擬態物語

憑五郎

擬態物語(脚本)

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憑五郎

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〇公園のベンチ
  ボクはミミック星人。
  地球侵略のため、ミミック星から送られてきた刺客だ。
  ボクらミミック星人は、命を奪った生命体の姿と記憶を取り込み、コピーすることができる。
  そうしてその星の住民と"置き換わる"ことで仲間を増やし、いくつもの星を侵略してきた。
  ボクも卵から産まれてすぐに地球に送られてきたわけだが・・・
  ・・・ここはどこなんだ???
  地球に着いたら先に来ている仲間と合流する予定だったが、どうやら座標がズレてしまったらしい
  とにかくなんとかしないと・・・
  まずい!人間が来た!!
ヤンキー「でさ、あいつ俺にビビッて逃げやがってさー」
ギャル「アハハ!マジウケる~」
  ふぅ・・・木の影に隠れて助かった。
  しかし、やはりこの姿は目立つなぁ。
  夜が明けるまでに人間に擬態しないと・・・
  でも・・・いくら異星人とはいえ、命を奪うのはヤダなぁ。でも死んでる人間にしか擬態できないし、う~ん・・・
  その時、近くから大きな鈍い音がした。
  なんだろう?

〇マンション前の大通り
  そこには人間のメスが血を流して倒れていた。
  し、死んでる・・・。生命反応を探ってみたが、反応は無い。この建物から落ちたのか?
  そ、そうだ
  今ならこの人間に擬態できる!
  今しかない!!
  擬態した瞬間、頭の中にこの人間の記憶が一気に押し寄せて来た。

〇撮影スタジオ
  私は椋梨 美羽。
  大学時代にスカウトされてファッションモデルになりました。
  そして、モデルとしての活躍が認められて、今度ドラマに初出演することが決まりました!
  うれしい・・・
  小さな頃から憧れだった女優にようやくなれる・・・
  私は一生懸命、演技の練習をしました。
プロデューサー「美羽ちゃん♪」
椋梨 美羽「あ、プロデューサー」
プロデューサー「毎日遅くまでがんばってるね」
椋梨 美羽「はい、ドラマに出れるのがうれしくて♪」
プロデューサー「そうそう、それで今度のドラマについての話があるんだ。今夜付き合ってくれないかな?」
椋梨 美羽「はい!よろこんで!」

〇ダブルベッドの部屋
  仕事の話というのは真っ赤な嘘でした・・・
  プロデューサーは私を食事に誘った後、自分の部屋に連れ込み、関係を迫って来たのです・・・
プロデューサー「君はとってもかわいいし、僕と付き合えば出世間違いなしだよ♪」
椋梨 美羽「い、いやっ・・・」
プロデューサー「なんだと!? 俺じゃ男として不満だって言うのか!?」
椋梨 美羽「や、やめてください・・・きゃあっ!!」
  私は逆上したプロデューサーにより、ベランダから突き落とされました──

〇空
  いや・・・こんなところで死にたくない
  もうすぐ夢が叶えられるところだったのに・・・
  パパ・・・ママ・・・たすけて・・・

〇マンション前の大通り
  僕の中に彼女の死ぬ間際の感情が一気に流れ込んできた。
  苦しみ、悲しみ、無念さ、怒り・・・
  あまりの量に頭が破裂しそうだった
  うっ・・・うわあああぁぁぁっっっ!!!

