第八話「敵前逃・・・亡!?」(脚本)
〇教会の中
ガーベラ「・・・」
キキョウ「ガーベラ様! どうして言ってくれなかったのですか?」
ガーベラ「キキョウ、今は礼拝中です」
キキョウ「今は、そんな事より・・・」
ガーベラ「そんな事・・・?」
キキョウ「し、失礼しました」
キキョウ「ですが・・・」
ガーベラ「あなたの考えている事は大体予想が付きます」
ガーベラ「しかし、その予想通りだとして、わざわざ私が あなたにそれを言う必要がありますか?」
キキョウ「あたしは!」
キキョウ「・・・」
キキョウ「私はガーベラ様の付き人です」
キキョウ「だから・・・ガーベラ様の事は 一番に知る権利がある・・・筈です」
ガーベラ「キキョウ、分からないなら改めて言います」
ガーベラ「あなたはただの付き人で それ以上でもそれ以下でもありません」
ガーベラ「そんなあなたに、私がどうするのか 一々伝える必要はありますか?」
キキョウ「・・・」
ガーベラ「キキョウ」
ガーベラ「・・・」
キキョウ、あの時は本当にごめんなさい
先に相談していたら、あなたはきっと
神官長様に直接抗議しに行ったと思う
そんな事をしたらあなたの立場が悪くなる
これからも教会で過ごす事になるあなたに
私が出来るのは・・・
その時が訪れた際に、ほんの少しでも
あなたの心が傷付かないようにする事だった
結局、私が思い付いたその方法も
あなたに出来る限り嫌われるという
今になって思えば
本当に馬鹿な行動だったと思います
私に初めて出来た付き人
私を無条件に慕ってくれるあなたは
私にとっては付き人以上の存在に
なっていました
まるで家族のような・・・
そんなあなたを悲しませた事
そしてこれから悲しませる事
本当に申し訳ありません
願わくば、あなたの未来に
太陽神様のご加護があらんことを
ガーベラ「はい」
神官「ガーベラ様、礼拝中に失礼します」
神官「神官長様がお呼びです」
ガーベラ「はい」
〇英国風の部屋
前回のあらすじ・・・
出血多量で倒れた幽霊様を助けたのは
謎の人物だった
一方その頃、神官様は男に
犬様の幸せを考えろと説得されていた
何が正しいのか悩む神官様の裏で
助かった筈の幽霊様が宿屋に逃げ帰・・・る?
ミカノチ「ホントにそれで後悔しないネ?」
???(アキラ)「はい」
???(アキラ)「これが最善の方法だと思います」
ミカノチ「幽霊がそこ迄言うなら我はもう何も言わないネ」
ミカノチ「スキにするといいヨ」
???(アキラ)「ごめんなさい」
???(アキラ)「お願いしますね」
〇牢獄
ガーベラ「幸せ・・・」
ガーベラ(犬様にとって、きっとその方が いいだろうと勝手に決め付けて)
ガーベラ(考えたこともありませんでした)
ガーベラ(あの時の母様も こんな気持ちだったのでしょうか?)
ガーベラ(いや、少なくとも)
ガーベラ「あの時の私はあれが正しいと思っていました」
ガーベラ「今の犬様と比較して考える事は違う気がします」
いぬ「・・・くぅーん」
ガーベラ「犬様?」
いぬ「わんっ!」
ガーベラ「そうでした!何より大事なことを忘れて・・・」
ガーベラ「リカバリー」
ガーベラ「怪我はどうですか?」
いぬ「わんっ!わんっ!」
ガーベラ「元気になったようで良かったです」
ガーベラ「犬様?」
いぬ「わん」
ガーベラ「あなたはどうしたいですか?」
ガーベラ「このまま貴族の所に行くか 私達と一緒に行くか、もしくは野生に戻るか」
ガーベラ「私達と来たとしても 私はずっと一緒にはいれませんが」
ガーベラ「一緒にいてくれる優しい方をきっと見付けると 約束します」
ガーベラ「どうでしょうか?」
いぬ「わん」
ガーベラ「・・・なんて」
ガーベラ「言われても分かりませんよね」
ガーベラ「あなたと喋れたらなぁ・・・」
ガーベラ「そうすればこんなに悩む事も・・・」
ガーベラ(犬様にとっての幸せって何なんでしょうか?)
ガーベラ「私が選ぶべきは・・・」
ガーベラ「・・・」
ガーベラ「違います!」
ガーベラ「いつの間にか私は・・・」
ガーベラ「何を勘違いしていたんでしょう!」
ガーベラ「大事なのは私がどう思うかじゃない」
ガーベラ「本当に大事なのは・・・」
〇牢獄
ガーベラ(何か外が明るいような?)
