アルカロイダ・コンプレックス

高山殘照

業 火(脚本)

アルカロイダ・コンプレックス

高山殘照

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〇荒野
ジーンセイヴァー「ジーンナックル!!」
トラッパナタンス・アルカロイダ「グザァーーーーッ!!」
ジーンセイヴァー「あの男は、どこに・・・・・・」
ダフニフィラム・アルカロイダ「おーい、もういいぞ」
トラッパナタンス・アルカロイダ「ふー」
ダフニフィラム・アルカロイダ「どうだった、今日は?」
トラッパナタンス・アルカロイダ「いやー」
トラッパナタンス・アルカロイダ「やっぱ、最高っすね! ジーンセイヴァー」
ダフニフィラム・アルカロイダ「だろー?」

〇テレビスタジオ
キャスター「アルカロイダ(化合怪人)の 襲撃が、相次いでいます しかし、我々には彼がいます」
キャスター「そう、話題のヒーロー ジーンセイヴァーです!」
キャスター「彼はアルカロイダの力と 人間の心を持ち、 日夜、戦い続けています」
キャスター「そんな ジーンセイヴァーにとって 最大の悲劇」
キャスター「それは目の前で 父・高過(たかすぎ)博士を 殺されたことです・・・・・・」

〇諜報機関
高過博士「いや、生きとるが ここに!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「ふふふ 今やすっかり理想のヒーロー 情報操作は完璧だ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「献身と悲劇 これほどまでに 人の心を打つものはあるまい」
高過博士「半分は作り話だがな!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「ああ、思い出す はじまりの日を まるで昨日のことのように」
高過博士「聞いてる、人の話?」

〇実験ルーム
高過博士「クックックック」
ダフニフィラム・アルカロイダ「どうしたんですか 悪の科学者みたいな声出して」
高過博士「これを見ろ 新たなアルカロイダ(化合怪人)の 誕生だ!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「頼まれもしないのに 作るのやめましょうよ」
高過博士「なにを言う これまでは、 完全植物由来だったが」
高過博士「今回は初めて 人間をベースに 融合させたのだぞ!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「その被験者は誰です?」
高過博士「息子だ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「合意は?」
高過博士「ないぞ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「なに実の息子で カジュアルに 人体実験してるんですか!?」
高過博士「フン 別に問題なかろう」
高過博士「そもそもこいつは、 ただの養子だ 実の息子でもなんでもない」
ダフニフィラム・アルカロイダ「あー、ダメだ 博士、それはライン越えた トラッパ」
トラッパナタンス・アルカロイダ「うっす」
ダフニフィラム・アルカロイダ「とりあえず、 博士監禁しとこう この人ダメだ、全然ダメ」
トラッパナタンス・アルカロイダ「うーっす」
高過博士「おい、こら、やめろ! 私はおまえらの 生みの親だぞ!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「親、ねえ」
ジーンセイヴァー「う、うーん」
ダフニフィラム・アルカロイダ「お、気づいたか いいか、 落ち着いて聞いてくれ」
ジーンセイヴァー「この体は・・・・・・」
ダフニフィラム・アルカロイダ「そうだ、その体は」
ダフニフィラム・アルカロイダ(いい目をしている)
ジーンセイヴァー「おまえがやったのか?」
ダフニフィラム・アルカロイダ「え?」
ジーンセイヴァー「ここは父さんのラボのはずだ 父さんは、どこにいる?」
ダフニフィラム・アルカロイダ「その、えーと、なんというか」
ダフニフィラム・アルカロイダ「フ、フハハハハハ!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「そのまま眠っていれば 真実を知らずに 済んだものを!」
ジーンセイヴァー「なにい!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「おまえはアルカロイダになった 二度と人間には戻れん! 改造した私が保証しよう」
ジーンセイヴァー「な・・・・・・」
ダフニフィラム・アルカロイダ「そしてあのクソお もとい 素晴らしき高過博士は」
ジーンセイヴァー「や、やめろ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「私が殺した」
ジーンセイヴァー「ゆ・・・・・・」
ジーンセイヴァー「ゆ、許さん! おまえだけは、絶対に!!」

