愛する者

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〇洞窟の深部
  魔王ヴァーデゥルを倒すべく
  ダンジョン奥地の魔王の間に
  たどり着いた勇者ゾーン
ヴァーデゥル「勇者よ・・・何故、幾度と余に戦いを挑む・・・!!」
ゾーン「誰しもが平和に暮らす世界を──」
ゾーン「望んでいるからだ・・・!!」
ヴァーデゥル「そのために余を倒すと・・・」
ゾーン「そうだ!!」
ゾーン「お前は多くの人を悲しませた!!」
ゾーン「傷つけた!!」
ゾーン「そんなお前を・・・俺は許さない・・・!!」
ヴァーデゥル(そうか・・・)
ヴァーデゥル(余はそんなことをしてしまっていたのか・・・)
ヴァーデゥル(万人が暮らす世界に余は不要なのか・・・)
ヴァーデゥル「勇者よ、世界の半分をやろう・・・これで手を打ってくれぬか・・・」
ゾーン「黙れ!!!」
ゾーン「こんなに世界をめちゃくちゃにして・・・今更逃げ出すのかよ・・・!!」
ヴァーデゥル(逃げる・・・か・・・)
ヴァーデゥル(もう少し早くに気づけていれば・・・)
ヴァーデゥル「最期に聞いても・・・よいか・・・」
ゾーン「なんだ」
ヴァーデゥル「家族は・・・おるのか・・・?」
ゾーン「家族・・・?」
ゾーン「・・・」
ゾーン「・・・いたよ」
ゾーン「お前の生み出した魔物に殺されたよ・・・!!」
ヴァーデゥル「・・・」
ゾーン「もう・・・用は済んだな・・・」
ゾーン「喰らえ・・・パレン・デザイア!!」
  ゾーンの斬撃がヴァーデゥルをとらえたのと同時に、ゾーンは光に覆われ、苦しみだした。

〇池のほとり
ゾーン(・・・こ、これは・・・?)
ヴァーデゥル「あの子はこの先、無事に生きていけるだろうか・・・」
ムーダ「あなたと私の子なんですから、きっと大丈夫ですよ」
ヴァーデゥル「私がこんなだから、目をつけて誰か来たりして・・・」
ムーダ「いけません!! そんなネガティブなことを言っては!!」
ヴァーデゥル「うっ・・・」
ムーダ「私たちがあの子を信じないでどうしますか」
ヴァーデゥル「そうだな・・・ 親である我々が信じなければな」
ムーダ「当り前じゃないですか どうしたんです? いつにも増して何かを心配されているようですが・・・」
ヴァーデゥル「何か・・・胸騒ぎがする・・・」

〇魔界
  一方、南方を統べるフラム──
スザク・フラム「これは村の者・・・どうされましたか?」
ニクス「どれもこれも・・・お前の仕業なんだろ・・・!!」
スザク・フラム「私が・・・いったい何を・・・?」
ニクス「しらばっくれるな!!」
ニクス「急な温度上昇、干ばつ、荒れ狂う動物、お前が意図してやってるんだろ!?」
スザク・フラム「私は何もしていないのですが・・・」
ニクス「もう、俺らは、我慢の限界なんだ・・・!!」
ニクス「死者だって出ている・・・」
ニクス「なんとか俺らで立て直そうとしたが、もう限界だ・・・」
ニクス「だから・・・」
ニクス「元凶であるお前を・・・ここで倒す・・・!!」
スザク・フラム「ちょ、ちょっと待ってください!!」
スザク・フラム「私は何も知りません・・・ というより、なぜもっと早くに知らせてくれなかったんですか・・・」
ニクス「うるさい!! 元凶のくせして味方ぶるな!!」
スザク・フラム(環境のせい・・・気温上昇がこんな深刻なことになっていたとは盲点だった・・・)
スザク・フラム(しかし、なぜ私がやったことにされているんだ)
スザク・フラム「村の者、落ち着いて話し合わないか?」
ニクス「落ち着く・・・!? 落ち着いてられるか・・・俺は、俺は・・・」
ニクス「愛する人が、目の前で死ぬのを見たんだぞ!! 落ち着いてられるか!!」
スザク・フラム「・・・」
ニクス「行くぞお前ら!!」
  うぉぉぉぉおおおおお!!

