ってるのに」
風間小夏「どんな顔して会ったら・・・」
風間小夏「・・・・・・」

〇アパートのダイニング
山都大輝「・・・・・・」
山都大輝「ちょ!何コレ・・・」
山都大輝「何で猫が増えてんだ!」
ルプ「お邪魔しているでございまする!」
ハル「腹が減ったからカリカリ食わせてくれ!」
山都大輝「おいクロ!どうなってんのコレ!どう言う状況なのコレ!」
クロ「いいじゃないか!賑やかで!」
山都大輝「そういう問題じゃねぇんだよ!俺ンちを猫屋敷にするつもりか!」
ハル「つれねぇ事言うなよヤマト!」
ハル「それに俺はお前に命の価値を説いた恩人だろ?」
ハル「もっと尊敬の眼差しを向けてもバチは当たらねぇと思うぜ!」
山都大輝「そういうのはな、言われた側が言うもんなんだよ!自分で言うな!自分で!」
ルプ「いやぁ!飼い猫になると、なんだが心が華やかになるでございまするなぁ」
山都大輝「いや待て!待て!誰が飼うっつったよ!」
ルプ「ヤマト氏は辛辣でございまする」
山都大輝「はぁ・・・ったく」
山都大輝「なんか調子狂うな・・・」

〇アパートのダイニング
  ──翌日──
山都大輝「じゃあ仕事行ってくるからな!」
山都大輝「大人しくしてろよ!」
ルプ「帰りにカリカリを買ってきていただくと、非常に嬉しいでございまする」
ハル「高くて美味いヤツな?」
山都大輝「図々しいにもほどがあんだろーが!お前ら!」
山都大輝「絶対に買ってこねぇからな?」
山都大輝「そもそもお前らを飼うなんて、俺はひと言も言ってねぇんだ!」
ルプ「そんなぁ・・・殺生はやめるでございまする」
山都大輝「俺が帰ってくるまでに、出て行っとけよ!いいな?」
クロ「安心しろ!みんな!」
クロ「ヤマトは口ではああ言ってるが、根は優しくくて親切なヤツだからな」
クロ「カリカリ買ってきてくれるよ」
ハル「ツンデレってヤツだな」
ルプ「可愛い所があるんでごさいまするな!ヤマト氏は!」

〇郊外の道路
山都大輝「えっと・・・」
山都大輝「帰りにアソコでカリカリ買って・・・」
山都大輝「トイレももうひとつくらい追加しとかねぇとな・・・」
山都大輝「なんか賑やかになってきたな・・・」

〇アパートのダイニング
ルプ「・・・・・・」
ハル「・・・・・・」
クロ「・・・・・・」
ルプ「なんだか暇でございまするな」
ハル「飼い猫ってのも案外暇なんだな」
クロ「ならみんなでヤマトを追いかけて行こうか」
ハル「追いかけるってどうやって?」
クロ「こっちに来い」

〇団地のベランダ
クロ「ヤマトはな、毎回鍵をかけ忘れているんだ」
ルプ「いやはや!不用心でございまするな!」
ハル「いや、分かってるなら教えてやれよ」
クロ「せっかく外へ抜け出せるチャンスをみすみす逃す手はないだろ?」
ハル「お前・・・サイテーだぞ」
ハル「でもサイコーだ!」
クロ「じゃあヤマトを追いかけよう!」

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