記憶

神社巡り

エピソード1(脚本)

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〇男の子の一人部屋
「う、うう・・・ん」
「ん!?・・・・・・・・・」
「ん・・・? ん? ん・・・・・・・・・・・・!?」
猿渡信一「何じゃこりゃ~!!」
猿渡信一「どうなっているんだ? ここはどこだよ!?」
  目が覚めると、そこは見覚えのない生活空間だった・・・しかも長年ここで暮らしていた形跡もある・・・
猿渡信一「こういった場合どうすべきなんだ・・・?」
  目が覚めた途端に全く記憶の無い場所にいる・・・そんな経験は今までに無かった・・・
  対処方法を画策しようと記憶の整理をしているが、前例のない驚きの出来事に良い案は思い浮かばなかった・・・
猿渡信一「ひとまず落ち着こう・・・」
猿渡美恵「お兄ちゃん!!」
猿渡信一「お、お兄ちゃん!?」
猿渡美恵「また、学校に遅刻するわよ!!」
猿渡信一「学校って・・・」
  どうやら私はこの娘の兄で学校に通っているらしい・・・しかし、この娘と私では似ても似つかないのではないだろうか・・・?
  選択肢は2つ考えられた・・・一つは事情を説明しここが何処かという事を尋ねるか?
  もう一つはこの娘に乗っかって話を合わすか?だ・・・前者の考えは信じては貰えない危険と大事にされる恐れがある・・・
猿渡信一「ああ・・・早く準備するよ・・・」
猿渡美恵「急いでよ!!私も遅れちゃうんだから・・・!!」
猿渡信一「私も遅れちゃうって・・・どういうことだ・・・?」
  状況を整理してみよう・・・
  昨夜は酒場に赴き友人のロベルトと酒を酌み交わしいていた・・・
  自慢話に花が咲き、酔いつぶれて酒場で寝てしまったと思っていた・・・
  それが目を覚ますと見慣れない部屋で、ずっとここで生活していたかの様な状況になっている・・・
  しかも、居る筈のないない妹がいて学校に通っているらしい・・・
  まだまだ、予想もしない現実が次々と襲ってくるのだろう・・・
  私は妹に言われた通り身支度を整える事にした・・・

〇白いバスルーム
猿渡信一「うわぁ----------っ!!」
猿渡信一「誰だぁ・・・これ・・・別人になってる・・・」
猿渡美恵「今度は何!?」
猿渡信一「い、いや・・・別に・・・」
猿渡美恵「あんな大声出してそんなはずないでしょ?」
猿渡信一「か、顔が・・・いつもより良くなってて・・・」
猿渡美恵「なに!?それ!? いつからナルシストになったのよ!?」
猿渡美恵「可笑しなこと言ってないで早くしなさい!! シバくわよ!!」
猿渡信一「シバくって・・・」
  予想外の現実は次々に襲ってきた・・・自分の容姿は以前とは全く別物だった・・・意識だけが別の体に乗り移ったのだろうか?
  しかし、この容姿には全く心当たりはない・・・若返りは人類の憧れではあるが全くの別人では話が違うのではないか?
猿渡信一「もう少し様子を伺うしかないか・・・」

〇屋敷の門
猿渡信一「私も遅れるって・・・こういう事かぁ・・・?」
  どうやらこの男の子はかなり育ちが良いらしい・・・家の造りは立派で、車での送迎が日常の様だ・・・
  親が資産家だとすればかなりの好条件である・・・私はこの男の子の素性に興味が溢れ出した・・・
宗田「信一様・・・お待ちしておりました・・・」
猿渡信一「あ、ああ・・・」
  どうやらこの男が運転手の様だ・・・
  ぱっと見ではわからないが、筋肉質でかなり鍛えている・・・
  只の運転手ではなくボディガードも兼ねているのだろう・・・私のいたずら心に火が付いた・・・
宗田「ふっ・・・何をなさるのですか・・・? 普段の信一様らしくない・・・!?」
猿渡信一「ちょっと躓いてしまって・・・失礼しました!!」
  私の蹴りは見事に受け止められた!!
  躓いた事を装ったがこの男には見透かされている・・・
  この男はこんな出来事は気にも留めないだろう・・・問題は妹がしっかり見てた事だ・・・
猿渡美恵「お兄様、今のは何ですの!? 宗田を蹴ろうとしましたよね!?」
猿渡信一「ち、違うよ・・・!! これを見て・・・!!」
猿渡信一「この石に躓いてよろけたんだよ!!」
  苦し紛れの良い訳だった・・・
  しかし、妹はすんなりと受け入れた・・・
猿渡美恵「まあ、そうだったのね!! 私の勘違いだったわ・・・ごめんなさい・・・」
  驚きだった!!
  何か裏がある・・・
  私はこの男の子の素性にますます興味を抱いた・・・
宗田「さあ・・・お乗りください・・・学校に向かいますよ・・・」