〇諜報機関
ダフニフィラム・アルカロイダ「いやあアドリブとはいえ いい仕事したなあ」
トラッパナタンス・アルカロイダ「あれから復讐に燃えて 力をつけ、今や 一人前のヒーローですもんね」
ダフニフィラム・アルカロイダ「あの目の輝きが よかったんだよなあ 純粋な正義の輝きを宿してて」
ダフニフィラム・アルカロイダ「その瞬間、決めたね ヒーローを引き立てる 最高の悪になろうって!」
トラッパナタンス・アルカロイダ「それって、あれですよね 『一目惚れ』」
「フハハハハ! ヘヘヘヘヘ!」
高過博士「うるさい! さっさとここから出せ! おかしな基地に閉じ込めおって」
トラッパナタンス・アルカロイダ「あんたを娑婆に 出せるわけないでしょ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「施設から引き取った子を 本人の同意なく アルカロイダにしましたぁ?」
ダフニフィラム・アルカロイダ「この事件を公にして たまるか!! ろくな『前例』にならんわ!」
トラッパナタンス・アルカロイダ「やーいクズー」
ダフニフィラム・アルカロイダ「ゴーミー」
高過博士「黙れ 何人も我が研究意欲を 止められるものか」
トラッパナタンス・アルカロイダ「はいまた 人として減点 監禁継続決定」
高過博士「しまったー!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「これでも 日本最高の頭脳なんだからなあ」
トラッパナタンス・アルカロイダ「能力が伴っているだけ マシかもしれませんぜ」
トラッパナタンス・アルカロイダ「こちら 世論対策にご用意しました 『有識者』の一覧ですが」
ダフニフィラム・アルカロイダ「ほう、経歴から嗜好 交友関係まで よくまとめられておるな」
トラッパナタンス・アルカロイダ「恐悦至極」
ダフニフィラム・アルカロイダ「え? うわっ これ、マジ?」
トラッパナタンス・アルカロイダ「マジ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「わ、 こいつ実際は、こうなの? こわっ、シンプルにこわっ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「んー、なるほど」
ダフニフィラム・アルカロイダ「高過博士 あなたを見直した」
高過博士「『あれよりマシ』で評価すな!」
キャスター「ここで臨時ニュースを お伝えします」
キャスター「大規模高齢者福祉施設 『ニアヘブン』にて 大型火災が発生中です」
キャスター「失火ではなく放火とみられ、 テロリスト もしくは怪人犯罪の可能性が」
ダフニフィラム・アルカロイダ「これはヒーローの出番だな さっそくジーンセイヴァーに 匿名の通報を」
トラッパナタンス・アルカロイダ「待ってください! 彼は今 大学祭に呼ばれて関西に!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「くっ! 実行委員会の慧眼には 敬意を表するが」
トラッパナタンス・アルカロイダ「関西から東京までは ヒーローの足でも 1時間は、かかりますな」
ダフニフィラム・アルカロイダ「ここで人死にが出れば ジーンセイヴァーは 自責の念にかられるだろう」
トラッパナタンス・アルカロイダ「『守れなかった』は ヒーローの禁忌ですぜ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「仕方ない まず我々が いい感じに対処しておくか」
トラッパナタンス・アルカロイダ「ジーンセイヴァーが 駆けつけるまで 時間稼ぎですね!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「行くぞ!」
高過博士「なるほど これが、推し活・・・・・・」

〇大きい病院の廊下
ジェネラル「ボボボボボ! 燃えろ燃えろ! 骨まで燃えろ!」
ジェネラル「年寄りの寝床など 燃え尽きてしまえ ボーボボボボ!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「なんだボボボって」
トラッパナタンス・アルカロイダ「キャラ付けですよ そういう指摘は ご法度ですぜ」
ジェネラル「聞こえとるぞ!」
ジェネラル「貴様らはアルカロイダ なにしに来たのだ ボーボッボッボ」
ダフニフィラム・アルカロイダ(続けるのか)
ダフニフィラム・アルカロイダ「いったいなんのつもりだ お年寄りの家燃やして 粋がって」
ジェネラル「ボーボボボボ! 知らんのか!」
ジェネラル「年寄りが生きていると 税金の無駄なのだ! あー、社会保障とか、なんとかで」
ジェネラル「だから私は、率先して」
トラッパナタンス・アルカロイダ「あー、こいつ、アレですよ もっともらしいこと言って 目立つ犯罪やらかして」
トラッパナタンス・アルカロイダ「なににもなれないから テロリストでもやろうっていう いわゆる、ワナビです」
ダフニフィラム・アルカロイダ「なんだ、ワナビか」
トラッパナタンス・アルカロイダ「あわよくば世間の同情買って 減刑か無罪勝ち取って そのままワイドショーに呼ばれて」
トラッパナタンス・アルカロイダ「あとはいい感じに喋って コメンテーターになったり 出馬したりしたいんでしょう」
ジェネラル「うぐっ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「フハハハハ 図星のようだな」
ジェネラル「うるさい! このテロが決まれば 将来が開けるんだ!」
ジェネラル「コメンテーターに 俺は、なる!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「さっさと火を消せ」
ジェネラル「ボーッボッボッボ! よほど火が恐ろしいらしいな」
ジェネラル「貴様らのことは調査済だ アルカロイダは 植物由来の怪人」
ジェネラル「つまり弱点は、火! いでよ、ナパームジェリー!」

