海底帝国史記 ~天然の戦士カニデス~

R高橋宗太郎

読切(脚本)

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〇海辺の街
  【謎の声】
  
  この街に住んでいるはずだ
  
  地上人の英雄
  
  その子孫が・・・
  
  一体どこにいるのだ・・・

〇昔ながらの一軒家
  キョウコのスマホから
  着信音が流れる
  
  北海道旅行中の
  母親からの着信だ

〇狭い畳部屋
キョウコ「お母さん! 元気元気! リサも元気だよ! そっちこそ 二週間の北海道旅行はどう?」
キョウコ「リサ? ちゃんと毎日、大学に行ってるよ でもまさか あの天然ボケのリサが 国立大に受かるなんてね~」
キョウコ「え? カニ? カニ送ってくれたの? ありがとー!」
リサ「おね~ちゃ~ん 今日の晩ゴハンだけど」
キョウコ「今、お母さんと電話中っ 静かにして」
リサ「おか~さん? アタシも話したい!」
キョウコ「後で代わるから それと北海道から カニ送ってくれたんだって!」
リサ「え?カニ? ひゃっほぅ!」
  その時
  玄関のベルが鳴った
リサ「きっと、カニが届いたんだ! わ~い! 受け取ってくるね!」
キョウコ「今カニが届いたみたい リサが受け取ってる ・・・え?生きてる?」
キョウコ「生きてるカニを送ったの? ムリムリ!料理できないよ? は? 料理用のキッチンバサミはあるけど」
キョウコ「ハサミで切る? 生きてるカニの足を? ムリムリムリ!」
リサ「おねーちゃん!どーしよー! カニが! カニが!!」
キョウコ「え?なに?」
リサ「カニが・・・ 大きい・・・」
キョウコ「・・・」
キョウコ「あ、そう お母さん、それでね・・・」
リサ「おね~ちゃん! ねぇってば! ホントにいいの?」
キョウコ「も~っ! うるさいなぁ!」
リサ「カニが・・・」
カニ?「・・・」
キョウコ「・・・」
キョウコ「なんじゃこりゃぁー!!」
リサ「だから、カニだよ」
キョウコ「いやいやいや! どー見てもカニじゃないでしょ~よ!」
リサ「えー?でも・・・ カニですか?」
カニ?「うむ 我が名は『カニデス』 海底帝国の戦士!」
リサ「ほら~」
キョウコ「『ほら~』じゃない! お母さんっちょっと待ってて! ・・・そうだ!リサ! リサと代わるね!」
  キョウコは、リサにスマホを渡すと
  カニデスに食ってかかった
キョウコ「あんた!何者? ヒーロー物のコスプレ!? とにかく、出て行ってください! 不法侵入ですよ!」
リサ「あーっ!そーか! わかった!」
キョウコ「え?何?」
リサ「ぷぷぷっ・・・ おね~ちゃんって やっぱり少し天然だよね? 気付かないの?」
キョウコ(はぁ? リサに「天然」と言われるとは 耐え難い屈辱)
リサ「おねーちゃん、 気付いてないみたいだから 説明してあげる」
リサ「つまり、アタシは「カニですか?」って 聞いたんだけど この人は自分の名前が『カニデス』だから」
リサ「「カニデスか?」って聞かれたと思って 「うむっ」って答えたってワケ! (ドヤ顔)」
キョウコ「・・・」
カニデス「・・・」
キョウコ「んなこたぁー!わかってんの!! 天然ボケは、アンタだ~!」
カニデス「はっ そうか そうだったのか!」
キョウコ「え?何?・・・」
カニデス「「カニですか?」と「カニデスか?」 ・・・そういうことか!!」
キョウコ「アンタも天然か!」
  リサは二人のやり取りに構わず
  スマホで母親と話している
リサ「うん、わかった、やってみる とりあえず電話切るね~ またね~」
リサ「えーっと・・・ていっ!」
  リサは突然、カニデスの足に
  料理用のキッチンばさみを突き刺した
カニデス「ぐおぉぉぉ!!」
キョウコ「アンタ急に 何てことすんのよ!」
リサ「だって、おか~さんが カニの足をハサミで切れって」
キョウコ「バカじゃないの? コスプレに決まってるじゃない! 中に人が入ってるのよ!」
リサ「え? そーなの?」
キョウコ「ごめんなさい! 妹が大変なことを・・・ 大丈夫ですか?」
カニデス「うぐぐっ・・・まさか うぬら・・・追手の者だったのか?」
キョウコ「追手? 何のことだかわかんないけど とにかく救急車を呼びますね!」
カニデス「余計なことはしなくて良い! 甲殻アーマ! 再生!」
  カニデスの足の傷が泡に包まれ
  泡が消えると傷も消えていた
キョウコ「ええ? これってどういうこと? コスプレじゃないの?」
カニデス「これしきのことで驚くとは やはり追手ではないのか? ならば、何が目的でこんなことを」
リサ「ごめんね あたしはカニ鍋を 作ろうとしただけなの」
キョウコ「あの・・・もしかして ホントに海底人?」
カニデス「さっきも言ったが、 我名は『カニデス』 皇帝陛下に仕える・・・戦士だ」
カニデス「帝国に危機が起こり、 地上人の英雄に助けを求めるため やって来た」
リサ「そうだったんだ 大変だったね」
キョウコ「ちょ、ちょっと待って 何言ってるのか、 わかんないんですけど・・・ 今ので納得できる?」
カニデス「この家の入口に、 地上の英雄をあらわす文字が 刻まれていたのだ この家こそ、英雄の一族が住まう 邸宅だと考えたのだが」
キョウコ「文字が刻まれていた?」
カニデス「これだ」
  浦
  島
  取り出した紙には
  縦書きで「浦島」と書かれていた
キョウコ「あ、違うよ? うちは「島浦」」
リサ「うちの表札は、横書きだから~ ちょっと勘違いしたのかな?」
カニデス「なっ なに? うぬらは英雄の子孫ではないのか? そんなバカな!」
カニデス「地上人の英雄ウラシマの一族が この街に住んでいるはずなのだ!」
リサ「ウラシマって、 浦島太郎のことかな? 浦島太郎の子孫を 探せばいいんじゃない?」
キョウコ「何言ってんのよ? 昔話の登場人物に 子孫がいるわけないじゃん フィクションなんだから」
カニデス「うぬらはウラシマのことを 知っているのか? どんな些細なことでもいい! 知っていることがあるなら 教えてくれ!」
リサ「えーと 昔々、あるところに・・・」
キョウコ「そういうことじゃない と思うよ?」
  その時
  開けっぱなしの玄関から
  人影が入って来た
謎の男「おやぁ? 騒がしい家があると思ったら カニデスじゃねぇか ひっひっひっ 探したぜぇ~」
カニデス「むむっ・・・ キサマは何者だ!?」
キョウコ「きゃあ! 次から次に不審者が!」
リサ「えー? ちょっとカッコよくない?」
キョウコ「何言ってんのよ!」
キョウコ(・・・でも確かに ちょっと、好みかも・・・)
謎の男「何者かって?・・・ ああ、地上人の姿を 借りているからな・・・ この姿を見れば 思い出すだろう!!」
謎の怪人「ひーっひっひっ! 地上にはカニ鍋ってのが あるらしいぜぇ~! 今夜はカニデス鍋ってワケだ!」
キョウコ「げげっ!」
カニデス「この炎・・・ キサマは裏切り者の 『ヴォイラ―』! 親衛隊でありながら、 将軍派についた恥知らずめ!」
ヴォイラー「強い者につかなきゃ 自分の命が危ないのさぁ~ オマエみたいになぁ~!」
ヴォイラー「真っ黒焦げにしてやるぜぇ~! 必殺! 『ファイヤーウォール』!!」
カニデス「ぐおおおぉ!」
  炎の壁に包まれた!
  
