ドーム型都市の空に風は吹かない(脚本)
〇廃列車
〇怪しげな酒場
─区画・代異人─
代異人「ゲギャギャ!! たまには戦争がないのも悪くねえ!」
悠久から続くコロニー同士の戦争。
それは代異人にとって日常の出来事。
闘いに明け暮れることが代異人の本質。
この花愛でるエリアルドをのぞいて・・・
〇暖炉のある小屋
─区画・統士─
コロニーのお母さん「これは戸棚に」
コロニーの子ども「アタシもたべるー!」
コロニーのお母さん「おやつは」
コロニーの子ども「アタシも!アタシも!」
コロニーのお母さん「掟1456番、3時のおやつは覚えてる?」
コロニーの子ども「そうだ。掟は守らなきゃ」
コロニーのお母さん「今日から統精の修行だったわね」
コロニーのお母さん「掟に従い立派な」
〇屋敷の大広間
高位統士「統精とは我らの心。 感情を殺ぎ無の境地へ至ることで」
高位統士「暴力の権化である怪人を統めることができます」
高位統士「戦場で代異人は我らの盾」
高位統士「自身の命を守ることにつながります」
高位統士「ですから成績を高め屈強な代異人と統印を結ぶのです」
ラッセル(暴力的な奴らは嫌いだ。 だから僕は花愛でると云われる代異人と・・・)
悠久より続くコロニー同士の戦争。
それは統士にとっても日常の出来事だった。
なぜならそれが・・・
掟
〇怪しげな酒場
代異人「よう!能天花畑!」
店主「いつもの」
店主「構うな。 さっさと行け」
代異人「みろ!水しかもらえねぇ!」
代異人「また花に水やりでも行くのか!?」
エリアルド「ウルッセェェーーッッ!! アタシの勝手だろッッ!?」
代異人「アタシィィ? まだ女みてぇな喋り方か!」
代異人「うるせぇだと!?」
代異人「バカ!代異人同士の暴力は掟違反だ!」
代異人「そうだった! また明日戦争で敵をぼこぼこにしよう!」
エリアルド「干物にとんま。ヒヨってるわねぇ」
エリアルド「掟!掟!バッカじゃないの!?」
店主「馬鹿ばっかり」
店主「これ以上やるなら頭領を呼ぶぞ」
〇廃列車
エリアルド「いやぁな1日だったわ」
エリアルド「風光明媚ねぇ」
ダレ・・カ・・タスケ・・テ・・
コッチダ・・ヨ・・
トンネル・・ノ・・
エリアルド「なぁんで統士がこんな所に?」
エリアルド「妙ねぇ。傷だらじゃない」
エリアルド「ちょ、ちょっと!? 勝手に死んでんじゃないわよ!?」
エリアルド「はぁ?寝てんの?」
エリアルド「仕方ないわねぇ」
〇城のゴミ捨て場
エリアルド「悪いけど。 手当なんてある物でしか」
ラッセル「くっさぁぁぁい!!?」
エリアルド「はぁ!? それが助けてもらった統士の言葉!?」
ラッセル「ご、ごめんなさい! でも本当に臭くて」
ラッセル「手当ありがとうございます」
エリアルド「そうよ。それが礼儀」
エリアルド「で、なんで統士の区画外に?」
ラッセル「代異人の区画でもないですよね?」
エリアルド「アンタ、質問を質問で返すって、いい度胸ね」
ラッセル「ラッセルです。 もう一度聞きますが何故あそこに?」
エリアルド「ウルッセェェーッッ!! どこに居ようがアタシの勝手だろッ!?」
エリアルド「ッハァ~。 ガキと話してると疲れるわぁ」
ラッセル「その水!?もしかして!?」
ラッセル「水しかもらえないエリアルドさんですか!?」
エリアルド「グォォラァァ!! ブチ殺されてぇのかテメェ!?」
ラッセル「ち、違います!!」
エリアルド「あぁ?」
ラッセル「僕はあなたに! 会いたかったんです!ずっと!」