〇池のほとり
  ヴァーデゥル様!!
ヴァーデゥル「どうした、フラム」
スザク・フラム「も、申し訳ありません・・・」
スザク・フラム「私としたことが・・・」
ヴァーデゥル「なんだ、何があったというのだ」
スザク・フラム「昨今の環境変化による災害を私が起こしたのだと勘違いした村の者が襲ってきたのです」
ヴァーデゥル「いつものように話し合えんかったのか?」
スザク・フラム「はい・・・ 彼らは聞く耳を持たず、なりふり構わず、私を攻撃してきました」
スザク・フラム「それで・・・」
ヴァーデゥル「そうか・・・」
ヴァーデゥル「わかった・・・」
ヴァーデゥル「ムーダ!!」
ムーダ「なんでしょう・・・」
ヴァーデゥル「言わずともわかっておろうが・・・ ゾーンを抱えて村に向かえ・・・」
ゾーン(お、俺の名が・・・?)
ムーダ「あなたは・・・」
ヴァーデゥル「いずれここへ来るであろう村の者を、どうにか説得してみせる 決着がつかねば・・・」
ムーダ「全部言う必要はないわ 私はあなたを愛した人よ 言わないでもわかってるわ、わかってるけど・・・」
ムーダ「あなたの気持ちはどうなのよ!! それでいいの?悪者になってしまうのよ!!」
ヴァーデゥル「この世の悪者になろうと、全世界を敵に回そうとも、お前らさえ生きていてくれれば、余は十分じゃ」
ムーダ「あなた・・・」
ヴァーデゥル「ムーダ、ゾーン、余はお前らのことを一生愛しているぞ」
ムーダ「あなたは立派に戦ったと、この子に自慢げに話しておきますね」
ヴァーデゥル「あぁ、頼む」
ヴァーデゥル「さあ、行け もう直に来るだろう」
ムーダ「・・・また、会えるかな」
ヴァーデゥル「この世に居続ける限り、また会えるさ それまでしばしの辛抱じゃ」
ムーダ「愛してるわ、あなた──」
  ムーダはゾーンを抱えて走り出した
ヴァーデゥル(たくさん食べて、いっぱい寝て、思いっきり走り回って、立派に生きるんだぞ)
ヴァーデゥル「フラム、各番人を招集だ」
スザク・フラム「はっ・・・」
ヴァーデゥル「これから忙しくなるぞ」
  なんなんだこれは、俺はいったい何を見せられているんだ・・・

〇洞窟の深部
ゾーン「こ、ここは・・・?」
ゾーン「戻って・・・きたのか」
ゾーン「今見ていたのは一体・・・」
ゾーン「はっ・・・それより魔王は!? どうなったんだ!?」
  魔王、ヴァーデゥル様は消滅いたしました
ゾーン「だ、誰だ!?」
スザク・フラム「・・・」
ゾーン「お前は・・・!! 南方を支配していた、スザク・フラム!? 倒したはずでは・・・!?」
スザク・フラム「正しいようで間違っている 私は最後の力で分身を作った」
ゾーン「分身・・・?」
スザク・フラム「そなたに伝えなくてはいけないことがあるからだ」
ゾーン(戦う意思はなさそうだ 話を聞いてやるか)
スザク・フラム「そなたは今、ヴァーデゥル様の過去を見たはずだ」
ゾーン「あれは・・・魔王の過去・・・?」
スザク・フラム「そして、そこで見たはずだ そなたが魔王ヴァーデゥル様のご子息であると・・・!!」
ゾーン「・・・」
スザク・フラム「私は悪と正義とが二分されている今の世の中をおかしいと思っている ヴァーデゥル様も同じ考えだった」
スザク・フラム「そこで、勇者となったそなたにやられることで、悪は正義の支配下となる」
スザク・フラム「そうすれば、二分化がなくなり、元の平穏な世の中になると、お考えになったのだ」
ゾーン「魔物に殺されたと思っていた父が魔王で・・・魔王は世界のためにわざとやられたの、か・・・?」
ゾーン「そんなわけないだろ!! じゃあ、なんであいつはいろんな人を傷つけて、見て見ぬふりして、世界のためとか戯言じゃないか!!」
スザク・フラム「魔物は環境変化によって狂暴化したもの 東西南北に番人を配置して、被害が及ばないようにしていたのだ」
スザク・フラム「人間が敵だと思っていた魔物は、単なる野良 我々は勝手に支配者とされていたのだ」
ゾーン「信じたくない・・・俺は、信じたくないけど・・・」
ゾーン「全部、辻褄が合っちまう・・・」
ゾーン「だから、あいつは死ぬ間際に過去の記憶を俺に見せたのか・・・」
スザク・フラム「そろそろ力が限界だ」
スザク・フラム「最期に遺しておくが、お前はヴァーデゥル様の意思を継いで、世界を平和にするんだ これが我々の願いだ」
  最後まで言い切れたかどうか怪しいくらいで、フラムは火の粉のように飛んで行った
ゾーン「俺はこれからどうすれば・・・」
  あなたはあなたのやりたいようにすればいいのよ
ゾーン「だ、誰だ?」
  誰でもいいの、聞いて
  あなたは勇者なの、あなたが迷ってしまったら、みんな迷ってしまうわ
  あなたの父は立派に戦ったわ
  きっとあなたにもできるわ
ゾーン「・・・」
  だって・・・
  私たちの息子だもの──

〇池のほとり
  それからゾーンは世界を回り、各地域の問題を解決した
ゾーン「余はゾーン!! この地の問題を解決しに来た!!」
ニクス「ゾーン様・・・!!」
ゾーン「様などつけなくてよい この地は何が問題となっているんだ」
ニクス「では、ゾーンさん この地では・・・」
  両親の意思を継いだゾーンは、
  世界に安泰をもたらす救世主となったのだ──

コメント

  • 「親の心子知らず」についてヴァーデゥルとゾーンの双方の立場から考えさせられるストーリーでした。また、フェイクニュースや噂を簡単に信じて踊らされないようにという戒めも痛感しましたね。

  • 自分が信じるもの、そう思っていたことが全て勘違いだったとしたら、何を信じればいいのかわからなくなりそうです。
    でも両親の意を汲み、世界平和に導けたのは、ゾーンさんだけの力ではなさそうですね!

  • すべては思い込み?だったとは… 現代社会でも似たようなことはありそうですね。息子が両親の思いを受け継いでくれたのが救いでしょうか。悲しいお話ですが、テンポよく楽しく読むことができました。

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