薬害怪人ザナ

坂井とーが

ザナ(脚本)

薬害怪人ザナ

坂井とーが

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薬害怪人ザナ
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〇マンション群
「知ってるか? 謎の研究施設から怪人が逃げたんだってさ」
「マジかよ。やべぇな」
怪人「ヒュー、ヒュー・・・」
「いたぞ! 怪人だ!」
処理班「ぐはっ」

〇ビルの裏
男「怪人の動画撮ったらバズるんじゃね?」
男「うわあああ!」
男「た、助け──」
男「ヒッ! ば、化け物──」
処理班「ザナ、やったか?」
処理班「うわ、真っ二つだ・・・」
処理班「ビビるな。さっさと消毒液を撒くぞ」

〇屋上の端(看板無し)
???「おい、あんた」
ザナ「!?」
???「話は通じるか? これを──」
ザナ「・・・」
「ザナ、さっさと引き上げるぞ」
???「あ、おい──」
???「・・・」
???「ザナ、か」

〇研究所の中枢
研究員「素晴らしいデータだ。前回よりも、さらにパワーアップしている」
研究員「・・・恐ろしいくらいだ」
研究員「そのボディを、もっと近くで見せてくれ!」
研究員「うわっ」
研究員「気をつけろ。ザナは気性の荒い怪人だ」
研究員「ザナ、もういい。変身を解いて休め」
「すごいな。まさに、怪人になるために生まれてきたような人間だ」
「奴は危険すぎる。近々、処分を検討すべきだ・・・」
ザナ「・・・」

〇清潔な浴室
ザナ「――ふざけるな!」
ザナ「好きで怪人になったわけじゃない!」
ザナ「私は──」
ザナ「化け物じゃない・・・」

〇荒廃した街
  あるときから、普通の人間が怪人になる事件が起こり始めた。
  私も怪人になって理性を失い、暴れたらしい。
黒い怪人「理性を捨てるな。最後まで支配に抗え」

〇研究所の中枢
  気が付くと、私は研究施設に捕らえられていた。
研究員「まったく。君のように邪悪な魂を持っている人間が、怪人になってしまうのだよ」
研究員「さて、そんな君に選んでもらおうか、『ZANA』」
研究員「このまま研究対象として解剖されるか、それとも、怪人狩りとして戦うか」
ザナ「・・・」
ザナ「たとえ解剖との2択でなくても、私は戦う」
ザナ「私には、人を傷つけてしまった責任があるから・・・」

〇殺風景な部屋
ザナ「結局、私は解剖されてしまうのか・・・」
ザナ「そういえば、さっきの男に名刺をもらったな」
  大野 肇(おおの はじめ)
  フリージャーナリスト
  〒xxx-xxxx
  『薬害怪人事件の真相を追っています。連絡をください』
ザナ「薬害怪人事件? どういうことだ?」
ザナ「まさか──」

〇病院の診察室
ザナ「草薙(くさなぎ)先生。本当に、この薬で私の病気は治るんですか?」
草薙「まだ治験段階の新薬ですから、確かなことは言えません」
草薙「副作用もどうなるか・・・」
草薙「しかし、私はこの薬の効果を信じています」

〇殺風景な部屋
ザナ「薬害だとしたら、あの薬しか考えられない!」
ザナ「研究員ども、私を騙していたのか!?」
ザナ「とにかく、こうしちゃいられない」
ザナ「彼に会って、真実を問いただす──」

〇研究所の中枢

〇古いアパート

〇アパートの玄関前
ザナ「あの・・・」
大野肇「『デリバリー』なんざ頼んでねぇよ」
ザナ「待て! お前が連絡を寄こせと言ったんだろ!」
大野肇「あ?」
ザナ「私は怪人だ!」
大野肇「何だと!?」

