白線上のヒポポタマス(脚本)
〇野球場の観客席
試合は2対3、9回の裏。
観客席に詰めかけたファンたちは、真っ二つに反応が分かれていた。
黒とオレンジのカラーが目立つ、埼玉書貝スモーラーズ陣営は、しんと静まり返っている。
この後間もなく訪れる喜びの瞬間に、己が最も大声で喜ぶ為に、呼吸を整えているかのようだ。
書買スモーラーズは、常勝無敗。
日本を代表する野球チームだ。
観客席は何度目かになる優勝を見守る余裕を見せている。
一方の仙台LDヒポポタマス。
こちらは、観客席から怒号と悲鳴。
そして、応援ラッパが激しく鳴り響いている。
「『なにやっとんじゃおまえらー!! ここまできたら根性みせんかーーい!!』」
「『なんまんだぶ、なんまんだぶ。このままどうかヒポポタマスを勝たせてくだせえ、仏様ぁ・・・』」
「『いや、もう期待とか、してないんで。ほんと。ここまでこれただけで奇跡みたいなものなんで。ハイ』」
野次、お経、シニカルな愚痴。
それらの反応は全て、ファンが期待と裏切りの狭間で心が揺れている証拠であった。
20xx年。秋が差し迫った季節。
埼玉書買スモーラーズvs仙台LDヒポポタマス。
今夜、今年の優勝チームが決定する──。
〇中世の野球場
マウンド上でマイケル・松井は額に流れる汗を感じていた。
グローブを握り直し、正面のキャッチャー城島克也を見つめる。
城島は、松井の緊張感を感じているのか、山のごとく動かない。
マイケル松井((どうする。どうすればいい?))
バッターボックスに立っているのは、書買スモーラーズの外国人助っ人選手、スタン・ザ・ラリアットだ。
『野球界のスタンハンセン』
彼はスタンハンセンにどことなく似ている容姿、バットをラリアットのように垂直に振り切る独特の打法で注目を浴びている。
俗に言うスター選手である。
スタンは、自分たちのチームの勝ちを確信しているかのように、余裕のある笑みを浮かべながら、バッターボックスに構えている。
スタンとは対照的に、試合の勝ちが見えているはずの松井は、焦りと苛立ちに満ちていた。
仙台LDヒポポタマスは、この10年、リーグ最弱の成績を残し、辛苦をなめてきた。
優勝に手が届きそうなこの瞬間を監督も含めた誰一人、信じられないでいたのだ。
マイケル松井((だからこそ、絶対に、負けられない))
今年勝つことで、ヒポポタマスの流れは絶対に変わる。
どんな奇跡が起きたのかわからないが、リーグ優勝をかけた試合をしていることだけは、現実なのだ。きっと。多分。
松井の脳裏に、いろいろな人の顔が思い浮かぶ。
10年以上チームを応援してきた球団のファンたち。
3年前、他球団の2軍から移籍してきた松井を受け入れ、快く応援してくれているファンたち。
地元商店街の名前が並ぶスポンサー達、選手の家族を中心とした後援会。
旬が過ぎた自分をピッチャーとして採用してくれた監督。
優勝に期待を寄せる人々の顔がよぎる。
この一投。
ピッチャーの自分が背負う責任の大きさは、途方もない。
そう思った瞬間、肩にズンと重いものを感じた。
現在、2ストライク、2アウト。このままスタンを抑え込めば、ヒポポタマスの優勝が決まる。
しかし、松井には気がかりがあった。
1つは、この窮地に至っても余裕の態度をとるスタンの存在だ。
もう一つは3塁に福沢油吉が出塁していることだ。
できれば仕留めておきたかった。だが、福沢は名前の如くつるつると3塁に進んだ。
今も、ぬたりと笑いながら、虎視眈々と隙を狙っている気配が背中から伝わってくるようだ。
ごくり、と松井の喉がなる。
スタンが凡打を打ったとしても、きっと福沢はホームベースに滑り込んでくる。
スタンは彼の走りを信頼しているから、余裕の笑みを浮かべているのかもしれない。
