〇古いアパートの一室
チュンチュン「チュン」
チュンチュン「チチチッ」
「チチ、チュン！チチチッ・・・ ヂヂチチュンチュチュチュチュチュチュチュ!!!!!!」
豊治（とよじ）「ヴォン!!」
「バササー」
豊治（とよじ）「クゥ～ン」
　　豊治は遊びたかっただけ
豊治（とよじ）「追い払うつもりは無かったのに」
豊治（とよじ）「ゆきひめのとこに遊びに行こうっと」

〇風流な庭園
豊治（とよじ）「ゆきひめ！おーい」
豊治（とよじ）「ありゃ」
豊治（とよじ）「ゆきひめー？」
豊治（とよじ）「ありゃりゃ？」
豊治（とよじ）「ゆーきひめー!!」
雪姫（ゆきひめ）「ヴヴゥ」
豊治（とよじ）「起きた？遊ぶ？何する？ごはん？さんぽ？」
豊治（とよじ）「ウォンゥオン！ピーピーピーフンフンフンフン、ウァン！」
雪姫（ゆきひめ）「グゥゥゥウッ」
雪姫（ゆきひめ）「ガァ!!」
雪姫（ゆきひめ）「ァルルッ 兄さんうるさい！」
豊治（とよじ）「ピー・・・」
　　豊治は遊びたかったが
　　雪姫は眠たかった
雪姫（ゆきひめ）「フンッ」
豊治（とよじ）「ゆきひめー」
豊治（とよじ）「そうだ！そうざぶろうのとこに行こう！」

〇日本家屋の階段
壮三郎（そうざぶろう）「ウーン」
壮三郎（そうざぶろう）「もぐもぐ」
豊治（とよじ）「そうざぶろう！あそぼ」
豊治（とよじ）「あ！いいなーちょうだい──」
壮三郎（そうざぶろう）「だめ」
豊治（とよじ）「ちょっとだけ。ねぇねぇねぇ！かけら頂戴！ちょっとだけ！」
壮三郎（そうざぶろう）「ヴゥ・・・パクパクモグモグゴックン！」
豊治（とよじ）「あー!!なくなっちゃった」
壮三郎（そうざぶろう）「兄さん、ゆきひめ怒らせたでしょう」
豊治（とよじ）「よくわかったね！におい？」
壮三郎（そうざぶろう）「ご本犬から聞いた」
雪姫（ゆきひめ）「そんなに遊びたいなら、いちた兄さんを誘えば？」
豊治（とよじ）「そっか！」
「じゃあ、そういうことで」
豊治（とよじ）「ありゃ、寝に行っちゃった」

〇林道
一太(いちた)「フンフン」
豊治（とよじ）「いちた兄さーん」
一太(いちた)「豊治、久しぶり」
豊治（とよじ）「聞いてよ～、ゆきひめがね、酷いんだよ」
豊治（とよじ）「一緒に遊ぼって誘ったらウーって唸るんだよ」
一太(いちた)「ゆきひめの家は、もうすぐ散歩の時間だから、寝ておきたいんだろう」
豊治（とよじ）「そうざぶろうは、お肉分けてくれなかったし」
一太(いちた)「お前に似て食い意地が張ってるからな」
豊治（とよじ）「ゆきひめも、そうざぶろうもすぐ寝ちゃうもんなぁ そんなに眠いかなぁ？ いちた兄さんは眠くない？」
一太(いちた)「お前たちより沢山寝たから、今は眠くない」
豊治（とよじ）「そう？」
一太(いちた)「そう」
豊治（とよじ）「ふーん？」
豊治（とよじ）「くぁ～あふっ」
豊治（とよじ）「ありゃ？ありゃりゃ。 眠くなってきちゃった」
豊治（とよじ）「兄さん、遊ぼうって、会いに来たのに」
豊治（とよじ）「うー」
豊治（とよじ）「すやすや」
一太(いちた)「たくさん寝るんだよ。 豊治、雪姫、壮三郎」
「一太、おいで」
一太(いちた)「はい、飼い主！」
一太(いちた)「ピー、ピスピス」

〇古いアパートの一室
豊治（とよじ）「フスーフスー すやすや」
「とよちゃん、ただいま！」
「お！イタズラせずに待てたのか 偉いぞ！天才！さすがとよちゃん！」
豊治（とよじ）「ウォン！ウォン!!」
「よーしよーし」
「お散歩行こうか、とよちゃん」
豊治（とよじ）「ウォン！へっへっへっ」

〇風流な庭園
「ゆきちゃーん」
「お待たせ！お散歩いこ！」
「お散歩だよーゆきちゃーん 楽しいよ、ほらほら、姫ー」
雪姫（ゆきひめ）「フーッ」
「もー、ゆきちゃんったら」
雪姫（ゆきひめ）「フンフンフンフンフンフ スンスンフスフスフンフン」
「まーてまてまて。 まて！ まてよー」
「お散歩終わったらだからね！」
「お散歩、いく？」
雪姫（ゆきひめ）「ウァン！」

〇日本家屋の階段
壮三郎（そうざぶろう）「ヴォン！ウォンウォン！ウォオ!!」
「そうちゃん気づくの早いよー」
「ご飯は散歩の後！」
壮三郎（そうざぶろう）「ウヴヴヴ」
「駄目です」
壮三郎（そうざぶろう）「ピーピーピスピスピー」
「駄目ったら駄目です」
「こらこら、二度寝しないの」
「ほらっ、これくわえてっていいから！」
壮三郎（そうざぶろう）「ウォオ！」

〇林道
雪姫（ゆきひめ）「プスプス」
「お待たせ！ゆきちゃん、今日に限って散歩の気分じゃなかったみたいで・・・」
雪姫（ゆきひめ）「フーッ」
壮三郎（そうざぶろう）「フスフス」
「そうちゃんもだよ。暑いからかなー。 お気に入りのタオルで乗り気になったけど」
壮三郎（そうざぶろう）「ウォオ」
豊治（とよじ）「フンフンフンフンフン」
「とよちゃんなんて何するにもノリノリだよ！」
「人懐っこさは兄妹で一番かな」
豊治（とよじ）「へっへっへっ」
「お揃いのドッグタグ、直ってよかった」
「今は３つしかない特注だもんねー」
「カニカンの交換で済んでよかったよ」
「とよちゃんは、雪姫ちゃんと壮三郎ちゃんを見習って・・・ちょっと落ち着いて欲しい・・・」
「一太ちゃんのお下がりを貰えたから良かったものを」
「次、引きちぎったら、首輪にガッチガチに接着するからね！」
豊治（とよじ）「ウォン」
「あ、分かってない顔だ」

〇CDの散乱した部屋
「どうしたね、一太」
一太(いちた)「いいえ、ボクの迷子札が・・・まだ役に立つようです」
「そうか」
一太(いちた)「これでまた、三匹お揃いです」
一太(いちた)「皆立派に育ちましたよ」
一太(いちた)「ボクの迷子札を、おもちゃにしていたのが昨日のようで、不思議ですね」
一太(いちた)「雪姫も、壮三郎も、豊治も、あんなにコロコロしていたのに」
「そうか」
一太(いちた)「今ではボクより大きいんですよ」
一太(いちた)「また、彼らに会ったら」
一太(いちた)「力比べをしてみたいものです」
「そうか」
「ごめんな、一太 もっと──」
一太(いちた)「ヴォン！」
一太(いちた)「遊びましょう！今なら飛んだり跳ねたりお手のものですよ！」
「そうか」
「散歩、行くか？」
一太(いちた)「ウォオン！」