エピソード1 人生で一番最高で最悪の日(脚本)
〇可愛い結婚式場
私の人生最高の日は──
アザミ「キャー!!」
〇可愛い結婚式場
一瞬にして、人生最悪の日となった
〇モヤモヤ
これは私と──
私の全てを奪った『妖精王』との
愛と憎しみの物語──
〇菜の花畑
幼い頃、何も知らない私は
『妖精』という存在に憧れを抱いていた
アザミ「ねぇ、セージ」
セージ「何?アザミ?」
アザミ「あなた、妖精を見たことある?」
セージ「いや、ないけど・・・」
アザミ「そう。残念」
アザミ「いつか会ってみたいなぁ・・・」
アザミ「セージも、そう思うでしょう?」
セージ「えっ?僕は嫌だよ!」
セージ「妖精に会うなんて!!」
アザミ「どうして?」
セージ「妖精は、人を攫ったり、命を奪ったりするって、お母さんが言ってたもん」
アザミ「もう!セージは、怖がりなんだから!」
アザミ「そんなの、子供に言うことを聞かせるための嘘よ!」
アザミ「妖精はね、優しい心を持っているの。きっとお友達にだってなれると思うわ」
セージ「・・・そうかなぁ?」
アザミ「絶対そうよ!」
アザミ「それでね、いつか、かっこいい妖精の王様が現れて」
アザミ「私を、妖精の国に連れて行ってくれるの」
セージ「・・・」
アザミ「そして私は、その王様と結婚するのよ」
セージ「だっ・・・駄目だよ!!」
アザミ「もう!どうしてよ?」
セージ「だって・・・」
セージ「アザミは、僕がお嫁さんにするんだから・・・」
アザミ「・・・」
アザミ「セージ、私のこと・・・好きなの?」
セージ「・・・うん」
アザミ「へー・・・そうなんだ」
アザミ「お、大人になって、セージがかっこよくなっていたら」
アザミ「なってあげてもいいかな~」
アザミ「・・・セージのお嫁さん」
セージ「ほんと!?約束だよ?」
セージ「僕っ、絶対かっこよくなって、アザミをお嫁さんにするから!」
〇結婚式場の廊下
アザミ「・・・なーんて、言ってたわよね?」
セージ「よく覚えているなぁ、そんなこと」
アザミ「あら?セージは、忘れたの?」
セージ「・・・いや、覚えてるけど」
アザミ「あの頃は、セージがこんなにかっこよくなるとは思っていなかったわ」
セージ「えっ、そうなの!?」
アザミ「うそうそ、冗談よ」
セージ「なぁ、アザミ」
アザミ「何?」
セージ「本当に、俺と結婚していいのか?」
アザミ「当たり前でしょ?どうしてそんなこと聞くの?」
セージ「だって・・・」
セージ「子供の頃、妖精の王様と結婚したいって言っていたじゃないか・・・」
アザミ「あはははは!」
セージ「そんなに、笑うなよ!」
アザミ「あー、おかしい!そんなこと気にしてたの?」
セージ「そんなことって何だよ!?」
アザミ「それは子どもの頃の話でしょ!」
アザミ「この年で、妖精なんか信じてないわよ」
セージ「そっ、そうか。それならいいんだ」
アザミ「フフッ・・・心配性なのは昔から変わらないわね」
アザミ「安心して」
アザミ「私が愛しているのは、セージだけよ」
セージ「アザミ・・・」
アザミ「絶対に、私を幸せにしてよね!」
セージ「もちろんだよ!約束する!」
セージ「愛してるよ、アザミ」
アザミ「私もよ、セイジ──」
〇可愛い結婚式場
セージの父親「おめでとう!セージ!」
セージの父親「アザミちゃんと結婚できるなんて、お前は幸せ者だな」
セージの母親「アザミちゃんを泣かせるんじゃないわよ」
セージ「分かってるよ!」
セージの母親「アザミちゃん、セージのことよろしくね!」
アザミ「はい!任せてください、おばさん!」
アザミの父親「ひっぐ・・・ひっぐ・・・」
アザミの母親「もぉー、お父さん!泣きすぎよ!」
アザミの母親「アザミを、笑って送り出すって言ってたでしょ!」
アザミの父親「だって・・・アザミが家から出ていくなんて・・・」
アザミ「フフッ、泣かないでよ、お父さん!」
アザミ「一生の別れってわけじゃないんだから!」
アザミの父親「ひっぐ・・・アザミ~」
アザミの母親「ねぇ、セージくん」
セージ「はい!」
アザミの母親「早く、孫の顔が見たいわ!」
セージ「ま、孫!?」
アザミ「ちょっと!お母さん!」
アザミの母親「頑張ってね、セージくん!」
セージ「はっ・・・はい!頑張ります!」
アザミ「セージも、真面目に答えなくていい!」
私はこの日、人生で最高に幸せだった
あの男が現れるまでは・・・
〇可愛い結婚式場
「ずいぶんと、楽しそうじゃないか」
ダリア「何の祭りかと思って来てみれば」
ダリア「人間たちの結婚式か」
アザミ「・・・誰よ、あなた?」
ダリア「何だ、余を知らぬのか?」
ダリア「余は、妖精王ダリアだ」
アザミ「妖精王?ふざけないでよ!」
アザミ「勝手に、人の結婚式に乱入してきて」
アザミ「失礼にもほどがあるわ!」
セージ「まぁまぁ、アザミ。落ち着いて」
アザミ「セージは、黙ってて!」
ダリア「おや?」