── 決して打たせてはいけない。
マイケル松井((ストライク。ストライクだ。ストライクを狙うしかない))
だが、スタンは2度のストライクで、松井の球筋・クセ・戦略・今日の調子を読んでいるような雰囲気であった。
松井は迷っていた。
今、何を投げるべきなのか。
キャッチャー・城島からのサインは出ない。
監督をチラリと見たが、監督もサインを送ってこない。
まるで、松井の判断に、この勝負をゆだねるような顔をしている。
マイケル松井((俺には、荷が・・・・・・))
松井は頭の中でそんな言葉をつぶやきそうになって、頭を振った。
松井は、目を瞑り、心の中で唱えた。
マイケル松井((俺はやれる。俺はやれる。俺はやれる。))
窮地に陥ったとき、松井は自分そう言葉をかける。
これは、子供の頃から無意識のうちに繰り返しているルーティーンだった。
女の子に告白するときも、受験勉強の時も、甲子園の時も。
そして、自分の選手名簿を『中村大五郎』から、『マイケル・松井』に書き変えた時も・・・・・・。
人生に大きな影響を与える勝負に挑むときは、必ずルーティーンを守った。だから松井は今、このマウンドにいるのだと信じている。
マイケル松井((俺はやれる。俺はやれる。俺はやれる。・・・よし))
心の中の焦りがすっと薄まっていく。
いつもの感覚を取り戻した松井はスタンが待つバッターボックスを見つめた。
スタンザラリアット「Hey、BOY!このままじゃ、テレビ中継が終わるぞ。こんな試合、早く終わらせよう!!」
スタンは、球場中に響き渡るような大声で、そんなことを言い放った。
何を食っているのか知らないが、くっちゃくっちゃとスタンは口を動かしている。
静まったばかりの心に、小さな波風が立つ。
マイケル松井「余裕だな、スタン。君の言うとおりだ、早く試合を終わらせよう。もちろん、ヒポポタマスの勝利でね」
スタンザラリアット「No,NO.それじゃ面白くない。ここから逆転しなきゃ。9回裏、2ストライク、2アウト」
スタンザラリアット「これを逆転してこそのスモーラーズ。 これを逆転してこその、スタン・ザ・ラリアット様だ!!」
彼はどうやら、日本のテレビがつけた『スタン・ザ・ラリアット』というニックネームををとても気に入っているらしい。
スタンハンセンに自分を重ねているのかもしれない。
その気持ちが松井にはとても分かった
スタンと松井はどこか境遇が似ている。
だが、明確に違う点がある。
ライオンズ側の観客席では、スタンハンセンのテーマが演奏されはじめた。
優勝のかかった一戦。
スモーラーズ側はブラスバンド隊を結成し、スタンハンセンのテーマを吹き鳴らす。
スタンザラリアットは、その音楽に気づくと、カメラがあるであろう方向にニヤリと笑顔を見せた。
ブラスバンドの音に掻き消されながらも、ヒポポタマス陣営からも野太い歓声が湧き上がってくる。
「ゴッジーラ! ゴッジーラ!!」
松井はカメラから自分の顔を隠すように、帽子のつばを直すフリをする。
わかっている。この状況を作り出したのは選手名簿を本名から『マイケル松井』に変更した自分自身だ。しかし、この声援は。
スタンザラリアット「はっ! ゴッジーラ、ね。よかったな、松井。ファンたちはお前をヒデキマツイだと思ってるぞ」
マイケル松井「お前だって、ファンからスタンハンセンだと思われているぞ」
スタンザラリアット「俺は勝手にそう呼ばれてるんだ。お前はそうじゃない。 ──自分で名乗ったんだ」
マイケル松井「俺がここに来るには、それしかなかったんだ」
スタンザラリアット「スタンハンセンと松井秀喜の異種格闘技戦、ね。ハッ! 面白ぇじゃないか。戦ってるのは紛い物同士なのによう!」