エリアルド「アンタねぇ。 さっきから胡散臭いのよ」
エリアルド「統士のくせに頭は回るみたいだし、表情もくるくる変わるし」
ラッセル「わ、分かりますか!?」
エリアルド「そういう所よ。 自分に興味を持たせて」
ラッセル「すごいです!エリアルドさん! 皆そんなこと感じないんですよ!?」
エリアルド「だからそうやって煽てても」
ラッセル「僕は真面目です。エリアルドさん」
ラッセル「きっと分かってくれるって思ってました」
ラッセル「何ものにも縛られず花を愛でる」
ラッセル「あ、あなたなら」
エリアルド「アッハッハ!!」
エリアルド「アンタ面白いわねぇ!!」
エリアルド「そんなに言うならアタシと統印結びなさいよ」
エリアルド「それができるなら」
ラッセル「もちろんです! エリアルドさんと統印を結びたくて」
ラッセル「他の代異人の統印を断ったんですから!」
エリアルド「アンタ本当に命知らずねぇ! 統印申告の掟を破って殺されかけたの!?」
エリアルド「面白いじゃない!!」
エリアルド「『双の子を見つけし』」
ラッセル「『解放と邂合』」
ラッセル「よろしくね!エリー!」
エリアルド「アッハッハ!! 気に入ったわ!ラッセル!」
〇海底都市
その頃の対立コロニー
〇大水槽の前
対立コロニーの統士「例の代異人の闘志は順調です」
対立コロニーの高位統士「近いうちに初陣を」
対立コロニーの統士「かしこまりました」
〇西洋の市場
対立コロニー
─露店─
店主「ビーフ!オア!フィッシュ!?」
対立コロニーの代異人「び~ふ~」
店主「カラッとジューシー! バァァァニング!!!」
例の代異人「旨い」
対立コロニーの代異人「あぁ!ぼくのぉぉ!」
店主「バカ!よせ!」
〇山奥のトンネル(閉鎖中)
─翌日・戦争集合地─
エリアルド「アタシも行くわよ!」
店主「統士は?」
代異人「ゲギャギャ! あいつに統士がつくかよ!」
ラッセル「僕がエリーの統士だ!!」
店主「ガキに統制されてたまるか!」
代異人「それはお前!逆ってもんよ!」
代異人「能天花畑だからこそ! こんなガキにも統制できんだよ!」
エリアルド「ラッセルを侮辱したわね」
エリアルド「力を貸せぇぇ!ラッセル!」
ラッセル「もちろんだよ!エリー!」
エリアルド「くらいやがれーーッッッ!!」
代異人「ゲギャギャ!! しょんべんかぁ!?」
代異人「きったね!しっこだ!」
高位統士「君は」
高位統士「最高成績の居眠りラッセル君」
ラッセル「と、止めたって行きます!」
高位統士「子どもが戦争へ行ってはいけない掟はありませんよ」
高位統士「それでは皆様赴きましょう」
〇地下道
高位統士「ここから迷路です。私から離れずに」
ラッセル「すごい。どこまで広がっているんだ」
エリアルド「こういう雰囲気もいいわねぇ」
ラッセル「これを全部、人が創ったなんて」
高位統士「遅れていますよ」
高位統士「人の話をしていましたね」
ラッセル「別にいいだろ!?」
高位統士「えぇ。博識です」
高位統士「人とは」
高位統士「大いなる知恵がありながら」
高位統士「宿る暴力に身を滅ぼされた者達です」
高位統士「人のようには決して成らず」
エリアルド「初めて聞いたわ」
ラッセル「戒めだよ。 統士はそう教えられるんだ」
〇地下広場
高位統士「ここを上がれば外です」
エリアルド「ちょっとラッセル!」
ラッセル「奥のトンネルから風の気配が」
エリアルド「何やってんのよ!」
ラッセル「ちょっと待っ」
は、離して!