〇炎
ダフニフィラム・アルカロイダ「こういう怪人は、趣味に合わんな」
ジェネラル「そう言っていられるのも 今のうちだ」
ジェネラル「こいつらは いわば生きるナパーム弾」
ジェネラル「一度発火すれば 相手を塵にするまで 燃やし尽くす」
ダフニフィラム・アルカロイダ「手を出すなよ、トラッパ」
ジェネラル「行け! ジジイババアの前に 雑草どもを駆除してしまえ!」
ジェネラル「燃えろ燃えろ ハハハハ」
ジェネラル「じゃない ボボボボボボ!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「フン!」

〇大きい病院の廊下
ジェネラル「なっ・・・・・・ 一振りで、全滅?」
ダフニフィラム・アルカロイダ「さっき、我々のことは 調査済だと言ったな」
ダフニフィラム・アルカロイダ「本当か? 私の名前くらい 調べなかったのか?」
ダフニフィラム・アルカロイダ「ダフニフィラム つまりユズリハは 『耐火樹』だ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「意味が分かるか 耐火樹というのは 火に強い植物ということだ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「もう一度聞くぞ 本当に、我々のことを、 調べたのか!」
ジェネラル「む、むむむ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「江戸の昔より、 狼藉は まことに丁寧礼儀正しく行うもの」
ダフニフィラム・アルカロイダ「それすら守れぬ貴様は 傲慢にして無能 理想すら安いワナビよ!」
ジェネラル「くそっ これでも喰らえ!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「遅い! セイヴァーナックル!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「フフフ つい、推しの技を 使ってしまった」
ダフニフィラム・アルカロイダ「さあ お互いお遊びはこれまでだ 本気を出せ、かかってこい」
トラッパナタンス・アルカロイダ「あのー、ダフニ様 こいつ、 完全に失神してますが」
ダフニフィラム・アルカロイダ「え」
トラッパナタンス・アルカロイダ「ほら、 動いちゃいけないとこ ぷらんぷらんしてますし」
ダフニフィラム・アルカロイダ「えーーーーっ!?」
ダフニフィラム・アルカロイダ「いや、一応 怪人とか生み出せるんだろ? 肉体改造も、しとくべきだろ?」
トラッパナタンス・アルカロイダ「生身の自分に 賭けたんでしょうねえ」
ジーンセイヴァー「見つけた!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「おっ、 早かったじゃないか ジーンセイヴァー」
ジーンセイヴァー「私の足と 日本の高速道路を 舐めるなよ」
ジーンセイヴァー「みんな追越車線を 譲ってくれたおかげで 間に合ったぞ!」
ジーンセイヴァー「人々を生かし 活かされるヒーロー それが、ジーンセイヴァーだ!」
ジーンセイヴァー「なんだこれは!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「感情が溢れただけだ 気にするな」
ダフニフィラム・アルカロイダ「そうそう 誰も死んではいないから 安心しろ」
ジーンセイヴァー「おまえの目的は、なんだ ここで なにをやってる?」
ダフニフィラム・アルカロイダ「あ、それは、えーと」
ダフニフィラム・アルカロイダ「フハハハハハハ!!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「知れたこと 老人どもを 改造するためよ!」
ジーンセイヴァー「な、なにい!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「学生として学び 社会人として生き、 怪人として新たな生を得る」
ダフニフィラム・アルカロイダ「蓄積された経験と 生まれ変わった肉体は かつてない驚異となろう」
おばあちゃん「ほー そりゃ、ええのう」
トラッパナタンス・アルカロイダ「はーい 安全なところに 避難しましょうねー」
ジーンセイヴァー「恐ろしいことを・・・・・・」
ダフニフィラム・アルカロイダ「しかしおまえが来たことで この計画は失敗だ 残念だ極めて残念だ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「さらばだ」
ジーンセイヴァー「あ、待て!」