〇お嬢様学校
宗田「さあ・・・到着いたしました・・・」
  学校も見事なものだった・・・
  一般人が通えるような学校ではない・・・
  やはりこの男の子は資産家のご令息か・・・?
  私はこの男の子を演じる事んに天命を感じた・・・
猿渡美恵「じゃあ、お兄ちゃん・・・私は行くわね・・・」
宗田「行ってらっしゃいませ・・・」
  この時、少しだが違和感があった・・・二人が居なくなる瞬間に自分に対する哀れみを感じた・・・
猿渡信一「なんだ・・・あの違和感・・・」
一条「真一君・・・おはよう・・・」
  誰だ!!こいつは・・・!?
  自分の中の何かがこいつに対しておぞましさを感じた・・・
猿渡信一「あ、ああ・・・おはよう・・・」
一条「何だい・・・それは・・・それが僕に対する口の聴き方かい・・・!?」
  その一言でこいつとこの男の子の関係を粗方理解した・・・
  私はこいつの言動に乗ってみることにした・・・
猿渡信一「す、すみません・・・おはようございます・・・」
一条「遅いよ!! 君の様な人間がこの僕にそんな口を聴いて良いと思ってるの!?」
猿渡信一「痛っ!!」
橋本「おい、猿渡・・・一条君に対してその態度は何だ・・・」
  どうやらこの男の子は学校で不遇の扱いを受けているらしい・・・妹と運転手の哀れみの謎が解けた・・・
  しかし、どう対処したものか・・・
猿渡信一「ハハハ・・・どうもすみませんねぇ~ まだ、勝手がわからなくて・・・」
一条「(こいつ何を笑っている・・・いつもの様な卑屈な態度はどうした・・・?)」
一条「信一君・・・いつものように僕らのカバン持ちをしてよ・・・」
猿渡信一「嫌ですよ・・・ハハハ・・・」
橋本「何だと!!」
一条「ハハ・・・僕の聴き間違いかなぁ・・・」
猿渡信一「聴き間違いじゃないですよ・・・カバン持ちならそこの腰巾着にお願いしてはどうでしょう?」
橋本「こ、腰巾着!?」
一条「(いつもと様子がまるで違う・・・) 信一君・・・今日はどうしちゃったのかな・・・?」
猿渡信一「どうもしませんよ・・・僕は忙しいので失礼・・・ハハハ・・・」
橋本「猿渡の奴・・・」
一条「信一君・・・生意気な態度だったね・・・クッ」

〇おしゃれな教室
  これ程にレベルの高い学校でありながら、信一という男の子は不遇な扱いを受けていた・・・
  そうなった理由は計り知れないが、解決しなければ私自身が不遇な扱いを受け続けてしまう・・・
  私はあの一条と橋本という男の子の素性を洗うことにした・・・
クラスメートA「一条君と橋本君・・・?」
クラスメートA「一条君はお父様が代議士で学校でもかなり力を持っていらっしゃるわ・・・」
クラスメートA「息子の一条君もその力のおかげで学校で幅を利かせているの・・・」
クラスメートA「取り巻きの橋本君は製薬会社の社長のご子息よ・・・お父様の力関係なのか一条君には頭が上がらないの・・・」
  クラスメート達は疑問も抱かず私の質問に快く答えてくれた・・・しかし話を聞いてるうちに新たなる疑問が生まれた・・・
  不遇な扱いを受けてる筈の信一という男の子にクラスメート達からは哀れみが伺えない・・・
  かといってクラスメート達みんなが不遇な扱いをしてるという感じでもなかった・・・対応は誰もがフレンドリーに接してくる・・・
橋本「おい!猿渡・・・ちょっとこっちに来い!!」