エリアルド「さぁ!外へ行くわよ!」
〇黒
〇沖合
〇埋立地
エリアルド「気持ちいいわぁ! どこまでも世界が広がってる!」
ラッセル「でもなんか・・・」
高位統士「それではいつも通りに」
代異人「手柄を一番立ててやる!」
代異人「たくさんぼこぼこにするぞ!」
高位統士「あなた方は」
高位統士「先発の後を追いましょう」
高位統士「海には近づかないように」
高位統士「それでは」
ラッセル「どうする?エリー?」
エリアルド「闘いは興味ないけど」
エリアルド「他のコロニーの代異人は面白そうね!」
〇美しい草原
エリアルド「ラッセル!燃える代異人よ!?」
エリアルド「って、花まで燃えてるじゃない!?」
エリアルド「ふざけんじゃねぇぇ!! いくぞ!!ラッセル!!」
ラッセル「う、うん!」
エリアルド「ファイヤー!!ファイティング!!」
代異人「あっちぃぃ」
対立コロニーの代異人「私の魅力でメ~ロメロ♡」
エリアルド「まだまだぁぁぁ!!」
エリアルド「ウォラァァ!! もっとだぁぁ!!ラッセルゥゥ!!」
エリアルド「アッハッハ!! 統魔を使うのって気持ちいいわぁ!!」
頭領「あんの馬鹿! 戦場を水浸しに!」
〇城のゴミ捨て場
─戦争後─
エリアルド「戦争って最高ねぇ! 力がぶわーっと駆け巡って滾ったわぁ!」
エリアルド「統魔をぶちまけて!ぶちまけて! あぁ!本当に気持ち良かったぁぁ!」
ラッセル「僕は怖かった」
エリアルド「なぁに言ってんのよ! 次もアタシがしっかり守るわ!」
ラッセル「違うよ、エリー」
エリアルド「何が違うのよ?」
ラッセル「怖かったのは、エリーだ」
エリアルド「はぁ?何言って」
ラッセル「こんなのエリーじゃない! 他の代異人みたいに暴力に溺れて!」
エリアルド「アタシはアタシよ!!」
ラッセル「花だって! 水浸しで苦しそうだった!」
エリアルド「ウルッセェーッッ!! 文句あんなら出てけ!!」
エリアルド「アンタは」
エリアルド「認めてくれたんじゃなかったの?」
エリアルド「花も、暴力も、」
エリアルド「アタシは好き・・・」
〇怪しげな酒場
─翌日─
エリアルド「違うわよ!酒でしょっ!?」
店主「そうだった」
店主「はいよ」
エリアルド「おいっしぃぃん!!」
店主「あんたに伝言だ」
店主「頭領から。 『話がある。ここで待て』」
エリアルド「へぁ?話しぃ?」
エリアルド「昨日の功績ねぇ!!」
店主「噂をすればだ」
頭領「来たか、エリアルド」
エリアルド「とうりょん! 話って・な・あ・に♪」
頭領「昨日のお前の闘いのことだ」
エリアルド(わっくわっく!)
頭領「周りに危険を及ぼす最低な行為」
頭領「散々な闘い方だ」
頭領「まともな闘い方になるまで来るな」
エリアルド「頭領までアタシを認めてくれないのね」
店主「喜怒哀楽上戸か」
〇廃列車
エリアルド「アーッッ!! むかついてきたぁ!!」
エリアルド「なんなの!?皆して!?」
エリアルド「飲むぅ?」
エリアルド「アンタは静かでいいわぁ」
エリアルド「アンタもアタシから離れるっていうの!?」
エリアルド「ぜえぇんぶ!!アタシのせいなの!?」
〇美しい草原
─その頃の戦地─
代異人「ゲギャーー! 助けてー!」
代異人「あーーん!マミーー!」
最強最悪代異人「軟く脆い」
頭領「俺が相手だ!!」
頭領「うぉぉぉーー!!!」
最強最悪代異人「その程度」
頭領「グウゥゥアアーッッ!!」
対立コロニーの統士「こ、こっちまで」
最強最悪代異人「知らん」
〇怪しげな酒場
これ持って出て行きな
エリアルド「どうしたの干物?」
代異人「あぁ。俺はヒモノ」
代異人「戦争ぜんぜん楽しくない」
エリアルド「面白いわね!! 強い奴でも現れたの!?」
代異人「おまっ、見てねぇから!」
代異人「頭領もやられちまったぞ!」
エリアルド「し、死んだの?」
代異人「わ、わかんねぇ」
代異人「と、とうりょぉぉ!! ご無事で!?」
頭領「ま、まぁ」
頭領「でも、もう、」
頭領「行きたくねぇな」