〇取調室
  気が付くと僕は取調室にいた──
刑事「一体君は誰なのかね?」
椋梨 美羽「だから、えっと、その・・・」
  本当のことを言うわけにもいかず、遺体の一番そばにいた僕が重要参考人として連れてこられたらしい。
  ・・・というか、完全に犯人として疑われてる。
刑事「まったく話にならん・・・」
刑事「・・・ん? 誰かね?」
謎の男「こういう者だ」
謎の男「代わってくれ」
刑事「し、失礼いたしました!」
  部屋に入ってきた若い男が手帳を見せると刑事はそそくさと出て行った。
  誰だろうこの人・・・
謎の男「単刀直入に言う」
謎の男「貴様、ミミックだな?」
椋梨 美羽「えっ!?」
謎の男「我々は警視庁対ミミック特別チーム 貴様達が人間に擬態して社会に潜伏していることはわかっている」
  ま、まずい、勘付かれてる・・・
謎の男「言わないというのなら、我々の研究所で精密検査を受けてもらうことになるが・・・」
椋梨 美羽「わ、わかりました!言います!」
  僕は観念して、すべてを打ち明けた。

〇取調室
謎の男「なるほど、つまり貴様が擬態している椋梨美羽という女は、そのプロデューサーの男に殺されたというわけか──」
椋梨 美羽「はい」
謎の男「事情聴取では、その男は「彼女はドラマの出演が取り止めになってショックで身を投げ出した」と言っていたが──」
椋梨 美羽「とんでもない!! 私・・・じゃなくて、この人はあの男に殺されたんです!!」
  自分でもビックリするくらい声を荒げてしまった。
  本来、この人間と僕はまったく関係ないのに。
  記憶に感情が引っ張られてるのかもしれない・・・
謎の男「わかった。貴様の言うことを信じよう」
椋梨 美羽「よかった」
  男はいきなり僕に銃を突き付けて来た
謎の男「お前に選択肢を2つやる。 我々に協力するか、ここで死ぬかだ」
  この男が何を考えているのかはわからない。だが、僕にとって選択肢は1つしかないのは明らかだった。
椋梨 美羽「わかりました・・・協力します」
謎の男「よし」
  そう言うと男は注射器を取り出し、僕の脇腹に突き刺した。刺された箇所から鋭い痛みが全身に広がった。
椋梨 美羽「な、なにを──」
謎の男「これでもうお前はその姿以外に擬態できなくなった」
椋梨 美羽「えっ!?」
謎の男「それからマイクロチップを埋め込んだ。もし貴様が我々に反抗したり逃走したらチップを作動させる」
謎の男「貴様達の種族によく効く毒が解き放たれ、30秒と持たないだろう」
椋梨 美羽「そんな・・・」
謎の男「いいか? 貴様の命はもう俺の物だ それを忘れるな」
椋梨 美羽「・・・はい」

〇玄関の外
  ピンポーーン
プロデューサー「あれ?刑事さん?」
プロデューサー「お宅らも暇だねぇ 何回来ても話すことは一緒だよ」
謎の男「今日は会わせたい人物がいる」
プロデューサー「会わせたい人物?」

〇ダブルベッドの部屋
椋梨 美羽「私の顔を忘れたとは言わせません!!」
プロデューサー「お、お前はなんで・・・ 殺したはずじゃ・・・」
プロデューサー「ハッ!」
謎の男「ボロを出したな!貴様を逮捕する!!」
プロデューサー「ク、クソ、こうなったら・・・」
謎の男「貴様、ミミックだったのか・・・」
ダークミミック「もう少しいろんな女と楽しみたかったが、バレちゃあしょうがない」
謎の男「化け物がっ!!」
  男は銃を放ったが、弾丸は厚い装甲にいともたやすく弾かれた。
ダークミミック「フン、人間風情が」
謎の男「ぐあっ!」
  わずか一撃で男は宙に吹き飛ばされ、部屋の角のテレビに当たり、液晶が吹き飛んだ。
  奴がトドメを刺そうと向かう。
  僕が助けないと!
椋梨 美羽「えいっ!!」
  僕は背後からタックルした
椋梨 美羽「うわぁ!?」
  だが、逆に弾き飛ばされてしまった
  不敵な笑みを浮かべながら奴は向きを変えて僕の方にやってきた
謎の男「逃げろ!!」
  巨大な二本の腕が僕の首をつかんだ。
  振りほどこうと抵抗したが、な、なんて怪力だ・・・
ダークミミック「今度こそ葬ってやる──」
  だんだん意識が薄れてきた・・・
  く、くそ・・・
  また殺されてしまうのか・・・