松井はハンセンの言葉に同調しようとして、やめた。
松井とハンセンは似ている。だが、決定的に違う箇所がある。
マイケル松井「俺は、ファンがこの名前で夢をみられるなら、それでいいんだ」
スタンザラリアット「まるでヒーローみたいだな、松井。俺は違う。おれは、ヒールだ。だが・・・・・・強いヒールは売れっ子だ」
スタンザラリアット「金のためじゃなきゃ、俺を他人の名で呼ぶ馬鹿を許すものか」
ハンセンは各種スポーツ番組、シーズンオフにはクイズ番組、グルメ番組に引っ張りだこだ。
ヒールアイコンとしてもはや野球界を飛び越えた活躍が目覚ましい。
野球引退後はプロレス団体からのオファーも確実だ。
それと比べて松井はどうだ。
スポーツ番組に出演したことはない。
地元商店街の客寄せパンダがせいぜいだ。
ハンセンは松井を強い目で見つめている。
圧倒的な勝者の風格に、一瞬気おされそうになる。
松井はマウンドを踏みしめる足にもう一度力を入れる。
マイケル松井((俺はやれる、俺はやれる、俺はやれる))
白球を握りなおす。
白球は大量の手汗でずるずるだ。粉袋を取り、手のひらに塗りたくる。
キャッチャーの城島は沈黙している。二人の会話を聞いているのか、聞いていないのか。それすらもわからないほど、無反応だ。
マイケル松井((城島。まさか、俺一人で戦わせる気なのか?))
城島の表情を伺うが、ヘルメットにさえぎられ、目元すら見ることができない。唇は固く閉ざされ、何も語らない。
勝負を決めるかどうかのタイミングで、なぜ城島は何も語らないのか。
城島は万が一この打席でスタンが決定打を叩き込んだ場合、責任逃れをする心づもりなのではないか。
マイケル松井((いや、違う。城島はそんな男じゃない。きっと、信じているんだ))
自分を、と続けようとして、頭を振る。違う。勝利を、チームを信じているのだと思いなおす。
マイケル松井((俺だって、信じている。勝利を、チームを・・・・・・そして、自分を))
松井はボールを握りなおす。そして、何を投げるべきなのか。考え始める。
ブラスバンドの音も、観客の声も、どこか遠くの世界へ行ったような心地がする。
スタンがバットを振る瞬間を、一瞬でも躊躇わせれば、この勝負は、勝てる。
ならば。
覚悟を決めて球を握りなおす。
息を詰めて、目を瞑り、イメージを思い描く。
松井から緊張感が伝わるのか、騒然としていた観客席はだんだんと静まり返っていく。
この万年最下位の、仙台LDヒポポタマスが初のリーグ優勝をするかもしれない。その瞬間を、球場の全員が見守っていた。
── 普段は騒がしい球場が、まるで湖の表面のように静まっていく。
インコース狙い、球は低め。
イメージの中のスタンがぎりぎりでバットを振り損ねる、その瞬間をなるべく詳細に、思い描く。
──勝てる。
松井が勝利する瞬間のイメージを確実につかみ、体を動かそうと重心をずらした瞬間。
「『パプーーーーーーーーーーーー!!!』」
松井は、妙に間抜けなラッパの音が球場に鳴り響いたように、思えた。
はっとしてその音がしたほうを向いた。奇妙なピエロがラッパを握っている。そして、ニヤニヤ笑いながら松井を指さしている。
だが、球場の誰も。
向かい合ってるスタンも。
沈黙している城島も。
誰一人、そのピエロのほうを見ない。
こんな静寂の中、あんなラッパの音がしたら、誰もが注目するはずなのに・・・
マイケル松井((ちくしょう、またか!!!))
ここ一番。ここ一番の勝負どきに必ず松井はピエロの幻覚に襲われる。
すべての緊張が最高潮に達し、心が逆に静かになる。
その瞬間に!
あのピエロは現れるのだ。
そして、すべてをぶち壊す。
現に。
──松井は、今、笑いそうになっている!