ガーベラ「捕まってからどれくらい経ったのでしょう?」
いぬ「くぅーん・・・」
ガーベラ(幽霊様・・・)
ガーベラ(やっぱりミカノチ様の地図だけでこの場所に 辿り着くのは難しかったのでしょうか?)
ガーベラ「幽霊様もきっと私達を探してる筈です」
ガーベラ「あの方達が来る前に幽霊様と合流出来れば ここから逃げる事も・・・」
男「決意は固まったか?神官さんよぉ?」
ガーベラ(間に合わなかった?)
ガーベラ(それなら、強引かも知れませんが この方達を何とか倒して外・・・)
ガーベラ「・・・に!?」
男「に?」
ガーベラ「・・・」
男「何だダンマリか?」
男「あんただってもう分かってんだろ?」
男「貴族に飼われる方が生きていく上で」
男「上玉ちゃんにとっての一番の幸せ・・・」
ガーベラ「あなた達は間違っています」
男「あ?」
ガーベラ「私には犬様が何を望んでるかは分かりません」
ガーベラ「野生に戻りたいのかも 私達に付いて来たいのかも」
ガーベラ「それとも貴族の所に行きたいのかも」
男「じゃあ、もう決まってるじゃねぇか」
男「上玉ちゃんにとって幸せなのは・・・」
ガーベラ「それが違うと言うのです!」
男「は?」
ガーベラ「どう生きたいのかも、何が幸せなのかも・・・」
ガーベラ「それを決めるのは私でも」
ガーベラ「あなたでもありません」
ガーベラ「犬様自身です!」
ガーベラ「それなのに生き方も、幸せも どちらも勝手に決め付けて」
ガーベラ「それを押し付けるあなたが 犬様の事を考えてるとは到底思えません」
男「そんな難しい事 上玉ちゃんが考えられる訳ねぇだろ」
男「だから代わりに俺が・・・」
ガーベラ「あなたは何も分かってません」
ガーベラ「自分でどう生きるか決めなかったとしても」
ガーベラ「何かがあった時に後悔するのは 自分自身なんです」
ガーベラ「自分で選んでいれば 何かが変わっていたかもしれない」
ガーベラ「そんな風に思った時には もう全てが遅いのです・・・」
ガーベラ「だから私はここを一度逃げ出した 犬様の意思を尊重します」
ガーベラ「あなた達に協力する事も 犬様を置いていく事も」
ガーベラ「私はどちらも選びません!」
男「はぁ・・・」
男「穏便に済ませたかったんだけどなぁ・・・」
男「あんたがそんな態度なら仕方ねぇ」
男「あんたは殺して、その上玉は貴族に売る」
男「これはもう決定事項だ」
ガーベラ「・・・少し静かにして頂けますか?」
男「あ?」
ガーベラ「これが私の気持ちです!」
ガーベラ「伝わりましたか?」
ガーベラ「幽霊様」
男「ゆう・・・れい? 何の話をしてやがる?」
男「まぁいい」
男「おいっ!こいつを捕まえるぞ!」
男「協力し・・・あれ?」
男「おいお前!どうした?」
男「気絶してる?」
男「てめぇ、何しやがった? 魔法か?」
ガーベラ「違います」
???「ガーベラさんの気持ち伝わりましたよ・・・」
アキラ「ハッキリと」
〇荒廃した市街地
アキラ「ガーベラさん遅くなってしまってごめんなさい」
ガーベラ「急に地下が明るくなった時に 幽霊様がいると気付くべきでした」
ガーベラ「私は助けに来て頂けただけで嬉しいですよ」
ガーベラ「本当にありがとうございます」
ガーベラ「ですが、幽霊様よくあの場所に 私達がいると気付きましたね」
アキラ「あぁ、それは・・・」
アキラ「誰かが、ここら一帯が詳しく書かれた地図と」
アキラ「あの場所にガーベラさん達が捕まってると メモを残してくれたので、直ぐに分かりました」
ガーベラ「誰か・・・?」
ガーベラ「・・・」
アキラ「ガーベラさん?」
ガーベラ「いえ、何でもないです ところで・・・」
ガーベラ「どうして幽霊様はまたソウルだけの状態に?」
アキラ「さっき偶然ボディから出る方法を知ったんです」
アキラ「事情は後で詳しく説明しますけど」
アキラ「まだ予想の段階ですが、あの体は 命を狙われている可能性があるみたいで・・・」
ガーベラ「命を!?」
アキラ「はい」
アキラ「なので、一度宿屋に体を置きに行ってきました」
