エピソード45(脚本)
〇戦闘機の操縦席(滑走路)
広川久怜愛「みんながこっちに来ればいいじゃない」
ケイト「・・・え」
ニーナ「ケイト。危ない。座れ!」
ケイト「何言ってるんだよ。 姉さんの身体は7年間も眠ったままなんだよ。早く戻らないと・・・」
広川久怜愛「身体? そんなものいらないわ」
ケイト「いらない?」
広川久怜愛「そう。身体なんて必要のないものよ」
ケイト「なっ、何てこと言うんだよ。 みんな、姉さんが帰って来るのを信じて待ってるんだから」
ケイト「母さんは毎日ケアだってしてるし、僕だって・・・」
広川久怜愛「身体なんて分子レベルで見れば、1年もすればほぼ別人になるのよ」
広川久怜愛「7年も経てばそれはもう完全に私じゃないわ」
ケイト「そういう問題じゃないよ!」
広川久怜愛「それに、身体はただの器にすぎないわ。 私はここにいる」
クリス「・・・・・・」
ケイト「姉さん。変だよ。 僕の知ってる姉さんはそんなこと言わないよ」
広川久怜愛「変なのは継人の方よ。 あなたも身体なんて捨ててこっちの世界の住人になりなさい」
ケイト「!」
広川久怜愛「こっちなら自由に歩くこともできるし、死の恐怖からも解放されるわ」
ケイト「違う。姉さんじゃない」
広川久怜愛「2002年7月7日の午前2時14分生まれ。出生時の体重は2816グラム。 血液型はB型」
広川久怜愛「父親は博人、母親は幸奈。 祖母の名前は──」
ケイト「黙れ!」
広川久怜愛「?」
ケイト「姉さん。あいつに操られてるんだね?」
ケイト「おいお前! 姉さんを返せ!」
広川久怜愛「意味が分からないわ。久怜愛は私よ」
ケイト「違う! 姉さんはお前みたいなやつじゃない! もっと、ずっと優しい人だ」
広川久怜愛「優しい? 継人がいじめられていた時にいつも助けてあげてたじゃない」
広川久怜愛「ほら、いつもいじめてた子。 康太君だったかしら?」
ケイト「うるさい! さっきから、お前は姉さんの記憶を勝手に喋ってるだけだ!」
広川久怜愛「パパが買ってくれたパソコンまで壊してひどい子だったわよね。 それで私が修理してあげたのよね」
ケイト「姉さんのフリをするなぁ!」
ケイトが久怜愛を突き飛ばす。
広川久怜愛「!?」
久怜愛はよろけ、戦闘機から落ちる。
ケイト「危ない!」
ケイト「ああ。姉さん。ごめんなさい」
ニーナ「クリス。加速して!」
クリス「ああ」
戦闘機は再び加速する。
ニーナ「ケイト。手を離せ!」
ケイト「駄目だよ。姉さんが」
広川久怜愛「継人。怖いわ。これを止めて」
ケイト「・・・・・・」
クリス「離せ! そいつは広川久怜愛ではない」
ケイト「・・・でも」
広川久怜愛「言うことを聞きなさい!」
久怜愛がケイトの手をぐいと引っ張る。
ケイト「うわ」
ニーナ「早く離せ!」
久怜愛、体制を整えて戦闘機の上に立つ。
広川久怜愛「お仕置きが必要なようね」
ケイト「姉・・・さん?」
ニーナ「あーあ。仕方ないな」
クリス「ニーナ。余計な心配はするな。 このまま飛ぶ」
ニーナ「大丈夫。私、慣れてるから」
手榴弾を手に持ち、立ちあがるニーナ。
クリス「待て。ニーナ!」
ニーナ「おりゃー」
ニーナは久怜愛にタックルすると、ともに戦闘機から落ちていく。
ケイト「ニーナ!」
クリス「くっ。また・・・」
ドカーン!!
後方で大爆発が起きる。
ケイト「! ・・・ニーナ」
戦闘機は加速を続ける。
〇砂漠の滑走路
久怜愛が走って追いかけてくる。
〇戦闘機の操縦席(滑走路)
ケイト「あ!」
戦闘機は加速し、久怜愛を引き離して行き、やがて離陸する。
クリス「いくらゲームマスターでも、ワープまではできないようね」
〇砂漠の滑走路
久怜愛は諦めて立ち止まると、ケイトとクリスを睨みつける。
〇戦闘機の操縦席(滑走路)
ケイト「姉さん・・・」
クリス「ケイト。いいかげんにして」
ケイト「姉さんだけど・・・姉さんじゃなかった」
クリス「そうよ。 本物のハンスさんが言ってたでしょ。 あいつは広川久怜愛とは違う何かだって」
ケイト「でも、確かに姉さんしか知らないことだった・・・」
クリス「・・・・・・」
〇牢屋の扉(鍵無し)
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