魔剣(脚本)
〇豪華なベッドルーム
朝方6時6分。目が覚めた。
外の雨で起きたのではなく、
頭の火でシーツと枕が燃えたのだ。
これで丁度三回目。
ライチ「よかった そんなに焼けなくて・・・・・・ 全く、容赦ないな」
手に持っている空のペットボトルをサイドテーブルに置き、焼け焦げ、びしゃびしゃに濡れた枕とシーツをみる。
ライチ「今回はまだ ましなほうだな・・・・・・ 消防車を呼び掛けそうに なるよりは断然いい・・・・・・」
サイドテーブルの空のペットボトルへしばらく眺め、手にとる。ごみ箱へ勢いよく捨て、相変わらず悲惨な現状を見据えた。
ライチ(古典的な方法だが、まぁ、しかたない これ以上いい方法がみつからないしな 上策だ 二リットルペットボトル様様だな)
シーツをはぎ、ベットまで焼けてないか確認する。
続いて枕のカバーを取り中身が焼けてないか確認した。
ライチ「・・・ペットボトルは 飲み物をいれる以外にも 用途があるんだな・・・・・・ って、 何、染々と痛感してるんだか・・・」
ライチ(・・・はぁーっ はははっ・・・・・・ 何考えてるんだか・・・・・・・・・)
この時間、いつもなら明るい日の光が差すが、今日はやけに暗く、人の気配が全くしない。
ライチ「・・・・・・なんだ? 休日だからか? にしても・・・・・・」
〇タワーマンション
タワーマンションの最上階より、2つ下。
その部屋から見渡す景色はいつも通りだったが、朝なのに暗く、人が一人もいない。
ライチ「ったく・・・・・・なんだってんだよ・・・・・・。 お次は」
そこの一室は広瀬拓実という古美術商の男の部屋だった。
彼は世界を飛び回り、色んな珍しい骨董品を売り買いしていた。
〇美術館
彼の扱う商品は一風変わっており、必ずいわれがあった。いわゆる「いわくつき」と囁かれる商品だった。
〇渋谷の雑踏
お客は富裕層から、怪しい呪い師、どうみても普通の主婦にしかみえないような、相手と多岐にわたり、商売をしていた。
三ヶ月前、彼はある老人と出会った。
やたら鋭い目付きの老人に訝しさを覚えたが、譲れない事情に話を受けた。
〇入り組んだ路地裏
怪しい老人「お前か? 噂でよく聞く、古美術商は」
広瀬拓実「・・・・・・そうだが」
怪しい老人「あこぎな取引をしてるらしいな 相当恨みをかっているぞ」
広瀬拓実「それはおあいにく様 こっちはまっとうに 商売してると自負している 相手が納得しているかどうかは 知らないが・・・・・・」
広瀬拓実「・・・・・・俺は俺の信条がある それに準ずるまでだ」
怪しい老人「・・・・・・・・・・・・ほう ならば その信条、試してみないか?」
広瀬拓実「・・・・・・・・・・・・何を?」
怪しい老人「ここに一つカバンがある なかには短剣が一つ 作り手は悪魔だそうだ」
広瀬拓実「悪魔が作った短剣・・・・・・ 面白い代物だな」
怪しい老人「・・・・・・信じてないな? 話は見る方が早いもしれない 開けてみろ」
〇黒背景
半信半疑の中、老人にカバンを手渡され、
受けとる。
地面に置き、開けようと手をかけた時に
体を伝った違和感をそのままに
〇黒
鍵をあけ、ゆっくりと開いた。
〇黒背景
カバンの中に一つ短剣がある。
広瀬拓実「ほう・・・・・・ これは・・・・・・・・・・・・」
一瞬で目が奪われた。
見事なまでの芸術品がカバンの中におさまってまるっている。
本物のような炎。装飾の細かさ意匠を感じられる。
そして静かに禍々しい雰囲気を発していた。
そっと手に取り、色々な角度から見定める。
〇入り組んだ路地裏
怪しい老人「・・・・・・お前、なんともないのか?」
広瀬拓実「・・・・・・? なんともないとは? どう言うことだ?」
怪しい老人「いや・・・・・・なんともないなら それで、いいのだ あまりにも反応が ないものだから・・・・・・」
広瀬拓実「・・・・・・? ・・・まぁ、いい で、これを どうしょうっていうんだい? 俺に売るのか?」
怪しい老人「いや、それは、やる」
