魔法のダイエット

武智城太郎

読切(脚本)

魔法のダイエット

武智城太郎

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〇おしゃれなリビングダイニング
丸井広子「あたしは食べることが大好き♡♡」
丸井広子「ムシャムシャ!!」
丸井広子「ガツガツ!!」
丸井広子「パクパク!!」
丸井広子「どうしてカロリーの高いものって、こんなに美味しいんだろう♪」

〇学校の校舎
  しかし、そんな広子(ひろこ)も高校に上がり──

〇教室
  異性の存在を意識するように・・・

〇学校の体育館
  本命はもちろん、全女生徒の憧れの的──
  バスケ部の高嶺(たかね)先輩だ。

〇スポーツクラブ
丸井広子「よし! 生まれて初めてダイエットに挑戦するぞ!」

〇稽古場(椅子無し)
丸井広子「・・・・・・」
  だが半日であっさり挫折・・・

〇女の子の部屋
  サプリメントの類もまるで効果なし。
  最後の手段としてすがったのが、インターネットで見つけた──
丸井広子「〈魔女の館〉・・・?」
丸井広子「本物の魔女が経営してて、いろんな魔法の秘薬を売ってるんだ!」
丸井広子「これが秘薬の販売リストか・・・」
丸井広子「あった! 〈楽に痩せる薬〉だって!」
丸井広子「うそ! やったー!」
丸井広子「ふ~ん、通販はやってないんだ」

〇デザイナーズマンション

〇マンションの共用廊下

〇薬屋
秘美子「〈魔女の館〉にようこそ」
秘美子「あたしが店主の秘美子(ひみこ)よ」
秘美子「ゆっくりしていってちょうだい」
丸井広子「ネットの写真ほど若くないですね」
丸井広子「あれは修正してるんですか?」
丸井広子「美魔女になれる薬とかはないんだ」
丸井広子「それで、〈楽に痩せる薬〉が欲しいんですけど」
秘美子「・・・いいとも。3万円だよ」
丸井広子(お年玉の貯金が五十万円くらいあるから安いもんだわ)
  それは、パチンコ玉くらいの丸い塊だった。
秘美子「この丸薬を飲めば、あっというまに痩せられるよ」
秘美子「たとえ、あなたでもね。フフ・・・」
秘美子「食事もこれまで通り、好きなものを好きなだけ食べたらいい」
秘美子「ちょっと見た目が不気味かもしれないけど──」
丸井広子「ほんと? やったあ!」
丸井広子「ゴクリ」
秘美子「もう飲んだわ、この娘」
丸井広子「どのくらいで痩せます?」
秘美子「心配しなくても、効き目はすぐに出てくるよ」
秘美子「クククッ・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
丸井広子「ムシャムシャ ゴクン」
丸井広子「ああ、おいしかった!」
丸井広子「あ~おいしかった!」
丸井広子「お母さん、カレーとハンバーグとオムレツおかわり」

〇白いバスルーム
丸井広子「薬を飲んでから一週間──」
丸井広子「今まで通りに食べてるけど、ほんとうに体重は減ってるのかな?」
丸井広子「あの変なおばあさんに、だまされたんじゃあ・・・」
  広子は体重計に乗る
丸井広子「すごい! 10キロも減ってる!!」
丸井広子「さすが魔法のダイエットは違うわね」
丸井広子「はい、どちら様?」
丸井広子「あ、魔女のおばさんですか?」
丸井広子「ちょうどよかった。あの薬すごいですね!」
魔女「喜んでいられるのも今のうちだよ、子豚ちゃん?」
魔女「あれは〈楽に痩せる薬〉じゃなくて、〈死ぬまで痩せていく薬〉だよ」
丸井広子「え!?」
魔女「どんなに食べようとも、ひたすら痩せていくのさ」
秘美子「最期には、骨と皮だけになって餓死するよ」
秘美子「せいぜい、あと半月の命だろうね」
魔女「それが嫌なら、店に来て無礼を謝るこった。ケケケッ」
  電話はそこで切れる。

〇黒
  一か月後──

〇学校の校舎

〇学校の廊下
男子生徒「おい、あれって・・・」
男子生徒「ああ、噂の二組の・・・」
「す、すげえ・・・!」

〇教室
女子生徒「だよね~」
「あ・・・」
女子生徒「ひ、広子、おはよう!」
丸井広子「おはよ~」
女子生徒「おはよう 今朝は一段とキレイだね」
丸井広子「そう? 自分ではよくわからないけど」
(丸井さん・・・)

〇繁華な通り
  グゥ~~~!!
丸井広子「今日の帰り道も、お腹空いてるわ~」

〇ファストフード店

〇ファストフード店の席
  パックパック!!
  モグモグ!!
  ゴクゴクッ!!

〇お弁当屋のレジ
店員「ありがとうございましたー!」

〇たこ焼き屋
店主「毎度、ありがとうございます!」

〇田舎の公園
丸井広子「たしかに以前の量だと、痩せすぎて死んでしまうかも」
丸井広子「でもこうして以前の二倍くらい食べてれば、薬の効き目を打ち消して、今のベスト体重を維持できるわ」
丸井広子「痩せて死ぬこともないし、好きなものも食べ放題!」
丸井広子「それって最高じゃん!!」

〇体育館の裏
高嶺先輩「丸井さん、実は以前から君のことが・・・ 俺とつきあってくれ」
丸井広子(ああ・・・なんかドタバタしてるうちに、高山先輩のほうから告白されるなんて!)
丸井広子「はい、よろこんで!」

