レディ・スペースローグ(読み切り)(脚本)
〇地球
──この銀河には
数千種類もの知的生命体が暮らしていて
この地球にも
多くの異星人が暮らしている
──ほとんどが非合法的に
知らないのは当の地球人ばかり──
これは、そんな地球に身を隠す
やんごとなき身分の方の物語──
〇大きな木のある校舎
女子生徒「それじゃーねー」
女子生徒「あ、今日カフェ寄ってく?」
女子生徒「あー、今日はパス」
女子生徒「あれ? ヒカリもう帰った?」
〇体育館裏
ヒカリ「・・・よし、脱出成功」
ヒカリ「あとはアミたちに連絡を取って合流・・・ 完璧な作戦だね」
ローク「なァにが完璧なんです?」
ヒカリ「ぎゃっ!?」
ローク「まったく・・・毎日毎日 勘弁してくださいよォ」
ヒカリ「ろ、ローク・・・ なんでこのルートがわかったの?」
ヒカリ「今日のルートは 使ったことなかったのに!」
ローク「お嬢様の浅知恵ってやつッスね」
ヒカリ「くっ・・・」
ローク「さ、帰りましょ 今日はギィルが飯用意してっから」
ヒカリ「いや、その・・・ あたしは友達とカフェに・・・」
ローク「・・・自分がどんな立場かわかってンスか?」
ローク「単独行動は避ける! 目立つようなことはしない! 約束したでしょうが!」
ヒカリ「もう充分目立ってるし・・・」
ローク「へ・・・?」
通りすがりの人「なに、痴話ゲンカ・・・?」
通りすがりの人「もしかしてパパ活・・・?」
ローク「う・・・」
ヒカリ「だいたい、身を隠すなら今どきの 女の子らしくした方がいいでしょ?」
ヒカリ「木を隠すなら森の中 女子を隠すならカフェの中よ!」
ローク「まぁ、一理あるッスね・・・」
ヒカリ「でしょー?」
ローク「それじゃ、俺もそのカフェに 一緒に行きますわ」
ヒカリ「なんでそーなるのよ!!」
ローク「カフェの中に女子を隠し さらに護衛がありゃ完璧ッス」
ヒカリ「どこの女子が護衛連れでカフェにいくか! ってかどういう立ち位置で 女子に混じる気なのよ!?」
ローク「とにかく! ヒカリ様をひとりで 行かせるわけには・・・」
ヒカリ「いやーーーッ!」
〇カウンター席
アミ「ヒカリ、おっそーい!」
カオル「どこ行ってたの?」
ヒカリ「ごっめーん! 先生につかまっててぇ」
〇商店街の飲食店
シド「・・・で、妥協案として 外から監視、と」
ローク「あー・・・ 意外に美味ぇな、タピオカって」
シド「食感がいいんだよねぇ~」
ローク「・・・でももし 中でなにかあったら、外からだと・・・」
シド「僕が中に入ろうか? 女の子ナンパして自然な感じで・・・」
ローク「ややこしくなるから やめとけよ・・・」
シド「残念」
シド「・・・ま、ヒカリ様の気持ちも わかるけどね」
シド「年頃の女の子が友達もなく 息を潜めて暮らすんじゃ気の毒だ」
ローク「・・・」
シド「ああして友達と笑いあうくらい いいんじゃない?」
シド「銀河最古の王家クォヴァース その第三王女・・・本来ならもっと 華やかな暮らしをしてるはずなんだから」
ローク「・・・だからこそ危険なんだろ」
ローク「クォヴァース王家は・・・ 滅んだんだ」
シド「・・・」
〇カウンター席
ヒカリ「え!? アミに彼氏!?」
カオル「そうなの! びっくりでしょ!?」
アミ「えへへ・・・」
ヒカリ「すごーい! どんな人どんな人?」
アミ「えっとぉ・・・ バーテンダーとかやってて クラブでパーティの主宰もしてて・・・」
