バズらせろ!(脚本)
〇立ち飲み屋
客1「お、あれ見ろよ」
客2「んあ?」
続いてのニュースです。
近頃、街中に現れる、通称「無害の怪人」ですが
その名の通り、いまだこの怪人による被害は発生しておらず、目的も正体も依然判明しないままであり・・・
客1「怖えー「無害の怪人」。 絶対会いたくねえ〜」
客2「でも無害なんだろ?」
客1「いや何もしてこないなんて逆に怖くない?」
ガラガラ
客1「・・・」
客2「・・・」
客1「で」
客2「でたあああ!」
「無害の怪人だあああ!!!」
無害の怪人「・・・」
客2(だ、大丈夫。無害なら・・・)
無害の怪人「・・・ウ」
客2(・・・なんだ? なんか困って・・・)
無害の怪人「ウオオオォォォ!!!」
客2「ひぃぃぃ!!! やっぱ怖えぇぇ!!!」
無害の怪人「はあ・・・」
無害の怪人「もしもし?パパ?」
パパ「どうだ怖がられてるか?」
無害の怪人「それが・・・怖いのは見た目だけって世間にバレ始めてるみたい・・・」
〇魔法陣のある研究室
パパ「・・・やはり見た目の怖さのみで人類を支配するのは無理だったか」
無害の怪人「そんなこと・・・! 僕、もっと頑張って皆を怖がらせるから!」
パパ「もういい・・・」
パパ「特殊能力や超能力を持たせて生み出してやれなかった私が悪かった・・・」
無害の怪人「パパ・・・?」
パパ「世界征服は諦める」
無害の怪人「え・・・諦めてどうするの」
パパ「パパな・・・死のうと思う」
無害の怪人「え」
〇立ち飲み屋
パパ「こんな・・・容姿の良し悪しで全てが決まるような世の中は間違っている」
パパ「が、そんな世の中を正せないのなら・・・死んだ方がマシだ」
無害の怪人「・・・パパ」
無害の怪人「なら、僕も一緒に死ぬ」
パパ「え?」
無害の怪人「こんな醜い容姿で生きてたって辛いだけだし・・・」
無害の怪人「パパがいない世界で生きてたってなんの意味もない」
パパ「・・・パパを恨んでるか?」
無害の怪人「ううん・・・僕はパパが大好きだよ」
ピロン
無害の怪人「あ、DMだ」
パパ「DM?」
無害の怪人「最近、TwitterとInstagramとTikTok始めたの」
パパ「なぜ?」
無害の怪人「いや、この見た目で「人類を支配する」っていう投稿があったら怖いじゃん?」
パパ「まあ、うん」
無害の怪人「で、拡散されたら世の中パニックになるんじゃないかなって」
パパ「SNSで世界征服企んでたって事?」
無害の怪人「でももう死ぬから必要ないね。 アカウントは削除・・・え」
パパ「どうした」
私とコラボしませんか?
無害の怪人「・・・DMの人、なんか僕とコラボしたいって」
パパ「は?誰なんだそいつ」
無害の怪人「えーとね・・・ え!?この人、フォロワー100万人もいる!」
パパ「凄いのか?」
無害の怪人「凄いってもんじゃないよ! トップインフルエンサーだよ!」
無害の怪人「・・・あ。閃いた」
無害の怪人「この人に僕の事を「怖い」と発信させる!」
パパ「なぜ」
無害の怪人「トップインフルエンサーだよ!? この人の発言はたちまち多くの人に拡散される!」
無害の怪人「つまりこの人の発言次第で、僕は人類を恐怖に陥れ、世界征服をする事が出来る!」
パパ「ちょっとよく分かんない。 早く一緒に死のう」
無害の怪人「うわ! この人めっちゃ美人なんだけど!」
パパ「え、ウソ。美人なの?」
パパ「誰似?芸能人だと誰似?」
〇メイド喫茶
という訳で、異様に芸能人に例えて欲しがるパパを振り切り、世界征服へ一縷の望みをかけ集合場所へやって来た僕。
無害の怪人(なぜメイド喫茶・・・?)