〇黒
  さらに一か月後──

〇おしゃれなリビングダイニング
丸井広子「でも・・・ガツガツ」
丸井広子「さすがに、これは・・・ガツガツ」
丸井広子「限度を越えてるわ!!」
丸井広子「痩せるスピードがさらに早くなってるから、ガツガツ」
丸井広子「どんなに食べても追いつかない・・・!!」

〇白いバスルーム
丸井広子「ダメだ。また5キロも減ってる!!」
丸井広子「あれだけ食べたのに・・・ほんとに餓死しちゃうかも」

〇デザイナーズマンション

〇西洋風の部屋
丸井広子「なんとかしてください!!」
丸井広子「だますなんて、ひどいじゃないですか!!」
秘美子「え!? だれ!?」
丸井広子「あたしです!! 〈楽に痩せる薬〉を買った」
秘美子「ああ、あの無礼な豚娘・・・」
秘美子「ずいぶんとキレイになったわね」
秘美子「て、怒ってるのはあたしのほうだよ!」
秘美子「あたしにむかって、「写真より若くない」とか無礼な口をきいた罰さ」
丸井広子(ああ・・・そんなつまんないことで怒ってたのか)
丸井広子(なんでもいいから謝っとこ)
丸井広子「ごめんなさい」
秘美子「そうそう、そうやって素直に謝ればいいんだよ」
秘美子「あたしも昔話の魔女じゃないから、子供を殺したりはしなよ」
秘美子「痩せて骨と皮だけになるのはほんとだけどね、死ぬまでにはいたらないのさ」
秘美子「家主にいなくなられて困るのは、店子のほうだからね」
丸井広子「なんですか、それ? アパート?」
秘美子「ものの例えだよ」
秘美子「あの丸薬の正体は、極めて珍しい種類の寄生虫の卵なのさ」
丸井広子「え!? 虫!?」
秘美子「あれが胃の中で孵化すると、宿主が摂取した栄養分の何割かを横取りして吸い取ってしまうのさ」
秘美子「だから、いくら食べても太らないの」
秘美子「魔女業界では、〈貪食の虫〉と呼んでるわ」
丸井広子「始めのうちは、ダイエットにちょうどよかったのに」
秘美子「〈貪食の虫〉はすぐに成長するからね。吸い取る栄養分の量もどんどん増えていくの」
秘美子「あんたがどんなに食いしん坊だろうと、かなう相手ではないわ」
丸井広子「ふ~ん・・・」
丸井広子「で、早くなんとかして欲しいんですけど」
秘美子「・・・ほんとに反省してるの、あんた」
秘美子「この虫下し薬を飲めば吐き出せるから」
丸井広子「良かった。ゴクリ・・・」
丸井広子「・・・・・・」
丸井広子「・・・うっ!」
秘美子「効いてきたようだね」
秘美子「あら? 上から出るのか下から出るのか忘れたわ」
丸井広子「オエーッ」
秘美子「ああ、上からみたいだね。奥にトイレがあるから吐いといで。汚さないようにね」
丸井広子「もう、ダメ。間に合わない」
秘美子「ちょっとあんた、店先よ。我慢しなさいよ!」
丸井広子「ダメ、ここで吐く」
丸井広子「おぼっーー!!」
丸井広子「うっ・・・」
秘美子「どうなったの・・・!?」
丸井広子「ふひ(口)の中に・・・ひひ(生き)物が、ふほ(動)いてる」
秘美子「それが〈貪食の虫〉だよ」
丸井広子「ひ(胃)のらか(中)に、もろ(戻)ろうとしてるみたい」
秘美子「外の空気に触れたら死んでしまうからね。そりゃ抵抗もするさ」
秘美子「あの虫下し薬は貴重なんだから、必ず吐き出しなさいよ」
丸井広子「れ、れも・・・」
  一瞬ながら、広子の半開きの口の隙間から、〈貪食の虫〉が顔をのぞかせる。
秘美子(あら、ほんとに宿主そっくりの姿に成長してるわ)
丸井広子「うわっ!! ふっごい暴れれる!!」
丸井広子「あ、嚙んじゃった・・・」
丸井広子「寄生虫から肉汁がジュワーて滲み出て・・・」
秘美子「オエーーッ!!」
丸井広子「信じられないほど、美味しい・・・!」
丸井広子「モグモグモグ・・・」
秘美子「それ、飲み込んじゃダメよ」
丸井広子「ゼッタイ無理!!」
丸井広子「ゴクンッ」
丸井広子「ん?」
丸井広子「・・・あっ!!」
丸井広子「なにこれ!? 前より太ってる~!!」
秘美子「だから言ったでしょ」
秘美子「ここ二ヵ月、あんたの代わりに栄養を摂り続けてたんだから」
秘美子「〈貪食の虫〉は、凄まじいカロリーの塊になってたのよ」
丸井広子「だまされた! インチキだ~~!!」

〇キャンディ
  おわり

コメント

  • 広子の口の中からちょっと顔を出した虫の顔がっっw。こわ面白すぎて悶絶しました。高速リバウンドで鮮やかにフィニッシュもお見事。作者さんはくれぐれもストーリーの面白さのダイエットはしないようにこれからも頑張ってください。

  • ホラー要素が強めの物語かと思いきや、ラストで空気感が二転三転して、ラストには笑わせてもらいました。ダイエットという身近なテーマで、彼女に共感するところも多かったです

  • 最後の予想外の大どんでん返し、思わず声を出して笑いました。途中、ホラーになってしまうのかと思ってヒヤヒヤもしましたが、おもしろくて読み応えもあって最高でした。美味しい話はないですね(笑)

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