ダリア「よく見ると、其方はとても美しいな」
アザミ「ちょっと!人の話聞いてるの!?」
ダリア「よし、決めたぞ!」
ダリア「喜べ。其方を、余の妃にしてやろう」
アザミ「はぁ!?」
ダリア「どうした?嬉しくないのか?」
アザミ「何言っているのよ!嬉しいわけないでしょう!」
アザミ「私には、愛する人がいるんだから!」
ダリア「ああ、すまない。この男のことか」
ダリア「ならば──」
セージ「ゴフッ!!」
アザミ「キャー!!」
ダリア「これでよいだろう?」
ダリア「其方の愛する者はいなくなった」
ダリア「思う存分、余を愛するがよい」
アザミ「嘘・・・でしょ・・・」
アザミ「しっかりして、セージ!!」
アザミ「セージ!!」
ダリア「さて──」
ダリア「其方は、これから余と共に妖精の国で暮らすのだ」
ダリア「人間の国に、帰りたくならないよう」
ダリア「故郷も燃やしてやろう」
ダリア「ありがたく思え」
〇可愛い結婚式場
アザミの父親「ゴホッゴホッ!」
アザミの父親「大丈夫か、アザミ──!!」
アザミの母親「返事をしてー!!」
アザミ「お父さん・・・!!お母さん・・・!!」
セージの母親「セージは、無事なの!?」
セージの父親「くっ!!炎で前が見えない!!」
アザミ「おじさん・・・!!おばさん・・・!!」
アザミ「みんな・・・」
アザミ「燃えていく・・・!!」
アザミ「イヤ・・・」
アザミ「イヤー!!」
〇モヤモヤ
こうして──
突然現れた『妖精王』を名乗る男の手によって
私の人生最高の日は
一瞬にして、人生最悪の日となった
〇華やかな広場
アザミ「・・・」
アザミ「・・・ここは?」
アザミ「夢・・・」
アザミ「・・・じゃないわよね」
夢だったら・・・
どんなによかったか・・・
ダリア「目が覚めたか?人間よ」
ダリア「ようこそ、妖精の国『グラストンベリー』へ」
アザミ「ここが・・・妖精の国?」
アザミ「おとぎ話じゃ・・・なかったんだ」
アザミ「それなら、あんたが妖精王っていうのは本当だったの!?」
ダリア「余を疑っていたのか」
ダリア「まぁ、いいだろう。改めて名乗ろうか」
ダリア「私がこの国を支配している妖精王──」
ダリア「ダリアだ」
〇菜の花畑
私の全てを奪ったこの男が
妖精の王様だなんて・・・
私が子供の頃に抱いていた
『妖精』に対する淡い幻想は──
粉々に砕け散った──
〇華やかな広場
ダリア「さあ、人間よ」
アザミ「・・・」
ダリア「ここで、結婚式の続きをしようじゃないか」
アザミ「・・・」
アザミ「結婚式の・・・続き?」
アザミ「何を・・・」
アザミ「言っているの・・・?」
ダリア「何かおかしなことを言ったか?」
ダリア「其方は、これから私の妃になるのだ」
ダリア「人間は結婚式を挙げて、二人の愛を誓い合うのだろう?」
アザミ「・・・」
アザミ「いい加減にして・・・」
アザミ「あなたは、私から何もかも奪ったのよ?」
アザミ「お父さんも・・・お母さんも・・・」
アザミ「おじさんも・・・おばさんも・・・」
アザミ「私が一番愛した・・・セージも!!」
ダリア「・・・」
ダリア「泣いて・・・いるのか?」
アザミ「当たり前でしょ!?」
アザミ「あなたは、人の命を!!」
アザミ「人の気持ちを!!」
アザミ「何だと思っているのよ!?」
ダリア「・・・」
アザミ「愛を誓うだなんて!!冗談じゃない」
アザミ「私が誓うのは──」
アザミ「憎しみよ!!」
アザミ「私からすべてを奪ったあなたを!!」
アザミ「殺してやる!!」
ダリア「余を殺すだって?」
ダリア「人間とは本当に面白いな」
ダリア「いいだろう、余を殺してみるがいい」
ダリア「余は、その憎しみを含めて」
ダリア「其方を愛すると誓おう」
〇モヤモヤ
こうして、私と妖精王との愛と憎しみの物語は──
幕を開けた
幼少の憧れの存在が、何もかも奪う憎しみの対象へと変わる壮絶な展開…。とことんマイナスな状況に落とされている分、これからアザミがどう行動するのか、先が気になる1話でした…!
妖精なんて可愛いおとぎ話、なんて馬鹿にしてはいけないですね😱妖精王の残虐な行為にアザミのようにな深い憎しみを覚えます…
ダリアが王様なのは華やかな花のイメージにぴったりですね。アザミの花言葉は『報復』ですよね。彼女の『報復』がどんな風になるのか、妖精の国はどんなところなのか、妖精とはどんな存在なのか…気になる要素がたくさんで、続きが気になります🤔
悲劇からの幕開けということで、主人公が圧倒的な敵に立ち向かっていくストーリーとなりそうですが…はたして🤔
妖精の世界で仲間を見つけていくか…人間でありながら対抗できる力に目覚めるか…続く展開のアイデアにワクワクしますね😖
妖精王の素振りからして他にも気まぐれで酷いことをしていそうですが…上位種ゆえの文化的な人権軽視なのか…その辺りの世界観も深そうです🤨
復讐の果てに、どんな結末が待つのか😆