メイドさん「う・・・うっ・・・」
無害の怪人(怖くて泣いちゃってる・・・っ)
無害の怪人(・・・あ)
京香「いた!無害さん!やっほー!」
無害の怪人「む、無害さん!?」
京香「ごめんなさい!私から誘ったのに待たせちゃって!」
無害の怪人(や、やっぱりとんでもなく・・・)
京香「初めまして。 インフルエンサーやってます京香です♪」
無害の怪人(可愛いー!!!)
無害の怪人(はっ! だめだめ! 怖いって思ってもらわないと・・・!)
無害の怪人「ガガ・・・ガルルルル!!!」
京香「・・・え?」
無害の怪人「ゴゴゴッ! ブロロロロリリリーッ!!!」
無害の怪人(よしっ! 怖がったか!?)
無害の怪人(早く僕が怖いってSNSで拡散するんだ!)
京香「・・・ぷっ」
無害の怪人「・・・え?」
京香「ぷはははは!!! 超プリティー!」
無害の怪人「・・・ぷ、プリティ!?」
京香「やっぱりインフルエンサーのポテンシャル半端ないねキミ!」
無害の怪人「インフルエンサー!?僕が!?」
京香「私と一緒にインフルエンサーの頂点目指しませんか♪」
無害の怪人「え!? いや、あの僕は人類を支配したいだけでっ・・・」
京香「人類を・・・支配?」
無害の怪人(あっ。 やばい正直に話しすぎた・・・)
京香「なにそれ可愛いー! すごい怪人っぽいー!」
無害の怪人(全然怖がってくれない!)
京香「よーっし! 2人で「世界征服」しちゃいましょー!」
京香「目指せフォロワー1億人♪です♪」
無害の怪人(て、天真爛漫・・・!)
〇魔法陣のある研究室
パパ「うう・・・花・・・」
パパ「お前が私にした仕打ちは一生忘れない・・・」
パパ「死んで呪ってやるんだ・・・」
パパ「怪人・・・ 諦めて早く帰ってこい。 さっさと死のう・・・」
〇メイド喫茶
京香「ねーねー、プリちゃんって呼んでもいい?」
無害の怪人「ぷ、プリちゃん?」
京香「プリティのプリでプリちゃん!」
無害の怪人(まずい・・・怖がられるどころか愛され始めている・・・ なんとかしなければ・・・)
無害の怪人「ギャロギャロジョロロロー!!!」
京香「はい!チーズ!」
無害の怪人「何故にいきなりツーショット写真!?」
京香「何故ってSNSに上げるんだよ? 「怪人、メイド喫茶に現る!」 絶対バズるよ!」
無害の怪人(そんな投稿じゃ僕の怖さが伝わらない・・・!)
無害の怪人(何かいい方法は・・・)
メイドさん「(がくがくがく・・・)」
無害の怪人(これだっ!)
無害の怪人「メイドさん!」
メイドさん「ひっ!?」
無害の怪人「一緒に写真撮りましょう!」
メイドさん「(ふるっふるっ)」
京香(怪人とメイド・・・確かにバズる! プリちゃんはやっぱり才能の塊・・・っ)
無害の怪人(これだけ怖がっていれば僕の怖さが引き立つ!)
無害の怪人「京香さん! 写真をっ!」
京香「任せて!」
京香「「怪人、メイド喫茶を征服!?」っと。 投稿しましたー!」
無害の怪人(全人類・・・怖がれ!)