アキラ「ミカノチさんには体があった方が便利だと 何度も止められたんですけど」
アキラ「どうなっているか確信もない状態で あの姿のまま移動する訳にはいかなくて」
アキラ「というか、ガーベラさん」
ガーベラ「はい?」
アキラ「さっきの奴ら牢屋に放置して来て 本当に良かったんですか?」
アキラ「話聞いてた感じガーベラさんを 殺そうとしてましたけど・・・」
ガーベラ「いいんです」
ガーベラ「そもそもあの方達を先に攻撃したのは 私でしたし・・・」
ガーベラ「あの方達が言っていた事は 間違いだとは思いましたが」
ガーベラ「それでも、一理あると感じた部分も 少しはありましたので」
ガーベラ「ですが・・・」
ガーベラ「あの方達が許可も得ずにああいった事を していたのは問題だと思いますので・・・」
ガーベラ「あの場所と、やっていた事に関しては これから信仰騎士に報告しに行こうかと」
アキラ「あっ」
アキラ「信仰騎士の所に行くなら 一緒に連れて行きたい奴が!」
貴族「おぉ~!ここじゃ、ここじゃ!」
貴族「ずっと馬車に乗りっぱなしで腰が痛くなったわ」
???「ボン様」
???「我々はそろそろ・・・」
貴族「おぉ、そうか、そうか!」
???「急なお願いにも関わらず 本当にありがとうございました」
貴族「構わん、構わん!それに・・・」
貴族「ただの相乗りにしては十分過ぎる程 報酬も貰ったからな」
???「では帰りの件も、よろしくお願いします」
貴族「帰り?」
???「帰りには我々と一緒に”荷物”も 運んで貰うという話です」
貴族「あぁその話か」
貴族「好きにしろ!それに・・・」
貴族「貴様らが運んで帰る”荷物”が 何なのか詮索する気もない」
???「助かります」
???「ですが、念のため・・・」
???「我々とあなたは一切、何の関係もない」
???「いいですね?」
貴族「・・・」
???「返事は?」
貴族「わ、分かっておる」
貴族(こ奴ら貴族相手に何て顔をするんじゃ・・・)
???「例えあなたがこちらの騎士に捕まるような事が あっても今の話を忘れないで下さい」
???「もし忘れるような事があれば・・・」
貴族「わ、分かった!分かった!」
貴族「ワシは今日買う予定の魔物達を見てくるから お前らもさっさと何処かへ行け!」
???「では・・・ これから任務を開始する」
???「まずは盗賊達の処分からだ・・・」
〇英国風の部屋
アキラ「ただいまです」
ガーベラ「ただいま戻りました」
ミカノチ「幽霊も神官もお帰りネ」
ミカノチ「犬もお帰りネ」
いぬ「わんっ!」
ガーベラ「結局あの方は誰だったのでしょう?」
アキラ「身元が分かるものを 何も持ってないなんて・・・」
ミカノチ「あの体をいきなり襲って来たって奴の話ネ?」
アキラ「はい」
アキラ「ガーベラさんが信仰騎士の所に行くと言うので 一緒にそいつも連れて行く事にしたんですが」
アキラ「その前に何か分かるかと荷物を確認したんです」
アキラ「そしたらそいつ 武器以外何にも持っていなくて・・・」
アキラ「あれが、この世界だと普通なんですか?」
ガーベラ「そんな事はありません!」
ガーベラ「私が着ているこの服も 神官と元神官しか持っていない特別な物ですし」
ガーベラ「あんな風に自分を証明出来る何かを 全く持ち歩いていない人は私も初めて見ました」
アキラ(それってあいつが かなりヤバイ奴って事なんじゃ?)
アキラ「まぁ、何の手掛かりもない事を ずっと考えても仕方ないですし」
アキラ「今はガーベラさんと、犬さんを 無事に助け出せた事を皆で喜びましょうか」
ミカノチ「ソウするのが正解ネ」
ガーベラ「本当に皆様ありがとうございました」
いぬ「みんなありがとー!」
ガーベラ「ありがとうなんてそんな・・・」
ミカノチ「デキル事をしただけネ」
アキラ「俺だってそうで・・・」
「・・・・・・」
「犬様って 犬は 犬さん」
「喋れるんですか!? シャベれるネ!? 喋れるの!?」
いぬ「え?」
アキラ「何で君も驚いてるの!?」
続く・・・