試作品最後の戦い

酔亭無財

試作品最後の戦い(脚本)

試作品最後の戦い

酔亭無財

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試作品最後の戦い
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〇地下室
男「君は、この世で一番笑えるモノは何だと思う?」
少女「いや・・・・・・来ないで・・・・・・」
男「答えになってない」
少女「あ・・・・・・ああ・・・・・・」
男「まあ、良い 答えは・・・・・・ 何かを成し遂げた者が見せる絶望の顔だよ」
少女「いや!いやああああ!」
男「ふふ 良いね でも、今の君じゃまだ足りない」

〇地下に続く階段
男「さて・・・・・・」
男「おっと・・・・・・」
シロガネ「君は・・・・・・」
男「おいおい 会ったばかりの人間にファイティングポーズとは、穏やかじゃないなヒーロー」
シロガネ「こんな場所をうろついている人間が一般人とは思えないんでね」
男「そりゃそうだ!」
シロガネ「僕に・・・・・・ 似ている・・・・・・」
失敗作「ははっ そりゃそうだ お前も俺も同じコンセプトで作られた怪人だからな」
失敗作「違いは、お前が『試作品』で・・・・・・」
失敗作「俺が『失敗作』ってところだ!」
シロガネ「遅い!」
失敗作「がっ!?」
男「ははっ 一発でこれとは・・・・・・ やはり、相手にならんか」
シロガネ「怪人態も解除された 観念しろ」
男「馬鹿を言え 怪人の最後は決まっている 精々、アジトの強襲、組織の壊滅を達成できるように頑張るんだな」
男「さよなら」
シロガネ「くっ 自爆か・・・・・・」
シロガネ(ダメージはない このまま終わらせる!)

〇西洋の円卓会議
首領「よくここまで来れたものだ 歓迎するよヒーロー」
首領「どうやって、ここを見つけたのか後学のために聞いておきたいものだ」
シロガネ「平和を愛する人達の協力のおかげだ!」
首領「ふう 実にくだらん」
首領「1人で我が組織に対抗できる戦力を持ちながら、他人の協力?平和を愛するだ?」
首領「貴様は何もわかっちゃいない」
首領「中途半端な知識を持った人間以上に愚かな生物などいない お前に協力した者達は、いずれ平和を脅かすぞ」
シロガネ「勝手なことを! 他人を中途半端な知識で決めつけるお前こそが愚かだ!」
首領「これ以上の問答は不要なようだ」
首領「引導を渡してやる」
シロガネ(これが最後の戦いだ 皆、俺に力を貸してくれ!)
シロガネ「うおおおおおおおおお!!!」

〇川沿いの道
  ──3日後
シロガネ「これで終わりだ!」
炎の怪人「ぐああああああああ!!」
シロガネ「ふう」
光太郎「とりあえず、周囲に他の怪人はいなさそうだな」
光太郎(組織は情報提供者のお陰で壊滅できたが、いまだに残党が悪事を働いている)
光太郎(怪人の残りは1体 早く見つけ出さないと・・・・・・)
「あ、あの・・・・・・」
光太郎「え?」
少女「あの・・・・・・」
  声のした方に目を向けると、そこには左手に包帯を巻いた少女が立っていた
光太郎「何か?」
少女「あなた・・・・・・ ヒーローのシロガネなの?」
光太郎「そうですが どうかされましたか?」
少女「そう あなたが・・・・・・」
  少女がその場に倒れ込む
光太郎「大丈夫ですか!?」
  光太郎はとっさに少女に駆け寄った
光太郎「な・・・・・・ なぜ・・・・・・」
  突き飛ばした少女の手にはナイフが握られていた
  それは光太郎の首に突き刺された物だった
少女「あなたが・・・・・・ あなたが・・・・・・」
  少女はフラフラと立ち上がり、光太郎に歩み寄る
「はい そこまで」
  糸が切れたように少女が倒れる
男「久しぶり と言いたいところだが、3日ぶりじゃそこまでじゃないか」
光太郎「お、お前は・・・・・・ 自爆したはずじゃ・・・・・・」
男「『さよならを言うのは少し死ぬことだ』 なんてな まあ、本来は期間の話じゃないんだがな」
光太郎「な、何を言って・・・・・・」
男「ん? レイモンド・チャンドラーだよ 読んだことないのか? ヒーロー」
光太郎「ふざけ・・・・・・るな・・・・・・」
男「俺はいたって大真面目だよ 計画も大詰め すべてのタネ明かしに来たのさ」
光太郎「タネ・・・・・・明かし?」
男「ああ お前、情報提供者については何かわかったのか?」
光太郎「!? ま、まさか!?」
男「ああ 俺が情報提供者さ」
光太郎「何故・・・・・・ 俺に協力した!?」
男「ふふ 情報は提供したが、協力はしていない」
男「最初から最後まで計画どおりだ」
光太郎「計画・・・・・・だと?」
男「そうだ ところで、お前はこの世で最も滑稽なモノはなんだと思う?」
男「それはな・・・・・・ 強く、何かを成し遂げた奴が絶望に陥る様だ!」
光太郎「が!?」
光太郎「ハアハア こ、滑稽とか訳のわからんことを・・・・・・」
男「俺の計画は、その滑稽なモノを見ることさ」
男「強い怪人が弱い試作品に倒された時の顔は愉快だった」
男「日本を裏から支配する寸前までいった組織が、自ら生み出した怪人の試作品に潰された時の首領は良い顔だった」
光太郎「俺の戦いがすべてお前の思いどおりだったと言いたいのか!?」
男「ふはははは 言いたいんじゃない そう言っているんだよ」
光太郎「ぐう!?」
  光太郎の胸に深々とナイフが突き刺される
男「そのナイフは、さっき彼女が使った物だ 変身態になったのは俺の指紋をつけないためさ」
光太郎「何故・・・・・・」
男「彼女の復讐を成就させるためさ」
光太郎「復讐・・・・・・だと・・・・・・」
男「聞きたいかい? 彼女がヒーローに裏切られた話を・・・・・・」

