壱:始まり(脚本)
〇原っぱ
──人が産まれる何千年も前のこと──
──そこには日本の創造主である伊邪那岐と伊邪那美の姿があった──
伊邪那岐「伊邪那美よ、準備はよいか」
伊邪那美「ええ、始めましょう、伊邪那岐。この地球に大地を水を、そして生き物をもたらすのです」
伊邪那岐と伊邪那美がお互いの手をかざし合うと、辺り一面が光に包まれる・・・
次々と神々が生まれてゆく
伊邪那岐「其方は大地神、雷神、風神、太陽神」
伊邪那美「そして貴方達は海洋神、土地神、天気神です」
伊邪那美「そして海や山、大地に生き物を贈りましょう」
その言葉を合図に、大地、海、山、雲、生き物が誕生する
伊邪那美「最後は火の神ですね。火こそ文明の発展に必要不可欠なものなのです」
伊邪那美が手をかざすと、たちまち大きな炎柱が立ち上がる
伊邪那美「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
〇原っぱ
伊邪那岐「伊邪那美!!!!」
伊邪那美「熱いっ・・・・・・・・・・・・!!!!」
火の神の炎が伊邪那美に燃え移っている
伊邪那岐「おのれ、火の神!!!この私がたたっ斬ってやる!!!」
伊邪那岐がそう叫ぶと、手には炎で出来た大剣が握られた。この剣を『八岐ノ剣』という。
伊邪那岐「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ザンッ!!!!!
伊邪那岐が火の神に八岐ノ剣を振り下ろすと、たちまち火の神は消え、その場には灰が残った
〇原っぱ
伊邪那岐「伊邪那美、大丈夫か!?」
伊邪那美の衣服や髪は焼け焦げ、見るも無残な状態となっている
伊邪那美「伊邪那岐よ、私は醜い姿となってしまいました・・・暫しの間、黄泉の国へ身を隠させてください」
伊邪那美は涙を溢しながら黄泉の国へ去ってゆく
伊邪那岐「伊邪那美・・・」
〇村に続くトンネル
伊邪那岐「伊邪那美よ・・・・・・どうかその美しい姿を見せておくれ・・・・・・・・・」
黄泉の国の前へ、伊邪那岐が訪れる
伊邪那美「それはできません」
伊邪那岐「なぜなのですか。私はこんなにも待ち遠しくて仕方ないのに・・・・・・」
伊邪那美「このような醜い姿では貴殿の隣に立つことさえままなりません。どうかお待ちください・・・・・・・・・」
伊邪那岐「私は其方がどのような姿でも構わぬ。さあ、私と帰ろう」
──伊邪那岐が黄泉の国へ一本足を踏み入れた
伊邪那岐「!!」
〇洞窟の深部
伊邪那美「あれだけ近寄るなと言ったのに!!!!!!!!!!!」
伊邪那岐「伊邪那美・・・・・・その姿は・・・・・・・・・」
──そこにいたのは原型を留めていない変わり果てた伊邪那美だった。
伊邪那岐「ひっ・・・・・・!!」
伊邪那美の姿を恐れた伊邪那岐は黄泉の国を去ってしまった
伊邪那美「・・・伊邪那岐」
──その時、伊邪那美の流した涙が八岐ノ剣に垂れ、『八岐大蛇』が生まれた。
伊邪那美「うっ・・・・・・うぅ・・・・・・・・・」
──こうして伊邪那美の涙から生まれた八岐大蛇を始めとした妖達が下界へと飛び立っていった
〇原っぱ
── 一方、伊邪那岐は・・・・・・・・・
伊邪那岐「伊邪那美・・・・・・」
──伊邪那岐の溜息から生まれた3つの魂は妖達と同様、下界へと飛び立っていった
〇ネオン街
──時は20××年。ここは東京都にある犯罪特区『魔京区』。犯罪者や裏社会の人間が住み着き、連日事件が耐えない地区である。
──”東京都のゴミ溜め”と言われ、ここで何があっても保証はないというほど荒んでいる。
〇アパートのダイニング
──ガチャッ
酒呑「ただいまー!」
とてとてっ
真海「おかえりー!お姉ちゃんっ」
真海「バイトお疲れ様!はいっジュース!」
酒呑「わぁっ!!ありがとう!」
プシュッ
ゴクゴク・・・・・・・・・
真海は酒呑が缶ジュースを飲み終わるのを目を輝かせながら待っている。
酒呑「う〜ん!すっごく美味しい!!生き返る〜!」
真海「えへへ・・・・・・よかった」
酒呑「ところで、このジュースはどこで買ったの?」
真海「自動販売機だよ。いつも、私のためにバイト頑張ってくれてるし、たまにはいいかなって思ってお金貯めといたんだ」
一息ついて、真海はまた話し始める
真海「あのね、あのね、今日は学校の美術の時間で先生に「絵がよく描けてますね」って褒められたんだよ!!」
酒呑「それは良かったね!真海は絵がとても上手だもの」
真海「お姉ちゃんには敵わないよ〜!だってお姉ちゃんはいつでも完璧じゃんっ」
酒呑「そんなことないって・・・・・・」
真海「むしろ何ができないのかわかんないよ〜!私の自慢のお姉ちゃんだもんねっ」
真海(生活はカツカツで苦しいけど、お姉ちゃんといるのは楽しいしずっとこのまま幸せに暮らせたらいいな・・・・・・)
──皆さんこんばんは。6月13日、金曜日のニュースです。
──今日の午後5時頃、魔京区駅前にて男性の遺体が発見されました。被害者は会社員で、犯人は見つかっていない模様です。
真海「あれっ、魔京区のニュースなんて珍しいね。魔京区は犯罪率が高すぎるからもはやほぼニュースでは取り上げられないのに・・・」
酒呑「珍しいこともあるものだね・・・」
〇女性の部屋
酒呑「それじゃあおやすみ」
真海「おやすみ!」
酒呑は真海の部屋を出ていく。真海はベットに入って眠りに着こうとしていた。
真海(今日も楽しかったな・・・・・・)
──運命の巫女よ
真海(ん・・・・・・?)
──聞こえるかい、運命の巫女
真海(誰かが私を呼んでる・・・・・・)
真海(運命の巫女って何だろう・・・)
──ここまでおいで・・・真実を教えてあげる
真海(なんだかよくわからないと行かなくちゃ・・・・・・!)
〇渋谷のスクランブル交差点
──魔京区 中央交差点
真海「ここあたりかな・・・・・・なんとなくここな気が来る」
真海「パジャマで来ちゃったけどちょっと暑いな・・・・・・」
???「やぁ、運命の巫女。来てくれたんだね」
真海「貴方は・・・・・・!」
イザナギとイザナミをモチーフとした作品はありそうでなかった。独特の雰囲気に引き込まれました。古事記の世界と現代社会とが真海を通してどのようにリンクしていくのか、今後の展開が楽しみです。
過去と未来と繋がっている、と考えると時空ってすごくロマンが詰まっていますよね。
生まれ変わりなのでしょうか。この出会いが意味するものとは…続きが気になりました!
私たち人間の汚れた精神とか犯罪意志など、本当に伊那のお二方の悲しい別れがもたらしたものなのかと感じさせられるほど、うまく時空を交差させていてとても興味深いです。