怪人ザンザロス(脚本)
〇住宅街の公園
夏子(あれ、怪人だよね。 着ぐるみなのかな? それにしては手が込んでいるなぁ)
それは退屈な7月24日の午後だった。
公園のベンチに腰かけていたところ、
怪人らしき謎の人物が座り、話しかけてしまった。
夏子「もしもし、怪人さんですか? 名前はなんて言うんですか?」
怪人ザンザロス「ザンザロスと申す。 君、ステキな髪型してるね。 彼氏はいるの?」
夏子「いきなりナンパかよ。 マジうける。 それ着ぐるみですよね?」
怪人ザンザロス「いや、着ぐるみじゃない。 生身だ。 お主の名前はなんて言うのだ?」
夏子「わたし、夏子。 夏は普通の夏だよ。 ザンザっちさ、特技はあるの?」
怪人ザンザロス「拙者の必殺技はアイスブラストだ。 氷属性なものでな」
夏子「なおくんからLINEだ。 返信返さないと」
怪人ザンザロス「なおくんというのは男か? それならそいつの胴体を腕で貫いて 葬るしかない」
夏子「ただの幼なじみだよ。 そんなことしたらザンザロスのこと 嫌いになっちゃうよ?」
怪人ザンザロス「すまぬ、許してくれ! 夏子。 夏子のことが好きすぎるあまり 暴走してしまった」
夏子「わかればよろしい」
怪人ザンザロス「さあ、ビールタイムだ。 女の子と会話するのに酒なしでは いられなくてな(アル中)」
夏子「わたし、まだ17だから ビール飲めないんだよね。 美味しい?」
怪人ザンザロス「飲ましてあげたいけど未成年飲酒はアウトだしな。夏子ちゃんの足スベスベしてそうだね」
夏子「バ、バカ。 酔ってるからっていって いきなり足なんか褒めるなっつーの」
怪人ザンザロス「夏子ちゃんの足撫でたい。 ひざ枕されたい」
夏子「性欲まるだしすぎて引くわー。 わたし帰っていい?」
怪人ザンザロス「すまぬ。誠にすまぬ。 今までも女怪人からフラれてきたのだよな、 失言で」
ルイザ「私ルイザ。 そこにいるクソ怪人を殺しに やってきたマン。 ついでに夏子? あなたも生かしておくワケにはいかない わね」
怪人ザンザロス「ここでは遊んでいる子どもたちに危害が及んでしまう。 俺についてこい。 ルイザといったな。 葬られるのは貴様の方だ」
〇荒廃した教室
自分の命を狙う謎の女怪人ルイザを返り討ちにするために廃校の教室までおびき寄せたザンザロス。
ルイザ「こんなとこに連れてきて私とイケナイことでもしたいのかしら?」
怪人ザンザロス「胸でも揉ましてくれるのか?」
「サイテー」
怪人ザンザロス「冗談だよ、冗談。 そんなに反応を返してくるとは。 ルイザこそイケナイことなんて 言ったじゃないか」
ルイザ「冗談に決まってるじゃない。 真に受けんなカス!」
怪人ザンザロス「女の子だからパンチとかはお見舞いしないぞ? 氷魔法で死なない程度に足止めしてやる」
ルイザ「私の体にひとつでも傷つけられれば大したものよ」
怪人ザンザロス「氷の精霊よ、我に力を貸したまえ。 アイスブラスト!」
ルイザ「日本酒ガード発動。 キンキンに冷えた日本酒が 飲めるってものよ」
怪人ザンザロス「なにィ!? そんなガードの仕方アリかよ。 アイスセイバー!」
氷の剣で切りかかるザンザロス。
わたしは死闘をただ見ているしかなくて。
気が付けば夜になってました。
〇住宅街
夜の住宅地で死闘は続けられていた。
ザンザロスの使う魔法に腰を抜かす人が続出していた。
???「うわーなんだコイツら。 人間じゃねえ!」
???「110番だ、110番」
ルイザ「うるさい人間どもですわね、 ローリングストーン」
ルイザの石化魔法により、通行人が石化してしまった。
恐ろしい子......!
ルイザ「アハアハアハハ! 人間どもを石にするの 楽しすぎてワロス」
怪人ザンザロス「そんなことしちゃダメだろ!」
ルイザ「何でダメなの? 私と種族違うんだし 関係ないでしょ?」
ルイザ「じゃあ夏子ちゃんにも犠牲になって もらうね。 ウィンドカッター!!」
夏子「きゃああああ!」
ルイザ「ふふふふふふっ。 服が所々ちぎれて、傷だらけだね。 夏子くんさぁ、私に従順を誓うなら 生かしてあげてもいいよ?」
夏子「イヤです。 何でアンタなんかに」
ルイザ「はい、これでザンザロスくんの 好きだった夏子ちゃんは 死んじゃいました〜w」
夏子「わ、わたしなら生きてるけど」
ルイザ「おかしいな、バカな!」
怪人ザンザロス「ぐっ、ごほっ! うぐうううう!! ごぽぉ!(血を吐く音)」
夏子「そんなにわたしのこと必死に守らなくてよかったのに・・・・・・」
怪人ザンザロス「ダメだ 目がかすんできた 夏子ちゃんに伝えたいことが あったのに」
ルイザ「あ〜あ、オモチャが壊れちゃったよ。 ザンザロスの生け捕りを上から約束されていたのに。 やりすぎちゃったな〜」
ルイザ「じゃあ私は消えることにしよう。 夏子とやら、命拾いしたな」
〇マンションの共用廊下
ザンザロスをマンションの玄関の収納スペースにしまった。
彼が息を吹き返すのを祈りながら。
夏子(ザンザロス、生き返ってくれないかな?)
夏子(わたしを守って死んでしまったのに怪人だからお葬式をひらくこともできないのが悔しい)
夏子「わたしを守ってくれて本当にありがとうね」
そう言って怪人ザンザロスのほっぺにキスをした。どこが唇かわからないから直接キスはできなかったけれど。
夜21時。
ボロボロの服だったわたしに
心配した両親が声をかけてくる。
階段から転げ落ちたとだけ
ウソを言っておいた。
〇学校脇の道
夏子(ザンザロス、結局動かないまま 1週間過ぎてしまったな・・・・・・)
夏子(いつの間にかわたし、 ザンザロス好きになってたかも。 でもネットで検索かけても 出てこないんだよな)
怪人ザンザロス「やあ、お待たせしてすまない。 体のリペアがようやく済んだので 姿を現した」
夏子「ま、待って、グスッ、たんだからね。 もうどこにも行かないで」
怪人ザンザロス「これからはずっと一緒にいる。 約束しよう」
それからわたしとザンザロスは水族館デートしたり遊園地デートする仲になったのだけれど、その話はまた別の機会に・・・・・・
今までザンザロスと夏子のデートしか読んでいなかったので馴れ初めが新鮮でした。外見への偏見がない夏子のさっぱりしたキャラクター、掴みどころがない感じも魅力的ですね。
夏子ちゃんが親についた嘘が、よくテレビドラマとかである「それはないだろ?!」ていうわかりやすいあるあるなのも、最後の「なおるんかいっ」ってつっこみをいれたくなるような結末も最高でした。ザンザロスシリーズ、夏子ちゃんも含めて大好きです。ふたりが愛おしくて仕方ないわ。
怪人君は夏子ちゃんに一目ぼれ、彼女は自分をかばって傷ついてしまった彼を想い恋心に気づく・・なんだか、普通の恋愛が人種を超えると壮大な感じになりますね!