〇華やかな裏庭
一条「信一君・・・今朝の態度は何ですか・・・?」
猿渡信一「何って・・・別に・・・」
橋本「別にじゃないだろぅ・・・」
一条「あんな態度では困りますね!!」
猿渡信一「何が困るんだい・・・?」
一条「上手くいかなくなるでしょ・・・?」
猿渡信一「・・・? なんの話しなんだ・・・?」
一条「これは信一君の計画なんですよ!?」
猿渡信一「ちょ、ちょっと待て!! 何の話だ・・・!?」
一条「学校中に信一君がイジメにあっている姿を公開するんですよね?」
一条「その為にイジメられ役に徹する手はずだった筈では!?」
猿渡信一「何でそんなことを・・・!?」
一条「信一君の考えなど私たちにはわかりませんよ!!」
  不遇な扱いを受けていた筈の信一は・・・裏で糸を引いていた・・・
  しかし、どんな意図があっての事だろう・・・調べるのはこの二人より寧ろ信一だった・・・
猿渡信一「す、すまなかった・・・この話は無かった事にしてくれ・・・」
一条「わかりました・・・信一君の頼みだから聞いてたのですが・・・私たちだってこんな役嫌でしたからね・・・」
橋本「猿渡・・・最近、我儘が過ぎるぞ・・・」

〇おしゃれな食堂
  信一は得体が知れなかった・・・
  学校中の人間に話をしてみたが不遇な扱いを受る人物ではなかった・・・
  寧ろ逆・・・
  この学校を牛耳っているのは信一なのではないだろうか・・・?
猿渡美恵「お兄ちゃん・・・今朝、一条さん達に反抗してたけど大丈夫?」
猿渡信一「あ、ああ・・・」
猿渡美恵「あんなので計画が上手くいくの・・・?」
猿渡信一「お、お前・・・何か知ってるのか!?」
猿渡美恵「知ってるも何も・・・」
猿渡信一「何か知ってるなら教えてくれ!?」
猿渡美恵「お兄ちゃん・・・どうしたの・・・?今朝から様子がおかしいわよ?」
  美恵の様子は明らかに何かを知っている感じだった・・・もしかすると計画とやらを一緒に企てたのかも知れない・・・
猿渡信一「今朝から頭がボーっとして物忘れが激しいんだ・・・」
猿渡美恵「大丈夫?病院行った方が良いわよ・・・それ・・・」
猿渡信一「疲れてるだけだから大丈夫だよ・・・それより教えてくれ・・・」
猿渡美恵「イジメのプロセスを解明する為に被検体になってるんでしょ?」
猿渡信一「プロセス解明の被検体!?」
猿渡美恵「最終的には争いごとを無くすためのプロジェクトの一端よね・・・」
  私が思っていた以上に大きな規模の話になってきた・・・だいたい争いごとを無くすプロジェクトなど高校生が企画するだろうか?
  世界規模・・・地球規模でプロジェクトを立ち上げても結果は出せないだろう・・・
猿渡美恵「私も応援してるんだから頑張ってよね!!」

〇お嬢様学校
猿渡信一「争いを無くすプロジェクトってなんだ・・・」
  学校は終わったが信一の事は謎ばかりだった・・・志は立派だと思うが情熱だけでは争いは無くならない・・・
  たとえスーパーヒーローが現れて同じ志を持ったとしても一人の力では容易ではないだろう・・・
  ある程度の力は持っているみたいだが・・・信一はどこまで本気なのだろうか?
宗田「お迎えに上がりました・・・」
猿渡美恵「ご苦労様~」
宗田「信一様・・・いつもの所に向かわれますか?」
猿渡信一「あ、ああ・・・よろしくお願いします・・・」
  いつもの所とはプロジェクトに関係してるに違いない・・・私はそのいつもの所へ行ってみることにした・・・

〇大きい研究施設
  着いたのは研究施設のような所だった・・・ここでプロジェクトとやらが行なわれているのだろうか?
鮫島「信一さん・・・お待ちしておりました・・・」
鮫島「その後の様子は如何ですか? 体調に変化などは・・・?」
猿渡信一「変わりはないが・・・」
鮫島「自ら被検体を買って出た時には驚きましたよ・・・」
  被検体・・・やはり例のプロジェクトの話だろうか?
鮫島「発明したての装置です・・・失敗で何事も無かっただけで良かったと思います・・・」
猿渡信一「・・・・・・?」
鮫島「何かのトラブルでも起こっていたら事件になりますからね・・・」
猿渡信一「ちょ、ちょっと待て・・・信一は何をしたんだ!?」
鮫島「信一さん・・・貴方まさか・・・!?」
猿渡信一「ここでどんな装置を使ったんだ!?」
鮫島「実験は成功した・・・!?まさか・・・昨日は何の変化も無かった・・・」
猿渡信一「それは何の装置なんだ!?答えろ!?」
鮫島「じ、人格を変える装置です・・・あなた記憶を無くしてしまったのですか?」
  こいつの話は今朝からの出来事と何処か通じる所があった・・・私が別人になってしまったのは装置が関係しているに違いない・・・
猿渡信一「落ち着いて話せる所は無いか?2人きりで話がしたい・・・」
鮫島「では、研究室に・・・」