だが、松井は理解している。この幻覚は自分にしか見えていないことを。
緊張に耐え切れなくなった松井の脳が勝手に作り出している、防衛反応であることを、松井は知っている!
知っているのに、笑ってしまいそうになるのだ!
いつも、いつも!
だが、松井は意識している。
今、日本中の野球ファンが、自分に注目していることを・・・!
マイケル松井((俺は笑わない。俺は笑わない。俺は笑わない))
松井は心の中で強く念じる。
重心を戻し、目をつぶり、投げる球を考えているふりをしたり、3塁の福本の様子を確認したりしながら、心を落ち着ける。
観客席に浮かんでいるはずのピエロを見ないように松井はふるまう。
しかし、姿を見ないと見ないでどこにいるかがわからず、逆に不安になる。
マイケル松井((もし振り返った時、目の前にいたら、どうしよう・・・・・・))
松井はさりげなく確認した。
いない。
あのピエロの姿が見えない。
目の前どころか、観客席にすらいない。
消えたのか、去ったのか。しかし、いなければいないで気になる。
あんな目立つものを、そうそう見失うはずがないのだ。
いや、だがあれは幻覚だ。
消えたら消えたでいいのだ。
松井は、もう一度精神を集中しなおし、バッターボックスに立つスタンの方へ体を向ける。
〇雷
松井は、驚いた。
マイケル松井((城島・・・お前っ!))
城島が。あの寡黙な城島が。
──ピエロになっている。
ピエロが律儀にキャッチャーヘルメットをかぶり、ミットを手にしている。
だが! 今度はあらんかぎりの泣きそうな、悲しそうな顔をしてこちらを見ている。
マイケル松井((やめろ! 城島に乗り移るのは卑怯だ!!))
ヒポポタマスの守護神と呼ばれる城島は、寡黙な男だ。
控室でも今日交わした言葉といえば、「よろしく」「おう」のたった二言。
バッテリーを組んで2年。時を経るうちに、城島の口数が少なくなっていき、最初は嫌われているのかと考えていた。
だが、今年のシーズン中。
彼の人となりがだんだんとわかってきた。
城島は相手を信頼すると、寡黙になっていく男だということに。
令和の時代なのに、ずいぶん昭和の親父みたいな男だと思っていたが、その寡黙さでチームに連帯感を生み出している奇妙な男だ。
最初は面食らったが、こういう男が、一人ぐらいいたっていい。むしろヒポポタマスのチームの中には、いなくちゃダメだ。
── そう、思っていた。今さっき。この衝撃を受けるまでは。
城島という男が持つ、独特の存在感にピエロの化粧がプラスされた顔を見るまでは。
マイケル松井((笑っちゃダメだ笑っちゃダメだ笑っちゃダメだ))
あまりのイメージギャップとその衝撃に、松井の自制心は限界を迎えそうになっていた。
〇中世の野球場
──これはどんな拷問なのだ。
勝負を決める9回裏、2ストライク2アウト。
ただ、この1球を無事に投げ切ることさえできれば、ヒポポタマスは球団史上初のリーグ優勝を飾れる。
しかし。しかし、だ。
もしこの1球をピエロ城島に気を取られて、投げてみろ。
間違いなくスタンのラリアット戦法で、ホームランを決められる。
ここまできたのに、だ。
地面をはいずるような二軍生活を脱出し。ヒポポタマスの、一軍ピッチャーとしてリーグ優勝をかけたマウンドに立っているのに。
目の前のバッターは、強敵『スタン・ザ・ラリアット』だというのに。
相棒の寡黙なキャッチャーが、ピエロなのだ。
ピエロ・城島なのだ。
この状況を拷問と言わずして、何と例えればいいのか。
いったいこの状況は何なのだ!
〇テクスチャ3
──投げよう。
もう、難しいことも何も考えずに、思い切り投げてしまおう。
投げた結果、勝っても笑う。負けても笑う。
──腹の底から笑う。
誰も自分がが笑っている理由なんぞ、わかりはしない。
勝って笑えば、勝利の笑顔だ。
負けてしまえば、自分が笑っていることに誰も気づかない。
そうだ、考えるのをやめよう。
投げろ、投げるのだ。
投げろ、投げろ、投げろ!!!