  しかし、カニデスの体は
  黒焦げどころか、
  赤く光り輝いていた
リサ「ああぁっ! 火が通って赤くなった!」
キョウコ「そんな お料理みたいな言い方・・・」
カニデス「我が甲殻アーマは 熱を受けると強化される! キサマは身の程知らずにも 最も相性が悪い者に 戦いを挑んだというわけだ!」
ヴォイラー「なっなにぃ! 今までそんなこと 聞いたことねぇぞ!」
カニデス「当たり前だ! 奥の手を自ら教えるものか! そして、これが我が必殺技!」
  カニデスの右手の
  甲殻アーマが巨大化し
  まるでシオマネキの
  巨大なハサミのようになった!
ヴォイラー「ひぃぃぃぃぃぃ!」
カニデス「裏切りのヴォイラ―よ・・・ 今日がお前の命日だ! 弾け飛べ! 必殺! 『思いっきりパーンチ』!!」
「ぎょべぶばばばばぁーん!!」
  ヴォイラ―の体は
  爆発四散し、消えて行った
リサ「すごぉーい!」
キョウコ「部屋中、焦げ跡だらけ なんですけどぉ!! どーしてくれんの!!」
カニデス「どうやら、うぬらは あまりウラシマと関係が ないようだな」
カニデス「追手が迫っている以上、 無関係な者を巻き込む わけにはいかぬ 我は立ち去るとしよう」
キョウコ(早く出て行って欲しいけど その前に、この焦げ跡を 弁償して欲しい!)
リサ「え~?でもカニデスさん 地上に知り合いもいないし、 追われてるんでしょ?」
リサ「一人じゃ危ないんじゃない? 仲間はいるの?」
キョウコ「しっ!・・・ 余計なこと聞かないのっ」
カニデス「仲間は、ほとんどが 殺されたか 行方知れずだ・・・」
リサ「わぁー かわいそー」
キョウコ(あーあ、聞いちゃった・・・)
カニデス「うぬらが協力してくれるなら それは助かるが・・・ 無理にとは言えぬ」
キョウコ「はいはい、無理ですね かわいそうですけれど お引き取りください」
リサ「え~ おね~ちゃんつめた~い!」
キョウコ(無視っ!)
カニデス「そうだな・・・ 我は去るとしよう」
カニデス「・・・」
カニデス「・・・」
カニデス「・・・」
カニデス「・・・(ちらっ)」
キョウコ(こっ・・・こいつ・・・ こっちが『助けましょうか?』 って言うのを待ってる!!)
リサ「あっ!まだ消えてない火がある! 危ない 消さなきゃ!」
  ヴォイラ―がいたあたりに
  チロチロと燃える
  小さな炎があった
カニデス「待て!近づくな! それはヴォイラ―のコアだ! おそらく意識も残っているはず トドメを刺さねば!」
  ちょま!ちょま!
  ちょっと待ってください!
  
