エピローグ(脚本)
〇駅前ロータリー(駅名無し)
〜13:20 駅前〜
リオ「・・・ったくあの馬鹿、一体どこで何してるのよ・・・!」
リオ(全く。遅れるなら、返信の1つくらい寄越しなさいよね!)
リオ(こうやって仕方なく、あんたのこと待ってやってんだから!)
シキブ「・・・あら。上田さんから返信が来ましたわ。「寝坊しました、あと5分で着きます」・・・ですって」
シキブ「全く。あの新入り、何度寝坊したら気が済みますの」
リオ(・・・し・・・し・・・シキブ先輩に返信、ですって〜〜〜!?)
リオ(私からのメッセージにはガン無視のくせに!何よ、そんなに私のことが嫌いなわけ!?ふんだ!!)
シキブ「・・・な、何だか今日のリオさんはちょっと怖いですわ・・・」
「・・・おーい、セリーナちゃん!走らないでー!!」
レイ「・・・はあ、はあ。セリーナちゃん、ここは車通りが多いんだから、勝手にどっか行っちゃダメだよ!」
セリーナ「だって〜〜早くしょっぴんぐに行きたいんだもん〜〜!!」
セリーナ「新しいお洋服買いたいの〜〜!!ねえ、何でみんなずっとここにいるの!?」
レイ「それはね、上田さんを待ってるからだよ。もうちょっとで着くと思うから、もう少しだけ待って・・・」
セリーナ「もうその言葉聞き飽きた〜〜!!やだやだ、早く行くの〜〜!!」
「・・・す、すみません、遅れました・・・!」
上田「いやあ〜〜ごめんなさい。とある悪い魔法使いから居眠り魔法をかけられたせいで、中々起きられなくて・・・(大嘘)」
上田「いやあ、世の中物騒ですよねえ、ほんと」
「・・・居眠り、魔法、ですって・・・」
リオ「そんな魔法ある訳ないでしょ、この体内起床時計トチ狂い人間がぁ〜〜!!」
上田「うわああ〜〜ごごご、ごめんなさい!!ただの冗談です、はい!!調子乗りました、すんません!!」
シキブ「まあまあ。この新入りには、今日のランチ代を全部奢って貰えば良いんですのよ。それで万事解決ですわ」
上田「こ、このお嬢様、サラッとえげつないこと言いやがる・・・」
上田「はああ〜〜何で俺の周りにはこんな怖い女の子しかいないんだ!もっとこう、優しくて、包容力のある子はいないのか・・・」
上田「もしいたら俺の彼女候補にしたいのに!!」
シキブ「あらそれなら良かったですわ。あなたの彼女候補なんて、全然なるつもりありませんから」
リオ(や、優しくて包容力のある女の子・・・)
リオ(わ、私じゃダメなの!?私は別にか、か、か、彼女になってあげても良いんだけどッ!?)
上田「・・・リオ先輩、どうしたんですか?さっきからモニョモニョ喋ってますけど」
リオ「なっ、ななな何でもないわよこのヘンタイッ!!」
上田「いやそこで「ヘンタイ」ワード出てきます!?」
セリーナ「も〜〜上田お兄ちゃん!遅いよ〜〜!!セリーナ待ちくたびれたよ!!」
上田「うわあ、セリーナ様!ご、ごめんなさい・・・」
セリーナ「「様」禁止!敬語禁止!」
上田「あうう・・・。せ、セリーナ、ちゃん、ごめん・・・」
セリーナ「そう!それで良いの!!」
レイ「上田さん!ちゃんと時間は守ってくださいですの!セリーナちゃんを引きとどめるの、大変でしたのよ!?」
上田「れ、レイさんすみません・・・。って、あれ・・・」
上田「レイさん、その仮面、つけたままなんですね。せっかく、痣を完治させたのに・・・」
レイ「・・・確かに、あなたとモルダート学長のおかげで、私の全身の傷は治りましたわ」
レイ「・・・でも。この仮面は、私にとっては学長との大切な思い出の品なのです」
レイ「腕時計を身につける感覚でつけていますのよ。だから何ら変じゃありませんわ。そうですわよね?」
上田「・・・そうですね。似合ってますよ、その仮面」
上田「それに、モルダート学長もいつも仮面つけてますし、何だか二人してお揃いって感じで良いですね」
レイ「えっ、そそそそうですか!?学長と、お揃い・・・。へへっ、そっかあ・・・」
上田(反応がかわいいなあ・・・。レイさん、俺の彼女の第一候補かも・・・)
上田(セリーナちゃんも素直でかわいいけど、さすがにこんな小さい子に手を出すのはなあ・・・。やっぱり俺はレイさんが・・・)
「・・・何、デレデレしてんのよ・・・」
リオ「結局、あんたも・・・ただのロリコンじゃねえかッ!!」