〇古いアパートの部屋
大野肇「おい、勝手に入って──」
大野肇「うおっ!」
大野肇「あのときの怪人! 女だったのか!?」
ザナ「私が女だからって、手を出そうとは思わない方がいい」
大野肇「さっきの見たら誰も出さねぇよ!」
大野肇「お前、そんなことを言うために訪ねてきたんじゃねぇだろ」
ザナ「そうだった。名刺の裏に書いてあったことについてだ」
ザナ「薬害怪人事件とはどういうことだ?」
ザナ「私たちは、邪悪な魂を持っていたから怪人化したのではないのか?」
大野肇「知らされてないのか。 そんな、精神論じゃねぇよ」
大野肇「創薬会社、ミクロシード」
ザナ「!!」
大野肇「心当たりがあるようだな」
大野肇「そこで新開発された治療薬を投与された患者が、次々と怪人化してるんだ」
ザナ「その情報は確かなのか?」
大野肇「間違いない。 俺が地道に足を使って集めた情報だ」
ザナ「お前はなぜ薬害怪人の真相を追ってる?」
大野肇「そりゃもちろん──」
大野肇「・・・」
大野肇「一攫千金よ! この借金生活から逆転大富豪だ!」
ザナ「・・・あっ、そう」
大野肇「ところであんたはなんでこんなところに出歩いているんだ?」
ザナ「研究施設から逃げてきた」
大野肇「へぇ。研究施設から──」
大野肇「なんだってぇ!?」
大野肇「じゃ、追われてんのかよ!」
ザナ「大丈夫だ。追手は完全にまいてきたからな」
ザナ「今の音は?」
大野肇「どこが大丈夫だ!? しっかりつけられてるじゃねぇか!」
「抵抗するな! このアパートは包囲されている!」
大野肇「クソッ」
大野肇「待ってくれ。俺はただの一般人だ。 手荒な真似はしないでくれよ」
大野肇「は?」
ザナ「伏せろ」
大野肇「おいおいおい」
ザナ「今だ!」
大野肇「おい、ザナ!?」
大野「うわっ──」

〇マンション群
大野「俺をどこへ連れて行く気だ、ザナ!?」

〇荒れた倉庫
大野肇「――ったく、俺がせっかく機転をきかせて切り抜けようとしてたってのに」
ザナ「いや、逃げるのに必死で・・・」
大野肇「はぁぁぁ」
大野肇「どうすんだよ。 これじゃ一攫千金どころか、一文無しだ」
ザナ「借金もゼロになってよかったじゃないか」
大野肇「うるせぇ!」
大野肇「・・・ぶえっくしょん」
大野肇「ああ、寒ぃな」
ザナ「私は寒くないが、体温は人間並みだ。 温めてやろうか」
大野肇「くっつくなよ。嫁に悪い」
ザナ「奥さんがいたのか!?」
大野肇「驚きすぎだろ!」
大野肇「・・・まぁ、死んじまったけどな」
ザナ「なぜ?」
大野肇「何年も前のことだ──」

〇綺麗な病室
大野アリス「お母さん、苦しい・・・!」
大野優花「アリス、しっかり!」
大野優花「草薙先生、娘を助けてください! お願いします!」
草薙「手は尽くしています。 しかし、この症状が何なのか、私にも・・・」
大野アリス「ううっ」
大野優花「アリス!?」

〇病院の廊下
大野アリス「あーっ」
大野優花「離して! アリスは・・・あの子は私の娘なの!」
警察「お母さん、お気をたしかに!」
大野肇「行かせてくれ! 俺たちがあの子を──」
大野アリス「あ?」
「アリスー!!」

〇一戸建て
大野優花「ハジメ、お願いだから行かないで!」
大野優花「あなたにまで何かあったら、私はどうしたらいいの!?」
大野肇「行かせてくれ。俺はアリスがああなった原因を突き止める!」
大野優花「でも、危険なんでしょ!?」
大野肇「ああ。だからお前は家で待って──」