〇研究開発室
  私は詳しい事情を知るために昨夜からの出来事をこの男に話した・・・
鮫島「ハハハハハ・・・ 実験は成功していた・・・凄いぞぉ!! ハハハハハ・・・」
  話す相手を間違えてしまったようだ・・・この男は研究が成功した事とこれからの展望にしか興味がない
鮫島「これは凄い事になるぞぉ・・・」
猿渡信一「待ってくれ・・・俺は元に戻る方法が知りたいんだ・・・」
鮫島「元に戻る・・・!?? 信一さんの記憶が変わっただけで・・・貴方は存在しないのでは・・・?」
猿渡信一「何を言っている・・・!?」
鮫島「貴方は入れ替わったと思っていますが、そんな人間は存在してなくて・・・ただ記憶が操作されただけだと思いますよ・・・」
猿渡信一「昨日、酒場でロベルトと飲んでいた自分は・・・!?」
鮫島「そんな設定を記憶に上書きされたのでしょうね・・・」
  この男は恐ろしい事を言っていた・・・私は元々、存在などなく記憶の操作で生まれた人格だと・・・
  私が今まで生きてきた36年の人生や思い出は全て無かったと言っているのだ・・・
  長い年月でめぐり合ってきた人々や培ってきた努力など記憶でしかないと・・・
  しかし、否定する材料は何もない・・・

〇ネオン街
  研究所を出た私はあてもなく街をさまよっていた・・・
  自分の全てを否定された今・・・これからの事を考えていかなければならなかった・・・
  しかし、36年間の記憶は本当に作られたものなのだろうか・・・?現実というものが何かわからなくなっていた・・・
猿渡美恵「お兄ちゃん・・・」
猿渡信一「ああ・・・美恵かぁ・・・」
猿渡美恵「いきなり居なくなって心配したのよ・・・どうしたの・・・?」
猿渡信一「自分で自分がわからなくなってしまってね・・・」
猿渡美恵「わからなくなったって・・・やっぱり昨日の実験から記憶を失っているのね・・・」
猿渡信一「美恵・・・お前知ってたのか・・・?」
猿渡美恵「私も立ち会いましたからね・・・」
猿渡信一「信一は何をしようとしてるんだい?」
猿渡美恵「争いごとを無くすプロジェクトの一端よ・・・粗暴な人が穏やかな性格になれば世の中は変わっていくわ・・・」
猿渡信一「自分の記憶がまやかしになってもかい・・・」
猿渡美恵「深く考えなくても良いんじゃない?その記憶を選んだのはお兄ちゃんよ?こうなる事も計算していたと思うわ・・・」
猿渡美恵「目的を持ってその記憶を選んだんだもの・・・信念に向かって突き進んだら良いのよ・・・」
  信一は私が全てを知って落胆することまで計算していたのだろうか?そしてこれからの展望を図りかねて途方に暮れることも・・・
  自分の今までが無くなってしまうのは怖くなかったのだろうか・・・?
  私にどこに向かって生きて欲しいのだろうか・・・?
  何故だか信一が生みの親の様な存在に感じた・・・
猿渡信一「恵美・・・信一の事を詳しく教えてくれ・・・」
猿渡美恵「わかったわ・・・お兄ちゃん・・・」
  END

コメント

  • 人間の実体は体でも心でもなく記憶であるということを痛感させられました。この物語の怖いところは、周囲の人間のみならず自分自身に対しても自分が自分であることを裏付ける説明や証明ができないことですね。36年間の記憶を入れる器が違うものになったのか、それとも器の中の記憶が上書きされたのか。物語に続きがあるとすれば着地点はどこなのか、興味が尽きません。

  • 人間の記憶を操作し人格を変えてしまう研究は何か末恐ろしいものを感じます。でも、朝起きたら違う人間に変わって素敵な暮らしがしたい。

  • 主人公がずば抜けた発想の持ち主であることがわかり、彼にとても興味がわきました。大きなリスクを背負ってまでやり遂げたかった想いが伝わってきました。

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