怪物人間の生きる道

洋傘れお

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怪物人間の生きる道

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〇ネオン街

〇住宅街の道
  きゃあああああっ!

〇黒
南城「警察だっ!」

〇血まみれの部屋
南城「なんだこいつは!」

〇血まみれの部屋

〇黒

〇海岸の岩場
安智「・・・ここは?」
安智「そうか。俺は確か―――」

〇黒

〇海岸の岩場
「ガボガボっ! ゴボボボボッ―――!」
アヤ「さぁ、しっかり押さえつけて!」
男「おうっ!」
安智「ガボッ!!」
安智(い、息が──殺される!)

〇海岸の岩場
安智「アヤ、どうして・・・」
安智「しかし、どうして生きてるんだ?」
安智「まずは警察? いや、スマホが無い」
安智「ああ、とりあえず家に帰りたい・・・」
安智「疲れた」

〇住宅街の道
安智「家に誰かいる?」

〇家の廊下
安智「・・・」
アヤ「これであいつの保険金は私たちのものよ ダーリン♪」
男「へへっ、アイツもバカだよな 利用されてるとも知らずに」
安智(アイツ、浮気してたのか)
安智(いや、それよりも!)
安智「騙していたのか!」
アヤ「きゃあっ! アンタ、どうして!」
男「くそっ、殺し損ねたか!」
安智「お前、俺を今まで騙してたんだな」
アヤ「ふんっ、誰がアンタなんかと 本気で付き合うのよ」
男「俺らのためにもういっぺん死んどけ、な?」
安智「ぐっ!」
安智「ふ、ふざけるなぁっ!」
アヤ「きゃあああああ! なによこいつ!」
男「ひっ、ひぃいいいっ!」
男「ぎゃっ!」
アヤ「や、やめて! お願いよ! 私が悪かったから!」
安智「グウゥ!」
アヤ「きゃ――!」
南城「警察だ!」
南城「なんだこいつは!」
安智(ハッ! 俺は何をしていた?)
安智(くっ!)
南城「待て!」
南城「くそっ、逃げられたか!」

〇土手
安智「いったい、どうしちまったんだ」
安智「刺された傷が無い」
安智「俺は、怪物になったのか?」

〇家の廊下

〇土手
安智「・・・人を殺しちまった」
安智「ああ、くそ」
安智「なんてことしちまったんだ」
安智「ううっ・・・」
安智「うっ・・・なんかめまいが」
安智(ダメだ。意識が──)

〇川沿いの原っぱ

〇川沿いの原っぱ

〇川沿いの原っぱ
安智「はっ! ここは!」
ヤヨイ「大丈夫 お腹が減って倒れただけだから」
安智「元に戻ってる!」
安智「君が助けてくれたのか?」
ヤヨイ「私、ヤヨイ」
安智「あっ、東 安智です」
安智(なんか、調子狂うな)
安智「って、その鱗!」
ヤヨイ「うん 私も怪人だからね」
ヤヨイ「君もでしょう」
安智「カイジン? 俺が?」
ヤヨイ「そう。雰囲気で分かるよ」
安智「君も、怪物に変身するのか?」
ヤヨイ「まあね」
ヤヨイ「でも私は未熟だから君みたいにはなれない」
安智「未熟?」
ヤヨイ「強い人じゃないと、変身できないから」
安智「なるほど」
安智「どうして俺は怪人になったんだ?」
ヤヨイ「知らない」
安智「あー、そりゃそうか」
ヤヨイ「でも、怪人になるのはみんな 死んだか、死にかけた人」
ヤヨイ「たぶん生きたいって願いが、 体に本気の力を出させる」
ヤヨイ「生きたい願いが怪人の力」
安智「そんなものかね・・・」
安智(あんまり信じられないな)

〇テントの中
安智「しかし、ずいぶんな所に住んでるな」
ヤヨイ「逃げてるからね」
安智「どうして狙われてるんだ?」
ヤヨイ「怪人は、人のアニマを食べないと 生きていけない」
ヤヨイ「君が倒れたのもそのせい 力を使って空腹だったから」
ヤヨイ「私は、人よりちょっとアニマが多い そういう体質だから」
安智「なんかよく分かんないけど、 要はエサにされてたって事?」
ヤヨイ「(うなずく)」
安智「そっか・・・ありがとな 俺なんかの為に」
ヤヨイ「ううん 分けるのは平気」
ヤヨイ「無理やりが嫌なだけ」
安智「ヤヨイさんって、良い人なんだな」

〇大会議室
刑事「南城さん、犯人が怪物だって まだ信じてるんすか?」
南城「信じるも何も、俺はこの目で はっきり見たんだ」
刑事「そっすか・・・・・・」
刑事「ま、まぁ、俺はこの女の彼氏とか怪しいと思うんですけどね」
南城「彼氏? ああ、東 安智か」
南城「犯行現場はこいつの部屋だからな」
刑事「そっすよ。事件後、一度も戻ってないみたいですし」
刑事「絶対怪しいっすよ」
南城「ふむ・・・・・・そうだな」
南城(もしかしたら、犯人はこいつか?)
刑事「案外、最近この辺で起きてる連続食人も こいつの仕業だったりして」
刑事「なんかあの事件も、黒い怪物を見たとかいう話が上がってるんすよね」
南城「なんだと?」

〇住宅街の道

〇血まみれの部屋
南城(あの怪物が連続殺人犯だとしたら、 かなりまずいな)
南城(警察にどうにかできるか?)