ピロン
ピロンピロンピロン
ピロンピロンピロンピロンピロンピロン
京香「リプが止まらなーい!」
無害の怪人「反応はどう!?」
京香「読み上げます!」
「無害の怪人がメイド喫茶・・・シュール(笑)」
京香さんとコラボって事はやっぱり無害じゃん
「なんか怪人キモかわいいかも」
無害の怪人「あれ?」
「最凶インフルエンサーコンビ爆誕!」
無害の怪人「なんか凄い受け入れられてる!?」
京香「プリちゃん・・・自分のアカウント見てみて」
無害の怪人「え・・・うん」
無害の怪人「な、なにこれー!!!」
無害の怪人「0人だったフォロワーが1万人になってる!?」
京香「こりゃもう・・・ホントに「世界征服」出来ちゃうよお・・・」
無害の怪人「京香、さん?」
京香「はあ・・・はあ・・・はあ!」
無害の怪人(・・・怖がるどころか興奮しちゃってる!)
〇魔法陣のある研究室
パパ「全然帰ってこない・・・」
パパ「確か京香だったな・・・」
「京香 インフルエンサー」
パパ「検索っと。 な・・・!?」
パパ「花にそっくりだと・・・!?」
パパ「って待て! なんだこの大量の「いいね!」は!」
パパ「しかも「無害の怪人」がトレンド1位!?」
パパ「支配するつもりあるのかあいつ!?」
パパ「なんで出ないんだ・・・っ!」
〇メリーゴーランド
京香「お馬さんに乗ってるプリちゃん可愛すぎー!」
京香「ニッコリ笑顔で、はいチーズ!」
無害の怪人(まずいぞこれ・・・)
無害の怪人(めっちゃ楽しいー!!!)
無害の怪人(いや、いやいや楽しんでどうする!)
無害の怪人(人類を怖がらせるんだろ・・・!)
無害の怪人(このままじゃパパが自死を選んでしまう・・・っ)
かな「わー!プリちゃんだー! たけし見てー!」
無害の怪人「ん?」
たけし「うわ本物じゃんっ!」
かな「私たちプリちゃんのファンです! インスタ見てます!」
無害の怪人「ファン・・・?」
たけし「見た目がキモ可愛くて大好きです! 特撮心くすぐられるっていうか!」
かな「応援してます! 京香さんと人類支配しちゃってください!」
無害の怪人(怖がらせなきゃ・・・怖がらせ・・・くっ)
無害の怪人「・・・あ、ありがとう」
「可愛いー!!!」
無害の怪人「・・・」
京香「嬉しいんでしょ」
無害の怪人「・・・うん」
無害の怪人「こんなに皆が笑顔で僕と喋ってくれるなんて初めてで・・・」
無害の怪人「・・・怖がられてばっかりだったから」
京香「・・・プリちゃん」
パパ「なにやってるんだー!」
無害の怪人「パパ!?」
京香「パ、パパ!?」
無害の怪人「ど、どうしてここが」
パパ「そんなの投稿した写真を見れば分かる! いいから帰るぞ!」
無害の怪人「でも、メリーゴーランドがまだ動いて」
パパ「別に降りれるだろ!なに楽しんでんだ!」
パパ「怪人・・・お前まで私を裏切るのか!? あの女のように!」
無害の怪人「パパ・・・」
京香「ちょっと! プリちゃん困ってるじゃないですか!」
パパ「黙れ!あんたは関係ない!」
京香「関係なくないです! プリちゃんは一緒にインフルエンサーとして活動する仲間です!」
無害の怪人「京香さん・・・」
パパ「うるさい! 私はあんたみたいな女が大嫌いなんだ!」
京香「はあっ!? 私の何を知って・・・」
パパ「自分の容姿が優れてるからって、容姿が悪い奴を見下し馬鹿にする!」
パパ「あの女・・・花もそういう奴だった!」
京香「・・・花?」
パパ「私を地獄に突き落とした女の名だ!」
京香「もしかしてあなた・・・お母さんのストーカー?」
「・・・え?」
京香「高校時代、お母さんに告白したけど振られちゃって、諦めずにラブレター送り続けたけど、返事が来ないからって」