  将軍派のヤツラに脅されてたんです!
  何でもしますから!
  命だけはお助けを!
カニデス「何でもするか・・・ ならばオマエが 地上人の姿になっていたのは? どうやっていたんだ?」
  ああ、あれは・・・
  
  将軍派のヤツラが
  オレのコアに変身能力を
  埋め込んだんです
カニデス「そうか、では 我を地上人の姿にすることは できるか?」
  お安い御用です!
リサ「わぁっ カニデスさんが さっきのイケメンになった!」
カニデス「おお、これで目立たずに 地上を歩き回れるな」
リサ「ねぇ これ使えるんじゃない?」
  リサは、キャンプ用の
  ランプを持ってきた
カニデス「それは良さそうだな」
  ランプに
  ヴォイラ―のコアを入れた
  ひぇ~っ せまいっ
カニデス「これで持ち歩けるな 我がために しっかり働いてもらおう」
キョウコ「えーっと それじゃあ そろそろ ・・・立ち去るのかな?」
カニデス「・・・」
キョウコ(うぐぐっ そのイケメンで悲しげに こっちを見るんじゃない! カニのくせに!)
カニデス「ぐ~きゅるる」
リサ「あっ お腹が鳴った? お腹が空いてるの?」
カニデス「・・・」
キョウコ(そのイケメンで 顔を赤らめて 恥じらうんじゃねぇ!)
リサ「ねぇ、おね~ちゃん ・・・晩ゴハンだけ ご馳走してあげれば?」
カニデス「ぐ~」
キョウコ(いいタイミングで、腹を鳴らすな!)
キョウコ「でっ・・・でもっ 食材がね? 食材が足りないからっ!」
宅配便の青年「ちわーっす シロネコ宅配便です 北海道からカニを お届けに参りました」
リサ「ほら! ちょうどいいじゃん!」
キョウコ「カニデスさんは、 甲殻類っぽいでしょ? カニ食べたら、共食いに なっちゃうんじゃないかな?」
カニデス「地上人は哺乳類だが 牛や豚を食べるだろう? 我もカニを食べる 特に 地上のカニ鍋には興味がある」
リサ「ほらほら!」
宅配便の青年「あのー ハンコかサインを いただいてよろしいですか?」
キョウコ「ううっ」

〇昔ながらの一軒家
  ここで、カニデスに
  
  晩御飯をご馳走したことが
  
  全ての始まりになることを
  
  まだ姉妹は
  
  知らなかったのだった

〇海辺の街
  おわり

コメント

  • 苗字は確かに読み間違え、多いですよね(笑)
    ここから海底VS地上の戦いが始まるのですね!(違う)

  • お母さんが送ったカニが届いた日にカニデスさんが島浦家を訪ねた日が重なるとは運命でしたね!途中からカニデスさんが怪人ということを忘れてしまうほど、3人の会話が楽しすぎました。リサちゃんを自発的な優しさ、きょうこさんの生真面目さが引き立っています。

  • 全くかみ合わない個性の強い各キャラが、一緒にカニ鍋を囲もうというところに集約されるまでのやりとりが面白すぎます。キョウコさんへの同情心も覚えたのですが、それ以上に笑ってしまいます!

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