〇劇場の舞台
キャスター「今夜も ジーンセイヴァーの 話題からです」
キャスター「高齢者怪人計画を 未然に防いだ功績により 国民栄誉賞が送られました」
歌舞伎田総理「おめでとう これからも よろしく頼むよ」
ジーンセイヴァー「あ、 ありがとうございます・・・・・・」

〇諜報機関
高過博士「あの拾ってきた子供が 今や、国民栄誉賞か」
高過博士「幼い頃から まるで構ってやれずに 挙句の果てに実験台」
高過博士「それでも、育つ、か」
高過博士「よかったな、『仁』 すまなかった・・・・・・」

〇近未来の手術室
ダフニフィラム・アルカロイダ(慚愧と賞賛が入り混じった涙、か あんなクズでも 美しいものだな)
トラッパナタンス・アルカロイダ「ダフニ様 拾ってきたこいつ どうします?」
ダフニフィラム・アルカロイダ「トラッパ 我々はなんだ」
トラッパナタンス・アルカロイダ「悪い怪人です」
ダフニフィラム・アルカロイダ「じゃあ、やることは 決まってるじゃないか」

〇荒野
フォルスホリー・アルカロイダ「ヒィーーーッ!」
ジーンセイヴァー「この!」
フォルスホリー・アルカロイダ「ヒョエーーーッ!」
ジーンセイヴァー「逃げるな!」
フォルスホリー・アルカロイダ「オタスケェーーー!」
ジーンセイヴァー「なんなんだ、おまえは!」

〇荒地
ダフニフィラム・アルカロイダ「逃げてばっかりだな あの新入りは」
トラッパナタンス・アルカロイダ「全身に武器を 仕込んだんですけどねえ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「あれほどの役立たずも かえって貴重だ」
トラッパナタンス・アルカロイダ「俺たちは爆発四散しても すぐ復活するって 知らないんですかねえ」
ダフニフィラム・アルカロイダ「3回教えて 6回聞き返されたぞ」
トラッパナタンス・アルカロイダ「で、どうします?」
ダフニフィラム・アルカロイダ「驚異にならん怪人など ヒーローに失礼だろう」
ダフニフィラム・アルカロイダ「行ってくる」

〇荒野
ダフニフィラム・アルカロイダ「選手交代だ」
ジーンセイヴァー「ダフニフィラム!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「さあ、楽しい楽しい 喧嘩ごっこの時間だ」
ジーンセイヴァー「ふざけるな! 今日こそ父の仇 取らせてもらうぞ!!」
ダフニフィラム・アルカロイダ(そうだ もっと怒れ そして、強くなれ)
ダフニフィラム・アルカロイダ(おまえのためなら 私はなんだって 利用してやる)
ダフニフィラム・アルカロイダ(人だろうと テロリストだろうと 国や世界だろうと)
ジーンセイヴァー「セイヴァーナックル!」
ダフニフィラム・アルカロイダ「罰裁!!」
ダフニフィラム・アルカロイダ(私は最前列で おまえの正義を浴びてやろう さあ)
ダフニフィラム・アルカロイダ「往くぞ、ジーンセイヴァー!」

コメント

  • タイトルが秀逸ですね。相手を成長させたいから自分の身を挺して戦い続けるって究極の推し活ですね。それを怪人ストーリーとしてまとめ上げるなんて…すごい。あと、植物由来の怪人ってなんか癒されます。ダフニフィラムは火に強かったけど、トラッパナタンスは水草だから水中戦が得意なんだろうか。

  • 緊迫のバトルシーンとそれ以外のパートとの落差に笑ってしまいました。高齢者福祉施設でおばあちゃんを優しく避難誘導するアルカロイダの姿は衝撃的です!

  • 珠玉のセリフのオンパレードでした。私はラストのセリフが一番かっこよかったのですが、ランキングを聞いて回りたいところです。感謝。

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