〇荒れた倉庫
大野肇「悪運が強いんだろうな。 俺だけが生き残っちまった」
大野肇「そうやってすべてを失った後も、諦めきれずに製薬会社を調べ続けてるんだ」
ザナ「・・・」
ザナ「・・・捕獲指令」
大野肇「なんだそれは?」
ザナ「私たちの怪人処理任務には2種類ある」
ザナ「殲滅と捕獲だ。意味は説明するまでもない」
ザナ「もし、そのとき下された命令が捕獲だったら──」
大野肇「アリスは生きたまま連れて行かれたってことか!?」
ザナ「捕獲作戦で共闘した怪人たちがウワサしているのを聞いたことがある」
ザナ「戦えない怪人の収容施設がある、と」
ザナ「私がいた研究所にそのような場所はなさそうだったが」
大野肇「製薬会社だ!」
大野肇「ミクロシード社の地下には、用途のわからない空間がある」
大野肇「怪しい場所はそこしかない!」
大野肇「ミクロシード本社を襲撃するんだ! ザナ、お前の力なら──」
ザナ「待て。せっかく逃げ出したのに、また危険な場所に行けと言うのか?」
大野肇「ただでとは言わない。俺が調べた情報だ」
大野肇「ミクロシード社の怪人研究は秘密裏に行われている」
大野肇「だが、情報は漏れてんだよ。 怪人を人間に戻す薬のな!」
ザナ「怪人を、人間に!?」
ザナ「じゃあ私も、元の生活に戻れるのか?」
大野肇「可能性はゼロじゃねぇ」
ザナ「私だけじゃなく、怪人になった他の人も元に戻せるかもしれない──」
ザナ「行こう! 製薬会社に!」
大野肇「おい、よく考えろよ。 俺が善人だと決まったわけじゃねぇだろ」
ザナ「大野、お前はいい奴だ! 私の勘がそう言っている!」
大野肇「それを考えてねぇって言うんだよ・・・!」

〇大きい研究施設

〇研究施設の廊下(曲がり角)
ザナ「クソッ。強いな──」
ザナ「はあっ!」
大野「ザナ、見つけたぞ!」
大野肇「どれだけ調べても用途がわからなかった、地図の空白地帯だ!」