ヒカリ「え・・・?」
カオル「えー! かっこいい! 社会人!?」
ヒカリ「・・・」
アミ「それでね・・・ 今度またパーティがあるから、 よかったら二人も一緒にどうかな、って」
カオル「えー! 行きたい行きたい!」
アミ「ヒカリは?」
ヒカリ「あたしは、えっと・・・」
カオル「えー、なんでぇ? 行こうよぉ!」
ヒカリ「う、うん・・・」
〇アパートのダイニング
ヒカリ「ただいまァ」
シド「おかえり、ヒカリ様 もうすぐご飯だよ」
ヒカリ「今日はなに、ギィル?」
ギィル「餃子だ 200個ほど仕込んだ 残さず喰え」
ローク「う・・・タピオカがまだ腹に・・・」
ギィル「残さず喰え」
ローク「わぁったよ!」
ヒカリ「ローク・・・ 相談があるんだけど」
ローク「なんスか? お小遣いなら予算がちょっと・・・」
ヒカリ「ち、違うよ!」
ヒカリ「その・・・ バーテンダーの彼氏ってどう思う?」
ローク「なんだってぇぇぇ!?」
ローク「一体どこのどいつだ! ヒカリ様に手を出そうってのァ!! ぶっ殺してやる!!」
ヒカリ「ちょ! 待って待って! 違うの!!」
ローク「女子高生に手を出すバーテンダー!? よりによってそんなクズ 絶対ダメですよヒカリ様!!!」
シド「ちょっと落ち着きなよ、ローク」
ローク「これが落ち着いていられるかァァ!?」
ヒカリ「だから違うの! あたしじゃなくって!!」
ローク「・・・あ、違うんスか? それならどうでもいいか・・・」
ヒカリ「どうでもよくはない!」
シド「どういうことです?」
ヒカリ「アミが・・・友達がね そういう男の人と付き合ってるらしくて」
ヒカリ「なんか、パーティとかにも 誘われたんだけど・・・」
ローク「・・・やめといた方がいいッス」
ローク「俺たちはあなたを守る義務がある・・・ そんな危ない話、近づかないでもらいてェ」
ヒカリ「でも、アミが・・・」
ローク「・・・できればそのご学友とも 距離を置いた方がいい」
ヒカリ「・・・!!」
ローク「そんな危なっかしい友達 ヒカリ様のまわりに置いとけねぇッス」
ヒカリ「・・・もういい!」
シド「ローク・・・今のはないよ」
ローク「いや、だけどよ・・・」
ローク「あの人は・・・"最後の希望"だからよ」
シド「・・・」
〇荒野の城壁
15年前
クォヴィデア星系──
スパァル「頼む、この子を・・・ 我が王家の最後の希望を・・・」
ローク「スパァルの旦那・・・! 俺たちゃぁ札付きだぜ」
ローク「戦争に乗じて脱獄して 逃げようとしてるんだぜ!?」
スパァル「・・・だが、逃げなかった」
スパァル「帝国の兵と戦い 民を逃がそうとしてくれたこと・・・ 騎士として感謝する」
スパァル「お前たちとは何度もやりあった仲だ 下手な兵より信用できるさ」
スパァル「私はこれより死なねばならん やつらと戦ってな」
スパァル「だから頼む・・・姫様を・・・」
〇アパートのダイニング
ローク「王国最強の騎士が 俺らみたいな与太者に頭を下げて・・・」
ローク「あの時赤ん坊だったヒカリ様を しっかり育て上げる・・・ それが俺らの仁義だろ?」
シド「・・・ま、それはそれ これはこれだ」
シド「ヒカリ様に謝ってこいよ 飯にしようぜ」
ギィル「・・・もうすぐ焼ける」
ローク「あ、ああ・・・ わかったよ」
〇渋谷のスクランブル交差点
アミ「・・・」
