怪人とヒーローの黄昏

iko

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怪人とヒーローの黄昏

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〇ショッピングモールの一階
  ある晴れた休日のショッピングモール
「てめぇは15年前のッ・・・!?」
  私はそこへ防災訓練をしに来たのだが。
M4-M0RU「なぜこんな目にあっているのだろうか」

〇怪しげな部屋
  数時間前・・・
キクタ博士「M4−M0RU1ヶ月の訓練ご苦労だった」
咲「訓練っていっても、戦闘に関してはすぐ終わっちゃって読書がほとんどだったけどね」
キクタ博士「今日はショッピングモールでヒーロー達と、怪人用の防災訓練をしてもらう」
咲「うちのパワードスーツのテストもするから、私と一緒に行くよ」
M4-M0RU「わかりました」
キクタ博士「お前にとって初めての外の世界だ」

〇ショッピングモールの一階
  ショッピングモールのホール
  今から防災訓練が行なわれようとしているここは人で賑わっており、
  ガヤガヤ
  ヒーローと思わしき人や、
  ガヤガヤ
  人から少し離れた姿形をした人もいる
  ガヤガヤ
昇「お〜咲、そしてそっちは・・・」
M4-M0RU「怪人のM4-M0RUです。今日はよろしくお願いします」
昇「おう、よろしくな!」
昇「それであんた一体何の怪人だ? それによって訓練の内容も変わるんだが・・・」
M4-M0RU「それが私にもよくわかっていないのですが・・・」
咲「あ〜全部体験させてあげて。この子はなにあっても平気だから」
昇「そう言うならそうしとくわ」
昇「あんたのことは咲から毎日聞いてるしな」
店員「桃子ちゃんごめんね、休日出勤なんかさせちゃって」
店員「それに桃子ちゃんのお友達にまで手伝ってもらっちゃって・・・」
桃子ちゃん「いえいえ、ちょうど暇だったしお金無いんで嬉しいぐらいッス」
桃子ちゃん「ね〜依子ちゃ〜ん♪」
依子「・・・」
桃子ちゃん「って依子ちゃんどうしたの!? 顔色メッチャ悪いよ!?」
  バタン

〇ショッピングモールの一階
???「キャーーー!」
「!?」
昇「一体どうしたんだ!?」
桃子ちゃん「依子ちゃんが、依子ちゃんが・・・」
昇「依子ちゃん?」
桃子ちゃん「急に倒れちゃって、そしたら急に体が糸で覆われて・・・」
昇「って、なんだこの繭!?」
M4-M0RU「何か生物のような形になっていっているような・・・」
蝗貪「・・・」
M4-M0RU「これは怪人・・・?」
蝗貪「うるさ・・・誰かいんのかよ・・・」
咲「何故!?死んだはずじゃ・・・」
蝗貪「眩し・・・っつーかどこだここ?」
「てめぇは15年前の・・・」

〇ショッピングモールの一階
蝗貪「随分とイメチェンしたなヒーロー」
蝗貪「どうした、あん時に跡継ぎ死んだか?」
昇「いや、俺がその跡継ぎだ」
蝗貪「ハッそうかよ、てっきりガキ喪ったショックで痩せ衰えたかと思ったぜ」
蝗貪「で、そっちの怪人は・・・」
M4-M0RU「M4-M0RUと申します。以後お見知りおきを」
蝗貪「ハハッ面白えな、アンタ」
  ガッ!!
  ドゴオォーン!!
蝗貪「面白いくらいに気に食わねえってんだよ」
昇(速え!)
咲「M4-M0RU!」
昇「咲、皆と一緒にいますぐ避難しろ!」
「了解」
蝗貪「サキ?そう言や15年前いの一番で逃げ出したやつもそう口にしてたっけか」
蝗貪「あー、頭回んね」
蝗貪「とりあえずてめぇで腹ごしらえと行くか!」
  シャッ!
昇「そんな小手先くらうかよ!」
  ヒュッ!
昇(こっから頭に蹴りを入れる!)
昇「おらー!」
  ゴッ!
蝗貪「!っ痛ー・・・」
昇(キレイに入った・・・!)
蝗貪「とか思ってんだろー!」
  ドゴッ!
昇「ぐはッ!!!」
蝗貪「これぐらいで膝ついてんじゃねーよ、ったくよー」
蝗貪「蹴りにもうまくPSI乗っけられてねえしよ〜」
蝗貪「ま、んなこた〜どーでもいいか」
蝗貪「んじゃ、いただきまーす♪」
  そうはさせるか!
蝗貪「おん?てめえは・・・」
  推進機構始動、現在ギア ロー
M4-M0RU「クイック・バレット」
  ドゴオォッ!
蝗貪「ガハッッ!」
蝗貪「PSIがねえから大したことはないと踏んだが、とんだ見当違いだ」
蝗貪「面白え!あんま美味くなさそうだが、てめぇから先に食ってやるよ」