広瀬拓実「これを? タダでか?」
怪しい老人「そうだ それはお前にやる お前のものだ」
広瀬拓実「・・・・・・ありがたいが、タダではもらわない主義でね 何か対価になるものと代えたい お代はもらっていただく」
怪しい老人「・・・・・・ふむ・・・・・・ わかった では、お代は「面白い結末」をいただこう」
広瀬拓実「面白い結末? なんだそれは ・・・・・・からかってるのか?」
怪しい老人「からかってる、のではない 本心からそれを欲してるのだよ、私は この魔剣でどうなるのか知りたい」
広瀬拓実「どうなるのか知りたい? ・・・なんとも意味深だな ・・・・・わかった どうなったのか、報告しよう」
怪しい老人「では、引き取ってくれる、受けてくれる、と、言うことで、契約は成立でよいかね?」
広瀬拓実「ああ、わかった、それでいい」
怪しい老人「では、成立だな」
広瀬拓実「ああ、では報告出来るように 連絡先を・・・・・・」
広瀬拓実「・・・・・・!」
〇入り組んだ路地裏
一瞬で立ち消え、老人は煙のようになくなった。後にはさっきまで暗がりにしか見えなかった店から明かりが漏れるのがみえる。
まるで狐につままれたような感覚に唇を噛み、手に持ってる、黒いスーツケースを軽く振った。
広瀬拓実「・・・・・・どうやら 夢ではないようだな・・・・・・・」
広瀬拓実「・・・・・・さて 調べるか」
〇空港のエントランス(人物なし)
そこから1週間後
拓実は
飛び回り
あらゆる人脈を使って
魔剣のことを調べた
〇個人の仕事部屋
時には
パソコンを叩き、
検索に明け暮れ
〇英国風の図書館
また、時には
蔵書、魔法書、妖書
と、呼ばれるものはなんでも漁った。
〇豪華なベッドルーム
広瀬拓実「・・・・・・・・・・・・今日も 有力な情報なし、か・・・・・・」
広瀬拓実「・・・・・・しょうがない うちの家ですら、わからない代物だ」
広瀬拓実「地道にやるさ 願いを叶えるためなら・・・・・・」
〇豪華なベッドルーム
・・・・・・一体
この剣はどういういわれのものなのだろう
・・・確かにヤバイほどの
妖気みたいなのを感じる・・・
あの時から・・・・・・
〇入り組んだ路地裏
怪しい老人「・・・・・・お前、なんともないのか?」
広瀬拓実「・・・・・・? なんともないとは? どう言うことだ?」
怪しい老人「いや・・・・・・なんともないなら それで、いいのだ あまりにも反応が ないものだから・・・・・・」
広瀬拓実「・・・・・・・・・・・・? ・・・・・・まぁ、いい で、これを、どうしょうっていうんだい? 俺に売るのか?」
〇黒背景
願いを叶えて欲しいか?
お前の願いはなんだ?
応えてみろ
うちなる欲望をさらけだせ
欲するままに
汝を受け入れよ
俺の願いはー
・・・・・・・・・・・・まだ
お前にこたえるべきじゃない
お前は何者だ?
我は対価によって願いを叶えるもの
銘は雷炎 名はガホウ
ガホオウ・・・・・・
今は
お前を受け入れるべきでは
ない・・・・・・
いずれお前のことがわかったら・・・・・・
〇入り組んだ路地裏
あの時、俺はわかっていた。
この剣の魔力の凄まじさを。
意識が持っていかれそうになるくらい、囁く声を。
〇豪華なベッドルーム
・・・・・・・・・・・・利用させてもらう
夢なのか現実なのかわからない
境目で微睡む。
あれは、魔剣の声だったのか、
自分の思惑だったのか・・・・・・
そんなことを考えていると
深い眠りに誘われ、
次第に意識が薄れていった。
〇黒背景
広瀬拓実「・・・・・・なんだ? これは? ・・・・・・・・・・・・夢か」
ーお前が望んだのだろ?
我の声を聞きたいとー
広瀬拓実「・・・・・・お前は ・・・・・・お前は何が目的だ?」
我は願いを叶えるもの
願いを叶えるためにある
広瀬拓実「対価はなんだ? 破滅か? 命か?魂か?」
対価は願いに見合う対価だ
そのすべてであり
そのすべてとはかぎらない
お前は欲していたのだろ?