投げるまで笑うな。
笑うな、松井──!!
〇中世の野球場
松井は、白球を再び握りしめる。
投球フォームの姿勢を取り、何も考えず、思い切り球を振りかぶって。
──投げた!!
── 外角高めのコースどりになってしまった!
スタンのバットに当たれば、飛ぶ。
──間違いなく、飛ぶ!
あの、静まり返っている、スタンドへ!
美しいアーチを描き、飛んでしまう──!!
スタンは一瞬、驚いた顔をしたが、すぐににやりと笑ってバットを構える。
── 出た! スタン・ザ・ラリアット!!
マイケル松井((だめだ、打たれる・・・・・・っ!))
球場全体が、どよめいた。
その瞬間、松井は悟った。
マイケル松井((終わった。俺の野球人生は、今ここで、終わった))
リーグ優勝をかけた最後のマウンド。
確実に決めなければいけないタイミングで、最も打ちやすいコースに球を投げてしまった。
誰の目にも明白だ。戦犯が自分である、と。
日刊スポーツの2面に自分の悪口が踊り狂い、スポーツTODAYで評論家にこき下ろされる。
『やっぱり、ヒポポタマスはヒポポタマス!』
なんて、洒落も知性も感じられない一文で、こき下ろされるのだ。
だが、それでいい。
そんなことは、どうだっていい。
俺は、とにかく、この笑いたいけど笑えない状況から逃れることだけできれば、それでいい。後のことはどうなろうと、かまわない。
ふひっ、と松井は自分の頬が引き攣るのを感じた。
体の底から、笑いの余震がこみあげてくる。もう噴火寸前だ。
もうだめだ、限界だ。
俺をこの地獄から解放してくれ――!!
スタンがバットを一直線に振り切る。
その、一瞬に奇跡が起きた。
「ぬぁ・・・・・・ん、だぁとぉぉぉぉぉ!」
スタンが、叫ぶ。大声で、叫んでいる。
松井が放ったその、一球。
地獄のような状況から逃げ出したいと、強く念じたその一球が──
スタンの剛速で振られたバットを避けるように、浮いた。
予想外のコースをとった球に翻弄されながらも間に合わず。
スタンは剛速のバットを、振り切った!!
マイケル松井「捕まえてくれ! 城島──ァ!!」
そう、叫べたのか。
そう、願えたのか。
1秒の何十分の1の時間のことだ。
松井本人にもわからないほどの刹那の瞬間──
ピエロになっていた城島が、元の顔に戻っていた。
城島が、意志の強い目つきで球を追いかけている。
一瞬目の中に戸惑いが見えた気がした、次の刹那。
城島がコース上に、キャッチャーミットを配置し微調整する。
スパァーーーーーーーン!
聞こえるはずがない、軽快で甲高い、その音が松井の耳に届いた気がした。
審判が立ち上がり、怒号のような声で叫んだ。
〇競技場の通用口
「ストラィーーーーーーーーーク!!
バッター! アウトォ!」
観ている側にしてみればほんの少しの時間だけれど、ピッチャーやバッターにしてみれば永遠にも感じられるほどの逡巡と葛藤に悶絶している時間であることをこれほどまで精緻に描き切るとは。緊張感MAXで現れる自身の心の弱さの象徴がピエロの姿というくだりでは、作者さんの非凡な感性と筆力に圧倒されました。
ピッチャー対バッターのこの一球に投じる緊迫感をこういった記述で読んだのは初めてです。一時お気に入りの投手がいて手に汗握りながらテレビ観戦していた時の事がよみがえってきました。ストライク、バッターアウト!、あーよかった!!
わたしも野球は大まかなルールくらいしか知らないですけど、選手たちはこんなにもいろんなことを考えてるのかもしれないですね!選手の心の声を生中継で聞いてみたくなりました!