上田「あ痛ぁっ!!ろ、ロリコンなんかじゃないですう・・・あなたのおじいちゃんと一緒にしないで下さいぃ・・・」
レイ「・・・あれ?そういえばリオ、バルバロッサ学長は?今日、来るはずだったよね?」
リオ「あ。実はね、突然来れなくなったみたい。急用ができたんだって」
レイ「そっか・・・。まあ、ここ最近のバルバロッサ学長、忙しそうだったもんね。蔵杏大学への編入希望者が急増し出したから・・・」
リオ「そういえばそうね。聖裁大学から来る学生が多いみたい。レイも蔵杏大学に編入するんだよね?」
レイ「ええ。私の編入手続きは、シキブさんが色々手配してくれたの。おかげでスムーズに編入できるのよ」
レイ「本当にありがとう、シキブさん」
シキブ「良いんですのよ。私がやりたくてやっただけですわ」
シキブ「そうそう。今度、うちに遊びに来てくださいまし。一緒にわんちゃんと散歩しませんか?」
レイ「わああ、良いですね!是非行きたいです!!」
リオ(・・・それにしても・・・。聖裁大学から、次々と他大学へ編入、か。特例的に認められてるみたいだけど・・・)
リオ(モルダート学長は、今後一体どうするのかしら・・・)
〇船着き場
「・・・ここにおったか。モルダート」
学長バルバロッサ「一体・・・どこへ行くつもりじゃ?」
学長モルダート「・・・バルバロッサか・・・。ふん、別にどこへ行こうが、俺の勝手だろう」
学長モルダート「俺は、聖裁大学の学長を辞任した」
学長モルダート「きっとあと数年しないうちに、聖裁大学は閉校するだろう」
学長モルダート「だとすれば、俺は自分の居場所を他に探すまで、だ」
学長バルバロッサ「・・・行く当てはあるのか?」
学長モルダート「・・・どうだろうな。この国に来た時も、そんなの無かったからな。どうにか見つけるさ」
学長バルバロッサ「・・・・・・。一人で行くと言うのか、この手紙に書かれたように」
学長モルダート「・・・そうだ」
学長モルダート「その手紙にも書いたとおり。セリーナとレイのこと、よろしく頼むぞ」
学長バルバロッサ「良いのか?せっかく大切な孫が目覚めたというのに、一緒に連れて行かなくて」
学長モルダート「・・・あの子は、とても純粋だ」
学長モルダート「俺と居たら、あの子の世界には俺しか映らなくなる。俺という影響をモロに受ける。・・・その結果、どうなるか」
学長モルダート「・・・レイのように、身も心も縛られるだけさ。セリーナには、もっと広い世界を見てほしいんだ」
学長モルダート「あの子には、俺じゃなくて、蔵杏大学の奴らみたいに・・・。良い子で、人のために行動できる人間になってほしいからな」
学長モルダート「だから、離れる。・・・それが、セリーナにとっての、幸せなんだ」
学長バルバロッサ「・・・セリーナ様とレイには、ちゃんとお別れの挨拶はしたのか?」
学長モルダート「する訳ないだろう。その手紙にも書いただろ。俺は旅に出たとでも言っておけ、と・・・」
学長バルバロッサ「・・・ふんっ!」
学長モルダート「・・・おいっ!俺が一晩かけて書いた手紙を、お前・・・」
学長モルダート「そんなにビリビリに破くこともないだろう!俺の努力を無駄にする気か!!」
学長バルバロッサ「だって、わし、嫌じゃもん」
学長モルダート「何が?」
学長バルバロッサ「お前の言うことを聞くの。こんな紙切れで、わしを動かせるとは思わんでほしいのう、ほっほ」
学長モルダート「・・・このじじい」
学長バルバロッサ「貴様だってもうおじいちゃんじゃろがい。お互い年を取ったんじゃよ。・・・わしらがタッグを組んでた頃から・・・な」
学長モルダート「・・・タッグ、か・・・」
学長モルダート「当時は、お前は俺の護衛をしていて・・・。何度も何度も、助けてもらったな」
学長モルダート「何か事件が起こった時も、反乱が起こった時も。お前は、アイディアを出して、俺と一緒に戦ってくれたな」
学長バルバロッサ「そうじゃよ。貴様はあの時から短絡的な思考の持ち主じゃったからのう」
学長バルバロッサ「「反乱した奴、みんな死刑」なんて。・・・あの時は、こいつ馬鹿か、って思ったわい」
学長モルダート「・・・今思うと、つくづく俺もそう思うよ。そういやあの時、俺がそう言ったらお前に思いっきりぶん殴られたっけな」