〇ショッピングモールの一階
蝗貪「オラァ!」
M4-M0RU「効かん!」
  カッ!
  ドゴッ!
蝗貪「中々良いパンチするねえ、ますます腹が減ってくるぜ」
M4-M0RU「失礼ながら、あなたに食べさせるものはここには無い!!」
  ガッ!
蝗貪「・・・ッツ! 久しぶりに聞いたねえ、その言葉」
M4-M0RU「・・・?」
蝗貪「俺は家族にそう言って捨てられたのさ!」
蝗貪「生まれたときはあんなに「大事に育てよう」とか言ってたクセによー・・・」
蝗貪「俺が少しでも「足らない」って言うと刺すような視線を投げてきやがる」
M4-M0RU(雰囲気が変わった!)
蝗貪「抜宙!!」
M4-M0RU「蹴りが来・・・」
  ドゴオォォーン

〇ショッピングモールの一階
蝗貪「ふー、食いそびれはしたが、これで邪魔者は減ったな」
蝗貪「で、てめえはどうする?ヒョロガリのヒーローさんよ〜」
昇「ぐっ、カハッ・・・」
蝗貪「どうするかって聞いてんだろうがァ!」
  シュッ!
  パリーン!
蝗貪「あん?なんだ今の!?」
蝗貪(芯を捉えたはずだが、手応えが薄い)
昇「今のは俺のPSI」
昇「実体のある光を操る能力の応用だ」
蝗貪「あー、そういや15年前のヒーローのPSIもそんなんだったな」
蝗貪(しかし何故あんなにはっきりと形造れる?)
蝗貪(あの時のヒーローはPSIのエネルギーで殴りつけてくる感じだったが・・・)
昇「俺のPSIには親父のPSIの10%くらいのエネルギーしかねえ」
昇「だから俺は親父みたいに大技で制圧するんじゃなく、適宜PSIを駆使して追い込む戦い方が主なのさ!」
蝗貪「解説ありがとよ、ついでに死んでくれやァ!」
蝗貪「抜ち・・・」
昇「追い込むって言っただろ!」
昇「グロウ・ダーツ!」
  シュタタタ!
蝗貪「グッ!」
蝗貪(蹴りの体勢に入った俺にあんなに速く、しかも的確に関節に撃ち込むかよ!)
昇「その様子じゃあ、お得意の蹴りも、キレイな型のパンチも出来なそうだな」
蝗貪「まだ戦えるぜ、俺は・・・」
昇「いや、その体じゃあ無理だろう」
蝗貪「!? どういうことだ・・・!」
昇「アンタ自身わかってんじゃねえのか、」
昇「アンタの体を造る繭も、アンタの魂をこの世に結び付けている術も解けかかっていることを!」
蝗貪「それがどうしたってんだ!!!」
昇「どうもしねえよ」
昇「アッチの準備も済んだみたいだしな」
蝗貪「アッチ・・・?」

〇ショッピングモールの一階
???「お〜い、昇〜!」
蝗貪「テメエは・・・!」
昇「おう、咲!」
昇「アイツがあの怪人と戦ってるときに来たメールを読んだ時は目を疑ったぜ」
昇「本当にこんなのでなんとかなるのか?ってな」
咲「それでも私を信じて戦ってたんてしょ?」
昇「勿論!」
咲「さすがマイダーリン!」
蝗貪「ナメとんのか、おどれらァー!」
蝗貪「なに急にイチャついてるわけ?俺のこと馬鹿にしてる?」
???「いや、馬鹿になんてしていないさ」
M4-M0RU「ただ、もう我々に戦意など無いだけさ」
蝗貪「そらぁ一体どう言うことだ!?」
M4-M0RU「我々は貴方を成仏させる」
M4-M0RU「精霊流しWithハロウィーンで!」
蝗貪「は・・・?」
蝗貪「・・・って、なんだそのでっけえ袋と団扇みてえなのは!?」

〇アパレルショップ
  遡ること数十分・・・
M4-M0RU「精霊流し!?」
咲「しかもwithハロウィーンよ!」
M4-M0RU「・・・もしかして、相手のこと馬鹿にしてます?」
咲「大真面目よ!」
M4-M0RU「で、「成仏させる」っていうのはどういうことですか?」
咲「それなんだけど、事の発端おぼえてる?」
M4-M0RU「ええ、「依子ちゃん」と言う人が倒れて、繭に全身を覆われたと思ったら、その繭が怪人になった、と言う所でしょうか」
咲「その依子ちゃんの隣にピンク髪の子がいたでしょ?」
M4-M0RU「えぇ」
咲「その子、依子ちゃんの友達なの」
M4-M0RU「それで?」
咲「その子が言うには、依子ちゃんは蚕の怪人で、おまけにイタコの家系の生まれで、霊魂とかに敏感なの」
M4-M0RU「なるほど、それで成仏出来ない魂などに会うとああなる、と」
咲「それも小さい頃までの話らしいけど」
M4-M0RU「なるほど、自我や精神が成長してからはそのようなことは無くなった、と」
M4-M0RU「では今回の相手はそれほどに・・・」
咲「彼の、いや彼らの執念はものすごいでしょうね・・・」
M4-M0RU「テロを起こすくらいですからね・・・」
M4-M0RU「ところで、例の精霊流しについて具体的なせつ説明が欲しいのですが・・・」
咲「あ、それならこれ!」
咲「さっき昇にメールしたの」
  昇へ
  PSIでたくさんのお菓子が乗るぐらい大きな舟を造って!そしたらそれを天に流すの!精霊流しwithハロウィーンよ!
M4-M0RU「たくさんのお菓子って・・・」
咲「これよ!」
  ズドン!
M4-M0RU「・・・そのためのパワードスーツですか」
M4-M0RU「で、天に流す、というのは?」
咲「はい、これ」
M4-M0RU「垂れ幕とポール・・・」
咲「それとあなたの力があれば出来るわ!」
M4-M0RU「・・・まあ、このまま戦いを続けて万が一依子ちゃんにケガをさせては大変ですし」
咲「そうと決まれば行くわよ!」