〇地下に続く階段

〇地下の避難所
ザナ「ここが・・・?」
ザナ「閉じ込められた!?」
大野肇「罠か!」
???「・・・ザナ」
ザナ「!?」
黒い怪人「愚かなことを」
ザナ「ッ―― あなたは・・・!」
黒い怪人「まさか、ここでお前と再会するとはな」
ザナ「聞いて! 私たちは薬害によって怪人になってしまったの!」
黒い怪人「知っている」
ザナ「じゃあ、どうして製薬会社の味方を!?」
黒い怪人「――ここにたどり着いたお前らを生かして返すわけにはいかない」
ザナ「くっ──」
ザナ「ガハッ──」
ザナ「回復が間に合わない・・・!」
黒い怪人「ここまでのようだな」
ザナ「知っているならなぜ、製薬会社の陰謀に荷担するの!?」
ザナ「支配に抗えって言ったのは、あなたでしょう!」
黒い怪人「たとえ副作用で数百の犠牲が生まれても、薬が完成すれば数億の命が救われる」
黒い怪人「それが医者である俺の正義だ!」
ザナ「!?」
ザナ「あなたは、まさか──」
草薙「ザナ、お前もあの薬がなければ病死していただけだろう」
草薙「お前のその生が、『薬』の存在を肯定している!」
ザナ「ッ──」
  ・・・そうだ。
  あの薬がなければ、私は19歳で何も知らずに死んでいた。
  私が選び取ろうとしているのは、『薬』のない世界。
  私が病気で死んでいたはずの世界だ。
  彼はきっと、そんな世界が許せなかったのだろう。
  彼ならばいつか、副作用のない『薬』を開発してくれる・・・。
草薙「!?」
大野肇「諦めるな!」
大野肇「たとえ1億人を救うためでも、アリスが助からなければ意味がない!」
大野肇「あんたが犠牲の一言で片付けた命が、俺にはかけがえのないものだったんだ!」
大野肇「医者ならそれくらいわきまえやがれ!」
ザナ「大野、今のは!?」
大野肇「『消毒液』。あんたらはそう呼んでたな」
大野肇「怪人を殺したあとにいつも撒いていくあの薬剤を、少しずつ回収してたんだ!」
草薙「クッ」
大野肇「ザナ! 人を怪人にした薬に未来なんかねぇ!」
大野肇「惑わされるな!」
ザナ「――わかった」
黒い怪人「う・・・ぐ・・・」
大野肇「アリスの主治医だったあんたがどうして──」
草薙「あんたは、あの子の父親か・・・。 アリスちゃんなら、この奥にいる」
大野肇「何!?」
草薙「恨むなら、俺を恨め・・・」
  放っておけば再生する恐れがある。
  とどめを刺さなければ。
草薙「・・・ザナ。俺は間違っていたのだろうか?」
ザナ「わからない。でも、小さな子どもまで犠牲にするなんて、私は許せない」
草薙「あの子――アリスは、最初の変異体だ」
草薙「あの子を助けたい一心で投与した薬のせいで、こんなことになってしまうとは」
草薙「俺は、どこで間違ってしまったのか・・・」
草薙「怪人を人間に戻す薬だ。 これを探しに来たんだろう?」
草薙「本当はこれだけを生み出したかった・・・」
ザナ「死なないで! あなたならすべての怪人を人間に戻すこともできるはず!」
草薙「・・・ミクロシード社は、さらに怪人を増やすつもりだ」
ザナ「何だって!?」
草薙「奴らは怪人に新たな利用価値を見いだした」
草薙「ザナ」
草薙「怪人の未来はお前に託す」

〇地下の避難所
  怪人が死ぬと、細胞は新たな宿主(しゅくしゅ)を求めて散り散りになっていく。
  まるで殺人アメーバ――ネグレリアのように。
ザナ「あなたはずるい」
ザナ「そんなふうに言われたら、私が逃げられなくなるじゃないか」

〇実験ルーム
大野肇「アリス・・・」
大野アリス「おとーさーん」
ザナ「大野。怪人を人間に戻す薬を手に入れた」
ザナ「効果のほどはわからないが、使ってみるか?」
大野肇「1本だけか? お前の分は!?」
ザナ「ない」
大野肇「なんでだよ!? お前は人間に戻りたくて、危険な賭けに乗ったんだろ!?」
ザナ「私は人間には戻らない」
大野肇「はぁ!?」
ザナ「私には戦う理由ができた。 薬を使うかどうかは、お前が決めろ」
大野肇「クソッ──」
大野アリス「おとう、さん・・・?」
大野肇「アリスッ!」
「!?」
ザナ「先に行け!」
大野肇「――すまない!」

〇大きい研究施設

〇SHIBUYA SKY
  薬害によって怪人が生み出された世界で
  この悲劇を終わらせるために──
ザナ「私は、戦う」

〇黒

コメント

  • 闇の深そうなストーリーですね。もちろん戦闘シーンもカッコいいんですが、ラストの3人のそれぞれの考えや主張も読み応えがありました。強大な敵に挑むザナの戦いは始まったばかり。続きを読んでみたいです。

  • 練られた設定に終始展開の予想がつかず、最後まで目が離せませんでした!
    バトルシーンも迫力ありましたが、都会のビルを翔ける所は、想像力を刺激され、カッコよかったです。
    クールで強い女性主人公って良いですよね。私も好きです^^

  • めっちゃ面白かったです❗ダーク&クールな雰囲気、まさにとーがさんの作風って気がしました。アニメみたい✨
    切ないなぁ……どっちの考えも間違ってないんですよね😢ザナが切り拓くだろう未来を見ていきたいです。

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