〇幻想空間
椋梨 美羽「あれ? ・・・ここは?」
椋梨 美羽「!! ・・・あなたは!!」
椋梨 美羽「私はあなたの意識の中の椋梨美羽よ」
椋梨 美羽「ごめんなさい・・・勝手に姿も記憶も借りちゃって・・・」
椋梨 美羽「いいのよ。あなたがいなかったら私の死の真相は闇に葬られていたわ」
椋梨 美羽「そう言ってもらえると助かります」
椋梨 美羽「私の意識はもうすぐ完全に消えるわ」
椋梨 美羽「えっ!?」
椋梨 美羽「でも、あなたが引き継いでくれる限り、私の存在は生き続ける・・・」
椋梨 美羽「美羽さん・・・」
椋梨 美羽「私のすべてをあなたにあげるわ だから、私の無念を晴らして!!」
椋梨 美羽「待ってください!!」
椋梨 美羽「美羽さん・・・」
椋梨 美羽「わかりました! あなたの想いは僕が引き継ぎます!!」

〇ダブルベッドの部屋
ダークミミック「フン、さっさとくたばれ!」
椋梨 美羽「うおおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!」
ダークミミック「な、何っ!?」
ミミック星人「美羽さんの仇だ!!」
ダークミミック「ぬおおおおぉぉぉぉっっっっ!!??」
  僕はタックルで奴をベランダから突き落とした。
  いくら装甲が厚くても、この高さから落下したらひとたまりもないだろう。
椋梨 美羽「ハァハァハァ・・・」
謎の男「大丈夫か?」
椋梨 美羽「ハァハァ・・・なんとか もう少しでやられるとこでしたけど」
神水流 涼馬「よくやった。俺は神水流 涼馬。 貴様の入隊を正式に認める」
  そう言って涼馬さんは僕に手を差し出して来た。
椋梨 美羽「あ、ありがとうございます」
椋梨 美羽「同族殺しをしちゃったからには僕も後に引けませんね」

〇白いアパート

〇汚い一人部屋
神水流 涼馬「ここがお前の部屋だ」
椋梨 美羽「うわぁ ずいぶん散らかってますね 誰か住んでるんですか?」
神水流 涼馬「俺の部屋だ」
椋梨 美羽「ええっ!? 相部屋ってことですか?」
神水流 涼馬「そうだ。入隊は認めたが、貴様がミミックであることは変わらん。引き続き監視する」
椋梨 美羽「たしかに僕はミミックですけど・・・ 記憶と姿は美羽さんそのもの・・・ってうわぁ!?」
神水流 涼馬「何をボーッっと突っ立っている さっさと洗濯しろ」
椋梨 美羽「えっ、は、はい!」

〇幻想空間
  こうして二人の奇妙な共同生活が始まった。
  彼らの戦いはまだ始まったばかりだ!!
椋梨 美羽「ふふっ」
  Fin.

コメント

  • 主人公は侵略者としては擬態相手に同乗したり、現地住民の地球人を傷付けるのを躊躇う優しい性格で、かえって同族の報復や地球人の迫害などに合わないか、心配になりました。(私個人としては、仲良くしたいタイプですが)
    同居人兼監視役になった彼に、そのフォローはお願いしたいですね。

  • 一見すると「良い宇宙人もいるんだな」とほっこりしてしまいそうな話ですが、実は大きな選択肢を突き付けられたように感じました。それは「思い残したことを果たしてもらう代わりに、星の侵略を許すか」ということ。この作品の主人公が侵略の意思を持ち続けたのかはわかりませんが、
    扱っているテーマは大きいものがあります。

  • 美羽さんの無念をはらせてよかったです。
    死なないと擬態出来ないって、ちょっと困りますね。
    主人公のミミック星人さんはとてもいい人で、これからの彼のお話も読んでみたいです。

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