竹田くんのお昼ごはん

あいざわあつこ

第七話 アオハルビターキャラメル(脚本)

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〇男の子の一人部屋
松岡春斗「・・・・・・」
  『明城中ですよね、知ってます。偏差値70近いとこじゃないですか、なんでここにいるんです』
  ふと、先日の梅村とのやりとりを思い出す。
  『まあ、なんとなく知ってますよ。友人関係でトラブったって』
松岡春斗(いつ、辞めたっていいって・・・ そう思って入ったんだけどな、冬高)

〇教室
女子生徒「・・・なんで明城からうち?」
男子生徒「知らねえけど、トラブルでも起こしたんじゃねえの?」
松岡春斗(うるせえよ、聞こえてるっつの)
  家から一番近い。ただ、それだけの理由で入った冬芽高校は噂通りの底辺校だった。
  それ自体はわかっていたことだから問題はなかった。だけど・・・。
松岡春斗(この視線だけは腹立つ)
  突き刺さる視線を送ってくるやつらだって色とりどりの髪の毛だったりして。
松岡春斗(俺に言わせればお前らのほうがよっぽど怖いっつうの・・・)

〇黒
  ・・・腫れ物扱いが続いた、そんなある日。

〇教室
???「おい、お前」
松岡春斗「え?」
  昼休憩、一人でいた俺に話しかけてきた、ひときわ頭の悪そうなやつ。
  それがたけ・・・竹田夏樹だった
竹田夏樹「頭いーんだってな? めーじょー? とかいう学校から来たって」
松岡春斗「だったらなんなんだよ」
松岡春斗(もういい。これで喧嘩でも売られたら、 それを理由に学校なんて辞めて──)
竹田夏樹「頼むっ! 勉強教えてくれ!」
松岡春斗「は・・・?」
竹田夏樹「赤点でやべーんだ! このまんまじゃおかんに殺されるばい!」
松岡春斗「勉強教えろって・・・俺に?」
竹田夏樹「は? だからそう言ってるばい。 お前、頭いーんだろ?」
松岡春斗「・・・なんで教えてやんなきゃなんねえんだ」
竹田夏樹「なんでって? なんでってそりゃ」
竹田夏樹「──トモダチ、だから?」
松岡春斗「・・・!」
  身構えていた俺は、身体から力が抜けていくのを感じた。
  そして、同時に強い衝動がこみ上げてくる。
松岡春斗「ふっ・・・ははっ、あははははっ!」
竹田夏樹「へ? なんで笑っとん?」
松岡春斗「あははははっ! ふはっ、あはは!」
竹田夏樹「ゆーとーせー、壊れたばい」
松岡春斗「お前の、名前すら知らねえのに! トモダチってどういうことだよ」
竹田夏樹「は? あ、やべ、俺も名前知らね。 けど、とにかくダチなんだ! 頼む、勉強教えてくれんとヤバいんだって」
  涙が溢れてきて、鼻の奥が痛む。
松岡春斗(勉強教えてくれって。なんだよ、結局俺だってまわりのやつらと一緒で色眼鏡で見てたんじゃねえか)
  自分も周りも滑稽で笑えて仕方がない。
  こんなに笑うのはいつぶりだろうか。
  ずっと張っていた緊張の糸が、ぷっつりと切れてしまったのだろう。
竹田夏樹「も、もしもーし?」
松岡春斗「ふふっ・・・いいよ。 昼休憩の間なら、教えてやるよ」
竹田夏樹「え? いいんか? ・・・おうっ、よろしくな!」

〇男の子の一人部屋
松岡春斗「ふふっ」
  思い出すだけで、少し心が緩む。
松岡春斗(それから毎日、一緒に昼飯、食うようになったんだもんな)
  今では学校をいつ辞めてもいいなんて到底思えない。
  毎日が楽しくて、たまらないのだ。たけとの弁当の時間も、何もかも、今は楽しくて・・・。
松岡春斗「さ、明日は何作ろっかな」

〇教室
  ピコン。
松岡春斗(・・・ん)
  授業中に、いつもどおりスマホが震えた。教師に見つからないように、机の中にスマホを入れたまま確認する。
たけ「『おい野郎ども』」
松岡春斗(『?』)
たけ「『今日は三人でメシ食うぞ』」

〇学校の屋上
松岡春斗「たけ」
  昼休憩が始まってすぐ。屋上へ行くとそこにはすでに、たけの姿があった。
松岡春斗「早かったな」
竹田夏樹「ん、授業、フケたから。 あ、ちなみにうめは委員会らしいばい。 遅れるって言ってた」
松岡春斗「あっそ。 梅村はどうでもいいが、お前・・・」
松岡春斗「また留年すれすれになってもしんねーからな?」
竹田夏樹「それは困る! おかんに殺されるばい」
松岡春斗「ふっ、ふふ」
竹田夏樹「んだ?」
松岡春斗「いや、お前、初めて会ったときも同じこと言ってたなと思って」
竹田夏樹「だっけ? 忘れちまった」
松岡春斗(言ってたんだよ、お前は)
  心のなかでだけそう返して、フェンスにより掛かる。
  ヤンキー座りをしたたけの目の淵は薄っすらと赤い。
松岡春斗「それにしても・・・。急にどうしたんだよ」
竹田夏樹「なにが?」
松岡春斗「メシ。改まって言わんでも、いつも一緒に食ってただろ」
竹田夏樹「ああ、まあ・・・それはそうなんだけど、たまにはいいばい」
松岡春斗「まあ・・・?」
竹田夏樹「だって、さ」
  そこでたけは一度言葉を区切った。そして少し赤くなった鼻をすする。
竹田夏樹「ちゃんと、誘っとかねえと・・・ お前らだって予定あるかもじゃん」
松岡春斗「こないだのお前みたいに?」
竹田夏樹「うっ!」
松岡春斗「はは、まあ俺も梅村もそんな予定ねえけど」
竹田夏樹「けっ、けど、わからんばい? まあ、予定できたっていうなら、しかたなかし・・・」
  言いながら唇を尖らせるたけ。要するに、寂しい気分になっているんだろう。
松岡春斗(こういうときに、浸け込むべきなんだよな。わかってんだけどさ)
  だが、そうやって仮にたけを手に入れたとしても・・・。
  きっと、ほしい形はそれじゃない
竹田夏樹「あーあ、腹減った。おせえな、うめのやつ」
  気を紛らわせるようにつぶやいたたけに俺はカバンから小さな包を取り出した。
松岡春斗「今日は特別だぞ」
竹田夏樹「へ?」

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