シド(いたいた、アミちゃん・・・)
シド(実際、ロークの言うことも もっともなんだよね・・・)
シド(女子高生をパーティに誘う バーテンダーの彼氏ね・・・ ご学友の身辺調査はしとかないとな)
キドウ「アミちゃん、お待たせ!」
アミ「キドウさん!」
シド「・・・えっ・・・?」
キドウ「じゃ、いこっか」
アミ「うん!」
シド「あの男・・・」
〇アパートのダイニング
ローク「どういうことだ、シド!」
シド「・・・」
ヒカリ「アミの彼氏が・・・ 異星人・・・?」
ヒカリ「確かなの!?」
シド「あの姿・・・ 僕らと同じ、光学外装だ」
シド「僕は匂いでわかる・・・ 間違いはない」
ヒカリ「そんな・・・」
ローク「地球に入り込んでる異星人ってのは 大抵碌なモンじゃねェ・・・」
ローク「その上、若い女に手を出してるって こいつァ・・・」
ギィル「・・・地球人の若い雌は 高値で売れる」
ローク「・・・例のパーティはいつだ?」
シド「・・・若い女をまとめて 仕入れようとしてる、か・・・」
ヒカリ「・・・パーティは・・・ 今夜・・・」
ローク「マジスか・・・」
ヒカリ「・・・ローク、シド、ギィル」
ヒカリ「出かけるわよ」
「!!」
ローク「・・・俺たちゃぁ 逃亡中の身なんスよ?」
ヒカリ「わかってる だけど・・・」
ヒカリ「あたしの友達に手を出そうなんて 舐めた真似、許すわけねェだろがァ!!」
ヒカリ「クォヴァース王族の名に懸けて・・・ 骨も残さずぶっ潰す!!」
ローク「・・・ヒカリ様ッ!?」
シド「ふふふ・・・ どうも育ちが悪かったかな」
ヒカリ「いくぞてめぇら!! モタモタすんじゃねェぞ!?」
シド「ご随意に」
ギィル「・・・ガキどもを しつけなくてはな」
ローク「・・・スパァルの旦那も ここで黙ってろとは言わねぇだろ」
ローク「いっちょ ぶちかますとしよゥかァ!!」
〇ナイトクラブ
アミ「んっ・・・ふう・・・」
キドウ「へー アミちゃん、イケるクチじゃない」
アミ「えへへ・・・」
マヅィ「ほら、カオルちゃんも」
カオル「わ、わたしはお酒はちょっと・・・」
マヅィ「え~、ノリ悪くない?」
マヅィ「ちょっとだけでも飲んでみなよ ほら・・・」
カオル「あ・・・ん・・・」
〇組織のアジト
アミ「ん・・・う・・・」
キドウ「・・・おやすみ、お姫様」
カオル「ん・・・ここは・・・?」
マヅィ「あー、カオルちゃん ちょっと悪酔いしちゃったねェ」
マヅィ「ここで眠っててよ・・・ 永遠にね」
カオル「え・・・なに・・・?」
カオル「ちょっと! 出して! なんなの!」
〇ナイトクラブ
マヅィ「ククク・・・大漁だな、キドウ?」
マヅィ「お前のやり口にゃ 恐れ入るよ」
キドウ「フフフ・・・俺たちゃこれから 銀河の裏社会に名を馳せようってんだぜ」
キドウ「この地球はほとんど無法地帯 足掛かりには持って来いだ・・・」
キドウ「・・・なんだ?」
チンピラ「お、お頭! 変な連中が殴り込んで・・・」
チンピラ「ぼげぇっ!?」
ヒカリ「・・・アミとカオルはどこ?」
キドウ「・・・なんだい君は?」
キドウ「あの子たちなら もう帰ったよ・・・ 君たちにもお引き取り願いたいが」
ローク「そう邪険にするなよ 同じ"異星人"だろォ?」
キドウ「・・・!」
シド「キドウとマヅィ 人身売買の常習犯だな」
シド「賞金額は5千万 ・・・2人で1億か」
キドウ「・・・詳しいな」