京香「お母さんの家のベランダから不法侵入した、あのヒロシ君?」
パパ「・・・」
無害の怪人「・・・パパ、いつも「花に裏切られた」って言ってたけど」
無害の怪人「ただの逆恨みだったの?」
パパ「・・・う」
パパ「うるさあああい!!!」
パパ「花はな、私を振ったあと、あろう事か学年一のイケメンと付き合いやがったんだ!」
パパ「花は・・・花だけは私の内面を見てくれてると思ったのに・・・」
パパ「結局世の中、顔なんだよ!」
パパ「だから私は、醜い容姿の化け物を生み出し、支配することで世の中を正そうとした!」
パパ「だがこんな失敗作を生み出したせいで全てが水の泡だっ!クソが!」
京香「あなたねっ・・・」
パパ「怪人、お前は分かってくれるよな? 一緒に死んでくれるよな?」
無害の怪人「ごめん。僕は死なない」
パパ「・・・な」
無害の怪人「容姿なんて関係なかった」
無害の怪人「だって、僕には1万フォロワーいるし、ファンって言ってくれる人もいる」
パパ「そ、そんなの、面白半分で嘲笑してるだけ・・・っ」
京香「あなたみたいな人にはそう見えるんでしょうね」
パパ「な・・・っ 親が親なら子も子・・・」
京香「お母さんに代わって私がハッキリ言います。 あなたは」
無害の怪人「京香さん。 いい。僕が言う」
無害の怪人「パパが花さんに振られた原因は容姿じゃない」
無害の怪人「中身だよ!」
パパ「・・・」
パパ「死んでやる・・・」
パパ「孤独に死んでやるう! でもってお前らを地獄から呪うぅ!」
無害の怪人「ねえパパ! 一緒にインフルエンサーやろう!?」
パパ「え」
京香「ちょっとプリちゃん!?」
無害の怪人「僕のこんな見た目でも世の中は認めてくれた! きっとパパだって!」
パパ「無理だ! お前は見た目が振り切ってるが、私は常識の範疇で醜いだけ!」
無害の怪人「・・・怪人、美人、そして怪人を生み出した研究者」
京香「え?」
無害の怪人「京香さん。この3人組ならトップインフルエンサーになれますよね?」
京香「・・・残念だけど」
京香「なれます」
パパ「ほら!なれな・・・」
パパ「え、なれるの?」
京香「バズります」
パパ「私、世間に認められるの? モテモテになれちゃうの?」
京香「いやモテモテは無理・・・」
パパ「よっしゃあー! モテモテになる! インフルエンサーになってハーレム王国をつくっちゃう!」
無害の怪人「うん。パパのそういうところ好きだよ」
京香(まあ、確かに三人の方が幅は広がる・・・ インフルエンサーとして頂点を目指すならジジイもいた方が・・・)
パパ(花の娘・・・若い時の花そっくり・・・ 一緒に活動すればいつか抱けるチャンスも・・・)
無害の怪人(全人類からファンですって言われたい・・・! これが僕の「世界征服」だっ!)
無害の怪人「目指せ!フォロワー全人類!」
こうして・・・3人のインフルエンサー活動が始まったのだった・・・!
怪人が無害だったら存在意義やアイデンティティが崩壊するかと思いきや、それを逆手にとってバズらせるとは、恐るべしインフルエンサー。パパの背景にも起承転結がきっちり組み込んであって、さすがです。
正直、優勝候補だと思います(笑)
ヾ(≧∀≦*)ノ〃
面白すぎる…キャラクター性の塊で、もう推しグッズ作って欲しい😂
セリフ回しも秀逸で何回も読みたいです!
なぜだろう…福田雄一監督で映画化してる絵が想像できる(笑)
パパ役がムロツヨシさんとかでwwww
面白すぎる…面白すぎますわ…
ちょっとマジでライター全員に読んでもらいたいくらい大好きでした!!
(*≧∀≦)
発想が面白く、最後まで楽しくタップしてました!京香ちゃん、そっち側なんだ...このトリオでどう世間を賑わしていくのか、楽しみです!