エリアルド「らしくないわねぇ!」
エリアルド「じゃぁアタシが代わりに闘うわよ!?」
頭領「ほ、本当か!?」
エリアルド「あー、でも、ラッセルと喧嘩して」
頭領「統士など用意する!」
頭領「頼む!俺達を助けてくれ!」
〇城のゴミ捨て場
エリアルド「ふんふふーん♪」
エリアルド「そうと決まったら絶対に倒さないとね」
エリアルド「特訓よ!」
エリアルド「てぇぇい!!」
エリアルド「あ、でも、」
エリアルド「これじゃぁ・・・」
エリアルド「またラッセルに嫌われちゃうかしら」
ラッセル「そんな事ないよ、エリー」
エリアルド「アンタどうして!?」
ラッセル「代異人に頼まれたんだ」
ラッセル「エリーの元に戻ってほしいって」
エリアルド「アイツらも本気ね」
ラッセル「ごめんね、エリー」
ラッセル「僕は代異人のこと、本当の意味で分かっていなかった」
ラッセル「代異人だって仲間を大切にする。 それに暴力だって」
ラッセル「コロニーを守る力だ」
ラッセル「エリー、今日ね、」
ラッセル「統士がたくさん死んだの」
ラッセル「明日もまた!!」
ラッセル「たくさん死んじゃうのかな!?」
エリアルド「そんなわけないでしょ」
エリアルド「ラッセル。アタシね」
エリアルド「花も、暴力も、好きなの」
エリアルド「でもね、さっき、」
〇廃列車
エリアルド「アンタもアタシから離れるの!?」
エリアルド「ぜえぇんぶ!!アタシのせいなの!?」
〇城のゴミ捨て場
エリアルド「後ですっごく後悔したわ」
エリアルド「壊すとね、もう二度と元に戻らないの」
エリアルド「だからアタシの大切なもの、壊す奴なんて」
エリアルド「ぶっ飛ばしてやるわ!!」
エリアルド「だからね、こんなアタシだけど」
エリアルド「また一緒に戦ってくれる?」
ラッセル「もちろんだよ!エリー!」
エリアルド「それじゃぁ特訓に付き合いなさい!」
ラッセル「うん!」
エリアルド「最強の統魔を二人で完成させるわよ!」
〇美しい草原
─最終決戦─
エリアルド「ラッセル! いたわ!あいつらよ!」
最強最悪代異人「敵討ちか?」
エリアルド「それもいいわね」
代異人「がんばれ!エリー!」
代異人「俺達は雑魚を蹴散らせ!」
店主「こっちは任せな!」
最強最悪代異人「我に敵なし」
エリアルド「随分な自信ねぇ!」
エリアルド「かかって来なさいよ!!」
最強最悪代異人「失せろ」
エリアルド「グゥゥ・・・」
ラッセル「エリー!負けないで!」
エリアルド「いいわよ!ラッセル!」
エリアルド「さぁ!今度はこっちの番よ!」
最強最悪代異人「面白い。受けて立とう」
エリアルド「踏ん張りなさい!ラッセル!」
エリアルド「いっけぇぇぇーー!!!」
なっ!?
俺をどこへ!?
クソガァァァーー!!
俺はやられんからなぁぁぁ!!!
〇美しい草原
エリアルド「よぉし!ぶっ飛ばしたわ!」
ラッセル「やったぁ!勝ったぁぁー!」
おい!?すげぇな!!お前ら!?
代異人「あいつぶっ倒すなんて大したやつだぜ!」
代異人「おれ!見直した!」
エリアルド「ちょ、調子狂うわね!」
頭領「俺からも礼を言わせてくれ」
エリアルド「と、頭領まで」
頭領「仲間を守ってくれてありがとう」
ラッセル「ねぇ! これでエリーのこと認めてくれるよね!?」
頭領「もちろんだ」
頭領「掟に従い!ここに宣言する!」
頭領「我は頭領の座を! 汝エリアルドに譲渡する!」
ラッセル「すごいや!エリー!」
頭領「ここに新生の頭領! エリアルドの誕生だー!」
「うぉぉーー!!! 我らが頭領!! エリーーーッッッ!」
ラッセル「す、すごい歓声だね!」
エリアルド「見なさい、ラッセル」
これがアタシの大切なものよ
エリアルド「愛しい世界ね」
ラッセル「ねぇ、エリー」
ラッセル「これからもっと! 世界を見に行かない!?」
エリアルド「アンタに言われるまでもないわ!」
エリアルド「この世界のすべて!! 見に行くわよ!!」
エリアルド「どこまでもついてらっしゃい!! ラッセル!!」