キドウ「フフフ・・・面白い」
キドウ「どうやら生かして帰すわけに いかねぇなァァ!?」
ギィル「正体を現したか・・・」
マヅィ「へへへ・・・」
マヅィ「俺たちゃ100人以上殺して来たんだ テメェらが歯向かってどうなる!?」
キドウ「このクラブの中は 全員俺たちの部下だ」
キドウ「てめぇら雑魚に 勝ち目があると思うなよォ!?」
「ウオオオオォ!」
マヅィ「はぁーッハッハッハァ!! さぁ、かかってきやが・・・」
マヅィ「ぐべぇっ!?」
ローク「ごちゃごちゃうるせェんだよ トーシロがよォ・・・」
ローク「ヒカリ様の前で てめェらが粋がんじゃねェ!!」
キドウ「・・・なっ!? その姿・・・まさか・・・!」
シド「ふふっ・・・」
シド「久しぶりだよ この姿も・・・」
ギィル「ふん・・・」
ギィル「100人だと? 一晩でやったことがあるな」
マヅィ「そんな・・・ あんたたちは・・・」
マヅィ「帝国の戦艦を100隻沈めた 宇宙海賊"ラウンド・ローグズ"・・・!?」
ローク「俺の賞金額を教えてやろうか?」
ローク「10億だ 雑魚はどっちか、わからせてやるよ」
キドウ「そ、そんな・・・ なぜこんな辺境の惑星に・・・!?」
ヒカリ「遠く離れた辺境の暗闇に紛れ 不埒千万なる悪行三昧・・・」
ヒカリ「地球の太陽が許しても! あたしたちが許さない!」
ローク「戦闘許可をもらえるかィ? ヒカリ様・・・」
ヒカリ「ローク、シド、ギィル・・・ クォヴァース王家の名の下に命じます」
ヒカリ「この者たちを・・・ ブッ潰しなさい!」
「オオオオッ!!」
「ぐばぇぇぇっ!?」
〇組織のアジト
ヒカリ「アミ! カオル!」
アミ「う・・・ん・・・?」
カオル「ヒカリ!」
ヒカリ「2人とも、無事でよかった・・・!」
ローク「まったく・・・ これに懲りたら遊ぶのはほどほどに・・・」
カオル「・・・だれ?」
ヒカリ「えっと・・・うちの・・・ お兄さん」
ローク「・・・どもッス」
アミ「うう・・・ごめんなさい ごめんなさい・・・」
アミ「わたしたち・・・ 本当にバカなことを・・・」
ローク「・・・まぁ、うちのヒカリさ・・・ ヒカリまで巻き込むところだったしなァ」
ヒカリ「アミ・・・ 辛かったね、せっかくの彼氏だったのに・・・」
アミ「うええええ!」
ローク「・・・」
ローク「あー、ヒカリ・・・ 二人のことを、頼むぜェ」
ローク「大事な・・・友達なんでしょう・・・?」
ヒカリ「ローク・・・」
〇ネオン街
見知ったはずの光景でも
そこになにが潜んでいるか
意外と知らないものさ
悪意も、犯罪も、異星人も――
すぐそこにいるのかもしれないぜ?
???「これは驚いた・・・ 取引の話で来てみれば・・・」
???「ククク・・・ これは地球人の娘よりも よほど金になりそうだ」
???「帝国に栄光あれ・・・」
――なにしろ地球は
潜伏するのに持って来いだからね
<END>
面白かったです!
お姫様を守る三騎士…イイですっ!!
餃子200個……1人50個……
うん、白飯を食べなければ、なんとか……
めちゃくちゃ面白かったです。多分脱出のくだり、もっと尺があったようにお見受けします。もっと見たかった。
4000字は厳しいですよね。
表紙もきれいですね。イラストも描けてうらやましいです。
キャラそれぞれに魅力があって、最後まで夢中になって読みました(^^* ロークさんが一番好みです♪