学長モルダート「正直、当時はお前を死刑にしてやろうかと思ったぞ」
学長バルバロッサ「ほっほ。でも、いつもわしの方が一枚上手じゃったから、わしは今でもこうしてピンピンしとるわい」
学長モルダート「そうだな。俺は、お前に勝ったことは、一度も無かったからな。あの国にいた時も、この国に来た時も・・・」
学長バルバロッサ「・・・それはたまたまじゃよ。周りの奴らが、いつもわしを助けてくれたからの」
学長モルダート「・・・ふん。全く、お前は本当に運の良い奴だよ」
学長モルダート「そしてやっぱり・・・良い奴だ。自分の強さを驕らないんだからな。俺は、そんなお前にずっと憧れていた」
学長モルダート「ピンチになったらいつも助けてくれる。王様の俺にもちゃんと意見を言い、正しい方向へ導いてくれた、お前は・・・」
学長モルダート「俺にとって、ヒーローそのものだったよ」
学長モルダート「そして俺はそんなお前とは逆に、執念深くて、すぐ人に暴力を振るってしまう。・・・俺はそんな自分が嫌だった」
学長モルダート「だから、自分の今までの行いを悔やみ、こうしてみんなの前から姿を消そうとしたというのに・・・」
学長モルダート「全く。さっきの手紙に、「俺のことは探すな」って書いたはずなんだがな」
学長バルバロッサ「そうじゃったかの?もう紙切れになってしもうたから、よくわからんわい」
学長モルダート「・・・やれやれ。自分で破いたくせに」
学長バルバロッサ「そりゃ破くじゃろ。あんな嘘にまみれた手紙」
学長モルダート「・・・嘘、だと?」
学長バルバロッサ「そうじゃよ。「俺を探すな」なんて、大嘘に決まっとる」
学長バルバロッサ「本当は、貴様は、わしに引き止めてもらいたくて、この手紙を送ったんじゃないのか?」
学長モルダート「・・・・・・根拠もないくせに、勝手なことを・・・」
学長バルバロッサ「・・・もし、貴様が本当にこっそりわしらの前から消えるつもりなら、」
学長バルバロッサ「手紙がわしのところに着く前に、もうこの国を出ているはず」
学長バルバロッサ「じゃが、貴様は今もこうしてのんびりこの国にいる。・・・本当は、まだ留まりたんじゃろう、この国に?」
学長バルバロッサ「本当は・・・まだセリーナ様と、一緒に居たいんじゃろ?」
学長モルダート「・・・ッ!!俺は、あの子の隣にいる資格なんか、ない」
学長バルバロッサ「資格がある、ないなんて・・・。誰が決めたんじゃ。貴様が勝手に言ってるだけじゃろ」
学長モルダート「!!」
学長バルバロッサ「自分の気持ちに嘘をつくな。上田も言ってたじゃろ、貴様も含めてみんな救う、と」
学長バルバロッサ「それなのに、自分に嘘をついていては、せっかく救ったのにまた暗闇の中に真っ逆さまじゃ。それじゃあ救った意味がない」
学長バルバロッサ「それに、貴様にはこの国でやってもらいたいことがあるしの」
学長モルダート「・・・俺に・・・やってもらいたいこと・・・だと?」
学長バルバロッサ「ああ。・・・モルダート、蔵杏大学で、わしと一緒に働かんか?」
学長モルダート「!!お前・・・正気か?俺は、元聖裁大学の学長だぞ!?」
学長バルバロッサ「だからじゃよ。貴様はかつて、一つの国を築き、治めていた」
学長バルバロッサ「そして、聖裁大学の運営でもその手腕を発揮して、見事大学人気ランキングの上位に躍り出た。たった1年足らずで、じゃ」
学長バルバロッサ「貴様の短絡的思考は確かに危なっかしい。じゃが、国や大学を発展させていったその腕は、本物じゃ。貴様には才能がある」
学長バルバロッサ「だから、その腕で、蔵杏大学をより良い大学にしてほしいんじゃ」
学長バルバロッサ「・・・また、あの時みたいに、わしと一緒にタッグを組まんかの?」
学長バルバロッサ「わしからの・・・お願いじゃ」
学長モルダート「・・・・・・・・・・・・」
学長モルダート「・・・・・・お前は、本当に・・・」
学長モルダート「・・・優秀な、参謀・・・だよ」
学長モルダート「やはり、バルバロッサ。俺は、お前には一生敵わないな・・・」
学長モルダート「良いだろう。人望が少ないお前の力になってやろう」
学長バルバロッサ「なっ!「人望が少ない」とは、失礼じゃの!!」
学長モルダート「だってそうだろう。お前たち蔵杏大学が聖裁大学に乗り込んで来た時、そっちは人数が少なかったじゃないか」