〇ショッピングモールの一階
M4-M0RU「まあ、どう見ても殺し合いの道具ではないな」
蝗貪「・・・馬鹿にしてんだろ」
咲「してないわ」
咲「あなたが愚かなテロリストと言う点を加味しても、ね」
蝗貪「ッ・・・!」
咲「その発端は愚かではないから」
咲「そもそもアレは、怪人の地位や待遇の改善を訴える運動の末だったから」
蝗貪「わかったようなこと言ってんじゃねえ! あの時運良く生き延びたガキのクセによぉ!」
咲「今は違う!」
咲「私も! そしてあなたたち怪人を取り巻く環境も!」
蝗貪「・・・?」
咲「あのテロの後、私の父や昇の父は、怪人と交流する機会をたくさん持ち、そしてそれをたくさんの人と共有してきた!」
咲「このパワードスーツも、怪人と常人の身体能力の差を無くすことを目標に作られた物よ!」
咲「それに今日の防災訓練も怪人と常人の交流会の面が強かったの」
蝗貪「だからどうした!?」
蝗貪「そんなことされても、俺の腹は満たされねえ!」
昇「いや、満たされるさ」
蝗貪「・・・その大量のお菓子でか?」
昇「いらねえとは言わせねえよ」
蝗貪「もし言ったら?」
昇「その時はこうだ!」
  シュバァーン!!!
蝗貪「!?」

〇ショッピングモールの一階
蝗貪「いつの間に足場が舟に!?」
昇「精霊流しだからな!」
蝗貪「どこに流す?」
咲「外」
蝗貪「どうやって?」
???「それは私が」
M4-M0RU「僭越ながらやらせていただきます」
蝗貪「その団扇で?」
M4-M0RU「勿論」
  推進機構 回転数上昇
M4-M0RU「では行きますので、しっかりお掴まりください」
  現在ギア トップ
M4-M0RU「ハンキー・ドリー、スターダスト!!」
  ブウゥゥン!!
  ヒュゴオォォ!!

〇空
  俺を乗せた船は怪人が起こした風に乗せられ、ショッピングモールのガラスや壁を突き破り、空へと流れ出した。
  死んだはずなのに飢餓をおぼえ、さらに殺し合いもし、かと思えば殺し損ねたガキと大量のお菓子とともに空を飛んでいる。
「しかしこのお菓子、良い匂いしてんなぁ・・・」
  大小も、味や色の濃淡も、種類も様々なお菓子たちが目の前をはねる。
  これらはきっとそれぞれの怪人に合わせて作られたのだろう。
「そう言やぁ、腹減ったなぁ・・・」
「一個だけでも、くれねぇ・・・かなぁ・・・」

〇土手
依子「ごめんなさい!ごめんなさい!」
依子「意識はあったんですけど、あの怪人の怨念が強くて・・・」
昇「いいよいいよ、怪我人は俺しかいないし」
昇「それに、君の方が意識があった分苦しかっただろ?」
依子「でも交流会が・・・」
咲「その点は大丈夫よ」
昇「あぁ!」
咲「皆もっと怪人について知るべきだと思ったでしょうからね」
昇「怪人が暴走しても怪我人がほとんど出なかった、って事例にもなるしな」
咲「ところで、うちの怪人は・・・?」
昇「むこうでオーバヒート起こしてショートしてたぞ」
依子「あの怪人、そんなに機会的なんですか!?」
咲「えぇ、体は機械っぽい、」
咲(ていうかガッツリ機械のパワードスーツ着てるけど)
咲「誰よりも人間のことが好きな怪人よ」

コメント

  • 「人間」対「怪人」の構図の物語が多い中、共存の模索へと変化した社会の描き方が新鮮でした。成敗すべき怪人にも複雑な生い立ちや人情があることがわかってしんみり。生かさず殺さずの精霊流しwithハロウィーン作戦は大成功でしたね。

  • 怪人にヒーロー、さらに人間も混じった交流、闘いがそれぞれのキャラクターのせいか悲観的でなく、最後に団結力すら感じられて、明るい気分で読み終えました。怪人にお菓子!がよかったです。

  • 全員協力で立ち向かう姿はなんだかかっこいいし羨ましさも感じました。
    M4のキャラ設定がとても好きです笑
    話し方といいミステリアスな感じも!

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