我を
本物を
術師の若造が
広瀬拓実「・・・・・・・・・・・・お前」
遠い昔にあったことある感じだ
呪術の名家
やつらの末裔だろう
お前は血が濃い
さぞ
力をもて余してるのだろうな
広瀬拓実「・・・・・・・・・・・・悪いが 俺は、呪師としては能無しだ・・・・・・」
広瀬拓実「一番どうにかしなきゃいけない呪いを どうにも出来ないでいるからな・・・・・・」
みつけた
それがお前の願いなのだな
我なら
我ならばその願い叶えてやれるぞ
その女
助けてやろう
広瀬拓実「・・・・・・・・・・・・貴様!!」
その女に絡みついてるまじないは
根が深い
もうこの世のものではなにも出来ないはずだ
悪魔にでも魂を売らない限りな
お前もわかってるのだろう
広瀬拓実「・・・・・・・・・ 対価はなんだ・・・・・・」
対価は役割
お前に我の半分、役を行ってもらう
広瀬拓実「役割・・・・・・ お前の役割とはなんだ?」
我は願いを叶えると同時に対価をもらい受けるもの
それが我の役目
ー担いきれたら
女を助けてやろうー
合図は頭の鈴の糸が全部切れた時だ
広瀬拓実「・・・・・・・・・・・わかった その契約のもう・・・・・・」
〇黒
賭けだった。完全に手がかりを失っていたのはとうにわかっていた。そのタイミングで相手からの申し出。
うまい話とは思ったが、逆手に取れる自信がまだあった。願いを叶えた時の対価の執行。それは呪いに近い。
呪いならば扱える自信があった。
その呪いを凪ぐには呪いをかけたものの
いわれや真の姿を知ることが必要だ。
だから、探した。
・・・・・・探したが
欠片もみつからなかった。
そして、敵にのるしかなかった。
だが、例えみつけたとしても、
それにとらわれないほどの強力な
相手では
なにもかも無駄だが・・・
〇豪華なベッドルーム
一縷の望みにかけて・・・・・・
広瀬拓実「アイリ・・・・・・ もう少し待っててくれ・・・・・・」
〇豪華なベッドルーム
それから、4日後、彼はボヤを出した
〇ホテルの部屋
???「なっ・・・・・・! ど、どうなってんだ? 火事?!」
???「どういうことだ?! ・・・・・・火元はなんだよ!! いっ!!?」
鏡に姿が映り、
映った姿に目を丸くし、くぎずけになった。周りが火事であることもすっかり、
忘れ、変わり果てた姿にみいる。
と、同時に出荷元も突き止めた。
???「一体、なんなんだよ この姿は?! 頭についてるのはなんだ?! 剣か? その上で炎が? って、頭がおかしくなる・・・・・・」
〇ホテルの部屋
この夜から、広瀬拓実は
対価をもらい受けるもの、になった。
〇黒
この剣に願いを叶えてもらったところへ赴き、対価をもらいうける。指示は頭の剣が囁き、選択を拓実に与えた。
一仕事終えごとに頭の鈴が落ち、姿が元に戻った。
ーそして、四回目の変貌ー
〇タワーマンション
ライチ「・・・お次は もっともハードなやつみたいだな」
眼下に男女二人がいる。
一人は三ヶ月前路地であった怪しげな老人。
もう一人はよく知っている女性だった。
ライチ「アイリ・・・・・・ 何があっても 君は俺が助ける」
拓実は
ペットのハムスターから取った名を
たずさえて、
待ち人へと向かった。
頭の火事で目覚めるという奇抜なプロローグで読者の興味を引きつけ、状況が徐々に解明されてラストでまた最初に戻る展開には唸りました。ライチの由来もしゃれていますね。魔剣の仕事が終わった時に拓実が救おうとしているアイリがどういう状態なのかも気になります。
対価という言葉に明確さがなく、自分ならどうするだろうと考えてしまいました。
それでも契約を結ぶ、ということはそれ以上に大切な人だったんだなぁと。
刀に炎、どちらも魅力的な存在ですね。それが一体となってわが身に迫ってくることを想像したらぞくっとしますが、その手に入れた魔力のようなものが一層魅惑的に感じます。