学長モルダート「あの危機的状況に、何で戦力を増やそうとしなかったのだ。それとも協力してくれる人がいなかったか?ん?」
学長バルバロッサ「う、うるさいわい!わしはなるべく周りを巻き込みたくなかっただけじゃい!!」
学長モルダート「そういえば、学生の時もお前、いつも一人で消しゴムで遊んでたような・・・」
学長バルバロッサ「うるさーーーーーーいっ!!良いじゃろ若い頃の話は!!」
学長バルバロッサ「・・・何じゃ何じゃ。友達多い奴が偉いとでも言うつもりか」
学長モルダート(・・・拗ねてしまった)
学長モルダート(・・・まあでも・・・。人望は少ないが、その分親しくなった奴からは何かと助けてもらってたよな、こいつ)
学長モルダート(・・・バルバロッサは、人を見る目があるのかもしれないな。広く浅くより、狭く深く、か)
学長バルバロッサ「そ、それに。よもや貴様、忘れた訳ではあるまい。蔵杏大学にしてきたことを、な」
学長モルダート「・・・何だ、それは」
学長バルバロッサ「大学設備の破壊じゃよ!見ろ、この修繕にかかる請求書の山を!!」
学長バルバロッサ「貴様にはこの請求書の分だけ、蔵杏大学で働いてもらう!いいか、ここにある分全部じゃぞ全部!!」
学長バルバロッサ「流石の貴様も、この額には腰を抜かすじゃろ。ははーん、貴様にできるかな〜?一国を気づいた王様でも、ちと厳しいかの〜?」
学長モルダート「どれどれ。・・・一、十、百。・・・ふむ、なるほど」
学長モルダート「まあ、3年あれば完済できるだろう」
学長バルバロッサ「んなっ!?ささ、3年んん!?」
学長バルバロッサ「そ、そんな強がんなくたって大丈夫じゃぞ〜い。わしとしては、10年頑張っても返せるかどうかわからないくらいなんじゃからな」
学長モルダート「10年は流石にかかりすぎだろ。一体どんな計算でそんなに長くなるんだ?」
学長バルバロッサ「・・・・・・・・・・・・」
学長バルバロッサ「ふん、何じゃ何じゃ!どうせ、わしには大学を運営する才能なんかないんじゃわい!!」
学長モルダート(・・・いじけてしまった)
学長モルダート「ま、まあとにかく、そういうことなら力を貸そう。共に蔵杏大学を大きくしていこうじゃないか」
学長モルダート「・・・かつて、一国を支え合ってきた仲間として、な」
学長バルバロッサ「・・・そうじゃな」
学長バルバロッサ「よろしく頼むぞい、モルダート。蔵杏大学が、今日から貴様の居場所じゃ」
学長モルダート「・・・ふん」
〇黒
・・・俺は、バルバロッサ一族に復讐するため、この国にやってきた・・・。
だが、奴と話していて、気づいたことがある。
本当は、復讐がしたかったんじゃない。
俺は、きっと・・・。バルバロッサに助けを求めようとしたんだ。
俺自身がバルバロッサ一族を追放した訳だが・・・。俺は、自分のその選択に後悔したんだろう。
だから、もう一度、バルバロッサに会うために、この国に来た。
自分を今まで何度も助けてくれたバルバロッサを、俺は頼りたかったんだ。
あいつなら、今回もまた助けてくれる。そう信じて・・・。
〇華やかな寮
・・・ここは、蔵杏大学。
魔法使いのおっさんが運営しているという、ちょっと変わった大学だ。
この大学には、魔界同好会といういかにもネーミングセンスを疑うサークルがある。
そのサークルに所属する魔法使いたちは、その魔法で日々、大学をより良くしている。人を助けたり、喜ばせたり・・・。
・・・実際はそんなことないけど。
そして、俺こと上田も、魔法使いの一人だ。
本当は不合格だったこの大学に、学長は「特別枠」として入学させてくれた。
・・・まあ、そのせいで、俺は色々学長にこき使われている訳だけど・・・。
でも、俺にとっても、そして魔界同好会にとっても、この大学は大切な、落ち着く居場所だ。
上田「そう、ここが、俺の・・・」
上子「私の・・・」
蔵杏大学なんだ。
学長バルバロッサ「ちゃんちゃん♪」
各キャラの「らしさ」が出た、みんな笑顔の大団円ですね!リオ先輩が上田くんを意識して可愛いリアクションをしたり、そんな上田くんが相変わらずの性癖だったりw
全話通じて、緊張感のオンとオフがクッキリハッキリとしていて、ずっと惹きつけられっぱなしでした!ステキな物語をありがとうございました!