〇地下室
  ────3日前、俺とお前が会う前の話だ
少女「うぅ・・・・・・ 手が・・・・・・手が痛いよ・・・・・・ お母さん・・・・・・」
男「ふふふ 君に良いニュースを教えてあげよう」
少女「え?」
男「今ここにヒーローが・・・・・・ 君達がシロガネと呼んでいる者が来ることになっている」
男「安心したまえ ちゃんと、ここを壊滅するために来るんだ この組織に下るためじゃない」
少女「罠・・・・・・」
男「・・・・・・というわけでもない ヒーローがここに来ることは、俺以外知らないからな」
少女「どういう・・・・・・」
男「ふははははは! 俺がヒーローへ情報を提供していたんだよ」
男「何故、俺がそんな事をしていたか理解できないか? まあ、そんな事は重要じゃない」
男「君にとって重要なことは ヒーローが君の親を見つけてくれるかどうかさ」
男「俺はこれからヒーローの所に行く そこで奴には君の親の居場所を教えるつもりだ」
少女「言っている意味が・・・・・・」
男「信じる信じないは自由だが、ヒーローが今まで勝てたこと この本拠地を見つけられた事を考えれば、答えはわかるだろ?」
男「いずれ、答え合わせはしてやるよ それじゃ、さよなら」
  ────気絶させた彼女を残して俺はお前に会ったというわけだ

〇川沿いの道
光太郎「どこに俺が彼女を裏切った要素が・・・・・・」
男「結論を急ぐなよ 今の話で重要なのは俺が彼女の親の居場所をお前に教えると言った事だ」
光太郎「何の話だ それこそ知らない話だ」
男「そう 俺はお前に、そんな話はしていない」
光太郎「何を言っているんだ・・・・・・」

〇地下室
  ────お前が首領を倒した後の話をしよう
少女「あれ・・・・・・ 私、どうしてこんな所で寝て・・・・・・」
少女「痛っ 左手・・・・・・」
少女「そうだ・・・・・・ 私、誘拐されて暴力を・・・・・・」
少女「お母さんとお父さんは・・・・・・」

〇基地の広場(瓦礫あり)
  ────彼女が外に出ると瓦礫の山だった
  お前は、その理由を知っているだろ?
  首領を倒した事で自爆装置が作動したんだ
少女「そ、そんな・・・・・・ お母さん・・・・・・ お父さん・・・・・・」
少女「お母さあああん! お父さあああん!」
  彼女はそこで思い出すんだ
  俺の言葉を・・・・・・
  ヒーローに両親の居場所を教えるという俺の言葉を・・・・・・
少女「何がヒーローよ・・・・・・ よくもお母さんを・・・・・・お父さんを見殺しにしたな」
少女「殺してやる・・・・・・ 絶対に殺してやる!!」

〇川沿いの道
男「────こうして、復讐鬼となった少女はヒーローが来そうな所に突撃しましたとさ」
光太郎「貴様あ、この外道が」
男「死にかけが凄んでも怖かない」
男「お前は間も無く死ぬ 俺は退散し、お前の死体と彼女の指紋が付いたナイフが残る」
男「めでたく彼女はヒーロー殺しとなり、復讐を果たすのでした」
男「良い筋書きだろ?」
男「ふははははは! これで俺は退散するよ さよなら」

〇川沿いの道
  笑い声を残して男は消えた
  意識が朦朧としてきたが、このまま意識を失うわけにはいかない
  彼女を殺人者にするわけにはいかない!
  俺は胸に刺さったナイフを引き抜くと────
  渾身の力を込めて川に向かって投げる
失敗作「はい そこまでよ」
  ナイフを投げることはできなかった
  怪人が俺の腕を踏みつけたのだ
「き、貴様・・・・・・」
失敗作「「さよならは別れの言葉じゃなくて、また会うための約束」って言うだろ?」
「何を訳のわからん事を・・・・・・」
失敗作「彼女がヒーロー殺しという冤罪を背負う事が計画なんだから、ナイフを投げさせる訳ないだろう?」
失敗作「そうそう その表情!」
失敗作「強い暴力で組織壊滅を成し遂げた男の絶望の顔・・・・・・ 実に滑稽だ」
失敗作「強い復讐心でヒーロー殺しを成し遂げた彼女・・・・・・」
失敗作「どんなタイミングで真実を告げたら、より強く絶望するかな?」
  怪人が笑いながら俺の腕から足を離すが、もう俺の腕には力が入らなかった
失敗作「今度こそお別れだ」
男「お前に殺された者達によろしく言っておいてくれ」
  薄れゆく意識の中、俺は彼女が救われる事を願うことしかできなかった

コメント

  • 「失敗作」がとても興味深い悪役像でした。「何かを成し遂げた者が見せる絶望の顔」を見て嘲笑うことを喜びとする「失敗作」。生まれながらにして「失敗」という言葉を背負う以上、何かを「成し遂げる」ことが永久に許されない者の劣等感や悲哀、徹底したニヒリズムがよく描かれていると思いました。

  • ヒーローという立場からでも怪人になり得る、人間だからといって誰もが良識をもっているとも限らない。たとえ相手を制しても、虚しさが残るというのは闘い自体が見にくいだからでしょうね。

  • 最後で優しい気持ちが伝わってきました。
    人や怪人を恨む気持ちなんてやっぱり誰もが持つものなのかもしれません。きっと戦争がなくならないのも…。

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