エピソード1(脚本)
〇シックなバー
──馬鹿みたい
そう言って傾けたグラスは、チョコミントの味がした。
紗耶「ごめん!お待たせー!」
優奈「お疲れ。遅いぞー?」
紗耶「課長がなかなか帰してくれなくてさー あ、優奈なに飲んでるの?」
優奈「グラスホッパー」
紗耶「綺麗な色!私も同じのにしようかなあ」
優奈「紗耶ミント嫌いでしょ? これチョコミントみたいな味するからやめときな」
紗耶「そうなの? ・・・えー、じゃあどうしようかなあ」
優奈「いつも通りカシオレ飲んどけば?」
紗耶「そうするかぁ・・・ すみません、カシスオレンジくださぁい」
優奈「んで?今日はどうしたって?」
紗耶「あー!そう聞いてよ! 実はさ・・・イケメンにデート誘われちゃったー!」
優奈「ほー よかったじゃん、紗耶にも春がきたかあ」
紗耶「それでねー、優奈にデートの服相談したくて!」
優奈「えー? 無難にワンピースとかでいいんじゃん?」
紗耶「もー!一緒に考えてよー! 折角のイケメンチャンスなんだよ?」
優奈「自分でどうにか出来ないと、いざ付き合った時困るぞ?」
紗耶「それはそうだけどー! 優奈と女子トークしたいじゃーん!」
優奈「はいはい、わかったわかった。 でも丸投げはナシだからね」
紗耶「もちろん候補は考えてるよぉ えっとねー・・・」
紗耶は所謂女子っぽい女子
桜色のネイルと、巻き髪がトレードマークで持っている鞄もいつも小さくて。
私とは正反対だった。
明るくて人懐っこい性格の彼女は、会社でアイドル的な存在なのに、男と付き合うといつも一ヶ月もたずにフラれている。
そんな私の友達、井上紗耶
私は彼女が──
──大嫌いだった。
紗耶「ねー、優奈聞いてるー?」
優奈「聞いてる聞いてる ラベンダーのミュールが欲しいって話でしょ? もう三回目・・・」
紗耶「だってー、この前見かけたのがすっごい可愛くてぇ でも給料日前だったから諦めたんだけど忘れられないのぉ!」
優奈「紗耶飲み過ぎ ほら、帰るよ!荷物持って立って!」
紗耶「えー?まだ酔ってないよぉ もう一杯だけぇ!」
優奈「あんたの酒癖の悪さが男が出来ない原因だと思うけど?」
紗耶「だってお酒美味しいんだもーん!」
優奈「イケメンとデートの時に酒飲まないようにしなよ」
紗耶「えー?だめぇ?」
優奈「それでフラれてやけ酒に付き合わされる私の身にもなってみろー。 ほら、行くよ」
紗耶「もぉ、優奈ってば強引ー♡」
優奈「はいはい、もうそれで良いから」
〇街中の道路
優奈「○○町の三丁目のコンビニまで」
紗耶「優奈ぁ!まったねぇ!」
優奈「はいはい」
酔っ払った紗耶をタクシーに乗せ、家路につく。
店から徒歩五分の自宅は、紗耶には教えていない。
──知られたら絶対に入り浸られるから。
優奈「ふぅ・・・ つっかれた・・・」
〇一人部屋
優奈「もしもし」
悠太「もしもし優奈?今大丈夫?」
優奈「平気だよ、お疲れ様」
悠太「お疲れ 優奈は今日どうだった?」
優奈「いつも通りカシオレ女と飲んでたよ。 また泥酔してタクシー乗ってった」
悠太「毎週毎週、大変だね」
優奈「仕方ないよ」
悠太「もう2年の付き合いだっけ?」
優奈「そうね、そんなもんかな・・・ 悠太はどうだった?」
悠太「俺もぼちぼちかな ああ、とりあえずアレは手に入ったよ」
優奈「本当?! さすが悠太!ありがとう!」
悠太「明日家に届けておくよ。 喜んで貰えてよかった」
優奈「ホントにありがとね ・・・あ、もうこんな時間か」
悠太「そうだね、じゃあまた土曜日に」
優奈「11時だよね?楽しみにしてる」
悠太「うん、じゃあおやすみ」
優奈「おやすみ」
〇一人部屋
優奈「んん・・・時間・・・」
優奈「お、目覚まし10分前か。 今日は気合い入れて準備しないと!」
シャワーを浴び、選んでおいた服に袖を通す
いつもと違うメイクに最後の仕上げ
ウィッグを被れば、そこに『優奈』はいない
優奈「よし、完璧」
『11時に駅前時計広場で』
優奈「悠太にメッセージ送ってっと・・・」
届いた白い箱から、ラベンダーカラーのミュールを取り出し足を通して家を出る
──私は今から名前のない女になる
こんばんは!
ゆながリラックスして話せる男性がいたと思ったら偽りの姿になって、急展開で次回になったので続きが気になりました☺️🙌✨それぞれのキャラがどんな風に、絡んで行くのか楽しみです!
優奈は嫌ってそうですが、作者さんは紗耶嫌いでもないのかなってくらい、女子っぽい可愛い子になってました。いますよね、ああいう子。
ラストシーンには驚きました。姿を変えた彼女は、相手にどんなキャラで接するのか楽しみです。
セリフの端々からも伝わる細やかな心情描写に引き込まれますね。そんな優奈さんを軸に描いた日常ドラマかと思いきや、ラストで驚きです。