〇土手

〇川沿いの原っぱ
南城「見たぞ、やはりお前だったか!」
南城「東安智、お前を殺人の容疑で逮捕する!」
安智「わっ! け、警察!?」
???「見つけたぞヤヨイ!」
ヤヨイ「パラサイト!」
南城「なんだお前は!」
パラサイト「・・・」
南城「ぐわぁっ!」
安智「け、刑事さん!」
安智「お前も怪物なのか?」
パラサイト「ふっ―――」
ヤヨイ「こいつはパラサイト」
安智(ヤヨイさんが震えている?)
安智(まさかこいつが、ヤヨイさんが逃げていた相手なのか?)
パラサイト「私も手荒なことはしたくないのです 戻ってきなさい、ヤヨイ」
ヤヨイ「嫌だ」
ヤヨイ「私はもう、協力しない」
パラサイト「人間のアニマでは効率が悪すぎるのですよ」
パラサイト「アナタだって無駄な死人は出したくないでしょう」
安智「何の話をしてるんだ?」
ヤヨイ「それは・・・」
ヤヨイ「とにかく、私だってアナタに殺されるのはもう嫌!」
パラサイト「アナタは生命力を食いつくしたところで 死なないのだから良いでしょう」
安智「まさかアニマって、生命力の事だったのか!?」
パラサイト「おや、アナタは最近変質したばかりですか?」
パラサイト「我々は、他の生命体から命を吸って 力を得る事ができる存在なのですよ」
パラサイト「本来、怪物同士の捕食行動は体に合わないものなのですが、その娘は特別でしてね」
パラサイト「言ってしまえば、我々の為にエネルギーを生み出す能力を持った怪物なのです」
安智「さっきの言い方をみるに、アンタこの人が死ぬまで生命力を吸い上げてただろう!」
パラサイト「我々は死にません 不死身なのは身をもってご存じでしょう」
安智「それでも、殺している事には 変わりないだろう!」
安智「アンタに、彼女は連れて行かせない」
パラサイト「そうですか ならば、実力行使です」
南城「怪物が二匹だと!」
南城「その黒い姿まさか、食人事件はお前が!」
安智「食人?」
南城「知らないのか! この辺りで起こっている連続殺人だ!」
南城「被害者は全員、体の一部をかじられている!」
安智「趣味が悪いぞ! アンタだって、元は人間だったろう」
安智「それだってのに、人間を食い殺すのか!」
パラサイト「ええ アナタの仰るとおり、私は"元"人間です」
パラサイト「今や生態系の頂点に立った我々にとって、下等な霊長類は利用価値のある生物資源でしかない」
パラサイト「人間だって、他の動物を食卓にあげるでしょう」
安智「俺は心の話をしてるんだ!」
安智「体が怪物になっても、人間の心まで変わるわけじゃない」
安智「お前は、心が痛まないのかよ!」
パラサイト「これはおかしな事を」
パラサイト「さっきの刑事さんとのやり取り、聞いていましたよ」
パラサイト「貴方がそれを言いますか? 人を殺したあなたが?」
パラサイト「残虐に、冷酷に、殺しを実行したアナタはすでに我々と同じ怪物だ」
パラサイト「でも安心してください それでいいのです」
パラサイト「我々は人間より優れた存在だ」
パラサイト「優秀な種は、他の生物を利用して良いのです」
パラサイト「搾取して許されるのです それは自然界の摂理ですから」
安智(こんな事を笑って言うこいつは、まともじゃない)
安智(身も心も怪物に成り下がっている)
安智(俺は・・・こいつとは違う!)
パラサイト「君は私と同じ怪物なんですよ」
パラサイト「受け入れて、こちら側に来なさい 楽になりますよ」
安智「断るっ!」
パラサイト「ほう、私と戦うつもりですか」
安智「いくぞ!」
安智「ぐっ!」
安智「強い!」
パラサイト「無駄ですよ。不完全なアナタではね!」
南城「こっちだバケモノ!」
  南城の投げた石が、パラサイトに直撃する
パラサイト「むっ―――!」
安智(今だ!)
安智「うおおおおおおっ!」
パラサイト「うっ・・・」
パラサイト「ほう、根性はあるようですね」
安智「これでとどめ!」
パラサイト「フッ──」
安智「くそっ!」
パラサイト「ははっ、これはひどい」
安智「ぐあっ!」
パラサイト「とどめって叫んでから躊躇する人、初めて見ましたよ」
パラサイト「バカですねぇ」
安智「ぐあああああっ!」
パラサイト「フンッ」
ヤヨイ「あっ――!」
ヤヨイ「嫌っ!」
  パラサイトはヤヨイを無理やり抱えると、高く跳躍した
南城「おいっ! 待ちやがれ!」
南城「くっ・・・ダメか!」
安智「ヤヨイさんが・・・」
南城「しゃべるな 酷い傷だ!」
安智「傷なら、問題ない」
南城「嘘だろ 塞がっていく・・・」
安智「ははっ・・・バケモノなんでね」
南城「どうしてためらった?」
安智「あの状況、アンタならやってたのかよ」
南城「そうだ」
安智「嘘だね 刑事がそんな」
南城「馬鹿野郎! 優先する物を間違うな!」
南城「守るものは別にあるだろう!」
安智「あの場で、斬ってればよかったって?」
南城「そうだ」
安智「他人事だからって!」
南城「みくびるなよ」

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コメント

  • この物語を読んで、結局一番の怪物は金のために安智を殺したアヤと男だったなと思いました。安智の怪人としてのポテンシャルがこれほどまでに高いとは予測不能でした。これからエネルギー源である人のアニマをどうやって調達していくのかが唯一の気がかりですね。

  • 人間の心で彼女を助け、怪人の姿で悪を倒す、本当に理想的な存在だと思います。付き合っていた彼女から裏切られた結末がこうなるとは予想していなかっただけに、嬉しい展開でした。

  • 人間の心を持った怪人さんが、人間の味方となってヒーローになりました。これからも様々な怪人さんをやっつけちゃってください。頼りにしてます。

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